見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2012秋@関西:蹴鞠 Kemari(天理参考館)

2012-10-30 22:40:52 | 行ったもの(美術館・見仏)
天理大学附属天理参考館 第67回企画展『蹴鞠 Kemari』(2012年10月3日~12月3日)

 正倉院展に行って(仏像館に寄って)、大和文華館に行って、あと1ヶ所くらい行けるだろうと思っていたとき、この企画展を見つけて、久しぶりに天理に行くことに決めた。同館3階の企画展示室を使って行われている展示で、出品リストには文物80件余+文書約50件が挙がっているが、それほど大規模な感じはない。ただ、めずらしい資料が多くて、面白かった。

 まず、蹴鞠(けまり)の鞠。二枚の円形の鹿革を馬革の帯で縫い合わせて括り、楕円球(窪みの少ないひょうたん形)を作る。軽くて柔らかく、中空なので、強く蹴るとへこむが、腰(繋ぎ目)を軽く叩くと戻るのだそうだ。以上、図録の解説から。

 沓は鴨沓(かもぐつ)という。平たい爪先が鴨の嘴に似ているから、という説もあるそうだ。牛革製。爪先~甲の部分が黒や濃茶なのに対して、足首カバー(紐で縛る)は少し薄めの色で、ツートンカラーのショートブーツみたいである。とってもオシャレ。

 鞠水干とよばれる装束も華やかでオシャレだ。やっぱり、大試合に臨んで士気を高めるための、ユニフォームの感覚に通じるものがあるのかな。日常着の美意識とはぜんぜん違うし、歌舞伎などの演劇的なコスチュームとも異なる。まあ展示品は、さかのぼっても明治くらいまでなので、古代の沓や装束が、全く同じだったかどうかは分からないけれど。烏帽子は落ちないように懸緒で固定する。蹴鞠とは全く関係なく、懸緒を用いた烏帽子姿を、肖像画やドラマで見たことがあるが、あれは必ず「為蹴鞠門弟」という理由を立てて、飛鳥井家(蹴鞠の宗家)から免状をもらうのだそうだ。面白い~。

 フィールドならぬ鞠場(鞠庭)にも定めがあって、四隅には、松、柳、桜などの式木を植える。このとき、基本的には邪魔にならないよう、低い枝を落とすのだが、同時に、プレーを面白くするための枝ぶりの工夫があるそうだ。なかなか深い!

 私は、確か正月の下鴨神社で、実際の蹴鞠を1回だけ見たことがあり、思ったより俊敏な運動神経を要求されるスポーツなんだな、と驚いたことがある。多くの平安男子たちがハマった気持ちも分かるような気がした。

 ついでに久しぶりの常設展も、時間の許す限り見ていく。西アジアの考古品の中に、正倉院展を思い出す、花弁形の長杯やガラスの杯があって、興味深かった。
 
コメント
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