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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

のら犬は一生懸命

2014-11-25 18:02:19 | 読んだ本
ウォーレン・マーフィー/田村義進訳 昭和63年 ハヤカワ文庫版
推理小説つながり。
って、どうかな、これを推理小説と呼んでいいかどうか。
少なくとも私は、推理小説を求められても、ひとにはこれをすすめないな。
だって、あいかわらず主人公は、聞き込み先で名前を訊かれても、
>「デヴリン・トレーシー。友人はトレースと呼ぶ」
>「敵はなんて呼ぶの」
>「敵は三人しかいない。ひとりは元亭主と呼び、残るふたりは親父と呼ぶ」
なんて調子で与太をとばしてばかりだし。
というトレースシリーズの第五作、原題は「ONCE A MUTT」。ひさしぶりに読み返してみた。
初めて読んだときには辞書をひいたりなんかしなかったんだけど、いま改めて調べたら、MUTTって雑種犬という意味とまぬけという意味があるそうで。
ストーリーのほうは、7年前に飛行機事故で行方不明になった人物の死亡認定をめぐる調査が仕事。
雇い主の保険会社は、当然保険金を支払いたくないんだけど、誰も否定するだけの証拠はみつけられない。
で、トレースにお鉢がまわってくるんだが、そんな引き受けたくない面倒な仕事を引き受けざるをえない状況が、もうひとつのおもしろいストーリー。
友人に誘われて、海辺の街のレストランに投資話に乗ったんだが、開店する前から物件が水浸しになってしまって、修繕のためにカネが必要になったんで、いやいや働く破目になったというもの。
行く先々で、「新規事業の倒産率の一番高いのは飲食店業で、新しいレストランの75%は赤字倒産している」という話を聞かされてしまうし。
それでも、かねてから、タルサの街を駐車場にするとか、自動車のフロントガラスに逆さ文字を貼りつけるとかってアイデアで一儲けを妄想してた、トレースにしては堅実な選択のつもりだったんだろうけど。
まあ、そのへんはいいとして、本作のなかにトレースとチコの出会いのエピソードがあったのが興味深かったりした。
(いままでのなかにもあったのかな、おぼえていないだけかも。)
離婚してギャンブラーになったあと、保険会社の社長が娼婦に百万ドルの証券を巻きあげられようとしていたところを助けてやったころ、
>男に追いかけられて、裸のままマンションの廊下にでてきたところだった。
>トレースは男をぶんのめして、服をとりもどし、ブラックジャックのディーラーの仕事を見つけてやった。(略)
のが出会いだそうだ。なかなかおもしろい世界の住人だ。
コメント
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