当院は、厚労省の地域臨床研修のクリニックに指定されています。
今週から一週間、聖路加国際病院医師近藤先生が、当院で研修されます。
7月の石井先生に続き二人目の研修。
陪席させていただきますが、どうかよろしくお願い申し上げます。
近藤先生は、小児外科志望。
大いに病児保育含め小児医療のことを学んでいただきたいと思っています。
私自身たいへん楽しみな一週間です。
個別にお伝えしているところですが、万が一の場合、併せて急病対応いたしますので、お気軽にご相談下さい。
また、月曜日からの登園登校に備え、「治癒証明」が必要な場合、日曜日に書かせていただきます。月曜日わざわざクリニックによる必要がなくなると思いますので、ご利用下さい。
mission:日本の小児医療救急問題の解決と、地域の子ども達の24時間365日の安全安心。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
*********9月の小坂クリニックのお知らせ******
【1】9月は、日曜日はお休みなしで診療致します。
ただし、
〇9/23祝は、小児救急当番に出動のため休診します。
〇9/22日は、総合訓練消防団訓練に出動のため、対応時間を訓練終了後とさせていただきます。
【2】日曜日の予防接種を実施中です。(同時に急病対応もいたします。)
患者様からの御要望にお応えし、日曜日の予防接種(予約制)を実施することになりました。
ご希望の方は、お電話でお申し込み下さい。
お子様の夏休み期間中に、お忘れの予防接種があれば、実施されることをお勧めします。
日曜日予防接種実施に伴い午前中はクリニックに待機いたしますので、急病対応も可能です。
月曜日朝一番で登園できるよう治癒証明なども日曜日に書きますのでご利用ください。
【3】ご旅行中のお薬は、大丈夫ですか?
時期をずらして、ご旅行されるかたが、まだまだおられるようです。
ご旅行中に、ご病気の際、軽い風邪やおなかのお薬を持参されると安心です。
定期内服薬もきらさないようにお願いいたします。
ご旅行の際の持参薬について、お気軽にご相談下さい。
また、実際にご旅行中の際のご病気でお困りの場合、クリニックにお電話下さい(国内03-5547-1191、海外81-3-5547-1191)。万が一、留守番電話の場合、ご連絡先を入れてください。折り返しの対応をさせていただきます。
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「日曜日の予防接種開始のお知らせ」と、
「大人の風しんワクチンの無料接種のお知らせ」を致します。
<こども元気!!クリニックの日曜日の予防接種実施のお知らせ>
このたび、患者様からの御要望にお応えし
日曜日の予防接種(予約制)を
実施することになりました。
ご希望の方は、受付へ申し込みください。
ご利用お待ちしております。
<大人の風しん予防接種費用の無料化について>
風疹がたいへん流行しています。
先天性風しん症候群緊急対策として、
中央区は、大人のかたへの風疹予防接種費用助成を、
〇妊娠を予定又は希望している女性(接種期限 平成26年3月31日)
〇妊娠している女性の夫(接種期限 平成25年9月30日)→平成26年3月31日まで延長になりました!
を対象者として行っています。
接種費用は無料となりますが、接種期限もあり、ご注意ください。
当院でも、この事業に伴う予防接種も実施しておりますので、ご利用ください。
なお、対象でない方も、風しんにかかったことがないかたは、接種されることをお勧めします。
ワクチン不足も言われており、お考えの方はお早めにお申込み下さい。
*関連の中央区ホームページ:
http://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/hokenzyo/sessyu/senntennseihusinnkinnkyuutaisaku/index.html
*先天性風しん症候群:妊娠のはじめの時期に風しんに感染すると、高い確率でおなかの中の赤ちゃんが、心奇形・難聴・白内障などを持って生まれてくる病気です。だからこそ、妊娠されるかたを中心に接種事業が積極的に行われています。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
今後、理解を深めたいと思うところ。
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事件番号
平成22(あ)957
事件名
国家公務員法違反被告事件
裁判年月日
平成24年12月07日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
刑集 第66巻12号1722頁
原審裁判所名
東京高等裁判所
原審事件番号
平成20(う)2470
原審裁判年月日
平成22年05月13日
判示事項
1 国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号,国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号による政党の機関紙の配布の禁止と憲法21条1項,15条,19条,31条,41条,73条6号
2 国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号により禁止された政党の機関紙の配布に当たるとされた事例
裁判要旨
1 国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号,国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号による政党の機関紙の配布の禁止は,憲法21条1項,15条,19条,31条,41条,73条6号に違反しない。
2 管理職的地位にあり,その職務の内容や権限に裁量権のある一般職国家公務員が行った本件の政党の機関紙の配布は,それが,勤務時間外に,国ないし職場の施設を利用せず,公務員としての地位を利用することなく,公務員により組織される団体の活動としての性格を有さず,公務員による行為と認識し得る態様によることなく行われたものであるとしても,当該公務員及びその属する行政組織の職務の遂行の政治的中立性が損なわれるおそれが実質的に認められ,国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号により禁止された行為に当たる。
