付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「会社を辞めてのんびり暮らします」 相野仁

2020-09-13 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 世界中にダンジョンが出現してから数年。兵児帯(へこおび)ケータはろくな装備も持たずにダンジョンに飛び込んだ。月給たった12万円なのにサービス残業を今月は80時間しかしていない!みたいに責められ酷使されていては、いくら社畜といっても限界だったのだ。
 ところが運良く、タナボタでレッサーデビルを倒してしまい、隠し固有スキル『強欲』を手に入れてしまう。それはレアアイテムドロップ率を向上させ、成長限界がなくなり、さらには様々なスキルをラーニングするチートスキルだった……。

 そもそもライトノベルは「表紙イラストなどにマンガやアニメの絵柄のイラストを使用した小説」です。音楽ジャンルが演歌やジャズかロックかに関係なくアニメ番組に使われた曲はアニソンと呼ばれるように、マンガ絵の小説だったらラノベ。それ自体に優劣もジャンル定義もあるわきゃないのです。少なくともより冴えた定義が発見されるまでは。
 なので、つい従来のヤングアダルト小説やジュブナイル小説の延長線上で分析しようとするとおかしくなります。「未熟な若者が試行錯誤をしながらも、年長者の助言を受けつつ成長し、ついには自立して羽ばたく」……そんな話が少ない? 当たり前です。それはライトノベルが文学として未熟とか不完全なまま流通しているとかいう話ではなく、ライトノベルとして刊行されている作品の半分は、今風のジュブナイルではないからです。
 たとえば、この作品を購入した同じ週に、ライトノベルに区分される文庫やソフトカバーを10冊購入しましたが、そのうち7作品は主人公がアラサー以上、またはアラサー以上の主人公が転生して人生やり直しする話でした。サラリーマン夢小説です。人生のどこかで選択肢を間違えた、あるいは才能や人格が不当に評価されていた中高年男女がふとしたきっかけで人生をやり直して大成功を収める……スポーツ新聞や週刊誌の連載小説だったら、サラリーマンが謎の老師に師事を受けて博打の才能に開花するとか異性を虜にするテクニックを身につけてウハウハ……みたいな話の亜流です。そこに若者の成長とか求められるわけがない。

 この話もそうした願望充足ファンタジー。面白くさくさく読めます。ヤケクソでダンジョンに挑戦してみたらいきなり大当たり。ブラック企業を辞めて月収1200万円!

【社畜、ダンジョンだらけの世界で固有スキル『強欲』を手に入れて最強のバランスブレーカーになる ~会社を辞めてのんびり暮らします~】【相野仁】【転】【ダッシュエックス文庫】【究極のバランスブレーカーが爆速で成り上がる爽快ファンタジー】
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