22期の常木です。今回から2回に渡って、私の趣味の一つであるフルマラソンを題材にして、いかにPDCAが当てはまる競技かを語っていこうと思います。
仕事上のプロジェクトがそうであるように、フルマラソンの準備は計画立案とそれを粛々と遂行することにあります。PDCAのPであるプランニングから説明していきましょう。私は通常、大会から遡って3ヶ月前からの計画を策定します。例えば、東京マラソンのように3月第一週にあるレースは、前年の12月初旬からの計画を立案します。エクセルシートを縦に使って12月1日からの日付を入力、その横に練習メニュー、実際に達成したかどうか記入できる欄を作ります。そして、一週間ごとの距離の小計をつくり、週間走行距離が見られるようにもします。もちろん、残業や会食などが入っても狂わないように、休息日をしっかりと入れ込みます。
フルマラソンに向けた練習メニューですが、よく参考にするのがミズノのHPです。目標タイムに沿った練習メニューが何パターンも掲載されています。それを基にして自分なりに変更を加えます。仕事において前例や他社事例を極力参考にして、自分でゼロから作り上げる非効率を避けているのと一緒です。代表的なメニューは、下記の通りです。
①普通のジョグ
②ウインドスプリント(短ダッシュの繰り返し)
③ペース走(息が荒くなるくらいに追い込む。きつい。)
④ビルドアップ走(徐々にタイムを上げていく練習。とてもきつい。)
⑤インターバル走(ランニングと休憩の繰り返し。休憩短かすぎるだろ。)
⑥LSD(Long Slow Distance。ひたすらゆっくり走り続ける。ドラッグの名前ではない。)
⑦坂道ダッシュ(夜道でこれをやってると、結構怖がられる。)
時間のかかるものは週末、30分~1時間で終えられるものは平日に組みます。ただし、日程の半分くらいはアクティブレストという休息日に充てることは必須です。
一度計画立案したら、PDCAのDへ移行します。立てた計画を真面目にこなします。もちろん、体調がすぐれなかったり、仕事で疲れていたりと色々とあります。そういう日は無理をしないことが続けるコツです。とはいえ、走行距離や達成度をモチベーションにしながら、ひたすらDを続けます。長い距離を走った週末は、フェイスブックにアップして仲間からコメントや「いいね」で鼓舞してもらったりと、地味に工夫します。一つ言えることは。タイムが悪かったレースの次に向けた練習は「リベンジ」の炎が燃え盛っているので、自分の感情とうまく付き合って、その復讐心を利用することが非常に効果的です。
PDCAのCとAですが、練習の進捗や体の疲れ具合などの要因を分析して計画を更新します。これも仕事でよくあることだと思います。最初の計画に固執するあまり、非現実的なPDを繰り返すことは避けねばなりません。そういう意味で練習中のCは非常に大切なプロセスになります。例えば、足の指が赤く腫れたり、爪が内出血で黒くなって痛くなります。そういう時は練習メニューを変えて上半身の筋肉や体幹トレーニングに重点を置きます。患部を労わりながらも、計画を変更して意味のある時間を過ごすことに集中します。
このようにして、自分と向き合いながら練習の日々を積み重ねていきます。大会の4週前の週末には20キロ、3週前の週末には25~30キロを走って、それが練習のピークとなります。練習もピークですが、疲労もピークで、3週間後に42キロを走ることが信じられない気分になります。ただ、そこからは調整期に入るので本番に向けて体力を温存していきます。
残り1週間を切ると、妙にストイックな気分になり、コロナ前でさえ飲み会の誘いは一切入れませんでしたし、早寝早起きして規則正しい生活を送ります。水曜日にはカーボローディングを始めます。これは、炭水化物を多めに摂取して身体に蓄える作業です。緊張感が高まるなかで、過去のレースで使った持ち物リストに基づいて、日曜日の大会当日を思い描きながら、ゼリーやサプリメント、エアサロンパス、テーピングテープ等の準備をします。プレゼン前に自分のパワポを隅々までチェックしたり、当日想定される質問やその答え方を考えたりする時間と似ている瞬間です。そのようにして「静かに集中」する直前の数日間が過ぎていきます。
如何でしょうか。マラソン準備は、もはや仕事です。左脳フル活用でPDCAを回します。ただ、その根底には己に克つ「克己」があります。要は弱い自分、サボりたい自分をいかにコントロールしていくセルフ・マネジメント能力が試されるのです。その中には、自分はどういう時に弱くなってしまうのか、はたまたモチベーションが高まるのかなどの、セルフ・アウェアネス(自分自身への気づき)が大切な要素として存在します。
ここまでを「準備編」とさせていただき、次回の「レース当日編」に続きます。42.195キロの旅の途中で、多くのドラマが起こります。ひたすら左脳のスポーツであるマラソンにも、「もはや右脳しか勝たん」という瞬間が訪れます。乞うご期待。