付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★異世界/過去にスリップする方法

2015-07-14 | ランキング・カテゴリー
☆実験の失敗で……
 「火星の戦士」 マイクル・ムアコック(1981)
 「ドラゴンになった青年」 ゴードン・R・ディクスン(1976)

☆部下に殴られたら……
 「アーサー王宮廷のヤンキー」マーク・トウェイン(1889)

☆扉を抜けたら異世界だった……
 「ナルニア国物語」 C・S・ルイス(1950)
 「ゲート」 柳内たくみ(2010)

☆鏡の向こうが異世界だった……
 「鏡の国のアリス」 ルイス・キャロル(1871)
 「ネトオク男の楽しい異世界貿易」 星崎崑(2013)

☆雷に打たれた……
 「闇よ落ちるなかれ」L・スプレイグ・ディ・キャンプ(1939)

☆通りすがりに平行時間警察の事故に巻き込まれて……
 「異世界の帝王」 H・ビーム・パイパー(1965)

☆洞窟で死にかけてたら幽体離脱……
 「火星のプリンセス」 エドガー・ライス・バローズ(1917)

☆漁船から転落したら……
 「異世界から帰ったら江戸なのである(弐)」 左高例(2014)

☆宇宙船に連れ去られて……
 「ゴルの巨鳥戦士」 ジョン・ノーマン(1967)

☆寝て起きたら……
 「アーカディアの魔工学士」 八汰烏(2014)
 「BIG‐4」 大楽絢太(2011)

☆とにかく気がついたら異世界だった……
 「無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記」 杜間とまと(2014)
 「地方騎士ハンスの受難」 アマラ(2014)
 「ダークな乙女ゲーム世界で命を狙われてます」 夢月なぞる(2013)


 とりあえず「死んだら転生」「ゲームしてたら」「悪魔みたいに召還された」「神様に連れてかれた」系を除いてみたら、そんなに種類は多くなく、しかも「うたた寝してたら」「気がついたら」というのも多いので、理屈不要の異世界トリップなのです。
 ただ、それが非難されるほど安直かというと、そもそも異世界漂着譚というのは「船が遭難して」あたりから始まっていて、ヤンキーなんか殴られたら異世界だし、古典だって「穴に落ちたら」「タンスに潜り込んだら」で、そんなに異世界に飛ばされた過程を導入部で延々と綴ったものなんてないですよね。「時は未来……」「ある日目が覚めたら」くらいの前フリに過ぎないのです。
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私的年間ベスト2014

2014-12-30 | ランキング・カテゴリー
 こまめに読んだ本や見た映画のあらすじやら良いセリフを覚え書きとしてメモしてますが、確かに自分の役には立ってます。「あのセリフなんだっけ?」「これによく似たエピソードが出てくる話がなかったっけ?」などと気になって、インターネットで検索してみると、かなりの確率で自分の書いたメモにヒットします。自分では気になるようなことでも他人はどうでもいいことって多いんですよね。だから、他人に頼らず、備忘録は自分で作らないと……。
 それからもう1つ。内容やあらすじを忘れるどころか、読んだことすら忘れた作品もちらほら出てきて、自分のメモを確認して「あ、読んでたわ」と気づくことも出てきました。やだなあ。でも、メモをしているのでダブリは減りました……。
 さて、2014年ももう終わろうとしています。とりあえず、今年読んで面白かったものを10作品。

『異世界から帰ったら江戸なのである』  左高例
 現代日本から異世界に飛ばされ、傭兵稼業やらなにやらこなしているうちに歳も取り、やっと帰還できることになったのは95歳の時。ところがそのときには魔女や魔王とつるんで世界中から指名手配される身で、なんとか逃げ戻ったら江戸時代なのである。そんなウェブ小説発の物語。
 享保の江戸の町で、はやらない蕎麦屋に居候しつつ、店の建て直しに奔走したり、道場破りをしてみたり、未亡人の妖怪絵師のヒモになったり……の時代小説風人情コメディ。蕎麦屋の父娘やら火盗改同心から魔女魔王まで絡んできても、とっちらかった雰囲気にならず、しっかりまとまっていて面白い作品です。

『ただし少女はレベル99』 汀こるもの
 見慣れないコスチュームを身につけて、ペット動物をお供にしていて、ステッキみたいなものを手に怪異と戦っているけれど、出屋敷市子は魔法少女でもプリキュアでもない。今は引退しているけれど、ちょっとコミュ障だけれど、かつては日本の地を脅威から守護していた、やんごとなき中学生少女であった……というオカルト・アクション。若干コメディ風味かな。
 連作短編集で、最後の作品がちょっとシュールというか、それまでこまめに顔を出していたクラスメイトの出番がほとんど無く、父親と妖怪がメインで話が進むのでオチと合わせて異色で、それに全体のイメージが引きずられてしまった感があります。

『VRMMOをカネの力で無双する』 鰤/牙
 バーチャルゲーム世界での冒険譚だけれど、戻ってこられないデスゲームではないやつです。イメージ的には『千の剣の舞う空に』が近かったけれど、こちらは「時間+努力」vs「才能+課金」な話。それでいて真っ当な青春バトルアクション。
 こういう話の場合、努力する者が正しく、お金で解決しようとするのはズルイとする話が多いですけれど、「お金は自分の才能の一部であり、だからそれをゲーム内で使って恥じることはない」という主人公の主張は清々しい正論です。自分の才覚で稼いだお金を趣味に使って何が悪い? 楽しみ方は人それぞれであって、否定するものではありませんです。

『東池袋ストレイキャッツ』 杉井光
 引きこもり少年が深夜のゴミ捨て場で拾ったギターには、死んだロックミュージシャンの霊が取り憑いていた!……と言うところから始まる、池袋界隈を舞台にした青春音楽小説の連作短編集。
 主人公がミュージシャンとしてやっていけるのか、そもそも高校を卒業できるのかどうかとか、いろいろあれやこれやをぶん投げて、あくまで東池袋のストリート・ミュージシャンの話に絞ってますので面白いけれど、主人公の未来はいろいろ不安です。そもそも引きこもりは解消したけれど、不登校は不登校のままだし、いろいろチャンスの女神の前髪はちらちらしてるけど、ちゃんと掴まえられるのかなあ。

