付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「お花畑の魔王様」 卯堂成隆

2019-11-16 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「貴女は探偵でもなければ推理小説の主人公でもないのです。真実を知る人よりも、優しい人でありなさい」
 悪役令嬢アデリアに説く魔王クーデルス。

 魔帝王の代替わりのどさくさに、四天王の1人、南の魔王クーデルス・タートは解任されて魔族の領域から永久追放されてしまう。戦闘民族を束ねる四天王なのに、用紙は凡庸、性格は温厚、属性は【お花畑】というふざけたものだから、新たな魔族の世界には不要だというのだ。
 しかし、クーデルス自身にも四天王の地位に未練はなかった。実際、魔族世界の実務全般を一手に取り仕切っていたのはクーデルスであり、先代の魔帝王から後を頼むと言われたから従っていただけなので、相手から要らないと言われたならお役御免で結構。
 南の魔王は真実の愛を求めて人間世界を旅するのだが、いきなり奴隷商人に捕まってしまう……。

 誰よりも優しく、誰よりも怖くて恐ろしい魔王様の放浪記。今回は断罪された悪役令嬢と天災に見舞われた田舎村を復興させる話。
 人間世界に魔王が潜り込んで交流したりする話はちらほらあるけれど、この話の魔王はどれだけ優しく温厚であろうとも、基本的に自分の関心がない人間については路傍の石ほどに興味がなく、塵芥扱いしちゃうところですね。
 基本コメディなんだけれど、一歩間違えると登場人物がみんな死んでしまうような危うさの上に成り立っているのです。

【お花畑の魔王様】【卯堂成隆】【およ】【マッグガーデン・ノベルズ】【悪役令嬢】
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「アニメック~ガンダム40周年記念号」 ニュータイプ編集部

2019-11-15 | 巨大ロボット
 「月刊OUT」がヤマト特集で1号限りの復活を遂げたのに続いて、同じくアニメ誌「アニメック」もガンダム特集で復刊。とはいえ、どちらもカドカワの企画力あってのことです。

「先発でやってきた人の功績が角川に収斂するみたいになっているのが本当に嫌でしたね」
 「ジ・アニメ」や「マイアニメ」など小さい雑誌が消えて「ニュータイプ」が台頭してきた当時の状況を回顧して「だいぶカチンときました」と富野由悠季。

 アニメック6号のガンダム特集そのままの表紙を、ことぶきつかさに新たに描きおこさせるなど無駄な努力の結晶。富野由悠季インタビューから狸のゴミクション、池田憲章の特撮ヒーロー列伝まで、当時の誌面構成を今の編集力で再現しているのだけれど、ここまでやってて読者投稿欄がない。公募したアニメ新世紀宣言の感想文はあるけれど、巻末や頁の柱に読者投稿のコメントがない。復刻OUTではfromお茶の水からよたろうらんどまで読者投稿コーナーを再現していただけに残念。本記事でもアニメ新世紀宣言文の起草に投稿が果たした役割の大きさが指摘してあったのに。
 代わりに巻末にはアニメイトやアニメックの当時の重鎮の回想インタビューが載ってたりするので、復刊というより記念本に近いかなあと思うのでした。

【アニメック】【ガンダム40周年記念号】【ニュータイプ編集部】【カドカワムック】【小牧雅伸】【井上伸一郎】【永野護】【川村万梨阿】【高河ゆん】【池田憲章】【ゆうきまさみ】
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「NHKステラ 甲賀市の旅」

2019-11-14 | その他フィクション
「自由は、不自由やで!」
 世界的な芸術家、ジョージ富士川の口癖。

 同業者団体の旅行でたまたま滋賀に旅してみたら、NHKの朝の連続テレビ小説「スカーレット」の舞台である信楽へ。信楽高原鐵道の駅には朝ドラタイアップの冊子がぎっしり。でも、NHKステラより信楽観光案内冊子の方がジョージ富士川こと西川貴教の扱いは大きかったですね。巻頭見開き2頁ですもの。
 でも、特に朝ドラ目当ての企画というわけではないらしく、幹事は街のあちらこちらに張り出してある「スカーレット」のポスターを見て、「防火ポスターかと思った」というくらい。朝ドラ関係なしで、紅葉見てすき焼き・松茸食べ放題の旅がしたかっただけらしいです。

【NHKステラ】【スカーレット 甲賀市の旅】
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「まち」 小野寺文宜

2019-11-13 | その他フィクション
「人を守れ。人を守れる人間になれ」
 祖父は瞬一にそう語った。人は大事に。
 でも、単純な「良い人になれ」という話ではなく、「お前を頼ったことのある人は、逆に自分が困ったときに助けてくれないかもしれないけど貶めもしないだろう」というシビアな人生観。

 高校を卒業して江藤瞬一は東京に出てきた。祖父と暮らした群馬県の村では就職先もないからだ。
 江戸川区のアパートに居を構え、引っ越しのバイトをして生活している。趣味は街を歩き、荒川の河川敷を走ることだ……。

 人の中で生きていける人間になれと、大都会に送り出された青年の成長譚。
 出番は少ないけれど、おじいさんの存在がすごく大きい作品です。

【まち】【小野寺文宜】【祥伝社】【本屋大賞第2位】【歩荷】【DV】【ペプシコーラ】【ゴキブリ退治】
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「北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた」 ジュピタースタジオ

2019-11-12 | 異世界転移・召喚
「人間なんてカラスみたいに利口じゃないし、キツネみたいに用心深くないし、シカみたいに逃げ足早いわけじゃないしクマみたいに怖くない。どうして人間なんか撃ちたくなるのか、俺ら猟師にゃ全く理解できねえな」
 「人は銃を持つと人間を撃ちたくなる」とか言われることもあるけれど、そんなことはないと猟友会の会長が銃乱射事件のニュースを見ながら。

 北海道の地方公務員、中嶋進はハンターとして害獣駆除に参加していたが、手負いの狂暴化したヒグマに襲われそうになっている子供を助けて命を落とした。それを見つけた異世界の女神ナノテスは、「子供を守ってヒグマに立ち向かった勇気」を見込んで進を召喚することにした。いずれ発生する魔王対策に勇者を召喚するときの練習を兼ねて……だ。
 そんな進がナノテスから与えられたのは〈マジックバッグ〉だけ。しかし、中にお金を入れると両替された上で「猟銃や弾とかのハンティング用品が買える」という機能が付いていた。
 果たして剣と魔法の異世界で現代日本のハンターが通用するのだろうか……。

 のんびりした空気の主人公にしっかりもののエルフの巨娘が繰り広げる、ハトの駆除からヒュドラ退治まで、ノミの夫婦の狩猟生活。
 雰囲気はほのぼので、実銃のウンチクと狩猟知識が満載だけれど、よく読めばそんなにほのぼのとした世界ではなくて、「盗賊は殺せ」「殺される前に殺せ」の殺伐とした世界です。盗賊なんか捕まえたってどうせ死刑で、へたに捕まえようとして逆襲されたり逃がす危険を冒すのはバカモノだという世界観に主人公は案外とあっさり馴染みます。馴染まないと死ぬんですけど。悪党は害獣だ!な世界ですね。

【北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた】【ジュピタースタジオ】【夕薙】【ガガガブックス】【頼れるエルフ嫁と送る異世界ライフ】【ハト駆除】【小作り支援】
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「王女殿下はお怒りのようです 3」 八ツ橋皓

2019-11-11 | 異世界転生
 公爵家との縁を切って自由を謳歌するドロッセルことレティシエルだったが、謎の誘拐犯にジークとヒルメスが捕まってしまう事件が起きる。怒るレティシエルは誘拐犯グループを殲滅するが、その陰で謎の勢力が蠢いていた。
 一方、フィリアレギス公爵家の長女サリーニャにはドロッセルが注目されるのが面白くなく……。

 なにやら転生がらみで暗躍する集団が動き出しますが、ちょっと会話が軽く浮き気味。邪悪というより愉快犯っぽく思えてしまうので、もうちょい互いの名前を呼ぶのも憚られる正体不明さが欲しい気がしました。

【王女殿下はお怒りのようです 3】【暗躍せし影】【八ツ橋皓】【凪白みと】【オーバーラップ文庫】【常識外れな王女殿下が我が道を突き進む最強魔術譚】
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「ポール・バニヤンの驚くべき偉業」 編:西川秀和

2019-11-10 | その他フィクション
 ふとamazonでオンデマンド本が売っているのに気がついたので購入。若い国アメリカが生んだ唯一の神話ともいうべきポール・バニヤンの物語について、著作権の切れているものについて片っ端から集めてまとめて分類して地図とか脚注とかつけたもので、せいぜいソフトカバーかペーパーバックのサイズと思っていたら、意外に大きくてびっくり。確かに書籍サイズは記載されてましたが、そこまで見なかった。A4サイズです。予想の倍です。読みやすいので問題ないけど、書架にしまったら探しにくそう。
 ポール・バニヤンは子供の頃に児童読み物としてまとめられたものしか読んでいなかったので、意外と1つ1つの伝説や新聞雑誌の記事が短いのにはびっくり。いわゆる都市伝説に近いんだよね。そして最後まで読んでいて気がついた。どうやら自分は『ポール・バニヤン物語』と『ガルガンチュワ物語』を混同して記憶していたらしい。どうりでパンタグリュエルが出てこないと思ったんだ……。

【ポール・バニヤンの驚くべき偉業】【西川秀和】【アメリカの創作神話】
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「異世界で姫騎士に惚れられて、なぜかインフラ整備と内政で生きていくことになった件1」 昼寝する亡霊

2019-11-09 | 異世界転移・召喚
「どのような場所や境遇でも、そこで最善を尽くし、その場での安定した生活基盤を作るのを最優先とします。変わらない毎日に幸せを求めるっていう贅沢が欲しいんですよ」
 24歳のサラリーマンだった接骨木(ニワトコ)の信条。

 会社帰りに歩いていたら、いつの間にか王宮の赤絨毯の上を玉座目指して歩いていたニワトコは、そのまま捕まり奴隷扱い。内政官としてそこそこ頑張ってきたけれど、貴族の不正を暴いたことで一兵士として辺境の砦へ飛ばされてしまう。
 やがて勃発した戦争で保護された国は負けたけれど、ニワトコの戦いぶりや指揮が敵に評価され、賠償の一部として身柄が敵国へ引き渡されてしまうのだが、そこで待っていたのは姫騎士である王女の婚約者の地位であった……。

 現代知識を活かしたインフラ整備から始まる内政物語。異世界で知識チートは多いけれど、視点が地味なところから埋めていくのが面白いです。
 話は好きだけれど、イラストが今ひとつあっていないところが残念。主観の差もあるだろうけど、「いつも眠そうな目付きの悪い半目」の主人公が目元涼しげな好青年になっていたり、「貧乳だと分かる、胸の部分がフラットな鎧」も「胸の形に膨らんでいる鎧」も同じ形にしか見えず、ぜんぜん鎧の上から体型が分からないじゃないか! その方がリアルかも知れないけど文章と合ってないよ?

【異世界で姫騎士に惚れられて、なぜかインフラ整備と内政で生きていくことになった件1】【昼寝する亡霊】【ギザン】【MFブックス】【姫騎士に惚れられた男の内政ファンタジー】【ハンバーグ】【セバスチャン】【囮捜査】【床入り】
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「異性禁止のパーティーを作ってみたけど、ウチのメンバーどこかおかしい。」 丘野境界

2019-11-08 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人生で食える飯の回数なんて限られているんだぞ。だったらできる限り、美味いモノを食うべきだ」
 飯を食うのは大事なことだとシルバ。
 この言葉を最初に聞いたのは、オヨヨ大統領のパパじゃなかったかなあ。

