■京都国立博物館 修理完成記念『国宝 鳥獣戯画と高山寺』(2014年10月7日~11月24日)
10月三連休の最終日(10/13)台風の影響で予定を変更し、京都で目覚めることになってしまった。窓の外は明るい。風は少し不穏な生ぬるさを感じさせるが、まだ雨も落ちてきていない。とりあえず、観光に出かけてみることにする。前日、心残りのあった京博の『鳥獣戯画』展を再訪。この日は開館(9:30)前に行って、入口からそれほど遠くないポジションに並んだ。
構内に入ると、たぶん台風対策だろう、雨除け・日除けのテントがたたまれている。列は徐々に進んで、館内に入った。前日、あきらめた甲巻を見ることが今日の目的なので、まっすぐ中央ホールに向かう。中央ホールは、左右の壁に展示ケースが設置され、中央の空間は、ジグザグに折り返す待ち列を収容する体制になっていた。まだ待ち列は、ごく短い。はじめのケースに展示されていたのは、「鳥獣戯画」甲巻を描いた探幽縮図。当初の姿を復元する手がかりとなる重要な資料だが、冒頭の「かいるさるうさぎ」という表記がかわいい。そして、ようやく到達した甲巻。前期展示は、巻頭(渓流での水遊び)から弓遊びなど。カエルとウサギの相撲、サルの僧侶とカエルの仏様など、どちらかというと有名な場面は後半(後期展示)に多いかな。見たい場面が見られず、残念がっているお客さんもいた。
私は、巻頭、鼻をつまんで(?)ゆっくり背中から水中にダイビングするウサギの描き方の巧さに、ほとほと感心した。隣りには、異時同図法なのか、一回転して波間に頭から落ちたウサギの両足が見えている。巧いなあ、ほんとにアニメーションだわ。それから、ウサギの目が大きな黒い点で描かれていて表情に乏しい(でも可愛い)のは、キティちゃんに通じると思った。そして、あらためて会場をひとまわりして10時半頃に退出。この日も多数のお客さんが長い列をつくって、本館(明治古都館)のまわりを取り囲んでいた。
■京都国立博物館 平成知新館オープン記念展『京へのいざない』(2014年9月13日~11月16日)
常設展示館(平成知新館)へ移動。基本的に9月と展示内容は変わっていないが(10/15~後期)、ほんの少し展示替えがあったはずなので、そこだけ確認しようと思った。すると、入館してすぐ、10:40頃だったと思う、館内アナウンスがあり、「京都と大阪に暴風警報が発令されたため、本日は12時で臨時休館します」という。一瞬だけどよめきがあったが、平成知新館のお客さんはわりと冷静だった。本館の『鳥獣戯画』展に入館待ちしていたお客さんは大変だったろうな、と今にして思う。
展示替えであるが、2F-5室(中国絵画)では、大徳寺・高桐院の李唐筆『山水図』2幅と『牡丹図2幅がなくなって、それぞれ『秋景冬景山水図』2幅(金地院)と『牡丹図』1幅(知恩院)に替わっていた。いま展示リストを見たら『布袋図』(眠り布袋)も『朝陽図』に替わっていたようだが、これには気づかなかった。
金地院の『秋景冬景山水図』2幅は「東山御物」で、徽宗筆の伝承を持つ。東京・三井記念美術館の特別展『東山御物の美』に11/4から展示される予定で、見たいと思っていた作品だが、まさか一足先に京都で遭遇しようとは思わなかった。これ、右隻には中空にうっすらと二羽の鳥が飛んでいて、左隻には樹上にサルがいるのよね。ハイライトの白(胡粉)の使い方が面白い。このほか、巻替えのあった1F-2室(絵巻)など、いくつかの展示室を選んで参観。
11時半頃、外に出ると、もう本館の周囲に列は見えなかった。無理やり館内に入れたのか、門の外に追い出したのかが気になる。入口は既に入館禁止の措置が取られていたが、防護柵を挟んで複数のお客さんが、警備員に食い下がっている。「何かあったら自己責任でいいから中に入れろ」ということらしいが、いや、従業員だって安全なうちに帰宅させなくちゃいけないのだし、諦めようよ、と思う。
このあと、龍谷ミュージアムと承天閣美術館に行くことを考えていたのだが、念のため、龍谷ミュージアムに電話をしてみると「本日は休館しました」の返事。承天閣美術館は「開館してますよ」と明るい返事だったので、行ってみることにする。ちなみに、まだ雨は落ちてきていない。
■承天閣美術館 『花鳥画展 室町・桃山・江戸・中国宮廷画壇の名品』(2014年10月4日~2015年3月22日)
会場に入ってすぐ「肉形石」の展示に笑ってしまった。『國立故宮博物院展』で、東京の翠玉白菜に対し、九州国立博物館の目玉になっていたのが、東坡肉そっくりの「肉形石」である。故宮の名品ほどの、とろけるような脂身の質感はないが、類似品が京都にもあった!
