付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「小説家になろう」とか

2019-12-30 | 雑談・覚え書き
 最近はライトノベル系文芸作品の大半は、まずウェブ小説で人気が出て、青田刈りのような状況で書籍化されて右から左に消費されるという状況で、そんな状態が良いのかどうかは別として読者としては山のようなレーベルから毎月何十と発売される新刊の内容を、まずウェブでチェックできるのはありがたいことです。
 序盤が面白くても、途中でダレる更新止まる、ワンパターンになる、タイトルを忘れて別方向に走るなど評価が変わりそうなものを事前にチェックできてソートできますから。
 そんなことを感じながら読みふけっている中から、書籍化されていないものを幾つか。

閣下が退却を命じぬ限り」剣崎月
 イヴは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の乙女ゲーム攻略対象者たちを除かなければならぬと決意した。イヴには政治がわからぬ。イヴは軍人である。銃を撃ち、猛吹雪と戯れて暮して来た。けれども浮気ものに対しては、人一倍に敏感であった……と、以上作品紹介まま。乙女ゲームのモブキャラに転生した主人公がシナリオのバッドエンドを阻止すべく奔走する物語。
 本編完結。そのクライマックスにタイトルがばーんっとはまるところが最高に燃えます。ざまぁ系恋愛小説というより、謀略系スパイ小説。でもコメディ色強め。青池保子のマンガとかタフな主人公が周囲の美青年たちにかまわず猛進する話が好きな人にお勧め。

イリアの世界」一集
 引きこもり令嬢イリアが弟とその仲間をかわいがり、彼らのために魔法を教えたりゲームを作って与えたりしています。けれど、本人はあまり自覚がないものの、イリアはチート級の転生者だったのです。いつしか弟たちは規格外の成長を遂げ、世界は次第に在り方そのものから変わっていきます。
 2章になって展開遅めの不定期更新になりますが、それでも面白さは色あせないので無事な完結を祈りつつ見守っています。

北海道に魔物が出たので地元ハンターが出動してみた」ジュピタースタジオ
 北海道のハンターシリーズ3部作の2つめで北海道の猟友会vs異世界モンスター。
 1つめの「北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた」がタイトルそのままの話の異世界転生で2巻まで書籍化されていますが、2つめの「北海道に魔物が出たので地元ハンターが出動してみた」が1作目のif話。もし最初の主人公が冒頭に熊に襲われて死んで異世界転生しなかったら、こちらの世界でどんな事件が起こっていたかという、銃刀法と猟師の関係とか、銃の管理や猟のやりかたなども含め、田舎のおっさんたちの戦いを、(猟師に撃つなと言いつつ自分たちは何もしないとか)役に立たない警察の横やりや役所の奮闘とか含めて描いたもの。

玉葱とクラリオン」水月一人
 バイトの合間にソシャゲで遊んでたら異世界に迷い込んでいたお気楽青年が、剣と魔法が支配する世界で現代人の知識を頼りに立身出世しようと目論む詐欺話が技術チートになり内政チート話になり、「よくあるパターンだよね」「2015年スタートなので、これがむしろ内政チートもののスタンダードを作った?」とか思いつつ、やたら火薬とか内燃機関の解説とかうんちくが長いよねと読み進めるうちに、いつの間にか戦記物になり、そのまま行くのかと思っていたらトロッコ問題もかくやという「大事な1人を救うか世界を救うか」という人類文明を賭けた話になり、最終的に魔法の存在する意味からゲームみたいなステイタス管理の謎まではっきりさせて、読後感はハインラインな全363話。
 胡散臭い男の双肩に人類文明が乗っかるあたり、ラザルス・ロングってところ。

ホラー女優が天才子役に転生しました」鉄箱
 交通事故死したホラー女優がそのまま転生。今度は子役として演劇界に乗り込んでいくサクセスストーリー。
 「身体は子供で頭脳は大人」なやり直し系転生はそこそこ多いけれど、大半はスポーツものか学園もの。子役ものは意外に少なく、面白いものはさらに少なく、まともに連載が進んだり完結したものはほぼ皆無じゃないかというなかで楽しみな新作の登場。
 演技の面白さ、奥深さがきちんと描かれ、前世もホラーや死体専門と言っても、知る人からはその演技力を高く評価されていた主人公が美少女として転生。努力の秀才が恵まれた天才として新たな人生のスタートを切り、そこから前世で知り合っていた人たちとの再会していくなど物語としても面白くなりそうな序盤です。

不思議の国の海兵隊 #MCWL」高城拓
 合衆国海兵隊に志願した若者が、過酷な訓練過程を経て成長するが、訓練過程修了間際に同時多発テロが発生。彼らは敵も味方もはっきりしない戦場に投入される……という話をスライム視点で描いているのは「衛生兵と書いてスライムと読むことの何が悪いってんだ?」という副題の通り。「宇宙の戦士」をファンタジー風に軽くアレンジして、主役を海兵隊の衛生兵にした話です。
 鬼や吸血鬼が人間と混じって生活している世界で、非正規戦に投入された若き海兵隊の青春譚。ただしスライム。こちらは「なろう」ではなく「セルバンテス」連載です。

俺の音楽ここにあります!」たけのこきのこ
 売れないギタリストが死んだと思ったら時間を数年遡り、女子中学生の身体に心が入り込んでしまったことから始まるガールズバンド・ストーリーが185話で完結。時間遡行のTS入れ替わりものとしては綺麗に面白く終わりました。普通の女子高生に、マニアックすぎてひとりよがりになっちまったテクニシャンが取り憑いた話の結末は前向きにハッピーエンド。

とある魔球のダウンザライン!」うるめいわし
 こちらもTS転生の人生やり直しスポーツもの。
 挫折したテニス選手が、気がついたら引退したテニスプレイヤーの娘に生まれ変わっていて、もう1回テニスプレイヤーとしてグランドスラムで優勝を目指す!という話。軽いノリのスポーツ小説で、あまり長く続けてもテニスの試合って描写が似たり寄ったりになるよねとジュニア編109話で完結。今はぽちぽち外伝の日常編が続いてます。

 タイトルがやたら長いのは「ガリバー旅行記」や「ロビンソン・クルーソー」からの伝統ですが、そのタイトルが「××したら××になっちゃいました」とかキャッチーな導入部の設定だけしか表してないものは作者が結末まで想定して書き始めていないのか、途中でおかしくなることが多いです。テーマが定まってない感じ。
 「本好きの下克上」とか「魔王の副官」とか、作品のテーマとか結末を暗喩するようなタイトルの方が、完成度が高くなる気がしますね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする