帰宅すると、食卓の上に教科書を広げて息子が中間考査の勉強をしていました。
教科書を見ると、「世界史」、暗記をしていたのか、「ビザンチン帝国が・・・」とブツブツ言っていて、「ただいま!」と話かけても返事はありませんでした。
教科書をよく見ると、山川出版社と書いてあり、いまから40年も前の夏の日を急に想い出しました。
私が高校3年生の夏でした、在学していた工業高校では、就職が既に解禁となり、当時はあちこちで公害問題が発生して、高度経済成長の負の部分がクローズアップしはじめたころでしたが、まだオイルショックの前のためか、就職は、売り手市場の状態で、希望する生徒はほとんど就職できた状態でした。
そのような中で、一部の進学希望の生徒は、前に立ちはだかる大学受験という大きな壁に対峙せざるをえませんでした。
当時生徒会を一緒にやっていた、Sもその中の一人でした。
お互いに第一希望は、国立大学の二期校(当時はそんな呼び方をしていました。)でしたが、受験科目の世界史Bが難しく、共通の意見としては、「やはり教科書に戻るしかない!」となりました。
当時の工業高校では世界史はAだけでした、そんな訳で夏休みも終わりかけていた8月の終わりに、電車を乗り継いで、当時神田神保町にあった山川出版社に行き、普通高校で使っている世界史Bの教科書を購入しようと思いました。
事務所に入れていただき、女性の事務員の方に訳を話すと、「あんたたち大学受験頑張りなさい。」と私とSに1冊ずつ世界史Bの教科書を無償で持たせてくれました。
そのときにいただいた世界史Bの教科書の厚みと、グレーの表紙の感触は40年の時間が経ったいまでも脳裏に刻まれています。