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商取引の電子化による中小企業のメリットとは

2017-10-23 23:13:37 | 17期生のブログリレー
17期生の井上です。

このたび皆様とともに取り組んでいる論文ですが、
私は、数ある電子決済の中で、「モバイル決済」に焦点を当て、
中小企業における活用のメリットなどを記載しようと考えております。

理由は、フィンテックなどの技術の進展や、
インバウンドで増加する外国人観光客向けの決済などで注目を集めている
モバイル決済こそ、中小企業が活用してメリットを享受すべきと思ったためです。

一方、官民一体で決済の電子化への取組みが活性化する中、
今後、中小企業が多くの恩恵を得られであろう領域は、B2Cだけではなく、
B2Bの領域、さらには「融資」や「資金化」の領域にあるとも感じております。


そこでこの度は、フィンテック関連の某書籍などを参考に、
商取引の電子化による、中小企業の「融資」や「資金化」の
今後の可能性についてを記載致します。


まずは「融資」について、
日本にける中小企業への融資の状況を調べますと、
日銀の「国内銀行の中小企業向けへ融資残高」情報では、
ピークの1995年の266兆円と比べ、2016年は185兆円と、
81兆円ほど減少しております。

この現状は、中小企業が儲かっており、借入を減らしているからでしょうか?

日銀の「短観」情報を見ますと、中小企業は好景気のときであっても
資金繰りについての判断がプラスになることは少なく、
大企業と比べて厳しいことが分かります。

つまり、銀行の融資残高の減少は中小企業が借り入れを減らしているからではなく、
金融機関からの借入が難しいと感じている、
思うように融資をうけられていない中小企業が多いととれます。


そのような環境の中、「Amazon Lending」のような金融機関ではない企業が
融資を行う新たなサービスが出てきております。

ECの大手であるアマゾン社は、
書籍をはじめ様々な商品を自社のマーケットプレイスにて販売しておりますが、
その場を通じて自社商品を売る中小企業の販売店も多く存在しております。

その販売店が持つ課題の一つに、
これまでの伝統的な融資では迅速に資金を調達できない、
といったものがありました。

その課題に対しアマゾン社は、
販売店のマーケットプレイスでの販売実績や決済データなどを審査の材料とし、
蓄積されたデータに基づいて融資の可否を判断することで
審査にかかる時間を大幅に短縮化し、申し込みから入金までを最短5日で行っています。


上記のような例を見て思うのが、
もし今後、日本の中小企業が行う商取引の債権・債務などの多くが
電子化および蓄積され、さらに見える化されれば、
中小企業は、金融機関のみならず、非金融機関からを含め、
迅速かつ低コストで多くの融資をうけられるのでないか、ということです。

しかし、それを実現するには、
中小企業が行う商取引の電子化と見える化が課題となります。

他方、日本では、「電子記録債権」といった、
世界に先駆けて法制化した電子化した金融債権があります。

商取引の内容は一般に当事者間でしか確認できないものですが、
もしも、現状のサプライチェーンの間だけでなく、
全ての商取引を「電子記録債権」で行い、見える化できれば、
当事者以外の金融機関や投資家なども、企業の一時点の財務諸表データだけではなく、
リアルタイムな取引データをもとに資金提供の判断が行いやすくなることでしょう。


また、「資金化」についてですが、
上記により、目に見えなかった商取引が見える化され、
売買の対象として電子記録債権を証券のように取り扱えるようになると、
既存の金融機関が提供していた手形や一括ファクタリング(※)といった
サービスをより少ないコストで代替するだけでなく、資金化を迅速に行えるなど、
中小企業の資金繰りを革新する可能があると思います。


尚、これまでに述べた中小企業の「融資」や「資金化」の革新を図るためには、
法の整備のみならず、IoT(もののインターネット化)の進展や、
「電子記録債権」の特性を生かした様々なスキームの誕生、
中小企業の勘定系システムや電子発注システムへのさらなる投資など、
今後の検討や対応が必要となる様々な課題が浮かびあがります。

そしてなによりも、中小企業診断士など専門家の支援が一層必要になるとも思いました。


以上となります。長文を最後までお読みいただき有難うございました。


※一括ファクタリング
 保有している売掛債権を譲渡(売却)して資金調達する
 一般的なファクタリングサービスを、
 支払企業(債務者)、納入企業(債権者)ともに一括で行う決済システムのこと

コメント (2)
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