『男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。』 
 男子高校生で売れっ子ライトノベル作家の主人公が、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められて意識を失うまでの走馬燈のような回想を通じて、いかに文章を書き始め、ストーリーやキャラクターを考え、賞に応募し、採用され、作品を書き続けていくかを描いたもの。その後の話も少しずつ語られていきますが、つまるところ衝動的に人の首を絞めて殺しかける少女も、それを甘んじて受け入れてしまう少年も同じように歪んでいて、自覚がない分、少年の方が重症です。

『約束の国』 カルロ・ゼン
 崩壊した共和国の大統領が万策尽きて自決した……と思ったら、20年前の士官学校時代に戻っていることに気づきます。まだ共産主義の連邦国家がかろうじて体裁を保っていますが、このままだと民族主義による対立が表面化して内戦となり、やがて分裂していくつもの民族主義国家が生まれてくるのでしょう。
 やり直しの機会を与えられた主人公は、まず自分の20年が誤りであったことを認めなければいけません。結局、連邦は崩壊してよりましな共和国を目指すのか、それとも薄氷を踏んで民族融和のお題目を掲げる連邦制を維持するのか、先の展開から目が離せません。

『八男って、それはないでしょう!』 Y.A
 ウェブ小説発で、異世界の下級貴族の八男として転生した商社マンの冒険譚。
 幸いにも桁外れの魔力は持っていたので、商社マン時代の経験を活かしつつ頭の固い父親や兄から隠れて自立のために力を付けていきます。
 ライトなファンタジーではあるけれど、トラブルの根幹はたいてい中世の封建的な社会システムにあるし、ヒロインたちも中世的なリアル思考で男女関係を割り切っているのも特色。

『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』 愛七ひろ
 ウェブ小説発で、異世界にゲームのスキルを身につけて転生したプログラマーの冒険譚。
 初っぱなに(デバッグでとりあえず取り付けたコマンドのせいで)大幅にスキルアップしてチート状態になったものの、まずは旅商人から地味に異世界ライフをスタートするつもりが、いきなり魔族の出現に巻き込まれ……。
 ウェブ版に大きく手を入れて、書籍版は助けられる人は助けて……という、波瀾万丈の冒険とゆるゆるな異世界ライフが上手いことミックスしてます。

『転生したらスライムだった件』 伏瀬
 ウェブ小説発で、異世界にスライムとして転生したゼネコン社員だった主人公の冒険譚。
 捕食による能力コピーのスキルで進化して、さまざまなモンスターを配下に収め、人間やドワーフの勢力とも友好状態となり、敵対してくる分からず屋の勢力は粉砕しながら、魔王同士の勢力争いに巻き込まれていきます。
 ぷるぷるぷる……ぼく、わるいスライムじゃないよ……のくだりに「ドラクエは偉大だ」という思いしきり。

『無職転生』 
 ウェブ小説発で、異世界の元冒険者家族の長男として転生した元ニートの冒険譚。
 前世は引きこもりだったので特別な知識はないけれど、親の葬式にも出ないでゲームとエロ動画三昧だった自分を反省し、幸いにも魔力はそれなりにあったので、今度は真面目に努力しようとするスタンス。
 いろいろ苦労して、やっと目処が付いたと思った途端に大狂わせのどんでん返しで次巻に続く……という波瀾万丈の展開。

 今年はウェブ発の作品をよく読むようになりました。ここ数年で実際に書店の専用棚が増え、新レーベルも増えましたし、一頃のようにとりあえずウェブで人気の作品をまとめて本にしました、何の手も加えていません、イラストも装丁もおざなりです……という質の悪いものは減りました。
 ちゃんと書籍化に合わせてウェブ連載時のものに加筆したり修正したりして、連載時の決まり台詞で重複している部分は削除し、語り足りない部分は加筆して本として読めるようにしたものが増えました。中身が丸っきり変わったものさえあります。装丁も、エンターブレインなどは1冊1冊内容に合わせた凝った装丁にしていて、しかもお値段は他社より安めとお得な出来映えです。
 そうなるとウェブで何万ビューというのは、そこらの新人賞以上に作品の質を保証するステイタスになります。
 確かに、転生か召喚か転位で現代日本の若者がファンタジー世界に行き、そこで日本ではあたりまえに手に入る知識や技能が武器となり、さらには魔法も人より使えたりして大活躍……というのが1つの類型になっていますが、それは時代小説だってミステリだって固有名詞を省いてあらすじだけ語れば似たようなものですし、その中でいろいろ語り口が変わるのを愉しむものではないでしょうか。
 でも、舞台をファンタジー世界にすることで、複数ヒロインを主人公が独り占めしてもなんの問題もなくなる……というのは偉大な発見だと思います。

 他に面白かったものを幾つかあげると、

『少女は鋼のコルセットを身に纏う』 ケイディ・クロス
 肉弾戦が得意な二重人格のメイドさんが青年富豪に拾われるのだけれど、彼は両親の財産と発明品を使って異能の仲間と協力して悪と戦っていた……という、X-MENとバットマンとファンタスティックフォーを足したようなアメコミ調スチームパンク。
 肉体を改造されてしまった悲しみとか、クールな美形悪役の恋のライバルっぷりとか、見所はいろいろ。

『ヒカルが地球にいたころ……』 野村美月
 これまでさんざんに泣かせて笑わせてもらった、死んでしまったプレイボーイの少年と、これまでガールフレンドどころか友達も懐いてくれるペットもいなかった少年との友情を軸にしたミステリも、全10巻できれいに完結。続く新シリーズ、吸血鬼になってしまった少年と巨乳長身の演劇少女の物語『吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる』も好調な滑り出しです。 

『ノーゲーム・ノーライフ』 榎宮祐
 引きこもってゲームだけに生きてきた兄妹が異世界の神に目を付けられ、生存競争から国家間戦争までがチェスやカードゲームなどのゲームの勝敗で決定され、またその結果が世界法則として強制力を持つ世界に召喚され、そこで絶対神に打ち勝つべくさまざまなゲームに挑んでいく……。
 発表されたのはちょい前だけれど、今年のアニメ化が見事だったので、こちらで記憶。

