
クラスごと異世界召喚され、他のクラスメイトがチートスキルを手に入れるのに主人公だけクズみたいなスキルや職業で、クラスメイトがスキルの強奪や女子が男子に襲われたりして分裂している間に主人公の職業やスキルが実はスゴく有望なことが判明し、いつの間にか最強になってハーレム状態。でも女性陣はみんな主人公に無理難題を言いつけてはすぐに暴力をふるう……という、ある意味、最近多いテンプレ作品なんだけれども、思うにこの作品って叙述トリック型ファンタジーなんです。
主人公の一人称語りや地の文では、いかにも主人公が棚ぼたで強くなって、なんか簡単に女性から好意を寄せられ、その女性陣はわがまま女としか読めないのだけれど、これが第三者視点になると全部ひっくり返るんです。主人公があえて語らない、言うまでも無いあたりまえのこととしてスルーしていることがどれだけ多く、どれだけとんでもないことなのか。すごい力を振るうには、それなりの代償は必要だし、女性からモテるには単に強い主人公というだけでは無理があるし、言われるがままに甘やかしているように見えるのにも理由があるのです。
そんな物語の転倒を担うのは、クラスメイトの女性陣で、その代表が学級委員長。
名前は不明。小学1年から高校まで同じ学校なのに主人公が名前を覚えていないので、委員長としか呼ばれません。(斜め上の行動をする主人公への)ツッコミ役にして(読者に理解しがたい主人公の言動への)解説役。泣きながら怒ってることが多いです。
最初は不良から御曹司、スポーツ特待生、読者モデルと問題児ばかりのクラスをまとめ上げていましたが、異世界に放り出されてキャパオーバーで憤死。その後、主人公である遙と再会したのを契機に復活していきますが、彼女の目から見た主人公の様子が語られることで初めてテンプレ展開がテンプレではなかったことが明らかになっていきます。
「異世界で! いったい! 今まで! なにしてたのーっ! あと、フランク・ロイド・ライトさんはアメリカ人だからウェルカムだからー!!」
「遥君のスキルの『報連相』って絶対機能してないよね! 偵察に行ってなんで打ち上げられてるの!? 偵察衛星のスキルがあるの!? なんで偵察だけでボロボロなの!?」
ただ、主人公があまりに規格外なので、第三者視点で客観的事実を明らかにするというより、ボケにツッコミしているようにしか見えないのが話をストレスフリーで読める理由。
そして、意外に言動不一致。みんなの無駄遣いを叱りながらも自分もお小遣いを使いすぎていたり、主人公を助けようとするクラスメイトを制止しながら自分だけは完全武装だったり、それでも進む者たちを止めながらも自分がいちばん前に出ていたり。
やがて、頭の回転は速くて記憶力は抜群だけれどコミュニケーション能力が絶望的に不足している主人公の言動をかみ砕いて他人に伝える「通訳」として重宝されるようになり、金銭管理ができない主人公や女性陣の銀行役もするようになり、そのうちに肉壁委員長とか呼ばれるようになっていきますが、悩みの種は、スキルに「性豪」「絶倫」がついてしまっていることのようです。