付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「翼の帰る処2(下)」 妹尾ゆふ子

2012-12-09 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人が集まって国となったとき、弱者を弱者のままにしては、意味がない。国がなすべきことは、なによりもまず弱者を救うことなのです。不幸に沈んだまま這い上がれない存在をなくしてこそ、国というものに意義が生まれます。その国に生きていることに、民が誇りを持てるようになります」
 ヤエトは皇女に語りつつ、彼女が間もなく自分を越えていくであろうことを予感した。

 心ならずも<黒狼公>の跡目を継ぐことになり、皇位継承争いの渦中に放り込まれた皇女を後に残して砂漠の領地へと赴任した尚書官ヤオトは、そこで「このかたこそ、予言された救い主である」と宣言されてしまう……。

 見た目は若造、精神と肉体は老人級で、なんとか隠居したいと思っているのに「このかたこそ、予言された救い主です」と来たもんだ……という青年官僚ヤエトの立身出世物語にして隠居願望ファンタジー。
 隠居願望ファンタジーの第2作もこれでおしまいだけれど、これで完結でも良かった前作に対して、こちらは完全に続く形で終わっています。ヤエトは「天地輪」の本当の意味を理解したものの、帝国の継承争いもまだ端緒についたばかりで、まだまだ北嶺へは帰れそうにもありません。隠居どころか、四大公家<黒狼公>の当主となり、さらには予言の救世主にまでされてしまったヤオトの命運はいかに?
 間抜け宰相、馬鹿王、阿呆将軍のトリオが良い感じにかみ合いだして、ますます面白くなりました。でも上巻の引きは絶対、竜の飛翔なみの騒ぎになると期待していたのに……。
 書き下ろし短編は「恋文の行方」。あの奥方に亭主がやきもきする一篇で、政治的な視野から状況を整理する話。(2009/09/24 2012/12/09改稿)

【翼の帰る処2】【妹尾ゆふ子】【ことき】【幻冬舎コミックス】【幻狼ファンタジアノベルス】【襲撃】【暗殺】【亡国の王子】【交易】【外交】【傭兵】
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「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(6)」 渡航

2012-12-09 | 学園小説(不思議や超科学なし)
『完璧さを求めていいのは神様に対してだけだ。
 理想を誰かに求めてはいけない』

 失望していいのは自分に対してだけだと、比企谷八幡は考える。

 文化祭の実行委員にされてしまった八幡。なんとかあたらず触らずでやっていこうとしていた八幡だったけれども、実行委員長が肩書きが欲しいだけで名乗りを上げた無能者だったばかりに雪乃が副委員長となり、八幡の仕事も山積みになって……。

 マイナス思考のダメダメな主人公の話ですが、巻を追うごとにその言動に同調してしまうことが多くなり、救われないなあとこちらまで嘆息。
 真面目にやっている者がサボっている者の分まで仕事をやらされ、オーバーワークでミスを犯したらこちらの責任……というのは、よくある話。他人に仕事を与えて経験を積まさなければ成長しないし、任せて投げ出されて迷惑を被るのもこちら……とやるせないことばかり。
 自分の場合は、最終的に「他の者に仕事を任せるけれど、そいつが間に合わなかったときのために自分でも同じ仕事を並行作業で準備しておいて、相手が間に合ったら自分の仕事はこっそり破棄」というスタイルに落ち着きましたね。完成品の量は変わらないのに自分の仕事量は倍になってしまったけれど、これでなんとか回してました。若かったから無理が利いたんだなあ。自分の手も早くなったから、若い頃の努力はするものだ。
 本当に由比ヶ浜は良いやつだし、葉山くんもちゃんとした人だ。八幡も報われるといいなあ。今のままだと赤鬼がうれし泣きするだけの「泣いた赤鬼」だもの……。

【やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。】【渡航】【ぽんかん⑧】【ガガガ文庫】【奉仕部】【ONE FOR ALL】【人】【文化祭】【学園祭】【バンド演奏】
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