付け焼き刃の覚え書き

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「ミュンヘンの中学生」 子安美知子

2014-10-17 | エッセー・人文・科学
 ルドルフ・シュタイナーといえば人智学の創始者で神秘思想家。オカルトとかトンデモに区分されがちな人なのだけれど、彼の生み出した教育理念は今も生き続け、世界各地にシュタイナー教育を実践する学校がいくつも作られています。そんなミュンヘンのシュタイナー学校に子供を託した教育学者の回想録が『ミュンヘンの小学生』と『ミュンヘンの中学生』。

 知識を詰め込むだけではいけない。
 その知識を自分なりに解釈して他人に伝えることができなくては意味がない。
 だから、シュタイナー教育は絵と音楽から始まり、知識を詰め込むのはかなり先になる。
 結果として、周囲からはお絵かきばかりしているバカ学校と思われるけれど、しっかり受け手の基礎ができてからの知識は吸収が早く、大学進学率では他校にひけをとらない。
 子供同士でゲーテについて語り合う中学生ってのは、愉しいよね。

「よその学校にいっている友だちが、いつか、『円とは、定点から等距離にある点の集合のことである』なんて、いったのよ。ひどいわ! “円”は地球だわ、友情だわ! 愛よ、世界よ、人生よ!」
 9年生の少女スンヒルトの言葉。

 ただ、教える側にしても絶対確実なマニュアルがあるわけでもなく、しかも6歳から12年間を一貫で学ぶシュタイナー教育のうち、最初の8年を同じ担任が指導するというのだから、教える方にも胆力がいりますよね。
 親だって子供が反抗期に入ったらげんなりするのに、1クラス丸ごと反抗期に突入し、それを受け止めなきゃいけないんだから。

「私たちの最大の特徴は、なにごとも盲信しないことでしょ。全部自分の目でたしかめ、自分の頭で考えることなのよ」
 グラフィック・デザイナーになった卒業生、イローナ・フェダーソンの言葉。シュタイナー思想だって頭から信じたりなんかはしないと。

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