「亡びの国の征服者１」 不手折家

「頭がいいだけの人間は、非凡といわないさ。早熟な人間を大器と言わないように」
　自分は非凡なわけじゃなくて、前世も含めて余分に長く生きているだけだとユーリ・ホウは自己評価している。

　いろいろあって仕事を辞めてニート暮らししていた青年は、川に転落した少女を救った代わりに溺れて死んだ。それが巨大な鳥を飼育する牧場の長男として生まれたユーリが生まれた時から持っていた記憶だ。
　ユーリは自分の将来は牧場のあとを継ぐものと思い込んでいたが、その運命は本人の意志とは関係ない場所で捻曲げられていく。
　父ルークの兄が戦死したことにより、父親が本家の当主になるという話が持ち上がってきたのだ。実はホウ家はシャルタ王国の軍事面で大きな役割を担う一族だったのだ……。

　女王の下で軍を司る五大将家と官僚を司る七大魔女家が国を動かしているけれど、ホウ家以外の将家は実戦を長く経験していないふぬけばかりで、魔女家はどいつもこいつも汚職に大忙しのヤクザみたいな連中で、それでいて外部には他国をすべて滅ぼそうとする強大な軍事帝国がいるという内憂外患、四面楚歌からのスタートです。
　チートなスキルがあるとか前世知識で無双するとかいうのではなく、なにより素早い状況判断と思い切りの良さで生き残っていくタイプの主人公です。確かに頭も良いほうだし、格闘もけっこうできるけれど、それよりも「こいつはここで潰さないとヤバい」と思ったら即座に「やろう」と決めて実行できる決断力が強さですね。
　全然、チェックしてなかった作品だけれど、Twitterで書名を知って書影を見たらtoi8さんだったので、この人のイラストをはめるなら自分の好みとまったく違うことはなかろう……と購入。うん、正解。面白かったです。

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