付け焼き刃の覚え書き

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「白洲次郎 占領を背負った男」 北康利

2008-12-16 | 伝記・ノンフィクション
 葬式無用、戒名不要。

 どこまでが真実なのかわからなくなると著者をして言わしめた白洲次郎の生涯。
 ハードカバー版では買わなかったけれど、文庫落ちしたので上下巻で購入。
 上巻は誕生からイギリス留学、占領下日本で憲法起案や公職追放をめぐるGHQとの攻防まで。下巻は講和条約締結の裏舞台から日本経済再建を経て一周忌のエピソードまで。吉田茂の懐刀として活躍。表舞台に出ることを嫌ったことから、時にはラスプーチンとまで揶揄されたけれど、基本はやらなきゃいけないときにはやるべきことを徹底的にやり、やることが済んだらとっとと田舎へ隠遁するというイギリス仕込みの「紳士の哲学」の結果。
 日本の自立のためには経済再建を最優先しなくてはならず、それには国内産業の保護育成ではなく貿易だと信じた白洲次郎は、旧体制を根底からひっくり返して貿易庁の情実関係を一掃。そのまま貿易庁をぶっ潰して通商産業省を創設するだけすると、古いものなんか引きずらず新しいものを作れとばかり引き継ぎも許さずに身を引いてしまいます。
 226事件、開戦、敗戦、東京裁判、日本国憲法制定、サンフランシスコ講和条約と昭和日本史を振り返ってみると、歴史の授業で習ったときよりもすっと頭に入っていきます。これも誰よりも渦中にいながら最後まで第三者的な姿勢を崩さなかった白洲次郎の視点で見ているからでしょうね。

【白洲次郎】【占領を背負った男】【北康利】【吉田茂】【GHQ】【東北電力】
コメント
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