みなさん、こんにちは。19期の西山です。
前回はパンデミックがもたらした変化の一つとして新たな人権リスクについてお伝えしました。今回はもう一つのリスク、「経済安全保障」について書きたいと思います。
最近、新聞などで経済安全保障という言葉を目にする機会が増えました。背景には米中関係の悪化による安全保障意識の高まりがあります。安全保障というと軍事や政治といったハイポリティックスの話でしたが、テクノロジーの進化により、軍事・政治と通商・経済が不可分なイシューとして認識されるにつれて、広い範囲で「経済の安保化」が進んでいます。この流れを受けて、日本でも今年4月、内閣官房の国家安全保障局に経済分野を専門とする「経済班」が発足しました。
米中摩擦に関しては私もニュースで知っていましたが、大統領選に向けたトランプ氏のパフォーマンスくらいの認識で、正直、経済安保と聞いても自分事化できずにいました。ところが、今回の新型コロナウイルスの問題でマスクや人工呼吸器が足りなくなり、その多くは中国で生産されていて日本に入ってこないという実態を知ることで、認識が一変しました。最近の報道では、コロナ治療薬として期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の原料も中国からの輸入に頼っていることが判明し、日本の医療・公衆衛生における供給体制の危うさが浮き彫りになっています。
サプライチェーンの脆弱性は、国にとって安全保障上の課題であるだけでなく、企業にとっても安定生産上の懸念点です。そしてこの問題はパンデミックのような有事に限りません。たとえば、悪意を持った国が原料の輸出を意図的に止めることで、企業の生産ラインに深刻な影響を与えることが可能です。このように経済をテコに地政学的国益を追究する手段は「エコノミック・ステイトクラフト」と呼ばれ、秋に米国で開かれるG7の主要テーマになると言われています。
上記を踏まえると、アフターコロナの時代においては、安いから便利だからという理由だけで特定の国に生産を依存するのは危険であることがわかります。コロナの第2波に備えるためにもサプライチェーンを多様化しておく必要があり、すでに一部の企業で生産拠点を国内に戻す動きが報じられています。このことは大企業と一緒に海外進出した中小企業の経営にも深く関係します。中小企業としても平時から経済安保やエコノミック・ステイトクラフトの考え方になじんでおき、経営戦略に落とし込んでおく必要があると言えます。
----以下、稼プロ!よりお知らせ----
診断士キャリア相談会(個別相談会)のご案内
Zoomにて【個別相談会】を実施しています。
マスターコースの選択に限定せず、診断士活動の方向性など、
キャリアコンサルタントとして幅広い視点で、お話を伺い、
助言などをさせていただいております。
まずは、ご希望の日時などをご連絡くださいませ。
詳細は、https://www.kasepuro.com/ をご覧ください。