小田舎の書庫から出てきた、おだったさんの蔵書の１冊。ファンタジーやＳＦからライトノベルまで、あれほどの蔵書と読書量があり、没後も通販で書籍がばんばん届いて購読中止手続きに翻弄されるほどでありながら、意外にもウェブ小説の類は守備範囲外だった模様。
そんなダンボール300箱ほどの蔵書の中からたった１冊出てきたのが、この「コマツな」こと『攻撃魔術の使えない魔術師』。
トラックとの交通事故で死んだ大学生、大杉健太郎は気がつけば異世界で幼女になっていた。
彼が夢中でプレイしていたオンラインゲーム「グロリス・ワールド」によく似た世界に転生していたらしい。
前世では家族に恵まれず、養護施設で育った健太郎ことユリアにとって、今の両親との生活はまさに理想的な日々だったのだが……。
魔物の襲撃や戦争や政治抗争も特にないけれど、穏やかで牧歌的な日々が続く中で少女が出会う出来事や出逢いのひとつひとつが面白い物語。ある意味、異世界転生もの序盤のテンプレ通りの展開をじっくり描いて、いよいよこれから！……というところで、編集部とのゴタゴタで２巻以降の出版中止、ウェブ版の執筆も中止と哀しい結末に。
フェザー文庫はやたら細かいイラストがぎっしりなのが特色で、イラストレイターもすごく頑張っていただけに残念。そもそもフェザー文庫そのものが、ここ最近、年に１冊新刊が出るか出ないかの状況なので、いろんな意味で版元の力不足なんでしょうか。
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