 支援に特化している司祭シルバ・ロックールは、貢献度が足りないと女性メンバーに非難され、パーティーを離脱した。今まで上手くいっていたはずなのに、女性が混ざって仲間がギクシャクしてしまうのだ。
 もう女性にかかわるのはごめんだと、シルバは異性禁止で新しいメンバーを集めることにした。
「女は禁止だぞ!」
「見ての通りだよ?」

 表紙イラストだと、男がいるようには見えないよね。

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「ダンジョンを経営しています」 アマラ

2019-11-07 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「やっぱりピザはヘルシーだよねぇー。小麦粉と野菜と牛乳でできてるから、完全に野菜だしぃー」
 意識高い系エルフのブレイズの喜び。

 他の国ではあまりやらないらしいが、この国では魔獣を事前に用意したダンジョン施設に誘い込んで駆除することで辺境の開拓を進めている。
 そうしたダンジョンはおおむね民間企業の中小企業が運営しているが、ダンジョンマスター資格を取得したジェイクはベルウッドダンジョン株式会社の次男坊。会社はゆくゆくは兄が継ぐはずだ。しかし、突然、国が領域の拡大路線を打ち出し、ダンジョンを一気に増やすこととなった。そして、ベルウッドダンジョン株式会社にも新規受注が飛び込み、ジェイクがいきなり担当することになってしまう。
 中小企業ゆえに人材はそれほど多くない。ジェイクはなんとか引き抜けるスタッフを見繕い始めるのだが……。

 新規ダンジョンを立ち上げることになった新人ダンジョンマスターが、腕はあるけれど性格やら何やらに難のある天才スタッフたちを引き連れて荒野に乗り出す物語。
 良い感じのテンポで話が進みますが、癖のありすぎるスタッフが集まりプロジェクトが動き出すまで。

【ダンジョンを経営しています】【ベルウッドダンジョン株式会社西方支部繁盛記】【アマラ】【結賀さとる】【宝島社】【ほのぼのダンジョン経営記】【小説家になろう】
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「炎の塔の剣士」 ノーヴェル・W・ペイジ

2019-11-06 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人間は魔術などよりずっと偉大だ」
 剣闘士プレスター・ジョンが盗賊ブルタイに断言した。

 紀元1世紀。アレキサンドリアの都に勇猛を讃えられた闘士プレスター・ジョンがいた。〈旋風〉とあだ名された赤髪の巨漢は野望を胸にユーラシア大陸を放浪し、中央アジアの一角にある、7人の魔道士の支配する神秘の都ターゴールへと足を踏み入れた……。

 まあ、プレスター・ジョンといえば、あのプレスター・ジョンなわけですが、とにかく巨大な塔に捕われた美姫を救い出し、支配者の地位と財宝を手に入れんと大暴れする剣士の冒険譚。
 荒俣宏の解説によれば、キンメリアのコナンの影響を強く受け、アンノウン誌上で活躍したヒーローの1人で、コナンと違って限度を知らないそうです。あと、登場する「姫」は常に「姫」としか呼ばれませんが、食えないところは、この無謀戦士に匹敵する食えなさです。

【炎の塔の剣士】【ノーヴェル・W・ペイジ】【斉藤寿夫】【ハヤカワ文庫SF】【剣闘士プレスター・ジョン】【限度を知らないコナン】
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「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた6」 門司柿家

2019-11-05 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 昔の仲間カシムとも再会し、故郷の村へ帰ってきたベルグリフは、村で待っていたアンジェリンやミトと対面し、穏やかな日々を過ごしていた。
 だが、魔王の力を宿すミトに反応したのか、近くの森が突然意識を持って村人に襲いかかり始めた。
 この事態に立ち上がったのは誰あろう、“パラディン”グラハムであった……。

 冒険者親子とその仲間たちの冒険譚。魔王なんて知らないよ!と。

【冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた6】【精霊の火】【門司柿家】【toi8】【アース・スターノベル】【ほのぼの田舎暮らしライフ】【ハートフル異世界ファンタジー】【小説家になろう】
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「ソードアート・オンライン22」 川原礫