(1,2につき補足意見,2につき反対意見がある。)
参照法条
(1,2につき) 国家公務員法102条1項,国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号,人事院規則14-7第6項7号 (1につき) 憲法21条1項,憲法15条,憲法19条,憲法31条,憲法41条,憲法73条6号
判決文全文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130129100139.pdf
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事件番号
平成22(あ)762
事件名
国家公務員法違反被告事件
裁判年月日
平成24年12月07日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
刑集 第66巻12号1337頁
原審裁判所名
東京高等裁判所
原審事件番号
平成18(う)2351
原審裁判年月日
平成22年03月29日
判示事項
1 国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」の意義
2 人事院規則14-7第6項7号,13号に掲げる政治的行為の意義
3 国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号,国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号,13号による政党の機関紙の配布及び政治的目的を有する文書の配布の禁止と憲法21条1項,31条
4 国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号,13号により禁止された政党の機関紙の配布及び政治的目的を有する文書の配布に当たらないとされた事例
裁判要旨
1 国家公務員法102条1項の「政治的行為」とは,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが,観念的なものにとどまらず,現実的に起こり得るものとして実質的に認められる政治的行為をいう。
2 人事院規則14-7第6項7号,13号に掲げる政治的行為は,それぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものをいう。
3 国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号,国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号,13号による政党の機関紙の配布及び政治的目的を有する文書の配布の禁止は,憲法21条1項,31条に違反しない。
4 管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない一般職国家公務員が,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格を有さず,公務員による行為と認識し得る態様によることなく行った本件の政党の機関紙及び政治的目的を有する文書の配布は,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえず,国家公務員法102条1項,人事院規則14-7第6項7号,13号により禁止された行為に当たらない。
(1~4につき補足意見,1,2,4につき意見がある。)
参照法条
(1,3,4につき) 国家公務員法102条1項 (2~4につき) 人事院規則14-7第5項3号,人事院規則14-7第6項7号,人事院規則14-7第6項13号 (3,4につき) 国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号 (3につき) 憲法21条1項,憲法31条
判決文全文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130129093220.pdf
たまたま見つけたサイト。
難病の情報が、整理されています。
小児では、まれな奇形症候群が数多くあり、ひとつの情報源となります。
治療や治療開発研究の動向までわかります。
難病情報センター:
http://www.nanbyou.or.jp/
一方で、法は、法。
最も大事な行政分野の原則のひとつは、比例原則、違反の程度と処分はバランスよくしなければならない。
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http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20130925-OYT8T00826.htm
20m酒気帯びで懲戒免、潟上市職員退職金不支給に違法判決…秋田
酒気帯び運転で警察に摘発され、懲戒免職処分を受けた秋田県の元潟上市職員の50歳代男性が、退職金など計1946万円を全額支給しないのは裁量権の乱用に当たるとして、県市町村総合事務組合を相手取り、不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が、秋田地裁であった。
棚橋哲夫裁判長は「裁量権の乱用で、違法」として、同組合に不支給処分を取り消すよう命じた。
判決によると、男性は社会福祉課長だった2012年11月22日夜、秋田市の飲食店で飲酒した直後、20メートルほど車を運転し、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで県警に摘発された。
男性は同月29日に上司から問い合わせを受けるまで、酒気帯び運転で摘発されたことを報告していなかった。男性が事実関係を認めたため、市は翌30日付で男性を懲戒免職処分とし、同組合は退職金全額を支払わない不支給処分を男性に下した。
