many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

シャーロック・ホームズ最後の挨拶

2014-11-19 19:30:53 | 読んだ本
コナン・ドイル/延原謙訳 昭和30年 新潮文庫版
私の持ってるのは、昭和55年の46刷。
こないだの「透明人間」の副題は「グロテスクな綺譚」だったんだけど、この短編集の冒頭は、
>「ワトスン君、きみはそれでも文学者といわなくちゃなるまいが、怪奇グロテスクという言葉をどう定義するかね?」
というホームズの言葉で始まる。ワトスン先生は、
>「不思議ストレンジとか、世の常ならぬリマーカブルとか……」
というのだが、ホームズは頭をふって、
>「それ以上の意味がふくまれている。悲劇的な、恐ろしさを思わすものが、その奥に感じられる言葉だ。(略)」
という。だからどうしたということもないが、悲劇的なというところが、わかったようなわからないようなまま使ってしまう私なんかには大事な定義だと思ったので。
(よく昭和の(?)マンガに向けた悪口の決まり文句なんかで「エロ・グロ・ナンセンス」とかっていうようなとこあるんだけど、これって不快ぐらいの意味しかないんぢゃないかと思う。)
さて、このホームズ第四短編集「His Last Bow」は、8つの短編からなっている。
「ウィステリア荘」Wisteria Lodge.
怪奇を体験したと電報を打ってきた依頼者のエクルズは、最近親しくなったばかりのガルシアという人物の住むウィステリア荘を訪問した。
しかし、一夜明けると、客である自分を残して、主人も下男もコックも姿をくらましてしまったのだという。
「ボール箱」The Cardboard Box.
隠居にちかい生活をしている五十歳の婦人のもとに、アイルランドからの小包で、人の耳が二つ入ったボール箱が送りつけられた。
レストレード警部の要請でホームズが現地に赴くと、注意をひいたのは変わったところのある紐と耳のかたち。
「赤い輪」The Red Circle.
依頼人は下宿の主婦のワレン夫人、こんどきた下宿人は部屋に閉じこもったきり姿を見せず、欲しいものは紙に印字したメモをよこすのだという。
心配いらないと一度は依頼人を帰すが、夫が拉致されかかったと再び駆け込んでくるにあたり、ホームズたちは現地に張り込むことになる。
「ブルース・パティントン設計書」The Bruce-Partinton Plans.
深い霧の日が続くロンドン、ある朝地下鉄の線路近くで死体が発見された。
依頼者はホームズの兄マイクロフト、死体になった男は極秘の新型潜航艇の設計書を持ち出しており、国家のために全力で行方を探せという。
「瀕死の探偵」The Dying Detective.
ハドスン夫人に呼ばれてワトスンが駈けつけてみると、ホームズは痩せ細って熱にうなされ譫言を口走るような状態。
医者の診察をうけるべきだとワトスンがいうと、ホームズは東洋の病気に詳しいカルヴァトン・スミスという人物を呼んできてくれという。
「フランシス・カーファクス姫の失跡」The Disappearance of Lady Frances Carfax.
伯爵家の末裔フランシス姫からの便りが途絶えたことから、ワトスンがホームズの代理でローザンヌまで調査に赴く。
調べていくうちに、あるときは伝道師シュレシンガ博士またあるときは神聖(ホリイ)ピーターズと呼ばれる男の存在が浮かびあがる。
「悪魔の足」The Devil's Foot.
医師から静養を命ぜられたホームズは、ワトスンといっしょにコーンウォールにきていたが、静かなこの地方でも事件が起きる。
ある家で、部屋のなかでテーブルを囲み椅子にすわったまま、男の兄弟は二人とも発狂、妹ひとりは恐怖の表情を浮かべたまま死んでいた。
「最後の挨拶」His Last Bow.
三人称で書かれているし、冒頭からわかりやすい事件発生の模様が書かれてるわけでもないし、初めて読んだときは戸惑った。
第一次大戦直前、イギリス国内に潜入しているドイツのスパイであるフォン・ボルクは、成果をあげて撤退しようとしていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする