many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ダイナマイト・ビンボー

2015-09-18 20:22:41 | 読んだ本
萱野葵 平成15年 角川文庫版
前回の角田光代さんのと同じころに読んだんぢゃないだろうか、って程度のつながり。
まあ同じ文庫だし、著者名おなじカ行だし、書店で並んでたから、いっしょに買ったんではないかと。
「ダイナマイト・ビンボー」は、大学を五年かけて卒業したけど、就職試験24社落ちて、企業の書類を管理する小さな倉庫会社で働いてる、反町鏡さんが主人公、女性なんだけど「オレ」って一人称でしゃべる。
三つ年下の汚夢(おむ)って弟と同居してるが、この弟は基本的にひきこもりで、アルコール依存症の前歴もある。
働くのがヤになった鏡は、身体はめちゃめちゃ健康なんだけど、医者にウソ言ったりして、強迫神経症ってことにしてもらって、やがて生活保護を勝ち取る。
どうでもいいけど、もう働く気なんかなくてダラダラしてたとこへ、福祉事務所の相談員に諭され、警察官採用試験の勉強をやる破目になるんだけど、そこで
>勉強というのは本当にお金のかからない娯楽だ
ってフレーズが出てくるのがおもしろい。(談志家元は「学問とは、貧乏人の暇つぶし」と言った。)
もうひとつの収録作「Merci la vie(メルシー・ラ・ヴィ)」は、二十代のOLの茱萸(ぐみ)さんが主人公。
ストーリーはともかく、この女性がやたらいろんなもの作ったり買ったりしてきて、貪り食うさまがこれでもかってくらい描かれてるのが印象的。
>(略)カラになったビールの缶を、中を丁寧に水でゆすいで、部屋の角に置いた、半透明の四十五リットルポリ袋に投げ込んだ。(略)
みたいなのが、妙にリアルで感心した記憶がある、はじめて読んだとき。
ただ食べたり飲んだりしてるだけかと思いきや、夜中にドアの郵便受けの窓から部屋の中を覗く二つの黒目がちな眼を見つけたあたりから、急にスリリングになってくる。
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幸福な遊戯

2015-09-17 19:48:23 | 読んだ本
角田光代 平成15年 角川文庫版
前回のヤマザキマリさんの文庫の解説が、角田光代さんだったので、そこからつながり。
角田光代さんの名前は、なんだかRCサクセション関係で、どっかに目に入ったんだと思うが、小説読んだのはこれだけかな。
1991年に単行本が出たらしいけど、私は文庫になったのをたまたま見かけて買ったんではないかと。
短編が三つ入ってる。
「幸福な遊戯」は、新人文学賞受賞したデビュー作だそうで。
語り手の「私」ことサトコと、大学四年間のクラスメイトだった立人と、立人の高校の同級生だったハルオの3名が、庭付きの木造一軒家で共同生活をすることにした、家賃十万を割り勘、日当たりのいい部屋のサトコが千円だけ多く払う。
週三回大学にいくサトコと、バイトしながら大学院に通う立人と、夜バイトに行くハルオで、生活はばらばらなようでも、顔をそろえる時間も多かったし、家事も適当に役目分け合ってたりして、なかなか居心地がよかった。
けど、ちょっとしたことをきっかけに、最初にハルオが、そのあとで立人がこの家を出て新たな道に進むことを選択する。
「無愁天使」は、二十歳くらいの女性の語る話で、三人家族なんだけど父と妹はすでに家にいなくて、その家のなかは床が見えないくらい服とか家具とかとにかく物が散乱してて、なにか壊れちゃってる状態。
経済的に苦しくなったんで、風俗で働くことにしたんだけど、そこで妙な老けた客と出会い、嘘と本当が混じったような身の上話をすることになる。
「銭湯」は、二十三になる八重子の話。学生のときから劇団に所属してて、就職しないで芝居をつづけて、好きなように生きると親にも宣言してたけど、やっぱ小さい会社に就職したが、親にはそのこと言わずに架空の日々を手紙で報告してたりする。
会社ではヒステリックな先輩女性社員にこまかいことばかりについて説教され、銭湯にいくと家族や孫について同じ話ばかり長く繰り返すことで周囲にも嫌われている老婆につかまっちゃったりする。みんなどうしてこうなのかねえと、他人のことをみると思うけど、自分もまあいろいろある。
うーん、ひさしぶりに読み返してみたけど、どれも私には何かピンとくるものがないなあ、やっぱり。ちょっと私にはわからない感覚がメインになってる気がする。

