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企業会計と株式投資

2019-02-20 12:00:00 | 18期生のブログリレー
皆さま こんにちは。
稼プロ18期の舌歯 昌洋です。

稼プロブログの11回目になります。

今回は企業会計と株式投資に興味がある一人の診断士の立場で、複雑化する企業会計と、株式投資家としてどのように対処していくかということについての雑感をお伝えしたいと思います。


サンプルはソフトバンクグループ(証券コード9984)
選定理由は、目立つ企業であるという単純なものです。私個人は有価証券投資や携帯電話サービス利用など一切の利害関係を持っていません。あくまでもわかりやすい事例ということでご理解ください。
さて、IR情報のグループ・ストラクチャーのページを見ると、このように記載があります。
「当社は、純粋持ち株会社であるソフトバンクグループ株式会社と、子会社1,141社(2018年3月末現在)
から成る企業グループです。」
すごい数です・・・

今回の記事で重要なのはグループ社数よりも、使用している会計基準になります。ソフトバンクグループでは、国際会計基準(IFRS)で決算を行っています。
またグループの事業は、日米の携帯電話事業などのほか、未公開株に対する投資事業のウェイトが大きいことが特徴です。さらに中国のアリババ社株式を29%保有していますので、同社に対して持分法を適用しています。


国際会計基準が日本基準と異なっている点
今回ソフトバンクグループの財務諸表を読むときの最も重要な点は未公開株式の評価についてです。日本会計基準では原則簿価のままです。投資先の業績悪化時には損失処理しますが、投資先の業績が良い場合には何もしません。
一方、国際会計基準では未公開株式について「時価評価」を行います。投資先の業績を踏まえて投資先の株式の評価を変更します。投資先の業績が良ければ、評価益を出します。
ポイントは国際会計基準の場合だけ、投資先の業績が良いときに評価益が出ることです(当然ですが、どれほど評価益を獲得してもキャッシュは入ってきません)。


貸借対照表の特徴
2019年3月期第3四半期決算短信を参照します。
総資産36.5兆円に対し、有利子負債が17兆円あります。
資本は9.3兆円ありますがソフトバンクグループに帰属する部分は7.9兆円です。
計算上の自己資本比率は7.9/36.5から21.6%程度となります。


損益計算書の特徴
2019年3月期第3四半期決算短信を参照します。
売上高7.2兆円に対して営業利益1.9兆円と大変儲かっているように見えます。
ただし注意すべき事項があります。未公開株式の評価益が0.8兆円含まれています。これは国際会計基準の注意点のところで述べた通り、投資先の業績が良いために認識した評価益です。そのほか、アリババに対する持分法適用による利益(*)が0.3兆円あります。
未公開株式の評価益も持分法適用による利益もキャッシュを伴わないところがポイントです。
(*投資先の利益に対して自社の持分比率を乗じて取り込んだ利益を指します。ざっくり表現すると、アリババが稼いだ1兆円の利益にソフトバンクグループ持分29%を乗じたものです。)
さらに主に支払利息から構成される費用である、財務費用が0.5兆円あります。資金調達コストは4%近辺かと思われます(結構高い!)。


キャッシュ・フロー計算書の特徴
営業CF+0.9兆円
投資CF-2.1兆円
財務CF+3.1兆円(うち、2018年12月のソフトバンクIPOによる手取額+2.3兆円)
となっています。PLの特徴でも述べましたが、未公開株式の評価益も持分法による投資利益のいずれも会計上の評価益でキャッシュの流入を伴いません。そのため営業CFだけでは投資に必要な資金や借入金の返済に必要な資金を賄いきれない姿が見えます。


分析まとめ
財務諸表からは、ソフトバンクグループはかなりの有利子負債を抱えており、キャッシュを稼ぐ力が要投資額および負債の水準に対して足りないように見えます。そのため、既存の保有資産を売却して資金を捻出しているようです(アリババ株売却やソフトバンクIPOなど)。

そのため財務面でのリスクが結構高めのようです(金利も高い)。
また、事業が非常に多岐にわたっており、理解することが困難です。そのため、個人投資家が財務諸表を分析して投資判断するのはかなりハードルが高いのではないかと感じました。

ただし、社長の孫さんに夢を感じる!とか、有名だから大丈夫!とか、チャートの形が素晴らしい!などの多様な投資判断はあり得ます。


あくまでもケーススタディとして、株式投資対象としてソフトバンクグループを検討してみてはいかがでしょうか?企業会計や株式投資に興味を持っていただくきっかけになれば幸いです。


コメント (5)
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