棚橋裁判長は判決で「退職手当の支給制限処分を行うこと自体は裁量の範囲内だが、男性の酒気帯び運転の程度は殊更、悪質ではない」とし、「不支給処分は合理性を欠き、裁量権の乱用に当たる」とした。
同組合は「こちらの主張が正しいとは思うが、判決は判決として受け止めている。控訴するかしないかは検討中」としている。
(2013年9月25日 読売新聞)
中央区の待機特養問題解決の一助になることを願っています。
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http://mainichi.jp/select/news/20130921k0000m040102000c.html
高齢化対策:地方移住型の特養後押し 厚労省検討会
毎日新聞 2013年09月20日 21時36分(最終更新 09月21日 00時55分)
厚生労働省の「都市部の高齢化対策に関する検討会」は20日、特別養護老人ホーム(特養)の整備について、高齢者施設が不足する東京23区などに関しては、特定圏域での整備を定めた指針を見直し、郊外や他県にも区民用の施設を造れるよう求めた報告書をまとめた。同省は報告書に沿って制度を見直し、2015年度から実施する意向だ。
特養の整備は、国の指針で都道府県が複数の市町村単位の老人福祉圏域を設定し、圏域ごとに建てることになっている。しかし、地価が高い東京23区などでは整備が進んでいない。このため同検討会は、同一都道府県内であれば自治体間の調整次第で圏域外に区民用の特養を整備できるようにすべきだとした。
東京都杉並区は静岡県南伊豆町の区所有地に特養建設を計画している。国の指針に反するが、杉並区は南伊豆町に区の保養所を建てるなど他の面でも連携が進んでいる。都道府県をまたいで特養を整備するケースについて、報告書は自治体間の連携が既にある場合に限って認めるとした。
これとは別に、都市部の不特定多数の高齢者を受け入れる目的で特養を整備する構想を持つ自治体もある。こうした例は「本人の意思に反し、地方の施設入所を強いる恐れがある」と慎重な検討を求めた。
また報告書は、高齢者のスムーズな移住に向け、他の都道府県にある特養に入居し、その後75歳になった人についても引き続き転居前の自治体が医療費を負担する「住所地特例」を適用するよう提言した。
国民健康保険(国保)や介護保険、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度は他の自治体の施設に移っても、住所地特例が適用される。ただし、75歳になる前に転居した国保加入者が、転居先で75歳を迎えて後期医療に移った場合は特例が引き継がれず、受け入れた自治体が医療費を負担する仕組みとなっている。これでは受け入れ側が施設整備をためらうとして、見直しを求めた。【細川貴代】
裁判の判決を待っては、守られない表現の自由の権利を、申立によって守った事案です。
主張の根拠として、用いられた条文は、行政事件訴訟法の37条の5 第1項と第3項。
該当箇所だけ、条文を抜きます。
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(仮の義務付け及び仮の差止め)
第三十七条の五
1項 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
3項 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
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あと、この裁判例の内容面でいえば、「公共の福祉」という考え方で、社会公共の平穏を守っています。
わざわざ、自民党改憲案がしきりに主張する「公の秩序」概念を、憲法に入れなくとも、社会公共の平穏を守ることができることを示す好例だと思います。
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http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=36795&hanreiKbn=05
事件番号 平成19(行ク)4
事件名 仮の義務付けの申立て事件(本案・当庁平成19年(行ウ)第23号 使用不許可処分取消ならびに義務付け請求事件)
裁判年月日 平成19年10月15日
裁判所名 岡山地方裁判所
分野 行政
判示事項
市の施設であるシンフォニーホールの使用不許可処分に対し,在日朝鮮人の音楽舞踊家により創立された歌劇団の公演を実行するために組織された実行委員会の代表者が提起した,同処分の取消し及び使用許可処分の義務付けを求める訴えを本案とする同ホールの使用許可の仮の義務付けを求める申立てが,認容された事例
裁判要旨
市の施設であるシンフォニーホールの使用不許可処分に対し,在日朝鮮人の音楽舞踊家により創立された歌劇団の公演を実行するために組織された実行委員会の代表者が提起した,同処分の取消し及び使用許可処分の義務付けを求める訴えを本案とする同ホールの使用許可の仮の義務付けを求める申立てにつき,行政事件訴訟法37条の5第1項所定の「償うことのできない損害」とは,一般に,執行停止の要件である同法25条2項所定の「重大な損害」よりも損害の性質及び程度が著しい損害をいうが,金銭賠償ができない損害に限らず,金銭賠償のみによって損害を甘受させることが社会通念上著しく不相当と評価される損害を含むと解されるところ,前記公演が実施できなくなることにより,前記代表者は,財産的損害や精神的苦痛を被るほか,憲法によって保障された基本的自由が侵害されることになるため,同人の被る損害は,金銭賠償のみによって損害を甘受させることが社会通念上著しく不相当と評価されるということができるから,同人に生ずる損害は,同法37条の5第1項所定の「償うことのできない損害」に当たり,かつ,前記公演の開催予定日までに本案訴訟の判決が確定することはあり得ないことも明らかであるから,「損害を避けるため緊急の必要」があるときに当たるというべきであり,また,前記公演が実施された場合に,警察の適切な警備によってもなお混乱を防止することができない事態が生ずることが客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されるものとは認め難く,岡山シンフォニーホール条例(平成3年条例第15号)3条3号が不許可事由として規定する「管理上支障があるとき」に当たらないというべきであるから,「本案について理由があるとみえるとき」に当たるとして,前記申立てを認容した事例
