○岐阜県博物館 特別展『飛騨・美濃の信仰と造形-古代・中世の遺産-』(2012年9月21日~10月28日)
岐阜県を「関西」に入れては叱られるかもしれないが、東京人から見れば、大雑把に「西のかた」なので、お許しを。この展覧会の噂を聞いて、岐阜県博物館って、一体どこにあるんだ?と探すことから始まった。同館のホームページでアクセス方法を調べたら、JR岐阜駅からバスで約40分(日中は1時間に2、3本)。さらにバス停から20分ほど歩くという。うーむ。でも、前泊の草津(滋賀県)から(新快速)→米原→(特別快速)→岐阜の乗り継ぎが意外とよかったので、行ってみることにした。
バス停「小屋名」で下りたときは、見晴らしのいい田野が広がっているばかりで呆然としたが、携帯の地図情報をたよりに、なんとか岐阜百年公園にたどりつき、博物館を見つけた。恐竜・動植物など理科系の展示と人文歴史系の展示が併設されている。

※反対車線のバス停。田圃の先に見える(?)青い橋を渡った先が岐阜百年公園。
特別展は、広めの1室を使い、展示替えを含め、約50件が出品されている。「信仰と造形」という、かなり大括りなテーマで、仏像・神像・絵画・工芸・文書資料など、ゴッタ煮の感に少しとまどう一方、多様な文化財を一度に見ることができる、お得感もあった。
いちばん印象に残ったのは、金銀獅子唐草文鉢(奈良時代・護国之寺)。線刻の獅子の躍動感が素晴らしい、と現場で思ったのだが、あとで図録写真を見たら、もっと複雑な文様で全面的に覆われていることが分かった。「唐の製品を日本で模した作品とする考えもある」そうだが、契丹伝来だったりしないかしら。
仏像は鎌倉ものが多かったが、横蔵寺の小さな金銅仏・薬師如来立像(奈良~平安時代)が気に入った。小さなおみ足が抜群に可愛い。右手で偏衫の端を握っており、この形式の薬師如来は「他に滋賀県・聖衆来迎寺像がある」と解説にいう。先だって三井記念美術館の『琵琶湖をめぐる近江路の神と仏 名宝展』で拝見したばかりだ。大小2件の狛犬にも惹かれた。どちらも美濃の山中を狩人とともに暮らした猟犬の姿を彷彿とさせた。
神像が10件。顔をよく見ると、いずれも眉を高く彫り残し、まぶたを盛り上げ、半開きの眼球は下を向く。ところが、後代になると、まぶたと眼球の境が不明瞭になって、カッと見開いた目に改修されてしまう…ような気がした。高山市・阿多由太神社の随身像2体は、本当に平安時代の彫刻?と疑うような造型。昭和のマンガに出てくるロボットみたいだった。展示替の関係で、永保寺の南宋画『千手観音像』(10/10~展示)が見られなかったのは残念。東博の『中国書画精華』で見たのは2011年だったか。もうずいぶん前のような気がしていたのに。
なお、ついでのつもりで入った別室の特別展『岐阜、染と織の匠たち 人間国宝三人展』(2012年9月21日~11月4日)もよかった。三人の染織家、山田貢、宗廣力三、土屋順紀の作品を展示。どれも実際に手を通したくなるような魅力があった。東京の世田谷美術館や近代美術館の所蔵品に、こんなところで感銘を受けるとは。
(10/13写真追加)
岐阜県を「関西」に入れては叱られるかもしれないが、東京人から見れば、大雑把に「西のかた」なので、お許しを。この展覧会の噂を聞いて、岐阜県博物館って、一体どこにあるんだ?と探すことから始まった。同館のホームページでアクセス方法を調べたら、JR岐阜駅からバスで約40分(日中は1時間に2、3本)。さらにバス停から20分ほど歩くという。うーむ。でも、前泊の草津(滋賀県)から(新快速)→米原→(特別快速)→岐阜の乗り継ぎが意外とよかったので、行ってみることにした。
バス停「小屋名」で下りたときは、見晴らしのいい田野が広がっているばかりで呆然としたが、携帯の地図情報をたよりに、なんとか岐阜百年公園にたどりつき、博物館を見つけた。恐竜・動植物など理科系の展示と人文歴史系の展示が併設されている。

※反対車線のバス停。田圃の先に見える(?)青い橋を渡った先が岐阜百年公園。
特別展は、広めの1室を使い、展示替えを含め、約50件が出品されている。「信仰と造形」という、かなり大括りなテーマで、仏像・神像・絵画・工芸・文書資料など、ゴッタ煮の感に少しとまどう一方、多様な文化財を一度に見ることができる、お得感もあった。
いちばん印象に残ったのは、金銀獅子唐草文鉢(奈良時代・護国之寺)。線刻の獅子の躍動感が素晴らしい、と現場で思ったのだが、あとで図録写真を見たら、もっと複雑な文様で全面的に覆われていることが分かった。「唐の製品を日本で模した作品とする考えもある」そうだが、契丹伝来だったりしないかしら。
仏像は鎌倉ものが多かったが、横蔵寺の小さな金銅仏・薬師如来立像(奈良~平安時代)が気に入った。小さなおみ足が抜群に可愛い。右手で偏衫の端を握っており、この形式の薬師如来は「他に滋賀県・聖衆来迎寺像がある」と解説にいう。先だって三井記念美術館の『琵琶湖をめぐる近江路の神と仏 名宝展』で拝見したばかりだ。大小2件の狛犬にも惹かれた。どちらも美濃の山中を狩人とともに暮らした猟犬の姿を彷彿とさせた。
神像が10件。顔をよく見ると、いずれも眉を高く彫り残し、まぶたを盛り上げ、半開きの眼球は下を向く。ところが、後代になると、まぶたと眼球の境が不明瞭になって、カッと見開いた目に改修されてしまう…ような気がした。高山市・阿多由太神社の随身像2体は、本当に平安時代の彫刻?と疑うような造型。昭和のマンガに出てくるロボットみたいだった。展示替の関係で、永保寺の南宋画『千手観音像』(10/10~展示)が見られなかったのは残念。東博の『中国書画精華』で見たのは2011年だったか。もうずいぶん前のような気がしていたのに。
なお、ついでのつもりで入った別室の特別展『岐阜、染と織の匠たち 人間国宝三人展』(2012年9月21日~11月4日)もよかった。三人の染織家、山田貢、宗廣力三、土屋順紀の作品を展示。どれも実際に手を通したくなるような魅力があった。東京の世田谷美術館や近代美術館の所蔵品に、こんなところで感銘を受けるとは。
(10/13写真追加)