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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

忍者武芸帳 影丸伝

2016-06-09 20:57:10 | マンガ
白土三平 1997年 小学館文庫版 全8巻
白土三平は、私にとっては“だいぶ前の時代のひと”にあたるもんで、ほとんど読んでない。
ただ、四方田犬彦の『白土三平論』に、「これは戦後日本漫画史における金字塔というべき作品である。(文庫版p.114)」とあるのを読んでからは、なんとかして一度は読みたいと思ってたのが、これ『忍者武芸帳』。
原典は、1959年から1962年にかけて描かれたもので、当時の貸本業界にしても異例のボリュームの大長編。
物語の舞台は永禄七年(1564年)から天正十年(1582年)の戦国時代。
で、話は、忍者の影丸が中心になって、武芸を競い争うものかと思ったら、なんかそんな単純ではなかった。
ひとりの忍者をスーパーヒーローに仕立てて、その生涯を語るスペクタクルとか、ってわけぢゃなかった。
いつのまにか、戦いのポイントは、大名とそれに反乱する一揆とのことになっていた。
そのなかで影丸は、巻物片手に妖術を使うとかってんぢゃなく、一揆の頭目となっている。
ただし、不死身ではある。死んだ場面も出てくるけど、また現れて蜂起の先頭に立つ。
そこのところは、「わしが死ねば、その後を継ぐ者がかならず出る」と影丸自らが言う、存在の本質に関わってくる。
>あらゆる個人が狭小な個人性の枠から離脱し、歴史的な闘争の主体として匿名を帯びることと本質的に複数性のもとにあるというシステム(『白土三平論』p.136)
ということで、影丸ってのは個人ぢゃないってばない。
あと、忍者ってものを、
>単に人間界における権力争いのなかでの暗殺者の位置に置くことに満足せず、さらに認識を拡げて、自然と人間の間をとり結ぶトリックスター的な媒介者(同p.495)
って存在として描いてるのも、奥深さを感じさせるとこ。
読みだしたら、けっこうスピードつけてページめくっていけたけど、いろいろ考えながら読み返さないといけないねえ、そのうち。
コメント
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