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http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080911100316.pdf
主文
1 相手方は,申立人に対し,申立人が相手方に施設利用料27万
1000円を納付することを条件として,別紙使用申請内容記載
のとおりαホールの使用を仮に許可せよ。
2 申立費用は相手方の負担とする。
事実及び理由
第1 本件申立ての趣旨及び理由等
本件申立ての趣旨及び理由は,別紙「仮の義務付け申立書」写し及び別紙「反 論書」写しのとおりであり,これに対する相手方の答弁及び反論は,別紙「答弁 書」写し及び別紙「再反論書」写しのとおりである。
第2 事案の概要
1 本件は,申立人が岡山市の設置した公の施設であるαホール(以下「本件ホ
ール」という。)の使用許可を申請したのに対し,本件ホールの指定管理者で ある相手方がその不許可処分をしたことから,申立人が相手方に対し,同使用 不許可処分の取消し及び使用許可処分の義務付けを求める本件本案訴訟を提起 するとともに,本案判決の確定を待っていては償うことのできない損害が生ず るとして,行政事件訴訟法37条の5第1項所定の仮の義務付けとして,仮に 本件ホールの使用許可処分を義務付けるよう申し立てた事案である。
2 前提事実
一件記録によれば,次の事実が一応認められる。
(1) 本件ホールの状況等
ア 本件ホールは,岡山市により設置された地方自治法244条所定の公の
施設であり,岡山市は,同法244条の2第1項に基づき,本件ホールの 設置及び管理等に関し,αホール条例(平成3年3月20日条例第15号, 以下「本件条例」という。)を制定している。
本件条例2条1項前段は,本件ホールを使用しようとする者は,市長の -1-
許可を受けなければならない旨を規定し,本件条例3条は,市長は,1公 の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあるとき(1号),2ホールの施 設及び付属設備をき損し,又は滅失するおそれがあるとき(2号),3そ の他ホールの管理上支障があるとき(3号)は,本件ホールの使用を許可 しない旨を規定している(甲1)。
また,本件条例1条の2第1項は,同法244条の2第3項の規定に基 づく指定管理者として相手方を指定し,本件ホールの管理を行わせること を定めており,平成18年4月以降,相手方が,本件ホールを管理し,使 用許可をするなどの市長の権限を行使している(甲1,23)。
イ 本件ホールは,岡山市β×番地183に所在するγビル(以下「本件ビ ル」という。)内にあり,付近一帯は,δ大通り,ε商店街,路面電車の ζ電停があるなど岡山市の中心街の一角を占め,歩行者や車両の通行量も 多い地域である。
本件ビルは,地下2階地上12階建てであり,地下2階が駐車場,地下 1階から地上2階までがA株式会社等の多数のテナントが入居するテナン ト階,3階から8階までが本件ホール(3階がイベントホール,和風ホー ル,スタジオ1,スタジオ2等,4階が大ホール等からなる。),9階か ら12階までが多数のオフィスが入居するオフィス階となっており,地下 2階,地下1階,地上1階からはだれでも本件ビル内に入ることができる 構造となっている。そして,駐車場,テナント階からオフィス階へはエレ ベーターを利用して移動することができ,本件ホールの所在する3階へも エレベーターによって移動することができるほか,通常,エレベーターは 4階の大ホールには停まらないようになっているが,4階に停まるように することもできる。また,地下1階から地上1階,地上1階から2階,地 上2階から3階へはエスカレーター又は階段によって移動することがで き,本件ホールに移動するためにエスカレーター又は階段を用いる場合,
-2-
テナントの利用者と本件ホールの利用者とがエスカレーター又は階段を共
用することになる。(甲1,23,乙1,25,30の1ないし10)。
(2) Bの活動等
ア Bは,昭和30年(1955年)に在日朝鮮人の音楽舞踊家によりCと して創立され,昭和49年(1974年)に現在の名称に改称された音楽 舞踊集団であり,日本国内を中心として,民族舞踊,声楽,民族器楽,舞 台美術等の公演,活動を行ってきた。Bは,創立以来,日本各地及びドイ ツ等の世界各地の舞台において7000回を超える公演を行っており,岡 山県下においても30年近くにわたってほぼ毎年岡山市と倉敷市で交互に 1000人から1500人規模の公演を行っており,平成7年,9年,1 1年,15年には本件ホールで,平成13年,17年には岡山市民会館で それぞれ公演を行っている。また,Bは,平成19年中に岡山市以外でも 公演を行っており,9月だけでも仙台,高崎,千葉,奈良,盛岡で公演が 実施されている(甲4,11,16,24)。
イ 申立人は,Bの岡山公演を実行するために組織されたB岡山公演実行委 員会(以下「本件委員会」という。)を代表する委員長であり,これまで 岡山市におけるBの公演の準備を行い,本件委員会により平成19年度の 同公演を主催しようとしている。なお,本件委員会は,岡山県下における Bの公演を通じ,朝鮮民族教育を守り発展させ,在日朝鮮人社会の連携を 深めるとともに,朝日友好親善のため,広範な運動を行うことを目的とし て組織されたものである(甲3,16)。
ウ 例年,Bの岡山公演を行うにあたっては,その公演についての実行委員 会が結成され,同委員会において,チケット,ポスター,パンフレット等 を用意し,公演賛助店,県内居住在日朝鮮人,岡山県民の観覧希望者に配 布するなどしており,本件委員会も平成19年度の公演に向けてビラを2 000枚,チケットを5000枚,ポスターを50枚印刷して,それぞれ
-3-
配布している。また,公演を実施するためにおよそ800か所の岡山県各 地の協力企業,協賛団体へ案内と広告のお願いを送り,1500万円の広 告料収入を目標としている。これらの公演の準備には2ないし3か月を要 する(甲10,11,16,21,22,24)。
(3) 本件申立てに至る経緯等
ア Bは,前記のとおり,岡山県下ではこれまで岡山市と倉敷市において交
互に公演を行っており,平成18年度には倉敷市民会館で公演を行ったこ とから,申立人は,平成19年度は岡山市で例年どおりの1000人から 1500人規模での公演(以下「本件公演」という。)を実施すべく準備 を進め,平成19年1月,岡山市民会館の使用申請を打診したが,同年1 1月12日を含めてその前後には既に予約が入っていることが判明したた め,岡山市民会館での公演実施を断念した。そこで,申立人は,本件ホー ルに連絡をとって予約状況を確認したところ,空いているとのことであっ たため,同年1月19日付けで,相手方に対し,使用日を同年11月12 日,使用時間を午前9時から午後22時まで(全日)として本件ホール(そ のうちの大ホール,スタジオ1,2,楽屋1ないし6,控室1ないし3) の使用許可を申請した(甲5,16)。
イ これを受けて,相手方は,平成19年1月24日付けで,申立人に対し, 納付期限を同年2月21日,期限までに施設使用料を納付しない場合には 使用できない場合があると定めて,施設使用料27万1000円の請求を し,納付後に使用許可をする旨を通知した(甲6,16)。しかし,申立 人は,過去,納付期限までに施設使用料を納付しなかったときでも,後日 これを納付すれば,本件ホールの使用が可能であったことから,納付期限 を過ぎても施設使用料を納付しないでいたところ,相手方は,後記(6)の とおり,同年6月から7月にかけて右翼団体による街宣活動等が活発化し たことを踏まえ,また,申請のあった同年11月12日まで4か月の余裕
-4-
もあったため,同年7月12日,理事会において,申立人の前記申請を不 許可とすることを決定した。そこで,相手方は,同月20日付けで,本件 ホールが本件ビルのテナントのひとつであり,本件ビルが複合施設である ことから,「昨年,実施されたBの公演に対する抗議活動の状況及び最近 の諸般の情勢を踏まえ,同公演を実施した場合に,長期間にわたる街宣活 動等により,ビルのテナント等に営業的損失を生じさせる恐れが十分に予 測される。また,ホール周辺の交通状態の混乱等により,ホールを利用さ れる他の利用者に多大な迷惑を被らせるだけでなく市民にも不安感を与え ることが考えられる。こうした状況を踏まえ利用者の安心・安全の確保を 考え,ホールの管理に支障を及ぼすと認められる」ことを理由に,本件条 例3条3号に基づき,申立人の前記使用申請に対し,使用を不許可とする 処分をした(以下「本件不許可処分」という。)(甲7,16)。
ウ 申立人は,平成19年7月25日,相手方に対し,本件不許可処分につ いて再考を求めるとともに,本件不許可処分に対する救済方法の教示を求 めたところ,相手方は,同月31日付けで,岡山市長に対する審査請求又 は処分取消しの訴えによる救済方法があることを教示し,併せて,納付期 限までに施設使用料が未納であったことを付記した回答書を申立人に送付 した。(甲8,16)
エ 申立人は,平成19年8月13日,期限までに施設使用料が納付できれ ば使用が許可されると考え,相手方に対し,再度の使用申請をしたい旨申 し入れたが,相手方は,同月20日付けで,申立人に対し,前記イのとお り,本件ホールの管理に支障があるとして許可することができない旨を通 知した。(甲9,16)
オ そこで,申立人は,本件ホールに替わる施設を捜したが,岡山市民会館 は前記のとおり既に予約が入っていて使用不能であり,また,多人数を収 容できる施設として,岡山市には,η体育館,θ(県営体育館),武道館
-5-
があるが,これらの施設には照明設備,仕切り幕,音響装置等々の舞台設 備がなく,その設備を持ち込むとすると多額の費用がかかることから,こ れらの代替施設での本件公演の実施を断念し,平成19年9月11日,本 件と同旨の義務付けと本件不許可処分の取消しを求めて本件本案訴訟を当 庁に提起し,併せて本件申立てをした。
(4) 平成18年の倉敷公演に対する右翼団体等の妨害活動 平成18年10月26日のB倉敷公演に際し,会場である倉敷市民会館周
辺の道路を右翼団体等が街宣車約10台を走らせて公演の中止を求める抗議 活動を行ったが,岡山県警察が180人態勢で同市民会館の駐車場入り口に 車止めを設置し,会場に通じる路地を通行止めにするなどの警備態勢をとっ たことにより大きな混乱もなく,公演は行われた(甲15の2)。
申立人は,本件公演についても右翼団体等による妨害行為が予想されるこ とから,本件委員会としての対策を講じるとともに岡山東警察署に出向いて 警備を要請することを予定している(甲16)。
(5) 仙台公演に対する右翼団体等の妨害活動 平成19年9月3日,Bの仙台公演が仙台市民会館で行われた。これに際
して,右翼団体が公演の中止を求めて,周辺道路で大音量を流しながら街宣 車10台以上を走行させたため,周囲に騒音が発生した。宮城県警察はこの 妨害行為を取り締まるため機動隊員ら約250人態勢で警戒に当たり,街宣 車の交通誘導等をしたが,これに従わない構成員らと警官がもみ合いになり, 公務執行妨害の事実で4人が現行犯逮捕されるなどの混乱が生じたものの, 公演自体は予定どおりに行われた(乙27)。
(6) 本件公演に対する右翼団体等の妨害活動 平成18年の北朝鮮による核実験等を受け,北朝鮮に対して反発する右翼
団体により,平成19年2月7日以降,Bの公演に施設を貸すなとの街宣活 動が断続的に行われ始め,同月16日には,右翼団体から「Bに会場を貸さ
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ない,後援をしない,他県で行われたような不法行為があれば断固たる処置 を行う」等の要望を記載した要望書が岡山市に提出され,同年6月20日に は,右翼団体であるD構成員が岡山市に対し,「公演になったら,昨年の倉 敷公演どころではない。倉敷はEの地盤なので他が入るのを許さないが,岡 山はどこの団体でも全部入れる。岡山では腐るほど来る。名を挙げたい右翼 はものすごく多い。暴動が起きる。街宣車が何十台も回って誰が迷惑するか。 招待券が手に入ったら,中で暴れる。」などとして施設を使用させないよう 厳しく要求し,その後,同月29日,7月6日,同月8日,同月31日,8 月2日,同月7日に同会による街宣活動が行われた(乙28)ほか,同年9 月30日,同年10月7日にも,Dほかの右翼団体が「11月12日は,こ の近辺は我々右翼団体によって,混乱が生じることは間違いありません。」, 「近隣の方々には大変なご迷惑をお掛けしますが,日本人のとしての我々は, このBの公演を絶対阻止する覚悟があります。」などと連呼して本件ビルの 周囲を周回する街宣活動が行われた(乙29)。
なお,本件不許可処分に対しては,同年9月26日現在,市民からの電話 やメール等により,岡山市に対し,抗議の意思表明が68件,賛同の意思表 明が5件,本件ホールに対し,抗議の意思表明が84件,賛同の意思表明が 39件寄せられている。(甲19,24)
第3 当裁判所の判断
1 本件申立ては,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づき,申立人が相手方
に対し,本件ホールの使用許可の仮の義務付けを求めるものであり,この仮の 義務付けをするためには,
「義務付けの訴えに係る処分がされないことにより 生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要のあ」ること(同項),
「本案について理由があるとみえるとき」に当たること(同項),
「公共の福 祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」に当たらないこと(3項),
以上 の各要件を満たすことが必要である。
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2 償うことのできない損害を避けるための緊急の必要
(1) そこで,まず,「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があ」
るか否かについて判断するに,前記前提事実(2),(3)でみたところによると, 申立人が本件公演を1000人から1500人規模で実施するためには,協 賛広告の募集による広告料収入の確保,ビラの配布,チケット,パンフレッ トの作成等を行う必要があり,申立人は,本件ホールでの開催を前提として これらを準備しており,その準備のためには,2ないし3か月を要する上, 本件公演を岡山市で実施するには,現時点では本件ホール以外にないという のであるから,本案である本件ホールの使用許可の義務付けの訴えに係る使 用許可処分がされなければ,本件公演を平成19年11月12日ないしはこ れに近接した日に岡山市において予定した規模で実施することは事実上不可 能といえる。そうなると,申立人は,本件公演準備のため既に支出した諸費 用その他の財産的損害を被ることになるほか,本件公演を通じて,朝鮮民族 教育を守り発展させ,在日朝鮮人社会の連携を深めるとともに,朝日友好親 善を図るとの本件委員会の目的は達せられないことになり,ひいて,申立人 の本件公演実施に向けての諸尽力や熱意が無に帰して申立人が精神的苦痛を 受けることはもとより,後記のとおり,憲法によって保障された集会の自由 その他の申立人の基本的自由が侵害されることになり,さらには,本件公演 の観覧を待ち望んでいる市民の期待をも裏切ることになることは明らかであ る。
ところで,行政事件訴訟法37条の5第1項所定の「償うことのできない 損害」とは,一般に,執行停止の要件である同法25条2項所定の「重大な 損害」よりも損害の性質及び程度が著しい損害をいうが,金銭賠償ができな い損害に限らず,金銭賠償のみによって損害を甘受させることが社会通念上 著しく不相当と評価される損害を含むと解されている。そこで,これを本件 についてみるに,本件公演を実施できなくなることにより,申立人は,上記
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のとおりの財産的損害や精神的苦痛を被るほか,憲法によって保障された基 本的自由が侵害されることになるのであるが,そのうち,財産的損害につい てはともかく,上記精神的苦痛や基本的自由の侵害に対する損害は,もとも とその算定が甚だ困難であるため,懲罰的賠償が許容されない現行法制のも とでは,低額の慰謝料が認容されるにとどまる蓋然性が高いし,また,これ らの損害の回復,特に,基本的自由の侵害の回復という観点からしても,こ れを慰謝料に換算した上,金銭賠償をすることによってたやすくその損害の 回復ができると考えてしまうことにも相当に問題があり,憲法秩序からして も,また,社会通念からしても是認し難いものがある。そうすると,本件公 演が実施できなくなることによって被る申立人の損害は,金銭賠償のみによ って損害を甘受させることが社会通念上著しく不相当と評価されるというこ とができるから,申立人に生じる損害は,同法37条の5第1項所定の「そ の義務付けの訴えに係る処分がされないことにより生ずる償うことのできな い損害」に当たると認めるのが相当である。
(2) また,本件本案訴訟は,現時点において第1回の口頭弁論期日さえ開か れていない段階であることは本件記録上明らかであり,本件公演の開催予定 日である平成19年11月12日までに本件本案訴訟の判決が確定すること はありえないことも明らかである。したがって,本件申立ては,同法37条 の5第1項所定の「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があ」 るときに当たるというべきである。
なお,相手方は,申立人ないし本件委員会が本件不許可処分後に協賛広告 の協力依頼文書を作成し,ビラを作成するなどの準備をしたのであるから, 本件公演までの期間が現在切迫しているからといって,緊急の必要があると 認められるべきではない旨を主張するが,本件公演を規模を変えずに岡山市 で行うことに適している施設は規模が十分で舞台設備が整っている本件ホー ルと前記第3のとおり使用することができない岡山市民会館であり,以下で
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見るように申立人の本案について理由があるとみえるのであるから,仮に相 手方の主張のとおり申立人らによる準備が本件不許可処分後であったとして もそれによって緊急の必要がないということはできない。
