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経営戦略を問いなおす

2017-10-31 20:00:00 | 17期生のブログリレー

17期の永井ゆうくんです。

 

ここ最近、経営戦略分野の本を読み漁っているので、前回(V字回復の経営)に引き続き、図書紹介です。

 

 「経営戦略を問いなおす」著書:三品和広

 

概要は以下のとおりです。

世の大半の企業は、戦略と戦術を混同している。成長第一で事業を拡大したのに何の利益も出なかった、という企業が少なくない。見せかけの「戦略」が、企業の存続を危うくする。目指すべきは、長期で見た利益を最大化することである。それを実現する戦略はマニュアル化になじまず、突き詰めれば人に宿る。現実のデータと事例を数多く紹介し、腹の底から分かる実践的戦略論を説く本書は、ビジネスパーソン必読の書である。

 

三品教授は、経営戦略論の第一人者として知られていますよね。

経営書として異例のベストセラーとなっている楠木建氏の「ストーリーとしての競争戦略」でも、本書の考え方が引用されています。

 

昨今、テンプレート偏重・ベストプラクティス偏重のきらいがありますが、私は文字通り好ましくないと思っています。

戦略はテンプレート化できるほど単純ではないし、一つのベストプラクティスが、状況が全く異なる他社でもベストとは、到底思えないからです。

こういった考えを、強力に後押ししてくれたのが本書です。

 

本書の主張で、私が面白いと感じたものは以下のとおりです。

 

1.戦略は「アナリシス」とは相容れず、その根幹は「シンセシス」にある。

SWOTPPMといった思考ツールの脆弱性に対する示唆。

SWOTは、何を強み・弱みと見るのか、高度な経営判断の問題による。

PPMは本来、コスト優位と投資の必要性を座標軸とすべき。ここでも高度な経営判断は避けられず、競合の出方次第で状況は変わるもの。

 

2.戦略は極めて属人的なもの。部署ではなく人が担う。

経営戦略に対応する部署は企業の中で見つからない。

経営企画はあるが、実情は予算取りまとめや会議資料作成に時間を取られている。

戦略は、事業部長から上を占める経営職の人たちが担っており、従って、人を選ぶことで戦略を間接的に選ぶ図式が成り立つ。

 

3.戦略の要諦は、「立地」「構え」「均整」にある。

「立地」:誰に何を納めるか。

(同じ電機業界でも、コネクタやモーターを手掛ける企業とAV機器や家電を手掛ける企業とでは、利益率は異なる。また、同じモーターの中でも、家電用の汎用モーター、HDD用のスピンドルモーター、自動車部品用の小型モーターとでは、これも利益率は違ってくる。鉄鋼業界でも、棒鋼、形鋼、鋼板、線材と品種によって需要家とのパワーバランスは異なるし、需給環境の違いは大きい。従って、利益率も異なるもの。)

「構え」:垂直統合(タテ)、多角化シナジー(奥行き)、地域展開(ヨコ)で構成。

(サウスウエスト航空の例では、普通ならアウトソーシングする上流・下流業務まで取り込み、アンコントローラブルな攪乱要因を極小化。)

「均整」:戦略の最終的な有効性はボトルネックで決する。立地や構えが立派でも、大きなボトルネックが存在すれば、戦略はうまく機能しない。

(失敗例:マツダ5チャネル体制)

 

 本書は、一通り、経営戦略やフレームワークの一般論を学んだ後に読むことに意義があります。

このため、診断士のみなさんは、本書を通じて多くの示唆を得られることでしょう。

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「成長企業のコンサルティングって…」

2017-10-31 00:31:12 | 17期生のブログリレー

「稼プロ!」事務の小林 隆です。
今回は、成長企業(ベンチャー企業)のコンサルティングに際し、感じることを、徒然なるままに記してみた。

私たち診断士の多くは、クライアントの経営課題を解決することで対価を頂く仕事に多く携わる。中でも、経営改善、企業再生といった赤字企業を黒字体質に改善する仕事が、成長企業 例えばベンチャー企業をさらに成長させるための仕事より、圧倒的に多いように思う。

成長企業の方が、コンサルタントに対してフィーを支払る能力があるにもかかわらず、そうした仕事の依頼を獲得している診断士は意外に少ないように感じられるし、
受託してもうまく機能していないケースもあるようだ。

私の経験でいうと、負のモノを正に正す仕事は、ある程度「こうあるべき」という基準にそって、事業を修正してゆけばよいので、やりやすい。

しかし、こと成長企業をさらに成長させるとなると、どこに着眼をすればよいのか、
非常に迷うことになる。

『成長企業の法則』(名和高司 著)では、成長する企業の条件を、
① 独自の経営観があること
② 付加価値の高い事業領域を確立していること
③ 人材育成に熱心であること
としている。
同書は、大企業を研究の対象とした書籍ではあるが、そのエッセンスは興味深い。

とはいえ、当たり前のことを言っているようにも思えるが、私が企業成長に大切だと考えるのは、
まずは、「人々に求められる製品やサービスを提供すること」である。

その結果、②付加価値の高い事業領域が達成され、それらを生み出すために、
①独自の経営観と③人材育成が大切なのだと考える。

そのためには、常識を打ち破るレベルで製品やサービスを提供することが必要であり、その努力とコストの低減という二律背反を両立させるイノベーションが必要であることは、以前にも本ブログで記載したところである。

なによりも、その業界の将来がどのような事業構造になり、どのようなプレイヤーが参加して、どのような競争状態になるのか、その競争に打ち勝つためのKSF(Key Factor for Sucsess、重要成功要因)は、何か。

受験時代にテキストブックで学んでいたときには感じなかったが、言葉の重みを、初めて感じたのはベンチャー企業のKFS考える場面に直面してのことだ。

企業成長のフェイズによって、対応すべき経営戦略や財務戦略、はスキルとして身に着けられる。

しかし、新しい事業にチャレンジしているベンチャー企業が、環境の変化の中で、順当に成長して行けるようなストーリーを描く力は、一朝一夕では簡単には身につかない。


インターネットによる、情報収集やクリッピングサービスは便利だが、情報の偏りを招くことがあるため、時には紙ベースで新聞の紙面を端から端まで目を通し、
一見関係ないと思われるニュースも抑えておくことも大切だ。

私たちが、いろいろな情報にアンテナを張り、日々研鑽をつまなければならない理由は、そんなところにも存在する。

コメント (2)
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