『Re:ゼロから始める異世界生活』 長月達平
 よくある……というか、昨今は新刊の2冊に1冊はそうじゃないかという「異世界転生」もの。ただし、よくある「ゲームのときのデータを引き継いでいるので能力値やスキルがすごい」とか「ストーリーはあらかじめ分かっているので対策が立てられる」という話ではなく、ただ「死んでも(いつの間にか)セーブされているところから復活する」という死に戻りだけが能力。
 だから何度も死ぬし、死ぬのは痛いし、せっかく親しくなった人が殺されるのは辛いし、自分は復活して記憶が残っていても相手の記憶はなくて人間関係も白紙に戻るので(主観では)さっきまで親しかった人に憎まれたり殺されたりすることもあり、それでも自分が関わった人にはみんな幸せになって欲しいとゼロからのリターンに果敢に挑む青年の物語。
 さんざん苦しい目に遭っているので、そろそろもうちょい成長して欲しい。


 このあたりかな。
 さあ、年越しの準備を始めましょうか。
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★不老不死

2014-10-31 | ランキング・カテゴリー
 不老不死テーマの作品をリストアップ。
 不老不死というと(『ポーの一族』みたいに)吸血鬼か超能力者というのが多いし、神か悪魔というのもけっこうあるので、そのあたりはほどほどにつま弾いて。

『メトセラの子ら』(1958) ロバート・A・ハインライン
 人類が19世紀から密かに進めていた不死の遺伝子を生み出す計画は成功していたが、管理社会の進展によって不死者の存在が暴かれると短命の人類との間に確執がおき、弾圧を逃れるため長命族は遙かな宇宙へと旅立っていく……という物語を、長命族の長老となるラザルス・ロングの視点で語ったもの。

『中継ステーション』(1963) クリフォード・シマック
 ウィスコンシン州の人里離れた山奥の農家に住む男は、密かにCIAの監視対象になっていた。ただの農夫にしか見えない男だが、彼は南北戦争にも参加していたのだ。既に100年以上が経過しているというのに、イノック・ウォーレスには全然老いというものが見えなかった……。

『わが名はコンラッド』(1965) ロジャー・ゼラズニイ
 3日間戦争によって荒廃した地球は放射能汚染によって生まれた怪物が跋扈する世界。その地球を訪問することになったベガ星人の富豪の案内役に選ばれたコンラッド・ノミコスは単なる中年男ではなく、地球と人類のために戦い続けていた不死者であった……というギリシア神話風SF。

『超人ロック』(1967-) 聖悠紀
 「超人ロック」と呼ばれる不死の超能力者の目を通して描かれる宇宙に進出した人類の、1000年以上の時代の物語。
 学生時代はこの作品が原作のカードゲームをひんぱんにプレイしていて、「重積ヴォルテックスっ!」「ラフノールの鏡!!」とか大騒ぎしていたけれど、まだシリーズが続いているというのは驚異。

『人魚の森』(1984-) 高橋留美子
 不老不死の妙薬と呼ばれる人魚の肉を食べてしまった若者・湧太と少女の遍歴の物語。
 日本の話で不老不死テーマだとたいてい八尾比丘尼が出てくるのだけれど、その代表的なマンガ。

『DADDYFACE』(2010-) 伊達将範
 年の差(がない)親子のトレジャーハンターもの。竹取の翁や八尾比丘尼やら不死者がちょこちょこ登場。

『死なない生徒殺人事件』(2010) 野崎まど
 その学園には死なない生徒がいるという学校の怪談があった。ところがその死なない生徒が殺されてしまい……。

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★ものづくりSF

2014-09-11 | ランキング・カテゴリー
 長男に「ものづくり系の本を貸して」と言われてのセレクト。
 どこまでが「ものづくり」か悩むけれど、単なる発明アイデアものとは一線は引きたいなと思うとなかなか難しいですね。少なくとも土木・機械工学系のネタは欲しいところで、天才科学者が実験室で新素材を発見した!とか、漂流者が生き残るために道具を考えついたみたいなものは外しておきましょう。

『第六大陸』 小川一水
 日本の建設メーカーがある財閥より新規受注を受けたのは、恒久的な月面施設だった。ノウハウどころか資材や人員を宇宙に上げる確たる手段のないままプロジェクトが始動する。

『富士学校まめたん研究分室』 芝村裕吏
 30過ぎた理系女史が小型のロボット戦車に挑む物語。
 既存の技術の延長で、現場のニーズを掘り起こし、政治的理解を得ながら、実用化を進めていくプロセスが物語の半分。残りの半分の半分がレディースコミック的恋愛ストーリーで、残り半分が近未来ポリティカルアクション。

『ほうかごのロケッティア』 大樹連司
 元覆面歌手の美少女やそのアイドルのストーカーになった挙げ句自滅した少年やら、離島の高校に吹き寄せられてきた高校生たちが手作りロケットで衛星軌道に到達させるまでの物語。

『妙なる技の乙女たち』 小川一水
 軌道エレベーターが運用されている近未来を舞台にした、働く女たちを主人公にした短編集。収録作のうち「天上のデザイナー」が宇宙服デザインを手がけた女性の物語。

『楽園の泉』 アーサー・C・クラーク
 赤道上に地球と宇宙空間を結ぶ宇宙エレベーターを建造しようとする科学者の物語……なんだけれど、純粋に「ものづくり」SFとするには技術的なトラブルとかよりも地権者との交渉であるとか、古代の王の挿話であるとか、ファーストコンタクトなどの印象の方が大きいので、テーマ的には「巨大建造物の建築」ではなく「神と人間の関係を見つめ直す」が本当なんだろうと思います。

『星ぼしに架ける橋』 チャールズ・シェフィールド
 こちらも軌道エレベータの建設ストーリー。サスペンスSFの色は濃いけれど、資源調達や建設機材などのアイデアが印象的で、『楽園の泉』よりもものづくり系と言えるんじゃないでしょうか。

『創世記機械』 J・P・ホーガン
 戦時色が強くなる中、アメリカ合衆国所属の技術官僚が画期的な理論を見つけ出すも研究所から放逐。独自に民官で理論を実現化すべく開発を進めていくが、それに実用段階の目処がついたタイミングで、政府が圧力をかけて研究成果を取り上げようとし始めた。東西冷戦に終止符を打つ最終兵器として利用するためだった……。

『遙かなる星』 佐藤大輔
 キューバ危機から核戦争が発生したもう1つの世界。その中で日本人は懸命に宇宙を目指す。ロマンチシズムだとか国威高揚などではない。生き延びるための生存権を確保するためだ。それはさながら土木工事であり、公共事業となっていく。

