こんにちは、矢本です。
今日はは相関分析の事例をご紹介してみたいと思います。
以前相関分析の記事を書いたときに、実例でどう使われるかのご質問があったので。
私自身はまあまあ使える分析だと思っています。
1.テーマ
住宅素材メーカー(主に北米向け)が投資判断の参考にしたいので
「今後の北米住宅重要の見通しはどうか?」と質問を受けた。8月ころ。
2.背景
・最大顧客である米国会社は弱気と強気の見通しが混在。
・しかし、エコノミストの需要の見通しは悲観的。米国消費者の購買意向を示す指標は以下のとおりなので。
・よって、社長は現在さらに米国向けに投資をすることには懐疑的。
根拠のグラフ(横軸は年、縦軸は指数・つまり購買意向の強さ)
3.分析
1)住宅の購買意向はどうか?
品目ごとの購買意向のデータがあるので、住宅を調べてみたら、住宅の購買予想は全くトレンドが違っている!。
購買意向が急伸している。リーマンショック後に回復して急上昇を示している。購入意向は復活している!
北米は景気が悪いと言われているのに、これはほんとうだろうか?
2)本当にそうか?
a)住宅と同様の購買意向を示すものはないか?共通する特徴はないか?
まず、消費者の購買意向は28品目ありますので、住宅の購買意向と同様の傾向のものがないか調べます。
すると、商品のなかでは自動車の購買意向が類似(相関係数は0.61)。以下のグラフのように。
・・・どちらも耐久消費財(大きな買い物)。つまり米国消費者は大きな買い物をしたいと思っている?
b)根拠となる指標はないか、理由を想定できないか?
ここも相関係数の出番。
入手できる全ての統計指標(GDP、経済指標、物価指数、販売統計など)4000以上と住宅の購買意向との相関を見る。
相関のプログラムを利用すれば計算は可能。その中で一番相関が高かった(相関係数約0.6以上)ものは、やはり所得!
つまり、所得が伸びてきたので、住宅などを買いたくなるという、経済の教科書通りの結果がでています。
(この図では自営業個人所得と住宅のグラフを重ねています)
→ やはりこれは個人所得が上昇し、住宅の購買意向も急上昇している(教科書どおり)と解釈すべきでしょう。
実際にも、所得推移と住宅購買意向を3カ月ずらすともっとも相関係数が高くなります(0.62に増大)
3.結論
消費者の購買意向は冷えているが、住宅など耐久消費財の購買意向は回復している。
自営業者の所得の伸びが背景にある。よって、強気の見通しでも間違っていないと思われる。
つまり、北米の消費意向の回復の兆しが見えていた!いうことです。
(ただし8月以降は、米国債の格下げ、欧州金融不安などがありますので、また別な傾向ですからご注意を!)
4.知見
全体の動向の話と、個別商品の動向が正反対を示していることすらある。
だからデータソースを当たることはやはり大切。手間がかかるが、世間の経済記事のはあまりにマクロなので仕方なし。
そして、同じような傾向を示しているものを把握する(相関分析する)と、ある程度仮説が見えてくる。
今回は相関分析の実例のご紹介でした。
PEST分析や、業界動向の分析などには使えます。仮説形成にちょっとお薦めの分析です。