私の仕事場は旧市街地にある7階建ての建物ですが、この建物の西側と東側壁面にチョウゲンボウが巣を作るようになって10年以上の年月が経過しました。
複数のつがいが巣を作り、孵化しない卵もあるでしょうが、単純計算をするとこの建物から100羽近くが育っていることになります。
長野県に「十三崖」という、かつて、この鳥が集団繁殖していた、国の天然記念物がありますが、最近この場所での繁殖が少なくなってしまったとのことを聞いています。
私のおぼろげな記憶では、昭和48年頃に山梨県の甲府市役所の市庁舎に巣を作った記録があったと思いますが、本来は断崖絶壁に巣を作るような鳥である彼らにとっては市街地にある単独峰のような建物は似たようなものなのでしょう。
そんなことを考えていると、仕事場の建物は天然記念物に匹敵するのだろうかとくだらぬことを想像してしまいました。
かつて、チョウゲンボウたちが落とすペリット(未消化の吐出物)を収集して彼らが餌に何を食べているのかを調査したことがありました。
この作業は繁殖期の春先から初夏にかけて、100個近いこの鳥のペリットの固まりを昼休みの休憩時間に収集したのですが、興味の無い同僚たちからは、ずいぶんと奇人変人扱いを受けたものでした。
たしかに建物の周りを割り箸とビニール袋を持ったおじさんが鳥のゲロを集めているのだから、興味の無い人にとっては確かにそうなのかもしれません。
採集したペリットを自宅に持ち帰り、シャーレに集めて水に浸けてふやかしてから、ピンセットを用いて鼠の骨や歯を分類していく、根気がいる作業です。
夏のエアコンも効かない自宅の机の上で、仕事で疲れた体で、来る日も来る日もこの作業を3週間ほど繰り返していました。
もともと未消化の嘔吐物だけに、シャーレから発する悪臭に対して配偶者からも変な目で見られて、連日苦情続きだったのも楽しい思い出でです。
その昔キュリー夫妻がラジウムを発見するまで、含有する鉱物を根気よく精製した話を小学生の頃に読んだ事を思い出し、つくづく研究者はこのような作業の繰り返しが研究の大半なのだろうなと思いました。
さて、結果はというと7割がたはカヤネズミとハタネズミの骨格と歯でした。
以前、「Nature」という自然科学系の論文でノルウェーだったかフィンランドの研究者が、チョウゲンボウたちが広い草原で鼠を探すのは、鼠の小便が反射する紫外線の反射率を眼で測って、飛翔中の空中から急降下して捕まえるという研究論文を載せていたのを読んだことがありましたが、私の仕事場のチョウゲンボウたちもそうだったのかと調査結果と比較して妙に感動したことがあります。
1月も中旬過ぎた頃に、太陽光がだんだんと、おぼろげながらも早春の気配を連れてくると、建物の壁面ではチョウゲンボウのペアリングが始まります。
この季節のうつろいを、着実に受け止めることができる自然界の営みには、私たち人間が忘れてしまった何かがあるのではないかと常々思う、今日この頃です。
複数のつがいが巣を作り、孵化しない卵もあるでしょうが、単純計算をするとこの建物から100羽近くが育っていることになります。
長野県に「十三崖」という、かつて、この鳥が集団繁殖していた、国の天然記念物がありますが、最近この場所での繁殖が少なくなってしまったとのことを聞いています。
私のおぼろげな記憶では、昭和48年頃に山梨県の甲府市役所の市庁舎に巣を作った記録があったと思いますが、本来は断崖絶壁に巣を作るような鳥である彼らにとっては市街地にある単独峰のような建物は似たようなものなのでしょう。
そんなことを考えていると、仕事場の建物は天然記念物に匹敵するのだろうかとくだらぬことを想像してしまいました。
かつて、チョウゲンボウたちが落とすペリット(未消化の吐出物)を収集して彼らが餌に何を食べているのかを調査したことがありました。
この作業は繁殖期の春先から初夏にかけて、100個近いこの鳥のペリットの固まりを昼休みの休憩時間に収集したのですが、興味の無い同僚たちからは、ずいぶんと奇人変人扱いを受けたものでした。
たしかに建物の周りを割り箸とビニール袋を持ったおじさんが鳥のゲロを集めているのだから、興味の無い人にとっては確かにそうなのかもしれません。
採集したペリットを自宅に持ち帰り、シャーレに集めて水に浸けてふやかしてから、ピンセットを用いて鼠の骨や歯を分類していく、根気がいる作業です。
夏のエアコンも効かない自宅の机の上で、仕事で疲れた体で、来る日も来る日もこの作業を3週間ほど繰り返していました。
もともと未消化の嘔吐物だけに、シャーレから発する悪臭に対して配偶者からも変な目で見られて、連日苦情続きだったのも楽しい思い出でです。
その昔キュリー夫妻がラジウムを発見するまで、含有する鉱物を根気よく精製した話を小学生の頃に読んだ事を思い出し、つくづく研究者はこのような作業の繰り返しが研究の大半なのだろうなと思いました。
さて、結果はというと7割がたはカヤネズミとハタネズミの骨格と歯でした。
以前、「Nature」という自然科学系の論文でノルウェーだったかフィンランドの研究者が、チョウゲンボウたちが広い草原で鼠を探すのは、鼠の小便が反射する紫外線の反射率を眼で測って、飛翔中の空中から急降下して捕まえるという研究論文を載せていたのを読んだことがありましたが、私の仕事場のチョウゲンボウたちもそうだったのかと調査結果と比較して妙に感動したことがあります。
1月も中旬過ぎた頃に、太陽光がだんだんと、おぼろげながらも早春の気配を連れてくると、建物の壁面ではチョウゲンボウのペアリングが始まります。
この季節のうつろいを、着実に受け止めることができる自然界の営みには、私たち人間が忘れてしまった何かがあるのではないかと常々思う、今日この頃です。