付け焼き刃の覚え書き

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「荒野に獣 慟哭す[1]」 伊藤勢

2014-06-09 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「俺はもはやギャグ展開に乗るような精神的余裕がないんです!!」
 御門周平は夢枕獏に対して怒る。
 これに対して「ギャグもシリアスも同じものなのだよ。視点の違いに過ぎない」と切り替えされます。

 残酷な人体実験を内部告発しようとしていた若き研究者、御門周平もまた人体実験の素材とされ、記憶を失ってしまう。彼が脱出できたのは、レトロウィルス「独覚」によって異能を覚醒した異形の人間兵器「独覚兵」の一派が反乱を起こしたからだ。
 だが、研究所を蹂躙する独覚兵・招杜羅の目的の1つは御門を喰らうことだった……。

 困惑する主人公を置いてきぼりにしたまま、日米の国家規模の秘密組織から民間企業まで複数グループが入り乱れ、そこに夢枕獏っぽい作家やら伊藤勢みたいなマンガ家まで参戦し、誰が敵か味方か分からないままの殺しあいが続きます。でも、その合間にヒューイ論争したり、あちらこちらで名物食べて回って、釣りをして、そんな横道に逸れていても全体の雰囲気は変わらないし、ハードなストーリーがちゃんと進んでいくのです。

 エログロの伝奇バイオレンスの大家、夢枕獏の原作を、シリアスとギャグを見事に融合させた伝奇アクションコミックを描く伊藤勢がコミック化。掲載誌の休刊で中断していたものの、なんとか復活。今回、徳間文庫から再リリースという運びに。嬉しい。文庫だと小さくて読みにくいのが難点で、これは完結してからの豪華愛蔵版を期待したいです。

「朝のこない夜はない!」
 夢枕獏の言葉。ただし、これには「人の一生より長く続く夜もざらにある」といったんギャグで落として、そこからさらに名セリフへと続くのだけれど。

 とりあえず今回はマガジンZ版の3巻までを1冊に。ろくに登場していない薬師丸法山が表紙ってどういうことさ?

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