長岡裕也 2019年2月 宝島社
これは、片上大輔七段がブログで「よくこれだけ書いたなあ」と評していたので、読んでみることにした。
羽生永世七冠と10年間にわたり研究会(VS)をしてる、羽生さんより15歳下の著者からみた羽生さんのことが主で、この際AIはあんまり関係ない。
羽生さんから研究会の相手として指名されたことは「謎」とまで書いてるけど、
>(略)私が序盤研究の情報を一方的に羽生さんに伝えているといったことはない。(p.198)
ということなので、そう単純なことでもなさそうだ。
ソフトの影響も含めた、最先端の戦術等について、羽生さんは、
>(略)「より先入観が少ないと思われる下の世代の棋士の感覚を取り入れる」という堅実な選択(略)(p.188)
をしているんだろうということらしい。
著者の見立てでは羽生さんが先入観にとらわれない指し手を選択してるのは、「能力に加えて本人の明確な課題意識による努力」があるんだという。
羽生さんはよく読むからねえと私なんかは思う、ふつうのひとが読みを打ち切るところからさらに掘り下げてることがよくあって、選択肢を簡単には切り捨てない。
羽生さんがソフトに頼らない点については、実力があるから勝つための手を機械で探す必要なんかなくて、
>(略)未知の局面に入る前に、ソフト的に言えば「マイナスに大きくふれる手」だけは指さないよう注意する(略)(p.167)
のが大事だっていうスタンスというか姿勢だからってことになるらしい。
そうなんだよなあ、簡単に結論が出ると思ってなくて、混沌となることを怖れないのが強さなんだよなあと思う。
そういやあ、去年の竜王戦の何局目かの終局後に、ソフトの評価が悪くなった手を訊いた観戦記者がいたみたいだけど、そのとき機嫌悪そうだったなあ、羽生さん。
第1章 1本の電話
第2章 「VS」の真実
第3章 ソフトとの10年戦争
第4章 人工知能時代の本質