○東京国立博物館 月例講演会『東京国立博物館収蔵の古写真と写真師小川一真』(2009年8月1日)
東博には、しょっちゅう通っているのに、月例講演会を聴くのは初めてである。こんな地味なテーマで大講堂が埋まるのかな、と思ったら、それなりに人が入っていた。この講演会は、本館16室(歴史資料)で開催中の特集陳列『古写真-小川一真と近畿宝物調査-』(2009年7月28日~2009年8月16日)の関連企画である。同室が古写真を取り上げるのは、これが3度目とのこと。過去2回は、以下のことらしい。
・『古写真-記録と記憶-』(2007年6月5日~2006年7月1日)
・『古写真-古美術の記録-』(2008年7月8日~2008年8月3日)
(1)演題:「東京国立博物館収蔵の古写真について」/講師:東京国立博物館書跡・歴史室長 冨坂賢
はじめに冨坂賢氏から、東博は、焼付け(プリント)2万~4万点、ガラス原版5万~10万点を保管しているという話があった。あんまり幅がありすぎるようだが、はっきり言えば「全貌は不明」なのだそうだ。現在のところ、銀板写真、湿板ガラス写真、乾板ガラス写真までを「古写真」と呼んでいるが、これだけデジタルカメラが普及してくると、まもなくフィルムも「古写真」の範疇に入るのではないか、というお話に、驚きながら納得した。
東博では、平成8年から所蔵古写真の調査を開始し、その成果の一部を画像データベースとして公開している。ご存知でした? 東博のTOPページの右下にある「東京国立博物館情報アーカイブ」をクリック→左列メニューの「研究成果/データベース」をクリック→データベース一覧より「東京国立博物館所蔵 古写真WEBデータベース」をクリック→同データベースの概要表示・URLをクリック→やっと「古写真データベース」にたどり着く。データベース自体は、とても丁寧に作られていて、古写真の台紙の裏面を必ず撮影している点は、さすがモノを扱い慣れた博物館の気配り、と思って、私は感心した。でも、リンクが深いなあ…。しかも、これかな?と思って「画像を探す」をクリックすると、全く違うデータベースに接続してしまうみたいである。分かりにくい。
それから、この「古写真データベース」には、小川一真が、明治34年(1901)北京で撮影した写真(伊東忠太の調査に同行)が収められていて興味深いのだが、これを、たとえば東京大学東洋文化研究所の「山本讃七郎写真ガラス乾板データベース」などと、横断検索することってできないのかなあ。「太和殿」とか「天安門」というキーワードで。こうした使い勝手の点では、まだまだ博物館のデジタルアーカイブは、図書館のデータベースに一歩を譲る感じがする。
(2)演題:「小川一真と近畿宝物調査について」/講師:江戸東京博物館学芸員 岡塚章子氏
岡塚章子氏の講演では、写真家・小川一真の人となりを、あらためて知ることができた。小川は、アメリカで写真術のほかに印刷術も学んできており、彼の開いた写真館玉潤館は、当時の総合的なメディアラボだったと考えられる、ということや、写真師で帝室技芸員に選ばれたのは、後にも先にも彼ひとりであるとか。自ら恃む性格だったんだろうなあ、晩年は、東京写真師組合を除名されるなど、もめごとが多くて、あまり幸せではなかったみたいである。
上記、それぞれ20分ほどの短い講演のあと、東京都写真美術館専門調査員の金子隆一氏を司会に、三者による鼎談。ここで、W.K.バルトンというお雇い外国人の名前を初めて聞いた。土木工学・衛生工学の貢献に加えて、日本写真会創設に尽力するなど、写真界にも大きな足跡を残した人物であるらしい。明治26年(1893)には「外国写真画展覧会」を開催し、記録写真でない、芸術写真の観念も日本に紹介しているとか。台湾にも渡っているのね。
会場から講師への質問に「古写真の保存でいちばん気を使うことは?」というのがあり、当然、温度・湿度・暗さ、みたいな答えになるのだろうと思っていたら、金子氏が「それは、第一に捨てないことです。保存していこうと考えることです」とおっしゃったのは印象的だった。確かに。温度や湿度は、そのあとの話。