今回の展示は、日本の絵画と中国の絵画がほどよく混じっていて面白かった。第一展示室には、元・王若水(王淵)筆『花鳥画』2幅。右隻には白雉の雌雄。白黒ツートンカラーの羽色、赤い足の雄に対して、雌は地味。左隻はオナガの、雌雄ではなく親子と説明にあった。『中観音左右猿猴図』3幅対は、中央の観音が探幽、右が尚信、左が安信で、「探幽三兄弟」のコラボレーションである。
第2展示室、明・文正筆『鳴鶴図』は、翼をひろげて、斜めに滑空する鶴の印象が強いが、地に足のついた鶴の図と双幅である。どちらもスリムな体型。痩身の老人などを形容する「鶴のような」という慣用句を思い出す(若冲の鶴って丸過ぎだなあ)。徽宗筆『白鷹図』、牧谿筆『柿栗図』など。まあ伝承作者をどこまで信じるかは鑑賞者次第だろう。辺文進筆『百鳥図』は、はじめて見たときの衝撃が薄れて、ああ、鳳凰だ~とフツーに受け入れるようになってしまった。慣れてくるとバランスがいい画面だと思う。能阿弥筆『雲龍図』は龍の顎(あご)の下にフリルのような雲が描かれているので「よだれかけの龍」とも呼ぶ。このセンス、好きだw
ゆっくり見終わって13時頃。外に出ると、ポツポツ雨が落ち始めていた。バスで京都駅に向かう途中、国立博物館の前を通ったら、相変わらず、入口で押し問答しているお客さんの姿が見えた。職員や展示会業者でなく、警備員さんが対応させられていることに同情を感じた。
JR新快速で神戸三ノ宮に到着したときは、雨も風もかなり強くなっていた。幸い、駅から至近のホテルを予約していたのだが、わずか数分でも外を歩くことを躊躇したくらい。地下街でつながってないかな?と思ったが、ダメだった。15時過ぎにチェックインして、しばらくテレビで台風上陸の様子を見ていたが、やがて、うとうと寝入ってしまった。
翌朝、神戸は快晴。台風はまだ北日本にいるらしいので、帰りの旅路を心配したが、飛行機はちゃんと飛んで、札幌に帰ることができた。ふむ、休み明けに半日休むことができれば(午後から出勤)、この「朝帰り」スタイルは悪くないな。また次回、やってみよう。
10月三連休の最終日(10/13)台風の影響で予定を変更し、京都で目覚めることになってしまった。窓の外は明るい。風は少し不穏な生ぬるさを感じさせるが、まだ雨も落ちてきていない。とりあえず、観光に出かけてみることにする。前日、心残りのあった京博の『鳥獣戯画』展を再訪。この日は開館(9:30)前に行って、入口からそれほど遠くないポジションに並んだ。
構内に入ると、たぶん台風対策だろう、雨除け・日除けのテントがたたまれている。列は徐々に進んで、館内に入った。前日、あきらめた甲巻を見ることが今日の目的なので、まっすぐ中央ホールに向かう。中央ホールは、左右の壁に展示ケースが設置され、中央の空間は、ジグザグに折り返す待ち列を収容する体制になっていた。まだ待ち列は、ごく短い。はじめのケースに展示されていたのは、「鳥獣戯画」甲巻を描いた探幽縮図。当初の姿を復元する手がかりとなる重要な資料だが、冒頭の「かいるさるうさぎ」という表記がかわいい。そして、ようやく到達した甲巻。前期展示は、巻頭(渓流での水遊び)から弓遊びなど。カエルとウサギの相撲、サルの僧侶とカエルの仏様など、どちらかというと有名な場面は後半(後期展示)に多いかな。見たい場面が見られず、残念がっているお客さんもいた。
私は、巻頭、鼻をつまんで(?)ゆっくり背中から水中にダイビングするウサギの描き方の巧さに、ほとほと感心した。隣りには、異時同図法なのか、一回転して波間に頭から落ちたウサギの両足が見えている。巧いなあ、ほんとにアニメーションだわ。それから、ウサギの目が大きな黒い点で描かれていて表情に乏しい(でも可愛い)のは、キティちゃんに通じると思った。そして、あらためて会場をひとまわりして10時半頃に退出。この日も多数のお客さんが長い列をつくって、本館(明治古都館)のまわりを取り囲んでいた。
■京都国立博物館 平成知新館オープン記念展『京へのいざない』(2014年9月13日~11月16日)
常設展示館(平成知新館)へ移動。基本的に9月と展示内容は変わっていないが(10/15~後期)、ほんの少し展示替えがあったはずなので、そこだけ確認しようと思った。すると、入館してすぐ、10:40頃だったと思う、館内アナウンスがあり、「京都と大阪に暴風警報が発令されたため、本日は12時で臨時休館します」という。一瞬だけどよめきがあったが、平成知新館のお客さんはわりと冷静だった。本館の『鳥獣戯画』展に入館待ちしていたお客さんは大変だったろうな、と今にして思う。
