一部抜粋を致しますと、
「本件テープが公開されることにより,住民は,会議録作成前においても,議事内容
を知ることができ,その情報をもって町政に参加することができるのであり,また
,会議録の正確性を検証することもできるのである。本件テープについて決裁等の
手続終了を擬制するとすれば,2で述べたように,議長から職務命令を受けた職員
が議事場内で録音を終了した時点で議長の決裁等があったと評価する方が妥当であ
ると考える。」
私も、泉徳治裁判官の意見に賛同します。
テープの段階でも、公開されることで、議会の進行にリアルタイムで、住民もフォローし、地方政治に、住民が積極的に参加できるようになれると思います。
最近は、委員会でもネット中継をしている議会もあり、開かれた議会が増えていることは、よいことだと思います。
参照法条:土庄町情報公開条例(平成12年土庄町条例第27号)2条2号,地方自治法123条
***********最高裁判所泉徳治裁判官***********************
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62546&hanreiKbn=02
私は,原判決を破棄し,第1審判決を取り消して,上告人の請求を認容すべきで
あると考える。その理由は,次のとおりである。
1
(1)
本件条例2条2号は,公開請求の対象となる「情報」について,「実施機関の職員
が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真,フイルム及び磁気テープであっ
て,決裁又は閲覧の手続が終了し,実施機関において管理しているものをいう。」
と規定している。これを一見すると,決裁等の手続が終了した情報のみが公開請求
の対象になることを規定しているように見える。
(2) 決裁等の手続を終了していない情報は,一般に,変更の可能性もある未成
熟なものであり,その正確性等を組織的に認知していないものであるから,これに
対しては実施機関として責任を負い難く,これが直ちに公開されると,町政の適正
な運営に支障を来すおそれがあり,住民間に無用の誤解や混乱を生じさせ,町政に
対する住民の信頼を失わせるおそれがある。a町処務規則10条1号は,「決裁」
について,「町長,町長の権限の受任者及び専決権限を有する者等が,その権限に
属する事務の処理につき,最終的に意思決定を行うことをいう。」と定義している
が,意思決定のための決裁文書が未確定の案の段階で公開されるとすると,上記の
ような弊害も生じよう。したがって,上記のような弊害のある情報を公開請求の対
象から除外するということも,立法の選択肢の一つとして肯定することができる。
(3) 一方,本件条例2条2号は,公開請求の対象となる情報として,「写真,
フイルム及び磁気テープ」を掲げており,これらの情報については,通常の場合,
決裁等の手続を想定し難いところ,決裁等の手続が終了していないために公開請求
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の対象から除外されるとすれば,同号が「写真,フイルム及び磁気テープ」を特に
掲げていることの意義がほとんどなくなってしまうのである。
(4) また,地方自治体の情報公開条例の解釈も,その背景をなす地方自治体の
事務処理の実態に適合するものでなければならないが,地方自治体においては決裁
等の手続がそれ程明確に定められているわけではなく,また,職員が職務上作成し
又は取得した文書等は原則として決裁等の手続を経るという実態には必ずしもなっ
ていないのであり,上記文書等の中には,決裁等の手続を予定していないものも相
当数存すると考えられる。現に,a町には,「閲覧」の定義規定も手続規定もない。
このような実態の中で,決裁等の手続が終了した情報のみが公開請求の対象になる
とすると,公開請求の対象から外れる情報が多数残り,また,公開請求の対象につ
いての地方自治体の恣意的コントロールを招くおそれも生じかねず,情報公開制度
の趣旨に反することになる。
(5) さらに,本件条例3条は,「実施機関は,この条例の解釈及び運用に当た
っては,情報の公開を求める権利を十分尊重」しなければならないと規定している。
また,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成15年法律第61号によ
る改正前のもの)は,その2条2項において,開示請求の対象となる行政文書につ
いて,決裁等の手続終了を要件とすることなく,行政機関の職員が職務上作成し,
又は取得した文書,図画及び電磁的記録であって,当該行政機関の職員が組織的に
用いるものとして,当該行政機関が保有しているものをいうと規定した上,その4
1条において,「地方公共団体は,この法律の趣旨にのっとり,その保有する情報
の公開に関し必要な施策を策定し,及びこれを実施するよう努めなければならない。」
と規定している。
(6) 以上を総合して考えると,本件条例2条2号は,最終的な意思決定や組織
的な認知を経ておらず,変更の可能性もある未成熟・不安定な情報で,公開するこ
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とにより前記のような弊害のあるものを公開請求の対象から外す趣旨で「決裁又は
閲覧の手続が終了し」と規定しているものであって,実施機関の職員が職務上作成
し又は取得した情報で,決裁等の手続を経ることが予定されておらず,これを公開
しても前記のような弊害のない情報についてまで,これを公開請求の対象から排除
する趣旨ではないと解すべきである。
(7) 本件テープは,被上告人自らが主張し,原審も認定しているように,そも
そも決裁等の手続を経ることが予定されていない情報である。また,本件テープは
,会議録作成のために議事内容を録音したものではあるが,それ自体で完成し独立
した情報であって,正確性も機械的に担保されたものであり,これを公開しても先
に触れたような弊害は生じない。そして,被上告人が本件テープを現実に支配,管
理していることについても当事者間に争いがないのであるから,本件テープは公開
請求の対象となる本件条例2条2号の情報に該当するというべきである。なお,本
件テープは,会議録作成後に録音が消去されるものであるが,未だ録音が消去され
ずに被上告人の管理下にある以上,公開請求の対象となる情報に当たると解するこ
とに何ら妨げはない。
2 私は,以上の理由から本件テープは公開請求の対象となる情報に該当すると
考えるものであるが,本件条例の下ではあくまでも決裁等の手続終了が必要である
という立場に仮に立ったとしても,少なくとも本件テープに関しては,決裁等の手
続が終了していると評価することが可能である。もし,被上告人の議長が本件テー
プを再生して会議の経過が正確に録音されていることを確認したとすれば,決裁等
の手続が終了したと解することに異論はないであろう。しかし,機械的に正確性を
担保された録音テープについて,これを再生してまで録音の正確性を確認するとい
う手続は省略されるのが通常であるから,議長から職務命令を受けた職員が議事場
内で録音を終了した時点で,実質的に議長の決裁等の手続が終了したと評価するの
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が妥当である。本件テープは,被上告人の事務局の職員が,議長の職務命令を受け
て,会議録を作成するために録音したものである。したがって,本件テープは,い
ずれにしても公開請求の対象となる情報に当たるというべきである。
3 法廷意見は,本件テープは,会議録作成のための基礎となる資料としての性
格を有するから,会議録が作成され決裁等の手続が終了した後において,公開請求
の対象となるという。これは,会議録の決裁等の手続終了と同時に本件テープにつ
いても本件条例2条2号の決裁等の手続が終了したと評価する趣旨と考えられるが
,実際には本件テープ自体について決裁等が行われるわけではない。また,本件テ
ープは機械的に正確性を担保されたものであって,会議録の決裁等の時点で本件テ
ープに変更が加えられる可能性はない。本件テープは,会議録作成のための基礎と
なる資料としての性格を有するとしても,会議録とは独立した一つの情報である。
本件テープが公開されることにより,住民は,会議録作成前においても,議事内容
を知ることができ,その情報をもって町政に参加することができるのであり,また
,会議録の正確性を検証することもできるのである。本件テープについて決裁等の
手続終了を擬制するとすれば,2で述べたように,議長から職務命令を受けた職員
が議事場内で録音を終了した時点で議長の決裁等があったと評価する方が妥当であ
ると考える。