『ふわふわの泉』 野尻抱介
 根っから理系の女子高生が学園祭準備の実験から夢の新素材を発明。それを利用した新製品を次々に発表し、やがてそれが社会そのものを変革しようとしていく……という、1つのアイデアがどこまで広がっていくか、とことん突き詰めていく理系少女SF。

 あとは『さよならジュピター』も、このカテゴリに含めても良いかなと迷ってます。
コメント (2)
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★行方不明&記憶喪失

2014-09-05 | ランキング・カテゴリー
 物語のメインキャラクターがいきなり災害や戦火の中で行方不明となり、その後記憶喪失の状態で再登場。他の登場人物は単なるそっくりさんか本人なのか疑心暗鬼で右往左往……というのも物語パターンの1つです。
 単に死んだと思われていた人物が漂白の末に復活してくるというと『巌窟王』とか『オデュッセウス』とか『椿説弓張月』とか貴種流離譚のバリエーションですし、『ブレンパワード』のマコーミック艦長とかは記憶を失ったわけではなくおかしくなっただけなので、こちらはもっと狭い範囲の話です。


光明寺伝
 石ノ森章太郎原作の特撮番組およびコミック『人造人間キカイダー』に登場する、キカイダーの生みの親である光明寺博士。悪のロボット軍団「ダーク」から脱出する際に記憶を失い、以後日本各地を放浪するのを彼の子供たちが探し求めることになる。その後、その脳が敵の人造人間ハカイダーに移植される。(1972~1973)

伊集院忍
 大和和紀のコミック『はいからさんが通る』の主人公・紅緒の許婚。陸軍歩兵少尉としてシベリア出兵して戦死の知らせが届く。後に記憶を失い、亡命ロシア貴族のサーシャ・ミハイロフ侯爵として再登場。(1975~1977)

相良良晴
 春日みかげの小説『織田信奈の野望』の主人公。大阪本猫寺合戦の際にて生死不明となり、全国版にて記憶喪失となって敵方の毛利陣営で将となっていることが露見する。(2014)

 もっといたはず。
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★雑居もの

2014-08-13 | ランキング・カテゴリー
 アパート、寮、下宿など1軒の家屋に同居する登場人物たちの人間模様を描いたもの。
 一つ屋根の下に複数の男女が寝起きすることから起きる、恋愛沙汰も含めたドタバタが雑居もので、その登場人物のほとんどが1人の主人公に恋するようになると細分化されて「ハーレムもの」となると思うのだけれど、ここでは『涼宮ハルヒの憂鬱』などのように、学校や職場で周囲の異性がほとんどすべて主人公に好意を寄せるという構造の作品はハーレムものに含めません。ハーレムは後宮の意味で、一緒に住んでいるのが前提だと思うので。
 もちろん同居人が2人だけなら、単なる同居ものか同棲ものになります。

『おひかえあそばせ』 ユニオン映画(1971)
 男やもめが5人娘と一軒家に引っ越してみれば、むさ苦しいカメラマンの男が居候で居着くことになり……という、日本テレビ系のホームコメディ。

『雑居時代』 ユニオン映画(1973~1974)
 男やもめが5人娘と一軒家に引っ越してみれば、むさ苦しいカメラマンの男が居候で居着くことになり……という、『おひかえあそばせ』のセルフリメイク作品。

『エイリアン通り』 成田美名子(1980~1984)
 フランスからの留学生ジェラールが同居することになったのは、謎の美少年シャールの豪邸。そこに住んでいるのは、イギリス出身の執事、日本出身の少女……という成田美名子の出世作となった少女マンガ。

『陽あたり良好』 あだち充 (1980~1981)
 下宿「ひだまり」に住む明条高校の学生を中心にした、野球部の甲子園出場と恋の行く末を描いた少女マンガ。実写ドラマとアニメ版あり。

『めぞん一刻』 高橋留美子(1980~1987)
 おんぼろアパート「一刻館」に新しく管理人としてやって来たのは、まだ若い未亡人の音無響子。世渡り下手な浪人生の五代裕作と響子の仲は、五代の優柔不断さと、響子の意地と、周囲を取り巻く常識はずれの住人の横やりもあってなかなか進まない……というラブストーリー。

『雑居時代』 氷室冴子(1982)
 知り合いの教授の留守邸を預かることになった女子高生。ところがそこに同じ学校の生徒と浪人生の2人の男が押しかけてきて同居することに……という氷室冴子の出世作の少女小説。

『前略・ミルクハウス』 川原由美子(1983~1986)
 大学には合格した芹香だが部屋探しには出遅れ。途方に暮れているところを和服姿の女性・涼音に自分がいとこと住んでいる洋館に下宿したらと勧められる。ところが涼音は女装男子でなし崩しに女1人に男2人の生活が始まり、さらに教授父子も同居することになり……という少女マンガ。1987年にフジテレビ系でドラマ化。

『ああっ女神さまっ』 藤島康介(1988~2014)
 工大生の森里螢一は、間違い電話で現れた女神ベルダンディーに「たった一つだけ」願いを叶えると言われ、思わず「君のような女神に、ずっとそばにいてほしい」と言ってしまったことから同居することに。さらに2人の同居生活に干渉しようとベルダンディーの姉妹も押しかけてきて……というマンガ。後に小説、テレビ、OVA化。

『真夏の夜のユキオンナ』 大山玲(1989~1992)
 霊能者の家系に生まれたながら霊的不感症の百拝晴明は、体質改善のために無理矢理に強力な霊を憑けられる。それは齢ン百年というユキオンナで、晴明の周りには使い魔となった化け猫やら月齢で性転換する同ゼミ生など一癖も二癖もある連中が集まって、若干不本意ながら、自堕落な愛欲の日々が始まった……という青年マンガ。

『天地無用!』 AIC(1992~)
 高校生の柾木天地はある日、神社に鬼として封印されていた美少女宇宙海賊を復活させてしまうが、それを皮切りに地球には宇宙から美女美少女たちが来訪することになり、彼女らはことごとく柾木家に同居することになる……というOVAから始まり、小説、テレビ、コミックとマルチ展開。ハーレムものの先駆け。

『ラブひな』 赤松健(1998~2001)
 女子寮「ひなた荘」の管理人となった浪人生の少年が、住人の美少女と繰り広げるラブコメディ。後にアニメ化。ハーレムものの代表作。