3 本案について理由があるとみえるとき
(1) 次に,本件申立てが行政事件訴訟法37条の5第1項所定の「本案につ
いて理由があるとみえるとき」に当たるか否かについて検討する。 相手方が提出した平成19年9月26日付け答弁書及び平成19年10月 10日付け再反論書によると,相手方が本件不許可処分をした具体的な理由 は,1平成18年度のB倉敷公演の際に反対者によって街宣車による示威行 進が行われ,警備関係者を振り切って会場内に入ろうとした者がいたなどの 混乱が生じたこと,2平成19年2月ころから北朝鮮による核実験等を受け て北朝鮮に対して反発する右翼団体等により,本件公演が公になる前からB の公演に施設を使用させるなとの抗議の街宣活動が断続的に行われ,平成1 9年9月30日と同年10月7日にも本件ビル周辺で街宣活動が行われ,ま た,施設をBに使用させることについて反対する要望書が岡山市に提出され るなどの抗議活動がなされたこと,3本件ホールは,多数のテナントやオフ ィスが入居する複合施設であり,また,その立地もδ大通りやε商店街に接
しており,多数の市民が本件ビルを利用し,周辺の通りを通行していること, 4上記1のような街宣抗議活動が行われる蓋然性があり,さらに,上記2の 事情からすると,上記1以上の街宣抗議活動が行われる恐れがある本件公演 が上記3のような場所で行われれば,本件ビルの搬入口への搬入や案内所の 案内に大きな支障が生じるほか,交通秩序の混乱,騒音及び入場者の不安感 から,他のテナント,オフィスに受忍の限度を超えた重大な影響を及ぼすの であり,明らかに差し迫った具体的かつ重大な危険が存在することが明白で ある,5同一建物内にテナント,オフィスがあるという本件ホールの特殊性 から,警察の警備等によってもなお混乱が生じるという事情があるというこ
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とにある。
(2) よって検討するに,本件ホールは,地方自治法244条の公の施設であ
るから,相手方は,正当な理由がない限り,住民が本件ホールを利用するこ とを拒んではならず(同条2項),また,住民が本件ホールを利用すること について,不当な差別的取扱いをしてならない(同条3項)。そして,本件 条例が本件ホールの使用不許可事由として掲げる本件条例3条3号所定の 「管理上支障があるとき」とは,公の施設である本件ホールについて,利用 を拒みうる上記の正当な理由を具体化したものと解される。また,住民は, 本件ホールのような公の施設が設けられている場合,その施設の設置目的に 反しない限り,その利用を原則的に認められることになるのであって,管理 者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは,憲法の保障する集会 の自由,表現の自由の不当な制限につながるおそれがある。このような観点 からすると,本件条例3条3号所定の「管理上支障があるとき」とは,本件 ホールの管理上支障が生ずるとの事態が,許可権者の主観により予測される だけでなく,客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合をい うものと解するのが相当である。そして,相手方が主張する管理上支障があ る事態とは,Bの公演に対する右翼団体等の抗議活動に起因するものであっ て,Bの公演そのものに起因するものではないのであるから,このように主 催者が集会を平穏に行おうとしているのに,その集会の目的や主催者の思想, 信条等に反対する者らが,これを実力で阻止し,妨害しようとして紛争を起 こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことができるのは,上 記のような公の施設の利用関係の性質に照らせば,警察の適切な警備等によ ってもなお混乱を防止することができないなどの特別な事情がある場合に限 られるというべきである。(最高裁判所平成8年3月15日第二小法廷判決 ・民集50巻3号549頁参照)。
(3) そこで,本件につき警察の適切な警備等によってもなお混乱を防止する - 11 -
ことができない事態が生ずることが客観的な事実に照らして具体的に明らか に予測されるといえるか否かについてみるに,前記前提事実(4)ないし(6)に よれば,Bの平成18年10月26日の倉敷公演において,右翼団体等によ り約10台の街宣車による抗議活動がなされ,そのため街宣車による騒音が 発生したこと,岡山県警察はあらかじめ右翼団体等の活動が予測されたため, 当日,警備態勢を整えて対処したこと,Bの平成19年9月3日の仙台公演 の際には,右翼団体等が街宣車10台以上を走行させたため,周囲に騒音が 発生し,宮城県警察はこの妨害行為を取り締まるため機動隊員ら約250人 態勢で警戒に当たったが,構成員らと警官がもみ合いになり,公務執行妨害 の事実で4人が現行犯逮捕されるなどの混乱が生じたこと,平成19年1月 以降,右翼団体が岡山市に対してBに施設を貸さないよう求めて街宣活動等 を行い,同年6月以降,これが活発化したことが一応認められる。
しかしながら,上記事実によれば,平成18年の倉敷公演や平成19年の 仙台公演の際の右翼団体等の活動が一定の混乱をもたらし,一般市民の生活 に悪影響をもたらしたことは否定できないとしても,これによって生じた街 宣車による騒音や交通渋滞,警察官に対する抵抗といった事態はいずれも岡 山県警察や宮城県警察の適切な警備によって制圧され,各公演とも支障なく 実施されているのであるから,上記各公演の際の右翼団体等の活動が警察の 適切な警備によってもなお混乱を防止することができないほどのものであっ たとは認め難い。
また,右翼団体等の抗議活動が昨年以上に活発になると予測できるとはい っても,前記前提事実(3)でみたように,Bの平成19年中の公演は,9月 だけでも,仙台のほか,高崎,千葉,奈良,盛岡で実施されており,仙台を 除くこれら各地の公演おいて,警察の警備等によっても防止することができ ないような混乱が生じたことをうかがわせるような疎明はない。
