みなさん、こんにちは!稼プロ18期の杉山 佳正です。
今回は、最近ふるさと納税を巡って話題を集めた自治体について、読者のみなさんと一緒に考えてみたいと思い、ペンを取りました。
みなさんご存知の通り、ふるさと納税とは、自分のふるさとや自分が応援したいと思う自治体を選んで寄付をする制度です。寄付額に応じて、所得税や住民税の控除が受けられることに加え、地域の特産品や名産品などをお礼品として受け取ることができる非常に魅力的な仕組みであり、私も、今年は「牛肉をもらおう」とか、「やっぱりカニがいいかな」と毎年年末まで頭を悩ませながら利用しています(今年はカニをチョイスしました)。
このふるさと納税に関して、とある自治体が桁違いの金額の寄付を集めたと話題となりました。その自治体は静岡県駿東郡小山町(おやまちょう、です。“こやまちょう”ではありません)。静岡県の最も東側、神奈川県と山梨県の県境に位置する人口2万人弱の自治体です。
小山町が平成30年度分の受入額として、昨年末までに集めた寄付額は約249億円に達しました。町の徴税収入は年間40億円程度ですから、実に6倍超の金額を集めてしまったのです。
ところが、集めた手法に一部から批判の声が上がりました。返礼品の中に寄付金の40%相当の“Amazonギフト券”が含まれていたからです。ふるさと納税を所管する総務省は返礼品の基準を「寄付金額の30%以下の地場産品」としています(法的な拘束力はなく、努力目標とのこと)。“Amazonギフト券”は、地場産品ではないし、金額基準も超えてしまっているというわけです。
「悪貨は良貨を駆逐する」…。小山町の手法を聞いたとき、私は、真っ先にこの言葉が浮かびました。たとえ良い制度であっても、それを悪用する輩がいれば、その制度自体がなくなってしまうかもしれないではないか!まったく「けしからん」と…。
しかし、日本経済新聞の地方面に、小山町長のインタビュー記事が載っており、それを読むと、決して「けしからん」と言って終わる問題ではないと、考え込んでしまいました。
以下、町長の発言抜粋。
「一般会計のお金だけでは何もできない。町では工業団地の整備を進めており、補助金がざっと40億~50億円になる。将来の税収を見込んで30年かけて子や孫に払ってもらおうとしたが、町の将来を考えたとき…(中略)…寄付金を財源に充て将来に負担を掛けないようにしたいと考えた」
「2018年夏ごろ、友人から“Amazonギフト券”のアイディアをもらった。昨秋に試験的に3日間やったところ反応が良かったので『これはいける』と思って本格的に始めた」
「町議には『恥ずかしい』と言われた。批判を受けても、町民のために体を張ってやろうと決めている。(自治体競争の中で)生き延びなければならない」
少子化や人口流出により、2040年までに全国の自治体の約半数が消滅する恐れがあるという調査があるほど(日本創成会議・消滅可能性都市)、自治体の運営は厳しさを増しています。“禁じ手”に近い手法かもしれませんが、町長の発言からは、生き残りのために必死で取り組む首長の姿が伝わります。
小山町には、モータースポーツの最高峰、F1が開催された実績のある有名なサーキット場“富士スピードウェイ”があり、全く何も特徴がない自治体というわけでもありません。一方で、人口の減少傾向は長年続いており、次代に向けて、何らかの手を打つ必要は不可避です。
もし、自分が町長の友人であったとして、地域活性化のためにアイディアを求められたら、どんな提案ができるであろうか。企業の販促ツールとしても話題となり、返礼品のお得さに目が向いてしまいがちな、ふるさと納税制度ですが、その本質を見つめてみると、日本の将来を左右するかもしれない大きなテーマが隠れているようです。
返礼品のカニが届くのを心待ちにしつつ、せめてカニが届くまでの間は、自分が寄付した自治体を応援する具体策についても真剣に考えてみようかと感じる最近の心境です。