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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

いますぐ書け、の文章法

2011-10-02 19:55:49 | 堀井憲一郎
堀井憲一郎 2011年9月 ちくま新書
私の好きなモノ書きのホリイ氏の新刊。あのホリイ氏が文章の書き方について語るのかと思ったら、矢も盾もたまらずっつー感じで私は手に取りましたよ。
いい文章を書くことの基本は、読む人のことを考えて書け。
それと、タイトルのとおり、いますぐ書け。
そのことを、わかりやすく説明してくれてます。いちいち引用すると、すごく多くなっちゃうから、ここではしないけど。
(いいねぇ!と思ったとこに付箋貼ってったら〔←最近、こーゆーことをするときがある、悪いクセだ〕、10か所以上になっちゃった。)
それでも、ちょっとだけ紹介すると、たとえば「読む人のことを考えて書け」って点については、雑誌記事などでは「漢字を少なく、改行を多く」って、学校の作文では教えてくれない秘訣をあげてます。
「読む人」の設定が、その記事目当てに雑誌買ってくれた人、ぢゃないからですよね。基本的にあんまり興味ない人に、読んでもらうには、難しそう・読みにくそうはダメ。
そうかと思えば、会社で上司に提出するレポートだって、ふつうに問題意識→理念・仮説→調査・分析→結論って書き方はダメだと指摘しています。
それは、書く側の時間軸に沿った考えのたどった道を並べてる自己満足であって、読む人のこと考えたら、最初に結論!だそうです。うん、そうかもしれない。
「すぐ書け」のほうは、たとえば、ボキャブラリーを増やそうとか、表現の豊かさを学ぼうとか、そういうことはしないで、いまある国語力・いま持ってる言葉で書け、というのが基本。
中身が大事とか何とか言う前に、なんか、どっかに“正しい書き方”みたいなものがあんぢゃないかっていう、その意識がダメってことです。
そういうのは既に、自分のために書こうとしているんであって、もっと読んでくれる相手のこと考えなさいよってとこですか。
それと、いますぐ書けっていうのは、誰も一発でいい文章なんか書けっこない、プロだって書いたものをあーだこーだ何度も直すんだから、とにかく書けっていう意味もあります。
あと、考えたとおりの文章はつまらないってのもあります。
このへん、ホリイ氏は、文章を書いてる途中で、書きはじめる前まで考えてなかったような、新しいことが浮かんでこなかったら、それは失敗作、書きたくないこと書いてるからそんなことになる、とまで言います。
書き出したら、自分でも思いもつかなかった方向にふくらんでくのが楽しいんだし、そういう文章のほうが面白いんだから、最初から最後までの構想をまとめてから着手しようなんて思わないで、いますぐ書いたほうがいいってことですね。
書く側の意識の問題として、前著の「いつだって大変な時代」でも触れられてたんだけど、文章ってのは個人的なものだってことを強く認識せよっていう教えもあります。
文章ってのは、自分自身の体験とか、それに対する感想とか、個人的な疑問、個人的な意見で書くもの。自分が個人的に驚いたことを書くことこそが、読んだひとにも驚きとか面白さをあたえることができる。
なのに、こんな個人的な感じ方を書いちゃっていいんだろうかなんてヘンに疑問をもつと、急に自分というものを捨てて、なんだか公けの立場のようなフリをして、たいした知識もないのに、政府の政策はおかしい、みたいな社会的発言のようなものをしたがる。そういうのはダメ。
そこらあたりについて、たとえば地球温暖化とか景気対策といったことについて、「その問題について考えた時間が一万時間を越えているなら」自分自身の話題として話してよろしい、なんて分かりやすいこと言ってくれてます。
この「一万時間」なんてのは、べつに科学的根拠のようなものはないんだけど、そこをズバッと「一万時間」って言い切っちゃうのが、読んでて面白い文章のテクニックのひとつだったりします。「書くかぎりは、断定する」ってカッコいい教えですが、それこそが読む人のため、ってことです。

うーん、おもしろいな、この本。ときどき何度も読み返すタイプの本になりそうです。
目次の項目を挙げたら、雰囲気わかるかな?
1章 プロとアマチュアの決定的な差
2章 文章は人を変えるために書け
3章 客観的に書かれた文章は使えない
4章 直感のみが文章をおもしろくする
5章 文章は言い切らないといけない
6章 文章で自己表現はできない
7章 事前に考えたことしか書かれてない文章は失敗である
8章 文章を書くのは頭ではなく肉体の作業だ
9章 踊りながら書け

…ちなみに、
>どんな種類の文章でも、きちんとした文章であるなら、必ずタイトルを付けることができる。そしてそれは、誰がつけてもだいたい同じ方向性のものになる。これは、優れた文章の特徴だ。
っていうことも本書内で指摘されています。なるほどねぇ。
コメント
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