「農業いうんは、人が、餓えんようにと考えた知恵の結晶だ。それを教えるんと決めたんに、簡単に白旗あげてたまるかいな」アズマ・キョウイチロウの言葉。
その世界では『草食』が卑しいものとされ、人々の食は狩りのみで支えられていた。
けれども、唯一の働き手である冒険者アレイが竜の呪いで殺生ができなくなり、モウノ村は静かに飢えつつあった。
だが、アレイは長老たちに告げた。竜の召喚珠の力で異世界より召喚されたアズマ・キョウイチロウなる男が『草食』に詳しい。彼の助けで草を食ってみてはどうかと……。
日帰り農業振興ファンタジー。
野菜や果物は食べるものではないとされている世界で、現代日本から召喚された男が営農指導していく物語で、今回はまだ「あれもこれも周囲には食べられるものがいっぱいあるし、調味料や料理法もいろいろあるよ」と啓蒙していくレベル。村の中でも「野菜や穀物は美味しいし、これも悪くない」ところまで来たけれど、村以外の者には知られたら爪弾きにされて弾圧されそうで、採取地あたりはそのまんま隠し田・隠し畑。
それに、そもそも何で聖典が禁じたんだろうという謎は謎のままなので、単にエライ人が嫌いだったとか独り占めしたかっただけとか意外にくだらない理由なのか、それとも太古に植物型異星人との取引があって…みたいに深遠な理由があるのか、今後の展開に期待。
そして最後は「いただきます」「ごちそうさま」で締めるのが日本人の作品。
英語だと“Let’s eat!” “I’m done!” みたいにあっさり行動宣言みたいになりがちですが、食材や調理してくれた人への感謝の言葉は美しいです。
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