どのような政策をつくるにしても、まずは、問題の所在を確認するために、現状における事実はどのようであるかしる必要があります。
事実が誤っていると、当然に、政策も誤ることになります。
裁判では、誤った、もしくは、不利な判決に繋がります。
事実の確認に当たっては、刑事訴訟法が、民事訴訟法より厳格なのですが、通常我々は、民事の中で生きていますので、ここでは、民事訴訟法の規定を見ることにします。
(*民事訴訟法の特別法としての、情報公開法に考え方が引き継がれているとも考えられ、民事訴訟法から情報公開の考え方を紐解くため、今回のブログ記載をしています。本当のところは、住民の皆様に直接関係のある情報公開法、情報公開条例に話を今後進めたいと考えています。)
事実を確認するためには、証拠とくに文書での証拠を得る必要があります。(行政分野においては、文書を取り寄せる必要があります。)
そこで、文書提出の義務の考え方が問題となります。(行政分野においては、情報公開の考え方が問題となります。)
まず、民事訴訟法における文書提出義務の考え方を見ます。(行政分野の、情報公開の考え方につながるはずです。)
民事訴訟法は、平成8年6月26日に改正され、平成10年に施行され、刷新されています。
改正以前を旧法、それ以後を現行法と表現することにします。
新法220条で規定されている事実を確認するための証拠の提出義務の考え方が、大きく変わっています。
現行法において、証拠提出の考え方が、発想が逆転され、提出義務が、広がったと言ってもよいかもしれません。
旧法では、1~3号以外は、提出義務なしでした。
現行法では、4号に該当する場合は、提出義務なしで、それ以外は、提出義務ありに変わっています。
******現行法 民事訴訟法*********
(文書提出義務)
第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
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概念図であらわすと、以下の様になります。
斜線が、証拠提出義務なしの範囲です。
文書提出義務の考え方が大きく変わりましたが、ここで、ひとつの壁があります。
民事訴訟法220条4号二 「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(=「自己利用文書」という。)に該当するということで、文書提出義務から外れてしまい、提出されなくなるという壁です。
自己利用文書にあたるかどうかは、以下の①形式的、②実質的に判断し、かつ、③特段の事情がないかを検討したうえで、最終判断されます。
自己利用文書に当たらない場合は、提出義務の対象となります。
今後詳述したいと考えますが、情報公開法でも、原則公開なのだけど、特定の規定に該当すると公開されないとなっています。さらに特定の規定にあたってもなお、公開される場合があるとなっています。
比較のため、情報公開法の規定を以下にあげます。
情報公開法5条で、一号から六号に(不開示情報)あたらない限り公開するとなり、不開示情報にあたっても、なお公開される場合(同条一号イないしハ)があるとされています。
******情報公開法、行政機関の保有する情報の公開に関する法律 ******
一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
五 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
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おまけ!!
最初に民事の世界と御断りをしました。
刑事の世界では、ひとを裁くに当たって、実は、文書は、原則証拠になりません。
厳格な要件に耐えた文書のみ(刑事訴訟法321条~328条に該当する場合に限り)、裁判における証拠として(証拠能力有りとして)扱われます。
なお、証拠能力があっても、証明力があるかどうかは、また、別の次元の話です。
*********刑事訴訟法******