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望遠ニッポン見聞録

2015-09-15 18:24:39 | 読んだ本
ヤマザキマリ 平成27年8月 幻冬舎文庫版
ヤマザキマリさんの名前を見たのは、先月くらいだったか『優駿』で対談の記事に出ていたときで。
漫画家って肩書を見ても、誰だろう、知らないな最近のひとは、なんて私は思ってしまったんだけど。
よくプロフィールをみたら『プリニウス』を描いてるひとぢゃないですか、それなら読んだことある、知ってる知ってる。(というほど知らないが。)
で、マンガぢゃない、この文庫は、出たばかりのところを書店で買ったんぢゃないかと思う、飛行機での移動のときに読む本探してたときだろう。
この文庫のカバーのプロフィールによれば、著者は
>一九六七年東京都出身。十七歳の時、絵の勉強のためイタリア・フィレンツェに単身渡り、貧困生活ゆえに賞金目当てで漫画を描き始める。その後、中東、ポルトガル、シカゴなど海外生活歴は十数年。(略)
ということらしく、旦那さんもイタリア人だそうで。
そういう著者の目から見たニッポン論なんで、ふつうの日本人が書くのとも、来日した外国人が書くのとも、ちょっとちがう角度というか、独特な距離感から眺めたものになるんだろう。
「伊達男は伊太利亜にはどこ探してもおらず。」の章では、日本の某ファッション誌の某イタリア人タレントのとりあげかたについて、実際のイタリアには
>あの雑誌に出て来るようなファッショナブルな服装に身を包んだオッサンはハッキリ言って一人もいない。(略)美しく若い女性を虜にできるような魅惑のオーラを発している男なんて徹底的に皆無だ。
と断言する。それだけぢゃなくて、
>そんなオーラをちょっとでも発生させた日には、嫉妬心を焚き付けられたそれぞれの妻からどんな恐ろしい制裁を下されるかわかったものではない。
と続くところがおもしろいんだけどね。表面的な男の姿だけ見ての話ぢゃなくて、家族ぐるみでつきあってるから、そこまで言う。
「決死のディスカッション」の章では、イタリア人の旦那が、家族で食事するとき、黙って物を食うだけだと大いに不満で、会話というだけぢゃなくディスカッションがしたいと言うところがある。
日本人の討論ベタについては、誰でもある程度指摘することはできるかもしれないが、著者は「ヤマザキさん、なんでイタリア語になるとそんなに声が低くなって攻撃的な感じになるんですか?」と人から言われる、もう体質としてイタリア語になると頭がディスカッションモードになるということをわかってる生々しさがあるから、話おもしろい。
あと、意外とおもしろかったのは、ブラジル人のパワフルぶりを書いた「いっそブラジル人になれればいいのに。」という章も。ブラジル人は疲れを知らないって。


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アブミに立つのがヘタでも、安定したペースで走る馬に助けられる

2015-09-14 18:50:10 | 馬が好き
乗馬にいく。
わりとさわやかな天気だ。私のほうは、わりとドロドロとした気分なんで、すこしでもそれが晴れるためには、馬の力が必要なところ。

きょうの馬は、ポートマジン、基本癒し系、でも気をつけないと、ときどきファイターってイメージかな、その一鞍目。
馬場に入って常歩、なんか元気いいなあ、ポートマジン。
馬上体操では、股関節と膝関節と足首の関節をブラブラと動かす。
手綱伸ばしたままだけど、内の脚でグッと押しながら回ると、隅角をちゃんと奥までいくのでホメる。
前に行く気は満々そうなので、そろそろブレーキ利くか確かめるかと思ったとこで、部班開始するので列になる。
きょうはわずか3頭、しかたないなあ先頭にされても、そのかわりズンズン行っちゃっても知らないよ。
常歩をすこし長くやる感じ、アブミをしっかり踏みなさいと、おっと爪先が外向くのは私の悪いくせ。
速歩スタート、軽速歩で。アブミをしっかり踏みなさい、カカトを下げて。
手が前に出過ぎ、ヒジをそんなに伸ばさない、言われて標準ポジションに戻す。なんか最近、手を前に出すんだよね、ついつい。
斜めに手前を替えると、斜線上でちょっと進路がフラフラしちゃうので、どんどん前に出す。隅角では内に入っちゃうので、奥まで押し込む。いずれにしても前に出る勢いが足んないかな。
半巻きするときも、やや勢い弱い感じ、前に出てないのに曲げようとするから内に入るようになっちゃう、弧を描くときでも前に動いていかないと。
ベースの勢いつくるかーと、何回か脚つかう、反応したときホメると、だんだんやる気が出てきたみたい。
アブミに立つ。真っ直ぐ立って、アタマからカカトまで一直線にって。
「ヒザで締めない、脚は馬体に接しても力入れない、手綱にぶら下がらない、アブミを踏むことで立つ」「まっすぐ立つ、前傾ぢゃない」「それはカカトに乗ってる、アブミに乗って」
なんか、なかなかうまくいかない、バランスが以前より悪くなってないか、俺?
ポートマジンは、反撞がやさしいので、アブミに立つのに苦労しない馬なんだけどな。
グラグラすると、馬のジャマしてるのか、スピードが落ちる。スピードが落ちそうになると、座って脚使うのめんどくさいので、ムチをチラチラっと見せると、それだけで動いてくれるし。
軽速歩する、軽速歩でも立ったときと同じ感覚でアブミ踏んづけていけと。
正反撞する、正反撞でも立ってたときと同じ感覚でアブミ踏んづけていけと。
んぢゃ、輪乗りで駈歩。よく動く。駈歩してると、ときどき強くなることがあったと思ったので、いまのうちにブレーキ利くかもこそっと確かめる。
駈歩で、二歩立ち上がって二歩座る、繰り返し。
立っても坐っても、人間同じ場所にいなきゃいけないはずなんだけど、ぶれてるせいか、ときどきドスンと後ろに座っちゃうことがある。なんかバランスわるいなぁ、俺。
駈歩で蹄跡行進しながら、三歩立ち上がって三歩座る。こんど四歩立ち上がって四歩座る。
座ったときにシートして脚つかって前出しておく、立ったときは何もしない。
「今日は上で何やってんだかなあ」って顔してるポートマジンだが、いっしょけんめ前に進み続けてくれる、いい馬だ。
長蹄跡でアブミに立って、短蹄跡では座る。座ったときに前に出して、特に隅角のとこで強くしとくと、長蹄跡では何もしないで済む。
ふつうに座っての駈歩、歩度を伸ばす、そのあと歩度を詰める。
速歩なるギリギリまで詰めろと言われて、ホントに速歩に落ちてしまう。
駈歩出し直して、前進の勢いをつくったら、脚でしっかり挟んで、シートでガマンさせる、人間がふわふわとしてはいけない。
左右の手前の駈歩でそんなことしたら、一旦常歩にして、アブミ二つ短くする。
こんどは速歩でやる。短蹄跡で軽速歩、長蹄跡は半分まで真っ直ぐアブミに立ち、残りの半分は前傾姿勢する。
前傾姿勢は言わずもがなで、股関節から曲げて上体の角度が変わるはずなんだけど、ひさしぶりにやると、やっぱり腰からただの前かがみになってしまう。腰張って、障害飛ぶイメージを思い出す。
何回か繰り返して、おしまい。秋になって涼しくなったと思ったら、急に練習がみっちりになってきたか? なかなか充実した部班でしたぁ。
それにしても乗りやすかったな、ポートマジン。きょうは安定したペースで前に進み続けてくれて、ほとんどバトルになる場面なし、非常にラクだった。

