口コミを発生させることは飲食店では特に重要なプロモーション戦略である。口コミは費用がかからず(もしくは最小限で)、それでいて効果の高い宣伝方法だからである。
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実体験1
地元の割烹料理店へ行った。
値段はそれなりにする店であり、当然、味も店の雰囲気も値段相応で普通に満足できる内容だった。
私がもしこの店についての感想を聞かれたら「店の雰囲気もいいし、料理も美味しいし、値段相応の店だよね。」と答えるだろう。
別の日、私は上司にお勧めの店を教えてもらった。
上司は私に「すごくお勧めの店があるよ。味は薄味だから、濃い味に慣れている村田君は物足りないように感じてしまうかもしれないな。でも、なぜおススメかって、その薄味がその店のこだわりで、薄味にすることで食材そのものの美味しさを最大限に活かしているからなんだよ。それに、そこで出すお吸い物は、北海道産の昆布からダシをとっているんだけど、何時間も掛けてダシを抽出し、しかも一番ダシしか使わないこだわりをもっているんだよ。是非行ってきな。」と。
上司がお勧めする店は私が以前行った割烹料理店だった。
もし私が先に上司の話を聞いた後にその地元の割烹料理店へ足を運んでいたら、食材そのものの味を引き立てる薄味の素晴らしさと料理人へのこだわりに大満足したことだろう。
そして、その後にその店について感想を聞かれたら「食材の味そのものを活かすために薄味にこだわっていて、料理人のこだわりが随所に見られ、すっごくおすすめだよ。是非行ってみては?」と答えるだろう。
実体験2
近所に博多のとんこつラーメンの店がある。面は細めんで硬さが選べ、おかわりで替え玉を注文できる。「よくある」とんこつラーメンの店だ。
「よくある」と言うのも、他の店で似たようなとんこつラーメンを出し、面の硬さが選べ、おかわりで替え玉を注文できる店を知っているからだ。どちらの味が美味しいかって聞かれても、「どちらも似たような味だから、どっちが美味しいってことはないよ。」と答えるだろう。
ただ、「どっちがおススメ?」と聞かれたら、迷わずB店を選ぶ。理由は、B点はとんこつスープを作るのにじっくり10時間掛けてとんこつを煮込んでダシをとっているこだわりがあるからである。そのこだわりは店内の壁に大きな字で書かれていて(たしか)、自然とお客様の目に入るようになっている。
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どちらの実体験も口コミの発生方法を示唆している。
実体験1では、上司からその店のこだわりを知ることになり、もし上司との会話がなかったら、たぶん一生その店のこだわり知らずに「値段相応の割烹料理店」として口コミすることなく終わっていただろう。
実体験1の店の様に、お客様がその店のこだわりを知る機会がない為に、口コミとなる機会を損失している飲食店は他にもたくさん存在するだろう。
口コミの発生にはお客様に「こだわり」を伝える機会をつくる必要がある。それは接客係が料理をお客様に提供する際に説明してもよいし、メニューにさり気なく載せても良い、(とんこつラーメン屋のように)店内の壁にこだわりを書いておいてもよい。とにかくその店の「こだわり」をお客様に認知してもらうよう仕向け、お客様がその店の良さ(こだわり)を知人に話せる状態にしてあげることだ。これが口コミを発生させるポイントである。