付け焼き刃の覚え書き

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「おでん屋春子婆さんの偏屈異世界珍道中2」 紺染幸

2023-07-22 | 異世界転移・召喚
「『何もない』ほど尊いことはない」
 やがて女王補佐官に任命されるトマス=フォン=ザントライユの言葉。

 アステール王国の女王エリーザベトの治世は長く、概ね平穏、良き統治であったと言って良い。しかし、その晩年は、最後の年は大きな災禍が連続して押し寄せることとなった。
 長くただ1人の番人が押さえ続けていた地獄の門が開き始める中、50年前に流行した死病が再び蔓延の兆しを見せ始め、それと同じくして北の大国ロクレツァの狂えるカンダハル王がアステールへの宣戦布告なき侵略を開始したのだ……。

 お稲荷さんの都合で知らない世界に飛ばされるようになってしまった、おでん屋の春子婆さんの物語……とはいえ、春子婆さんの出番そのものはほとんどなし。幼い少女が父王や兄の死によって即位し、国政を舵取りし、国を護り、老いて後継者へと引き継ぐまでの群像劇なのです。「珍道中」とあるけど、実質的にアステール王国年代記です。
 異世界アステールでいろいろ悩み苦しみ疲れた人たちがターニングポイントに到達したとき、どこからともなくやってくる謎の存在が春子婆さんなのです。つまり、『クイン氏の事件簿』のハーリー・クィン氏みたいな存在ですね。影響力はあっても自ら働きかけはしないのです。アスタールの人々には密かに神の使いであるフーリィと思われているようですが、フーリィは狐の姿をしているのです。婆さんは、ただおでんを食わせるだけ。 
 そして、1巻ではてんでに行き交い、さまざまな生き方をしていた老若男女の人生がこの2巻で交錯し、それぞれの積み上げてきたものが組み合わさって国難に挑むこととなります。ウェブでの第一章「女王エリーザベト治世下」はこれにて完結。

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