展示替えであるが、2F-5室(中国絵画)では、大徳寺・高桐院の李唐筆『山水図』2幅と『牡丹図2幅がなくなって、それぞれ『秋景冬景山水図』2幅(金地院)と『牡丹図』1幅(知恩院)に替わっていた。いま展示リストを見たら『布袋図』(眠り布袋)も『朝陽図』に替わっていたようだが、これには気づかなかった。
金地院の『秋景冬景山水図』2幅は「東山御物」で、徽宗筆の伝承を持つ。東京・三井記念美術館の特別展『東山御物の美』に11/4から展示される予定で、見たいと思っていた作品だが、まさか一足先に京都で遭遇しようとは思わなかった。これ、右隻には中空にうっすらと二羽の鳥が飛んでいて、左隻には樹上にサルがいるのよね。ハイライトの白(胡粉)の使い方が面白い。このほか、巻替えのあった1F-2室(絵巻)など、いくつかの展示室を選んで参観。
11時半頃、外に出ると、もう本館の周囲に列は見えなかった。無理やり館内に入れたのか、門の外に追い出したのかが気になる。入口は既に入館禁止の措置が取られていたが、防護柵を挟んで複数のお客さんが、警備員に食い下がっている。「何かあったら自己責任でいいから中に入れろ」ということらしいが、いや、従業員だって安全なうちに帰宅させなくちゃいけないのだし、諦めようよ、と思う。
このあと、龍谷ミュージアムと承天閣美術館に行くことを考えていたのだが、念のため、龍谷ミュージアムに電話をしてみると「本日は休館しました」の返事。承天閣美術館は「開館してますよ」と明るい返事だったので、行ってみることにする。ちなみに、まだ雨は落ちてきていない。
■承天閣美術館 『花鳥画展 室町・桃山・江戸・中国宮廷画壇の名品』(2014年10月4日~2015年3月22日)
会場に入ってすぐ「肉形石」の展示に笑ってしまった。『國立故宮博物院展』で、東京の翠玉白菜に対し、九州国立博物館の目玉になっていたのが、東坡肉そっくりの「肉形石」である。故宮の名品ほどの、とろけるような脂身の質感はないが、類似品が京都にもあった!
今回の展示は、日本の絵画と中国の絵画がほどよく混じっていて面白かった。第一展示室には、元・王若水(王淵)筆『花鳥画』2幅。右隻には白雉の雌雄。白黒ツートンカラーの羽色、赤い足の雄に対して、雌は地味。左隻はオナガの、雌雄ではなく親子と説明にあった。『中観音左右猿猴図』3幅対は、中央の観音が探幽、右が尚信、左が安信で、「探幽三兄弟」のコラボレーションである。
第2展示室、明・文正筆『鳴鶴図』は、翼をひろげて、斜めに滑空する鶴の印象が強いが、地に足のついた鶴の図と双幅である。どちらもスリムな体型。痩身の老人などを形容する「鶴のような」という慣用句を思い出す(若冲の鶴って丸過ぎだなあ)。徽宗筆『白鷹図』、牧谿筆『柿栗図』など。まあ伝承作者をどこまで信じるかは鑑賞者次第だろう。辺文進筆『百鳥図』は、はじめて見たときの衝撃が薄れて、ああ、鳳凰だ~とフツーに受け入れるようになってしまった。慣れてくるとバランスがいい画面だと思う。能阿弥筆『雲龍図』は龍の顎(あご)の下にフリルのような雲が描かれているので「よだれかけの龍」とも呼ぶ。このセンス、好きだw
ゆっくり見終わって13時頃。外に出ると、ポツポツ雨が落ち始めていた。バスで京都駅に向かう途中、国立博物館の前を通ったら、相変わらず、入口で押し問答しているお客さんの姿が見えた。職員や展示会業者でなく、警備員さんが対応させられていることに同情を感じた。
JR新快速で神戸三ノ宮に到着したときは、雨も風もかなり強くなっていた。幸い、駅から至近のホテルを予約していたのだが、わずか数分でも外を歩くことを躊躇したくらい。地下街でつながってないかな?と思ったが、ダメだった。15時過ぎにチェックインして、しばらくテレビで台風上陸の様子を見ていたが、やがて、うとうと寝入ってしまった。
翌朝、神戸は快晴。台風はまだ北日本にいるらしいので、帰りの旅路を心配したが、飛行機はちゃんと飛んで、札幌に帰ることができた。ふむ、休み明けに半日休むことができれば(午後から出勤)、この「朝帰り」スタイルは悪くないな。また次回、やってみよう。