人形師であった祖父に師事し、中学卒業と共に専業で人形作家となった佐倉いろはは世界でも五本の指に数えられるまでに到達したが、才能を妬む兄弟弟子たちの暴力によって右手の機能を失い、人形作家としての道を断たれてしまった。無為に日々を過ごすいろはに、彼の家族は五感完全没入型機能を搭載したＶＲマシンを贈った。ＶＲＭＭＯ「Doll's Order」は仮初の命を与えられた人形“戦闘妖精”を使って冒険する世界。そこでなら、彼の失われた人形作家としての人生の代替がみつかるのではないかと期待したのだ……。
「人を模した人形に価値が在るなら、現実世界を模した仮想世界にだって絶対に価値は在ると思うんだ。だったら、その世界で残す爪痕だってきっと価値が在るって、そうは思わないかい？」
仮想世界なんて所詮は紛い物だと反発する息子いろはを父が笑い飛ばした。
リアルの世界で人形を製作できなくなった天才人形作家が、システムのサポート前提のＶＲＭＭＯの世界に没入し、完全マニュアル製作でチートを疑われる戦闘妖精ドールを組み上げていく物語。それが、ただリアルの天才がバーチャルでチートに！という話で終わらずに、人形作家としての限界というか、優れているが故に狭量になっている自己と向かい合う創作ストーリーとして成立しているのがポイントです。
欲を言えば、人形製作の具体的な過程をもう少し欲しかったなというのと、「掲示板回をそのまま縦書きにするのは、それだけで三文安」というくらい。
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