『這いよれ! ニャル子さん』 逢空万太(2009~2014)
 高校生の八坂真尋は宇宙人受けする顔なために宇宙人に狙われるようになったので、彼を守るために惑星保護機構から来たニャルラトホテプ星人のエージェントが同居することに。さらにクトゥグア星人やハスター星人も同居することになり……というハイテンション混沌コメディ。

『ROOM NO.1301』 新井輝(2003~2009)
 高校1年生の絹川健一は、12階建てマンションの存在しないはずの13階の鍵を手に入れたことから、その1303号室の住人となる。そこにも同じように不思議な鍵を手に入れた、そしてそれぞれに問題を抱えた若者たちが住み着いていて……という、やりたい盛りの高校生男子が主人公の、少し不思議な「見敵必戦」青春小説。

『彼女がフラグをおられたら』 竹井10日(2011~2014)
 旗立颯太は他人との会話や行動を選択した結果をフラグの形で実際に視ることができる。そんな彼が入居することになったのはオンボロのクエスト寮だったが、それは気の毒だとみんなで改装してぴかぴかの新品同様に。そしてそのまま彼を慕う少女たちも住み込んでしまうのだが……という学園コメディー。

『New Girl~ダサカワ女子と三銃士』 20世紀フォックステレビジョン(2011~)
 同棲していた彼の浮気現場に遭遇した主人公のジェスは即座に引っ越しを決意。ところがルームシェアの相手は初対面の独身男性3人で……というアメリカの人気ホームコメディ。

『さくら荘のペットな彼女』 鴨志田一(2010~2014)
 高校生の神田空太は捨て猫を拾ったことからぺット禁止の新しい寮から悪名高い「さくら荘」へ転寮することになる。ここは問題児ばかり追いやられる寮で、編入してきた椎名ましろも世界的天才画家ながら常識知らずで下着も自分で履けないありさまだった……という青春学園ラブコメ。

『僕らはみんな河合荘』 宮原るり(2010-)
 親の転勤で念願の一人暮らしを始めることになった高校1年男子・宇佐は、今時珍しいまかない付きの下宿「河合荘」に住むことになったのだが、住んでいるのはいずれもクセのある住人で……。アニメ化もされた、最近では珍しい気がするハーレム系では無い雑居もの。

『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』 七月隆文(2011~)
 神楽坂公人が拉致同然に連れてこられたのは、グーグルマップにも載っていない山奥の清華院女学校。外の世界に出たこともなければ父親以外の男を観たこともないお嬢さまたちが異性と世間に免疫をつけるため、「庶民のサンプル」として公人が選ばれたのだった……という学園コメディ。

『デート・ア・ライブ』 橘公司(2012~)
 精霊と呼ばれる超存在は美少女の姿形をしているが、その力が暴走すれば都市1つ、大陸1つを吹き飛ばすこともできるし、戦って倒すことも容易ではない。そこで精霊をなんとかナンパしてデートしてデレさせ、主人公とキスさせることで力を封印しようというのだが、その結果、五河士道は何人もの少女たちと同居するはめに陥った……というナンパ小説……かな。

『欠陥妖怪住宅』 はむばね(2013)
 堀生灯がついうっかり海岸で見つけてしまったのは、海で溺れた人魚のミィ。ちゃっかりイクトのマンションに押しかけてきて居候。さらには育ちすぎた座敷童やらなんやらダメダメ妖怪たちと同居する羽目に……というハートウォーミングなコメディ。

『七人ミサキも恋をする』 丸山英人(2013)
 高校生の臼谷息吹は両親の転勤で一人暮らし。それが今日から7人の美少女と同居生活! だがハーレムでキャッキャウフフというわけにはいかなかった。7人の少女たちは悪霊集団「七人ミサキ」だったのだ……というホラーコメディ小説。

 『チャーチル閣下の秘書』とか『(株)魔法製作所』とか、海外のドラマや小説などでは主人公がマンションや一軒家を何人かとシェアして住み込む「ルームシェア」は当たり前に出てきます。ただ、いざそれがメインの話となるとなかなか思いつきません。ぼおっと考えていたら、『幽霊城のドボチョン一家』まで遡ってしまいました、さすがにアレはちょっと違うんじゃ……。
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★メインキャラが死者

2014-06-02 | ランキング・カテゴリー
 主人公なりメインのキャラクターが幽霊だとか死人だという話は、結末の持って行きようが難しいと思います。
 不老不死の超人とか吸血鬼が主人公でもいい加減に辛気くさくなりかねないのに、もともと普通の人間が死んでしまって、それでも成仏できなくて……という話は、最大限ハッピーエンドになったところでメインキャラクターがこの世から完全に消えてしまって終わりになるので、なかなか爽快な結末にはなりません。ラブストーリーでもまず結ばれることがないものね。死者と生者が結ばれて幸せな結婚生活に至るのはザンスくらいかな?
 ダンテの『神曲』とかニーブン&パーネルの『インフェルノ』あたりだと、死後の世界からスタートするので、またちょっと違いますよね。

 とりあえず気になったときの覚え書きと言うことで、実は登場人物は幽霊でした!というネタバレになるものを避けて、生者と死者の物語を幾つかピックアップしていきます。

『ボーナス・トラック』 越谷オサム
 ひき逃げされて幽霊になってしまった大学生と、その幽霊に取り憑かれたハンバーガーショップの社員がひき逃げ犯を追い詰めるバディ小説。犯人を見つけたら成仏できるのか……という話。

『ヒカルが地球にいたころ……』 野村美月
 川でおぼれ死んだプレイボーイの幽霊に取り憑かれた高校生が、心残りとなった最愛の女性たちとの約束を代理で果たしていく学園ミステリ。
 きれいに昇華して大団円。

『七人ミサキも恋をする』 丸山英人
 美少女7人の幽霊7人と同居することになった高校生の、ぬくぬくと現状維持のハーレム展開は誰のためにもならないよと警告されつつ、成仏させられるか、取り憑かれて殺されるか……という同居物語。

『霊能者は女子高生!』 メグ・キャボット
 引っ越しした先の屋敷に着いている美形の幽霊と喧嘩したり助けられたりしながら怪事件を解決していく、拳で除霊する女子高生スザンナの物語。主人公が頑固者の脳キン娘なので、湿っぽくなる要素は今のところありません。進展もありませんが。

『ウィッシュリスト』 オーエン・コルファー
 悪いことばかりしていた少女が、死ぬ直前に唯一おこなった善行によって生前の功罪のバランスがとれてしまい、天国にも地獄にも行けなくなって……という、老人と幽霊少女の道中記。無事に天国に行けるまでの試練と、それを妨害しようとする悪魔との戦い。

