「悪役令嬢は今日も華麗に暗躍する」 道草家守

「推しに課金は当然の義務なので」

　侯爵令嬢エルディア・ユクレールが、自分がソーシャルＲＰＧ「エモシオンファンタジー」の世界に転生していて、やがて悪徳姫と呼ばれる悪役令嬢になるのだと気付いたのは７歳のときだった。
　しかし、彼女は悪役ルートを回避しようとはしない。なぜなら彼女はこのゲームを課金しまくってやり尽くし、登場するキャラたちをこよなく愛して人生を捧げたＯＬだったのだ。彼女は世の中の流れがストーリー通り進むよう配慮し、勇者と聖女が活躍できるよう下準備を綿密に段取りした上で、最後は悪役らしく第二王子の弾劾を受けて舞台から消えた……ように見せかけて、名前を変えて場所を移し、ただひたすらに推しキャラのために資金を惜しむ事なくつぎ込み続けた。
　そして、事態がストーリーから外れそうになるたびに修正し続けるのだが、なによりの誤算は凄腕暗殺者として主人公たちの近くにいるべきアルバートが、彼女の執事として傍らに控え続けていることだった……。

　舞台の観客として、役者が余計な事に気を使わないよう、困っていたら必要なものを手配して、精一杯応援しつつ見守ろうとする悪役令嬢と、本来はメインキャラなのに彼女にぴったり寄り添って勇者と聖女が活躍するために裏方を務めるダンピール執事のピカレスク・コメディ。好きな人のためなら、なんだってがんばれるのだ。
　ウェブ版にちょこちょこ増補改訂しての書籍版。買うべし。

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