手入れしたあと、リンゴやると喜んで食う。
(きょうは写真撮ってるヒマなかったので、馬場での写真無し。)
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危険な未亡人

2015-09-11 20:47:53 | 読んだ本
E・S・ガードナー/高橋豊訳 1990年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
というわけで、「欲しいものがなにかわかっていない奴は、欲しいものを手に入れることができない」というフレーズを探すために読み続けたことのある、ペリイ・メイスンシリーズのひとつ。持ってる文庫は、古本っぽくないなあ、改訳版だっていうけど、それを書店で買ったのかな。
原題は「THE CASE OF THE DANGEROUS DOWAGER」だけど、DOWAGERって単語は知らなかったな。冒頭のシーンで、メイスンが面と向かって何と言おうかためらってると、依頼人である女性が自らその呼称を使ったようだけどね。
それはさておき、依頼人のマチルダ・ベンソンさんは、強烈なタイプのおばさんで、住所と年齢をメイスンに訊かれても「年齢は知ったことじゃないわ」と言い放つ。
でも、孫娘の家族にはもう六つになる娘がいて、実はひいおばあさんという立場だと言う。物語の中盤でイブニングドレス姿で現れた彼女は「どうみても五十代後半にしか見えなかった」って描写されてるけど、物語の最後のほうでは68歳だと彼女自らが明かす。
まあ、トシはいいとして、依頼の内容は、小さい娘もいるのに賭博好きが止まない孫娘のシルビアのことで、バクチに負けてシルビアがつくった借用証をメイスンに取り返してほしいという。
そうやって孫娘が単純にかわいいのかと思うと、甘やかす気はないので、自分が借金分のカネを出すことは、シルビアにも借用証を持ってる側にも知られたくない、という条件つき。
借用証を持ってる賭博の胴元のほうでは、それをシルビアの夫に高いカネで引き取らせようとしているふしがあって、そうなるといずれ起きる離婚の争いで妻は不利になるというややこしい状況もからんでいる。
ということでメイスンは探偵のドレイクと一緒に、十二海里領海水域の外に停泊している賭博船に乗り込んでって、一芝居うつことになったわけだが、不運も重なりこれが失敗におわる。
借用証を取り返すどころか、そこでお約束の殺人事件が起きたのに巻きこまれてしまう。容疑者は現場である船に居合わせたシルビアになるし、メイスンも逃亡を助けた共犯の容疑で追われる。
自分の捜査がおわらないうちに拘束されるわけにはいかないメイスンは身を隠して動きまわるが、ドレイクの配下の探偵が裏切って新聞に情報を漏らしたため、圧倒的不利な立場になり、「重罪の私和、事後共犯および殺人の容疑」で逮捕令状まで用意されることになってしまう。
でも、渡された召喚状で出頭を命ぜられた連邦大陪審までは行かず、地方検事事務所に関係者一同が会した場で、大逆転劇が起きて、事件は解決する、ちゃんちゃん。そこではメイスン以上に依頼人の未亡人が活躍するという異例の展開。
どうでもいいけど、本作でメイスンをかくまうべく活躍する秘書のデラ・ストリートのはたらきは、いつもながらたいしたもので、
>「先生の考えてることは二文節先までわかってるわ」
とか
>「ポール、先生がこうしろといったら、あたしはやるわ。彼に反対してもむだだということを、あたしは経験で知ってるのよ」
とか
>「でも、たぶんむだでしょうね。火山の上に坐るのが大好きな人なんだから」
とかメイスンのことを理解しているセリフが多い。
夜明け前にドレイクを叩き起こして捜査状況の報告を求めたときに、「われらの敵に混乱を」なんて言って乾杯するのは、なかなか素敵な態度です。
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