本書は、バリーマイルズさんによるインサイダー本だが、当時のビートルズを取り巻く様子がよくわかって、極めて興味深い1冊になっている。
ブライアンエプスタインが亡くなって、方向感を失ったビートルズの様子は、昨日のパティボイドさんのトークイベントでも語られたが、本当になんでも出来る、でもなにもできないビートルズだった。
その中で、それを象徴するのが、ザップルレコード。
アップルは、ご案内のとおり、ビートルズのレコードは、好調だったが、その他のプロジェクトは、両極端。ほとんど、金持ちの道楽レベルのものも多かった。
では、ザップルはどうだったか?という問に対しては、本書を読んだ読者が回答するべきなのだろう。
今に残ったものがほとんどないといえば、結果はNOなのだが、その時代の匂いを具現化しようとしたという観点からは、YESなのだろう。
ロックが誕生したように、ロックが完成形に達したかもしれない段階で、次の何かを探そうとしたのが、このザップルプロジェクトではなかったかと本書を読むと思う。
特にPMの熱心さが強調される。たぶんそうだったのだろう。
GHや、RSは、リーダーシップを発揮するタイプではなかったし、JLは、YOにゾッコンだったのだから。
ただ、そのプロジェクトの走りの段階で、JLとYOの出会いのきっかけを作っていたというもの皮肉なことだ。
1960年代の後半、ドラッグと、退廃的な空気に覆われた世界を、4人がどう生きようかとしたのがわかるドキュメントとして貴重な一冊。