『これはゾンビですか?』 木村心一
 いきなり連続殺人事件に巻き込まれて殺されてしまった少年が、ゾンビとして蘇らされ、さらには魔法少女に任命されてしまうドタバタコメディ。ここまで振り切ってしまえば、主人公の生き死になんか関係ありません。主人公は死んでいますが、それがどうしましたか?という感じ。

『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』 藤まる
 目の前で死んでしまった少女を救いたいと願ったばかりに、1つの身体を2人で使うことになり、1日おきに前の日の自分(に取り憑いた少女)が、どんなとんでもないことをしでかしたか後始末に奔走することになる高校生の物語。奇妙な同居ものの変形として面白く読めたけれど、最後の最後で話を終わらない方向へ投げた感じあり。

 だいたい幽霊話の結末というのは、
1.成仏する
2.転生する
3.どちらつかずで終わらない
4.実は死んでいなかった(生き霊パターン)
5.新しい肉体に乗り移って実体化する

のパターン。

 ファンタジー系の少女マンガだと、幽霊の男性が究極の“憧れの存在”として末永く見守るパターンもありで、これが3のバリエーション。 道原かつみのホラーマンガ『空白の悲鳴』なんかは5のバリエーションで歪んだハッピーエンド。

 いろいろあるよね。これがうまくスコーンッとツボにはまると、すごく感動しちゃうけど、外すと一気に冷めちゃうんだよね。
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★ロボット戦車

2013-11-30 | ランキング・カテゴリー
 このカテゴリーをどこまで広げるかについては、またちょっと悩むところです。
 無人の機械が暴走するというと、有名どころでは映画にもなったスタージョンの『殺人ブルドーザー』(「千の脚を持つ男」収録)あたりが入っても良さそうなのだけれど、そこまで入れてしまうと「本来、自らの力では動かないはずの機械が動き出す作品」という定義になってしまって、そうすると付喪まで含まれてしまうので脳内会議で却下。
 そこでぐっと数は減るけれど、純粋に「人工知能が動かす戦車」の話に絞ってリストにしてみました。

★アニメ
 『テクノポリス21C』 東宝系(1982)
 2001年、新型空挺戦車テムジンの自動プログラムが暴走し、科学都市センチネルシティの市街地に突入。人間の刑事と人型ロボットのバディがそれを食い止めようとするのだが……。
 スタジオぬえがメカデザインや設定の中心となったSFアニメ映画で、早朝からわくわくして映画館へ向かったけれど、内容はテレビスペシャル程度の出来。

 『機動警察パトレイバー the Movie』 ヘッドギア(1989)
 新型OSにコンピュータウィルスが仕込まれており、映画冒頭から無人の多脚戦車が暴走する。

★ゲーム
 『オーガ』 SJG(1977)
 コンピューターが狂った超巨大戦車オーガを、戦車群やらミサイルやら多種多数の兵器を用いて迎撃するシミュレーション・ボードゲーム。ゴジラに挑む自衛隊……というより、拳王やケンシロウに挑む有象無象の気分が味わえます。現物は見たことが無いけれど、バージョンアップ版やコンピュータゲーム版もあるそうです。

 『メタルマックス』 データイースト(1991)
 荒廃した近未来を舞台に、荒野に出没するロボット戦車や遺伝子操作による怪物を戦車に乗って倒すというRPG。ロールプレイングゲームといえばファンタジー一色だった時代に、無人戦車相手の西部劇という独特の世界観が評判に。1995年にはリメイクされているし、2013年にはネット配信されるなど、息の長いゲーム。

★コミック
 『攻殻機動隊』 士郎正宗(1989)
 科学技術が飛躍的に高度化した日本を舞台にしたサイバーパンクSFポリスアクション。これに登場するフチコマ(斑駒)は、短砲身とマニピュレイターを搭載した思考する小型多脚戦車。主人公たち公安9課のサポート役として数体が配備され、それぞれに自我があり個性が見いだせます。他にもタチコマとか、サポート役で活躍してます。

★小説
 『富士学校まめたん研究分室』 芝村裕吏(1989)
 たぶん、今いちばん新しいロボット戦車です。
 たてよこ1mの丸いボディに脚6本の豆タンクで人工知能搭載。歩兵の補助や戦車の随伴などが主な用途として開発され、使用する装備は歩兵装備の流用ながら機械ならではの正確さと情報処理能力でなかなか危険。見た目や動きはかわいいけれど、戦いとなったら本当に機械的に動いていくのがちょっと怖いところではあります。本当に自動戦闘機械です。コワカワイイ?


 『無敵鋼人ダイターン3』の第11話に登場した究極戦車ニーベルゲンもそうじゃなかったっけかと思いましたが、あれはオーガ並ではありましたが無人ではなかったですね(後でラジコンにはされましたが)。完全無人なのは、コンピューター戦艦マゼランでありました。
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★歴史上の有名人・偉人の冒険譚

2013-10-24 | ランキング・カテゴリー
 『リーグ・オブ・レジェンド』のような架空のヒーローの競演ではなく、歴史上の人物や偉人が(おそらくは史実の本人はしていないだろう)冒険のメインキャラクターとなっている作品の一覧。
 SF小説とミステリがメインで、架空戦記はジャンルまるごと省きますし、『忠臣蔵』のように史実を脚色した文芸作品も別としますが、山田風太郎の忍法帖とか存在そのものが伝説化している柳生十兵衛はどうしよう……。

★知られざる逸話
 偉人として知られている人物が、その有名になった事柄以外でも才能を発揮していた……というタイプの話で、歴史ミステリに多いかな。

『名探偵群像』シオドー・マシスン(1960)
 歴史上の有名人が生涯に一度だけ名探偵として活躍した……というエピソードを集めた短編集で、この手の本で初めて読んだもの。
 アレクサンダー大王、レオナルド・ダ・ヴィンチ、フローレンス・ナイチンゲール、ジェームズ・クック、デイヴィッド・リヴィングストン等々11名の探偵譚です。

『シートン(探偵)動物記』柳広司(2009)
 今はどうだか知らないけれど、自分が小学生の頃は「シートン動物記」は図書館や児童文学の定番で、好き嫌いに関係なくよく目にしたものだけれど、これはそのアーネスト・シートンが新聞記者のインタビューに応えて、知られざるエピソードとして、動物にまつわる探偵話をしていく連作短編集。本編を補完するような狼王ロボのエピソードも良いけれど、「本当は怖い」リスのバナーというのも面白いかと。

