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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

軽いつづら

2016-06-29 21:04:32 | 丸谷才一
丸谷才一 平成8年 新潮文庫版
ちかごろ妙に読みたくなって、手に入るだけポツポツ集めたりしてる、丸谷才一。
これは、平成5年に刊行されたらしい、エッセイ集というか、カバーの紹介によれば「コラムの名品」の文庫版。
話題は多岐に及んでて、とても楽しい。
いくつか気に入った箇所を抜き書きしときますか。
熊本鎮台司令官の種田政明少将が殺害されたとき、日本橋藝者の小勝が打った電報が名文とされてんだけど、
>しかし小勝がどういふわけで種田少将とそんな仲になつたかといふ事情は知られてゐない。別に知る必要なんかないやうなもんですが、書いたつていいでせう。そんなこと知りたくないと思ふ人は、これから先は読むな。ほかに読むべき書は多いのだ。(「藝者小勝」)
という一節、「そんなこと~」以降のとこ、傑作ですね、いいねえ。
>文藝批評で大事なのは、まづ、作品に思想や倫理や宗教性を探すのではなく、美を見出だしてこれを正味する態度です。(「西田直養」)
ってのは、西田直養って人が、「世の飲食にたとへていはゞ、古今風は味噌吸物なり。新古今はすまし吸物なり」と評したものに対する評価。
文藝春秋の社内で芥川賞と直木賞のトトカルチョが行われたたっていう噂に関して、
>これに参加するためには、候補作をじつくり読む必要があるし、選考委員の文学観も知つてゐなくちやならない。編集者としての訓練には持つて来いだといふ説を聞いたことがあります。(「二つのトトカルチョ」)
なんて言ってるのもいいねえ。
どうでもいい話に思えるなかで、私が今んとこいちばん気に入ったのは、
>わたしがいま一番聴きたいと思ふレコードは、マリア・ユージナの奏いたモーツァルトのピアノ・コンチェルト23番。(「ピアノ・コンチェルト23番」)
で始まる話。スターリンが無理やり作らせたレコードがあるとかないとかって逸話。

コメント
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