2019-11-04 | VRMMO・ゲーム世界
 アリシゼーション編は途中で読むのをやめてしまったけれど、こちらは過去話の短編集、アニメのBlu-ray&DVD特典だったものだというので購入。
 キリトとアスナの新婚生活からイベント突入してしまったり、《絶剣》ユウキ、誕生の軌跡など4編。

【ソードアート・オンライン022】【キス・アンド・フライ】【ザ・デイ・ビフォア】【ザ・デイ・アフター】【虹の橋】【Sister's Prayer】【川原礫】【abec】【電撃文庫】【MMORPG】【WEB小説】【オズの魔法使い】
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「銀河のさすらいびと」 キース・ローマー

2019-11-03 | 宇宙・スペースオペラ
 吹雪の中、遭難していたアメリカ人青年ビリイ・デンジャーは、狩猟の旅をしていた異星の貴族の船に助けられ、その奴隷として仕えることになった。
 しかし、その宇宙人の貴族は未開の惑星で怪獣に襲われて死亡。美しいレア姫とビリイだけが生き残るのだが、救援のメッセージに応えて現れた宇宙船は、ビリイを光線銃で撃ち倒すとレア姫をさらって飛び去ってしまう……。

 掠われたお姫さまを探して往復8万光年の宇宙冒険。テンポの良さが売り物のキース・ローマーなので、文庫1冊で八面六臂の大冒険です。今から見れば、お姫さまと主人公の間にもうちょっと何かなかったの?とか、巨大猫のユリーカはもっと活躍させても良かったよねとかあるけれど、ともかく話が早いのです。
 今回はラノベ風に装丁を変えた復刻版ではない古い方。巻末は訳者の伊藤典夫による解説で、本作やキース・ローマーの紹介というより、粗製濫造のスペースオペラがどのように淘汰され、発展して現代SFになったか。その一方で、昔ながらの冒険活劇としてのスペースオペラは生き残ってはいるものの、楽天的な昔ながらの活劇は恥ずかしいのか、パロディ的にひねったものが目立つねえと「このあいだ暇つぶしに読んだ」作品が典型的な例として紹介されています。ジョージ・H・スミスの長編『カー・カバラ』(1969)。

「超空間の抜け穴のむこうに、地球そっくりの惑星がある。そこには、遠いむかしアーサー王が作ったといわれる国があり、邪悪な敵に滅ぼされようとしている。ところが、火器の発明されていないこの世界に、20世紀初頭の地球人が、ガトリング砲をたずさえてやってきたことから……」

 あれ?

【銀河のさすらいびと】【キース・ローマー】【】【ハヤカワ文庫SF】
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「時の深き淵より」 エドガー・ライス・バロウズ

2019-11-02 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 60年代末から70年代にかけて創元推理文庫とハヤカワ文庫から、それぞれ刊行されていたバロウズの太古世界シリーズの3冊目。創元版は後に全3作が合本として「時間に忘れられた国」として復刻されましたが、こちらは復刊のないハヤカワ版。

 ナチスの潜水艦U33に襲われた商船員たちは逆に拿捕に成功したものの、絶海の孤島キャスバックに漂着してしまった。しかも、Uボートは再びドイツ人によって奪還され、島を脱出してしまう。
 残された航海士ブラッドリーたちは帰還の方法を探るが、島には恐竜や剣歯虎ばかりでなく、自分以外の生き物を殺すことがその文化となっている邪悪な有翼人たちの勢力が存在していた……。

 最近ではまったく見ない巻末解説がポイント。福島正実による秘境SFのジャンル解説やその歴史が、ヴェルヌの「地底旅行」から小栗虫太郎の「有尾人」まで、未翻訳作品も大量に含めて語られているので、それだけでも一読の価値があります。

【時の深き淵より】【太古世界シリーズ3】【エドガー・ライス・バロウズ】【斎藤和明】【ハヤカワ文庫SF】【ロスト・ワールド・テーマ三部作】
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