『神秘結社アルカーヌム』トマス・ウィーラー(2004)
 ウィンストン・チャーチルから怪事件の調査依頼を受けたコナン・ドイル卿が、怪奇作家H・P・ラヴクラフトや呪術師マリー・ラヴォー、脱出王フーディーニらと怪物に立ち向かうオカルト・アクション。老ドイルの旅立ちのシーンは泣けます。

『火星人類の逆襲』横田順彌(1988)
 英国襲撃から13年後、今度は日本に襲来した火星人類をバンカラ集団天狗倶楽部の武侠作家・押川春浪、帝国陸軍の白瀬中尉や乃木大将らが迎え撃つ。

★偉人が転生したりクローニングされたり
『リバーワールド』フィリップ・ホセ・ファーマー(1971)
 ネアンデルタール人の時代からから21世紀まで、360億人が死後に復活した世界での冒険譚。
 探険家リチャード・バートン、アリス・リデル、作家サミュエル・クレメンズ、文豪シラノ・ド・ベルジュラック、国家元帥ヘルマン・ゲーリングなどが登場。

『スペースオペラ大戦争』豊田有恒(1978)
 異星人の襲来に闘争本能を失った未来の地球人は壊滅寸前。そこでタイムマシンで過去の世界から死亡直後の戦争名人をかき集め、異星人の艦隊に立ち向かわせるという戦争活劇。彼我の国力の差を考えるにここは短期決戦しか無いと山本五十六が奇襲攻撃を提案、ロンメルが電撃戦を指揮して、要となる要塞にはテルモピュレからアラモまでの経験者が寄せ集められ……という平野耕太の『ドリフターズ』か青池保子の『イブの息子たち』かというスペースオペラ。

『R.O.D -READ OR DIE-』監督:舛成孝二(2001)
 何者かによりクローンとして特殊能力を身につけて復活した平賀源内、オットー・リリエンタール、ジャン・ヘンリー=ファーブルら偉人軍団と戦う、大英図書館のエージェントの戦い。
 すごく面白いけれど、OVAは尻つぼみ感が否めないし、小説版は2013年時点で(再開の噂は常にあれど)未完。

★パラレルワールドもの
 実際の歴史と似ていたけれど、どこかで違ってしまった世界での偉人たちの活躍。

『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン()
 ドラキュラ伯爵がヴァン・ヘルシング教授を返り討ちにしたところから始まる歴史絵巻。虚実取り混ぜた著名人が有象無象のように登場。

『屍者の帝国』伊藤計劃×円城塔(2012)
 医学生だったジョン・H・ワトスンは、ヴァン・ヘルシング博士の推挙により英国政府機関の秘密諜報員としてアフガニスタンへ赴くこととなった

『天のさだめを誰が知る』D・R・ベンセン(1978)
 1908年地上に漂着した異星人の調査隊は、エジソンらと接触し地球の国際情勢を把握するや、イギリス国王エドワードやドイツ皇帝ウィルヘルムを煽って世界大戦を引き起こそうとするが……。

★殿堂入り
 ・柳生但馬守
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★行きて帰りし物語

2013-08-05 | ランキング・カテゴリー
 物語の類型の1つで、典型的なファンタジーのパターン。
 現実世界で生きてきた登場人物が、ふとしたことから異世界に紛れ込んでしまうことによる物語で、『ネバーエンディング・ストーリー』のように現実世界から逃避することで逆に現実世界に立ち向かう力を手に入れる物語……という側面もありますが、ここでは「いつ帰ってこられるのか、帰る気があるのかどうかわからない」とか「異世界に転生してしまった」ものも便宜上含んでみたりしました。
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★エブリデイ・マジック

2013-08-05 | ランキング・カテゴリー
 物語の類型のひとつで、現実世界の日常的な物語に不思議な事件が起きたり不思議な人物が登場したりする形態の話。ロー・ファンタジーとかなり重なると思うし、ほとんど同じと考えても支障はないはずです。
 ただ広げすぎるとミステリーや一般文芸の多くもここに含まれてきたりするので要注意(つまり深く考えてはいけない)。
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★俺TUEEE

2013-08-03 | ランキング・カテゴリー
 平凡な主人公が突然手に入れた最強の力で努力家も天才もあっさり追い抜いていくって話というのは、なんとなくウェブ小説かライトノベルの十八番みたいに言われがちだけれど、特にそんなこともなく、これに「本人も知らなかった血筋のせい」とかを含めると、ざらな話になるなあという説。努力とか訓練とか修行とか勉強とか関係なく、なんとなくタナボタで無敵状態という話でも、それを安易に見せるか見せないかは作者の腕次第ということですね。

『ガリバー旅行記』(1726)
 船医が漂流してたどり着いた小人の国で巨人扱いされ、敵国の海軍を一網打尽に。周りが弱いので、比較して強くなった
 原題の『船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』というのもチェックしておきたい。

『火星のプリンセス』(1912)
 アメリカの元南軍大尉ジョン・カーターは火星に瞬間移動してしまうが、地球より重力が小さいことから跳躍力など驚異的な身体能力を手に入れて大暴れ。強力譚。

『ハリー・ポッターと賢者の石』(1997)
 両親のいないハリーは不遇な生活だったが、ある日、両親が偉大な魔法使いであったことを知らされ、自身も魔法の力を手に入れる。血筋ですごい力をいきなり発揮する、貴種流離譚の亜流。
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★しゃべる武器

2013-07-12 | ランキング・カテゴリー
 所持者と会話する武器を挙げてみようと思った。

 アニメ『蒼き流星SPTレイズナー』で主役兵器に搭載されたコンピューター・インターフェース「レイ」は確かに搭乗者と会話しているけれど、あくまで音声対応のOSであってAIとは違います。それをいうならゲーム『絢爛舞踏祭』の主役艦のメインコンピューター「MAKI」は完全にプログラム知類なんですが、携行武器とはちょっと違います。でかすぎるし。

 アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の携帯型心理診断鎮圧執行システム「ドミネーター」も、サイズはコンパクトながら音声対応インターフェイスみたいなもので、これもちと違う。