東博には、しょっちゅう通っているのに、月例講演会を聴くのは初めてである。こんな地味なテーマで大講堂が埋まるのかな、と思ったら、それなりに人が入っていた。この講演会は、本館16室(歴史資料)で開催中の特集陳列『古写真-小川一真と近畿宝物調査-』(2009年7月28日~2009年8月16日)の関連企画である。同室が古写真を取り上げるのは、これが3度目とのこと。過去2回は、以下のことらしい。
・『古写真-記録と記憶-』(2007年6月5日~2006年7月1日)
・『古写真-古美術の記録-』(2008年7月8日~2008年8月3日)
(1)演題:「東京国立博物館収蔵の古写真について」/講師:東京国立博物館書跡・歴史室長 冨坂賢
はじめに冨坂賢氏から、東博は、焼付け(プリント)2万~4万点、ガラス原版5万~10万点を保管しているという話があった。あんまり幅がありすぎるようだが、はっきり言えば「全貌は不明」なのだそうだ。現在のところ、銀板写真、湿板ガラス写真、乾板ガラス写真までを「古写真」と呼んでいるが、これだけデジタルカメラが普及してくると、まもなくフィルムも「古写真」の範疇に入るのではないか、というお話に、驚きながら納得した。
東博では、平成8年から所蔵古写真の調査を開始し、その成果の一部を画像データベースとして公開している。ご存知でした? 東博のTOPページの右下にある「東京国立博物館情報アーカイブ」をクリック→左列メニューの「研究成果/データベース」をクリック→データベース一覧より「東京国立博物館所蔵 古写真WEBデータベース」をクリック→同データベースの概要表示・URLをクリック→やっと「古写真データベース」にたどり着く。データベース自体は、とても丁寧に作られていて、古写真の台紙の裏面を必ず撮影している点は、さすがモノを扱い慣れた博物館の気配り、と思って、私は感心した。でも、リンクが深いなあ…。しかも、これかな?と思って「画像を探す」をクリックすると、全く違うデータベースに接続してしまうみたいである。分かりにくい。
それから、この「古写真データベース」には、小川一真が、明治34年(1901)北京で撮影した写真(伊東忠太の調査に同行)が収められていて興味深いのだが、これを、たとえば東京大学東洋文化研究所の「山本讃七郎写真ガラス乾板データベース」などと、横断検索することってできないのかなあ。「太和殿」とか「天安門」というキーワードで。こうした使い勝手の点では、まだまだ博物館のデジタルアーカイブは、図書館のデータベースに一歩を譲る感じがする。
(2)演題:「小川一真と近畿宝物調査について」/講師:江戸東京博物館学芸員 岡塚章子氏
岡塚章子氏の講演では、写真家・小川一真の人となりを、あらためて知ることができた。小川は、アメリカで写真術のほかに印刷術も学んできており、彼の開いた写真館玉潤館は、当時の総合的なメディアラボだったと考えられる、ということや、写真師で帝室技芸員に選ばれたのは、後にも先にも彼ひとりであるとか。自ら恃む性格だったんだろうなあ、晩年は、東京写真師組合を除名されるなど、もめごとが多くて、あまり幸せではなかったみたいである。
上記、それぞれ20分ほどの短い講演のあと、東京都写真美術館専門調査員の金子隆一氏を司会に、三者による鼎談。ここで、W.K.バルトンというお雇い外国人の名前を初めて聞いた。土木工学・衛生工学の貢献に加えて、日本写真会創設に尽力するなど、写真界にも大きな足跡を残した人物であるらしい。明治26年(1893)には「外国写真画展覧会」を開催し、記録写真でない、芸術写真の観念も日本に紹介しているとか。台湾にも渡っているのね。
会場から講師への質問に「古写真の保存でいちばん気を使うことは?」というのがあり、当然、温度・湿度・暗さ、みたいな答えになるのだろうと思っていたら、金子氏が「それは、第一に捨てないことです。保存していこうと考えることです」とおっしゃったのは印象的だった。確かに。温度や湿度は、そのあとの話。