付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★人口推移とジャンル移動

2020-11-05 | 雑談・覚え書き
 人口分布は急速には変化しない。生まれた子供がいきなり大人になるわけではない。戦争で成人男性がいきなり数を減らしたりすることも現状ではあまり考えられない。人口ピラミッドが逆三角形を描いているなら、年数が経てば経つほど高齢者が増え、若い世代は減っていく。読者の層としても執筆者の層としても若い世代が減っていくのだから、いつまでも少年少女向けだけに文芸作品を書いていても売っていても販売戦略としては先細りである。
 それゆえにゼロ年代には、ライトノベル(=ジュブナイル小説)でデビューした作家の一般文芸への移動が意識されるようになっていた。それは有川浩の出版物に象徴される。
 有川浩は『塩の街』で第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞しデビューした。この作品はライトノベルの代表レーベルと認識されている電撃文庫でアニメ絵が付けられて刊行された。この『塩の街』(2004)は突如出現した怪獣と戦う陸上自衛隊の活躍を中心に語られており、空に出現した怪獣と戦う航空自衛隊が主役の『空の中』(2004)、海から現れた怪獣と海上自衛隊のクルーが中心となる『海の底』(2005)と合わせて「自衛隊三部作」と呼ばれるようになるが、『空の中』からは電撃文庫ではなく、アニメ絵を廃した装丁の一般文芸として刊行された。
 有川浩はその後『図書館戦争』(2006)シリーズなど、少女マンガ誌でコミカライズされたりアニメ化される作品を発表していくが、主人公は成人であり、次第に恋愛色の強い、働く男女を主役にした作品に軸を移すようになっていった。
コメント
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