ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

ガスビル食堂 @大阪市中央区・淀屋橋

2022年08月23日 | 大阪府

今回の大阪短期滞在で唯一予約をして伺ったのが、御堂筋沿いの大阪ガスの社屋「大阪瓦斯ビルヂング(大阪ガスビルディング)」にある西洋料理の「ガスビル食堂」。昭和8年のビル竣工時からあるレストランなので89年もの歴史がある。平日だから大丈夫だろうとは思ったが、遠方なので万が一を考えて訪問の数日前に電話を入れる。しかし、なんと昼時は予約で埋まっており、訪問予定日の「13時45分からでしたら…。」とのこと。半端な時間だったが他に行けそうな日が無かったのでお願いした。

少し早く着いたのでウロウロと建物を観賞しつつビルの中に入る。エレヴェーターで食堂のある階まで上がるとクローク(写真下)があった。この階には他に一般の人が利用できる設備が見当たらないので食堂専用のクロークだろうか。行った時には稼働していないようだったが、こんな所にも歴史あるレストランの面影が残っている。

中に進むとソファーが並ぶロビーがあり、食堂の歴史を説明する写真などが飾ってあった。こちらのロビーで少し待ち、中に案内される。折しも同窓会か何かだろうか、ご高齢の方達の集まりが終わったところのようだ。他に先客は数組。レストランとして使われているフロアーは意外にもそう広くはないようだ。予約したので窓際のテーブルかと思ったが、残念ながら入口に近い席に案内された。1人だったし仕方がない。客層はさすがに年配者が多い。内装はデコ調で落ち着いているが思いのほか質素。メニューを見せてもらい、あれも食べたいこれも食べたいという品の中からお願いしたのは、”サラダ”から「ハートセロリ」、そして”一品料理”から「セルリ・オー・ジュ」、「ムーサカ」の3品と、グラスワイン(ピノ・ノワール)。

カトラリーがセッティングされ、しばらくしてからワインが運ばれる。そして1品目の「ハートセロリ」が供された。ガラスの器に氷が盛られ、その上には生のセロリがそのまま。自分がセロリ好きだし”ハート”って何だろうと選んだのだが、その姿に拍子抜け。でも後で調べてみると創業当時からの名物だそうで、当時の会長が「本物の西洋料理にセルリーは欠かせない」と種子をアメリカから取り寄せて自ら栽培したのだとか。塩でいただく。ポリポリとやっていると「セルリ・オー・ジュ」が運ばれた。こちらはセロリをフォン・ド・ボーでとろとろに煮込んだもの。うん、旨い。煮込まれたセロリは香り良く、スプーンで切れてしまうぐらい軟らかい。スープにも旨味がたっぷり。中にはベーコン片も見られる。これはメニューに”復刻一品料理”と紹介されていて、昭和初期の名物料理だったそうで「天皇の料理番」として知られた秋山徳蔵氏直伝のレシピで、当時は常連客のみに出されていたのだとか。グラスワインばかり続けるのもつまらないので「シーバスリーガル12年」をロックで追加。

そしてメインの名物料理「ムーサカ」が熱々の丸い鉄板に盛られて運ばれた。1週間かけて作るというこちら伝統のデミグラス・ソースを使った料理で、元々はギリシャ料理なのだそうだ。中には煮込まれた軟らかい牛フィレ肉、それにトマト、人参、ピーマン、茄子、マッシュルーム、カリフラワーが入っていて、周りはマッシュ・ポテトで綺麗に飾られている。仕上げはオーブンで焼かれているようだ。野菜類と合わせることもあってか、かなり濃厚なデミグラス・ソース。肉や野菜と共にマッシュ・ポテトを合わせると何とも言えず旨い。1人でいただくには結構な量もある。本当はワインなりウイスキーなりを追加したかったが、中途半端な時間に酔っぱらうと後の予定が立たなくなるのでグッと我慢(笑)。歴史あるレストランの名物料理を3品もいただけて素敵な昼食になった。(勘定は¥5,600程)

 


 

↓ 現代的なビルが並ぶ中、御堂筋沿いに独特の雰囲気を漂わせる「大阪瓦斯ビルヂング(大阪ガスビルディング)」(昭和8年・1933・建造)。今はどうなっているのか知らないが、3階分が吹き抜けた講演場や、美容室や喫茶、グリル、そしてもちろんガス関連の展示施設や教室などがあったのだそう。戦争中は空襲に備えて外壁を真っ黒に塗装したのだとか。国の登録有形文化財にも指定されている。

 

 

 

 

 

ガスビル食堂

大阪府大阪市中央区平野町4-1-2

 

( 大阪 おおさか ガスビル 大阪ガス 大阪ガスビルディング 洋食 レストラン 西洋料理 近代建築 登録有形文化財 )

コメント (2)
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