かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

十字軍の物語3

2012年02月02日 | Books

snow強力に寒い日が続いている。雪国の方々はたいへんだ。
特に、玉川温泉で、雪崩に遭われた方は、可哀そうだった。
玉川温泉の存在は、知らなかったのだが、昨夏台湾に行った時、”北投石”の話を聞いて、たまたま知った。台湾の北投温泉と、この玉川温泉でしかとれない薬効のある石で(一種の放射能を発するらしい)、今購入できるのは、台湾だけということだった。たぶん、この石の効用を信じて、湯治されている方だったのだろう。



昨年暮れに、十字軍の物語3(最終回)が出た。ローマ人の物語から始まって、地中海世界、十字軍と、足掛け何年読んできただろう。かつてのユーミンのアルバムのような存在になってきた。十字軍が最終回で、次は、ルネサンスまで行くのか?

1年に1冊だから、いつも読み始めは、ややとまどう。この独特のタッチに慣れるのと、前のストーリーを思い起こしながらのスタートになるからだ。
しかし、少したつと、いつも、どんどん吸い寄せられ、あっという間に読めてしまう。
あまり歴史的背景も知らない読者にも、わかりやすく、かつリアルに、物語を、展開してくれる。講談を聞いているみたい。本書も、その例外ではなかった。

今回は、3次から8次(=最後)の十字軍を描いている。
最初の3次では、イスラムトップの、サラディンと、キリスト側トップのりチャードのかけ引きが秀逸だ。リチャード王が、元祖ライオンンハート(獅子心王)とは、初めて知った。
後世の人々から、いろんな言われ方をしている二人だが、塩野さんは、両者とも魅力的に描いている。

さらに、4次、5次と進み、登場人物も世代を変えていくのだが、だんだん法王の醜悪さが強調されるタッチになっていく。イスラム側は、イェルサレムの所有は継続しつつ、巡礼は許したり、所有すら放棄したりする講和を結ぼうとするのだが、法王は、相手と話し合いをして、イェルサレムを奪回しては価値がなく、キリスト教徒が血を流して奪回してこそ初めて価値があると言い張り、戦い、敗れ、元も子もなくすのだ。法王は、軍事力を使わない共生は、断固拒否し続けた。
そして8次では、完全に敗北する。

さらに敗北後、十字軍の中心的戦力だったテンプル騎士団を、フランス王は、異端裁判所で、絶滅させるのだ。まぁ、ひじょうに後味の悪い、キリスト教側にとっては、最悪の結末だ。
この時のトラウマが、近代以降の宗教対立につながっていると思いたくもなってくる。

塩野さんの本の面白いところの一つは、単なる歴史物語ではなく、現代にもつながる教訓めいたものを、随所に織り込んでいることだ。
『情報を活用できるのは、見たくない現実でも直視する人だけなのである。』
塩野さんが、今の国会に言いたいことを書いているようだ。

この辺の歴史に疎いのは、私だけではないだろう。でも、本書を読んで、この頃の2百年のイメージがつかめたし、インディアナジョーンズに出てきた、テンプル騎士団が何なのかも、わかった。
とにかく読み物として、面白いから、誰にでもお勧めできる。
時間が立てば、ローマ人の物語のように、文庫化されるかもしれないけど。

コメント
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