many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

天国が降ってくる

2016-06-24 07:06:27 | 読んだ本
島田雅彦 1990年 福武文庫版
以前読んだことあるけど、今般古本屋で買ってあらためて読むことにした、島田雅彦のむかしの小説。
「亡命旅行者は叫び呟く」「夢遊王国のための音楽」とあわせて手に入れたんだけど、これ、いちばん好きだな。
なんといっても、ラストが強烈で、初めて読んだときも衝撃を受けて、ずっと忘れらんない。
そのわりには、ストーリーとか主人公の名前とかは、ぜんぜん憶えてなかったんだけど。
主人公は葦原真理男くんという男の子だが、その誕生に至るまでの葦原家の歴史を最初に語るって構成がいい。
>放浪癖を持つ大酒飲みの錯乱山師、できっこない夢の蝋燭作りに人生の大半を浪費した偏執狂、愚鈍と紙一重のところで夫の無法に耐え続けたマゾヒストの魔女、クソ真面目な家出青年、怪物趣味のプチブル娘
といった遺伝子を受け継いだってことを滔々と書き連ねられると、宿命みたいなものを感じさせられるし。
で、両親についていって、モスクワで少年時代を過ごすんだけど、親に
「おまえは腐っても日本人なんだから、しっかりしろよ。日本人は日本人であるよりしようがないんだから」
と言われても、彼自身は、
>もう葦原家も日本人も国際人もたくさんだ。そんな群体動物は集団自殺でもすればいい。いわれのない責任とやらを負って。僕はあいにく自由の身なのだ。何処にも属す必要も感じないんだよ。(p.203)
と独りごちる境地に至っている。
で、いろいろあって、二十歳になるころには絶望しきった真理男は、自分の記憶している限りのことを言葉に変えて、テープに吹き込んで残すカタログ作りに没頭することになる。


コメント
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