付け焼き刃の覚え書き

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「ライトノベル「超」入門」 柳川房彦

2016-04-21 | エッセー・人文・科学
 う~ん。もし大学にライトノベル学部があるなら、この本は総論のテキストですね。
 「ライトノベル」というものの定義と現状から代表作の紹介について、何も知らないビジネスマン相手に教える感じの本。でも、さすがに手は長い。キャラクターの類型を語るのに歌舞伎まで遡り、キャラ萌えでドストエフスキーを語り、セリフだけで話を進める例にデュマを持ってきています。ウエルテルは誰がどう考えても……アレですが。なんというか、がちがち秀才タイプの人妻萌え!……ですが、まあ、ライトノベルというものを要素として分析してみれば、どれも昔からあるもので、なんら特別でも何でもないという話。(2007/10/05投稿)

 ……みたいなことを書いてはや9年。
 「何も知らないビジネスマン」向きみたいな感想を書いたけれど、よくよく見て回ればライトノベル好きがライトノベルについてあれこれ論をかわしていても、この程度の内容すら踏まえていないことが多いようです。
 別に「ファンタジー好きなら『指輪物語』は必読」みたいな押しつけはしないけれど、でもライトノベルを語ろうというのに「1990年末までに、ソノラマ文庫やコバルト文庫のような、アニメやマンガっぽいイラストの付いた、若者向けの娯楽小説を総称するために、神北恵太という人物によってニフティサーブの会議室で提唱された」という前提を知らないまま、論を語っていても話がかみ合うわけがないです。
 別にこの前提を捨てて新たな定義をしても良いけれど、この程度の前提すら踏まえないものだから「ライトノベルとはジャンルだ」としてしまい、SFもファンタジーもミステリもホラーもラブコメも入り交じって「××はライトノベルかどうか」論争勃発とか「少女小説はライトノベルではない」としたために「××は少女小説か」とか「どこそこのレーベルはライトノベルではない」「ライトノベルとはこれらのレーベルの刊行物だ」と新レーベルが創廃刊されるたびに定義がリセットされるような愉快な顛末に。
 過去の研究、そもそもの発端を無視して、穴だらけの新説を振り回す……これではエセ科学を笑えません。(2016/03/21改稿)

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