 イメージとしてはゲーム『Rance』の伝説の魔剣にして女好きな「カオス」。携行武器で、会話して、自我がある。こういう感じ。

 冲方丁の小説『マルドゥック・スクランブル』にも出てきます。金色のネズミ型の万能兵器「ウフコック・ペンティーノ」。質量保存とかオーバーテクノロジーを駆使して無視して、剣でも拳銃でも変形しちゃうし、なかなかナイーブ。

 マーセデス ラッキーの『ヴァルデマール年代記』に登場する魔法の剣「もとめ」は、もともと人間みたいなものだし、使用する人間に力を与えると同時に制約も与えるけれど、基本的に会話できないし。

 いろいろあると思ったのに、いざ数え始めるとぜんぜん出てこない。あれー?
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★男女逆転

2013-05-04 | ランキング・カテゴリー
 「男女逆転」といっても『おれがあいつであいつがおれで』のような男女の人格交換の話ではないし、19世紀末あたりからのユートピア文学には、男女の役割が逆転した話とか、性差のない世界を扱ったものがあったらしいけれど未読。このあたりは突き詰めるとシャーロット・ギルマンあたりからのフェミニズム思想も絡んで大きなテーマとなるので、ここでは割愛。単に人口における男性比率が極端に少なくなった世界の話がどれだけあるか気になっただけなんです。ごめんなさい。
 ジェイムズ・ティプトリーJr.の中編『ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?』は事故で遥か未来に飛ばされた宇宙飛行士たちが、細菌戦で男性が死滅した地球から来た宇宙船と遭遇する話ですが、こういう話がどれくらいあるか拾いたかっただけなんです。アマゾネス伝説のバリエーションかもしれませんが。

「ようこそ女たちの王国へ」 ウェン・スペンサー
 男女比が1:20の女権社会で、1人の美しくて勇気のある少年が幸せな結婚をするまでの、波瀾万丈の物語。

「大奥」 よしながふみ
 疫病で男女比が1:4となり、男の代わりを女性が務めるようになった日本での将軍家の年代記。

「スカーレット・ストーム~第二海軍物語」 中岡潤一郎
 ツングースでの大爆発以来、男女比が1:4となり(男子出生率21.75%)、女性の社会進出が進んだ世界での太平洋戦争史。


 こういうタイプの話はけっこうありそうなのに、まだあまりみつかっていません。
 志真元の「大和撫子紫電改」は女性の社会進出が進んでいる日本ですが、そもそも大震災や疫病により人口が激減したことが原因であり、人口比が極端に変わったせいではありません。
 春日みかげの「織田信奈の野望」も“姫武将”といった女性が誕生したのも長子相続という制度ゆえであって人口比は関係ありません。
 SFだといろいろありそうで、『スタートレック』シリーズだと、『まんが宇宙大作戦』に「女だけの星」、『ヴォイジャー』に「女たちの星」というエピソードがありますね。GA文庫で鯨晴久の『魔法世界は女ばかりで、俺がパパ!?』も魔女が存在していて男性がほとんどいない世界の話だそうですが、これは未読。
 さがせばありそうなので、気がついたときに追加していきたいと思います。
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★妖怪や幽霊を捜査する警察組織

2013-04-23 | ランキング・カテゴリー
 明かなファンタジー世界ではなく現代社会やよく似た歴史上の場所を舞台としているのに、妖怪や幽霊や魔法による事件が起きていて、その存在を公権力が認識していて対策する部署を設置しているものを思いつくまま。

「魔術師が多すぎる」 ランドル・ギャレット
 科学の代わりに魔術が発達したロンドンで起きた密室殺人を捜査するダーシー卿の事件簿。魔法ミステリの元祖的なパラレル・ワールドもの。

「妖獣都市」 菊池秀行
 普通の人は知らないけれど、人間界と魔界の共存を維持するため、魔界の過激派たちと人知れず戦い続けている闇ガードという組織があって……。

「S.P.A.T.!」 鷹野祐希
 誰もが幽霊を見ることができるようになった時代。幽霊専門の警視庁特務課に配属された新米婦警が、幽霊相手に聞き込みしたりする話。

「全裸男と柴犬男」 香月日輪
 普通の人は知らないけれど、オカルト専門の警視庁生活安全部遊撃捜査班という部署があって……。

「神のまにまに」
 ある日突然、八百万の神々が雲隠れしてしまった。この事態に対処するため政府は諮問機関を設置した……。

「妖怪アパートの幽雅な日常」 香月日輪
 ヴァチカンにはコングレッソ・ヴィエタートという奇跡狩りの部署があり、世界の霊的治安を担っているとか……。

「バッカーノ!」 成田良悟
 普通の人は知らないけれど、既に禁酒法の時代のアメリカではFBIが不老不死の魔術師たちの動向を監視していて……。

「レイセン」 林トモアキ
 普通の人は知らないけれど、日本にもオカルト事件に対処する組織が、陸上自衛隊・第40普通科連隊、警察庁特別資料室、宮内庁神霊班の3系統あって……。

「大魔王作戦」 ポール・アンダースン
 魔法や妖魔が普通に存在しているパラレルワールド。キリスト教圏の連合軍とサラセン教主軍の間に第二次大戦が起こるが、その裏では各国のスパイ組織による攻防も激化していた。

「かみあり」 染屋カイコ
 大阪から転校してきた少女は知らなかったけれど、神在月の出雲では、普通に神さまや悪魔や式神やらが跋扈していて……。

「英国パラソル奇譚」 ゲイル・キャリガー
 狼男や吸血鬼や普通に存在しているヴィクトリア朝ロンドン。異界管理局と関わり合うことになったオールド・ミスが……。

「憑き物おとします」 佐々木禎子
 誰もが幽霊を見ることができるようになった時代。霊障専門の保険会社とかもあって。

「オカルトリック」 大間九郎
 普通に超常現象による事件が起きているパラレルワールド。普通の警察には手に余るけれど専門部署が出張るほどは大規模な事件ではない……というときにお呼びのかかるオカルト探偵事務所の物語。

「となりにヴァンパイア」みたいに、人間は知らないけれど妖怪たちの世界にも警察みたいな組織はあって……というものまで含めると数が一気に増えそうなので、とりあえず除外。
 「ベン・トー」の心霊研究部は、もはやなんとなく闇ガードっぽくなってきましたが、まだ正体不明なので保留。6重結界を張って封印というあたり、部活って怖いなー。
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