
アーケードの格闘ゲーム「ソリッドファイター」は新時代の人気ゲーム。キャラデータの攻撃モーションやアクセサリー・データなどのカスタマイズが可能で、メモリスティックにデータを保管して家庭のパソコンからゲームセンターまで持ち込みも可能だ。スダケンこと増田研二も自分の使うキャラクターをサードパーティ製のソフトを使って爆乳にして、揺れるモーションに凝ったりしている……というところから始まるゲーム青春小説。まだバーチャルリアリティとか出てない頃の話ですが、ゲームしか取り柄のない少年がいかにゲームに向き合い、ゲームのあり方について問い続けていくかという求道的な物語を「ストリートファイター」を彷彿とさせるゲームを通じて、ユーモラスかつ爽快な作品に仕上げています。「古橋秀之“幻”の名作」と言われる所以。電撃文庫版は1巻打ち切りで、後に全3巻分の原稿を1冊に合本した限定版が、アスキー・メディアワークスから刊行されました。3冊買いました。
さて、高校の話だけに女子生徒もちらほら登場しますが、この話のヒロインは虹田北高校の教師、通称タケちゃんこと岳神隆子(たけがみ・りゅうこ)で異存はないかと思います。表紙イラストにもなってるし。
ストーリーを引っ張るような活躍はしていなくって、主人公を見守り、遊び、時に助言するという、やってることは普通の「良い先生」。でも、そんな脇役ポジを吹っ飛ばすくらい破壊力は強力で、読み終わってから「タケちゃん、スダケンを応援してただけだよ……ね?」と考え込んでしまうくらい。
タケちゃんは、いつでもジャージ着用してるけど体育教師ではなく、担当は国語。年齢不詳。性格は大雑把。胸は大きく、おなかがちらほら見えちゃうれど、鍛えているから平気。この学校には隠れた伝統行事があって、毎年春先には男でも女でもタケちゃんを押し倒す権利が与えられていて、体操着で格技場に集まって彼女に挑むのだけれど、片っ端から返り討ちにあうのだ。タケちゃんは生徒にがっちり関節技をかける。本気でかける。泡を吹くまでかける。
格闘戦では無敵を誇るし、身体は柔らかく、足は原チャリよりも速い。生徒の間では米国海兵隊がNASAの技術協力で開発したサイボーグ兵士のプロトタイプだとか、一子相伝の暗殺術を継ぐ殺人マシーンだとか言われているけれど、彼女の行動はまさに「ジャッキー・チェンだってそんなことしねえ」というレベルなのだ。
「あたしも身長100メートルくらいあって口から怪光線の1つも出たら、センセイなんかしてないで、都庁壊しに行くんだけどねえ。自衛隊の砲撃をものともせず」
一度、彼女の動きをモーションキャプチャーでトレースしてモデル化し、ゲームに組み込もうとしたらバグが起きて、レギュレーション違反でもないのにチート過ぎて採用できないキャラになってしまったりしてます。なにか、常人では諮りしれない動きをする人。
夢枕獏の作品で主役をはれそうなくらいキャラ立ちしてるんだけれど、そこをあえて脇役に置いているところが、この作品の魅力……というか、おかしなところなのです。