もっとも,本件ホールは,本件ビル内に本件ホールのほか多数のテナント, - 12 -
オフィスが入居した複合施設であり,地下2階,地下1階,地上1階からは だれでも入ることができる構造となっている点において特殊性があり,また, 本件ビルの周辺にはδ大通りやε商店街があり,歩行者や車両の通行量の多 いことも前記前提事実(1)において一応の認定をしたとおりである。したが って,本件ビルは,上記のとおりに公衆に開放されているため,その警備が 困難であり,また,右翼団体等の街宣活動等,特にその騒音によって,テナ ント,オフィスの営業等や周辺における一般市民,自動車の通行等に混乱を 生じさせるおそれがあるといえ,相手方がこれらを憂慮するあまり,本件不 許可処分をしたこともあながち理由がないわけではない。
しかしながら,前記前提事実(1)によれば,相手方は,本件ビル地下2階 から地上12階までのうち3階から8階までを占める本件ホールを管理,運 営しており,また,岡山市も本件ビルの区分所有権のうち相当部分を保有し ている(乙1ないし24)のであるから,相手方及び岡山市とも,本件ビル 全体の管理,運営についても強力な発言力を有するであろうことが推認され るのであり,そうであれば,相手方と岡山市は,本件ビルの管理者はもちろ ん,岡山県警察や申立人ないし本件委員会とも協議しつつ,上記開放部分に 重点を置いた適切な警備方法を工夫,実施することが可能であるし,また, 岡山県においては,「拡声器等による暴騒音規制条例(昭和59年3月23 日岡山県条例第14号)」が制定されており,右翼団体等から発せられる暴 騒音についても規制が及んでいるのであるから,これに対しても岡山県警察 による取締まりが可能である。したがって,相手方の上記憂慮に理由がない わけではないが,右翼団体等による街宣活動が警察の適切な警備等によって もなお防止することができない事態が生じるとは認め難い。
さらに,本件ビルのテナント,オフィスに生じる営業等への影響について も,右翼団体等が平穏に抗議行動をする限り,これもまた憲法によって保障 された集会の自由に属するのであって,これらのテナント,オフィスにおい
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ても当然に受忍すべきものであるし,右翼団体等の行動がこれを超えて違法 にわたる場合には,上記説示のとおりの警察による適切な警備が期待できる のであるから,その場合においても,上記テナント,オフィスに受忍限度を 超えた損害を生じるとは認め難い。
加えて,本件においては,前記前提事実(6)で摘示したとおり,Dを始め とする右翼団体は,相手方に対し,本件公演当日,激しい街宣活動等を繰り 返すことによって敢えて混乱を生じさせる旨を申し向け,相手方がかかる事 態に陥ることを憂慮するあまり,本件ホールの使用を不許可とさせて本件公 演を中止させようと目論んでいるのであって,そのような不当な要求に屈す ることが,地方自治法244条2項所定の正当な理由となると解することは 到底できない。したがって,この点からしても,本件不許可処分に正当な理 由があるとは認められない。
(4) 以上検討したところによると,本件公演が実施された場合に,警察の適 切な警備によってもなお混乱を防止することができない事態が生ずることが 客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されるものとは認め難く,本 件条例3条3号所定の「管理上支障があるとき」に該当しないものというべ きである。
したがって,本件申立ては,本案について理由があるとみえるときにあた る。
4 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき 相手方は,本件公演を実施した場合には,その公演に反対する者との間で多
大な混乱が生じ,一般の利用者等に不測の事態が生ずるおそれがあり,公共の 福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある旨の主張をする。
しかし,前記3で判断したとおり,本件公演を実施しても警察の適切な警備 等によって防止することができないような混乱が生ずるものとは認め難い以 上,本件申立てを認容することによって公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそ
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れがあるとはいえない。
第4 結論
以上によれば,本件申立ては,理由があるから認容することとし,申立費用 の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとお り決定する。
平成19年10月15日
岡山地方裁判所第1民事部
裁判長裁判官 近下秀明
裁判官 篠 原 礼
裁判官 植月良典
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よくある判断は、国家公務員(この場合、刑務所長)の判断は、裁量権の逸脱濫用があったとしても、その状況下では、しかたがないものとして、国家賠償法上の過失があったとまでは言えないとして、国家賠償法の請求は棄却されています。
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よくある判断の例)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121148889924.pdf
所長は、本件処分 をし、これを許可しなかったのであるから、本件処分は法四五条に反する違法なも のといわなければならない。
(中略)
思うに、規則一二〇条(及び一二四条)が被勾留者と幼年者との接見を許さない とする限度において法五〇条の委任の範囲を超えた無効のものであるということ自 体は、重大な点で法律に違反するものといわざるを得ない。
(中略)
このことは国家公務員として法令に従ってその職務を遂行すべ き義務を負う監獄の長にとっても同様であり、監獄の長が本件処分当時右のような ことを予見し、又は予見すべきであったということはできない。
本件の場合、原審の確定した事実関係によれば、所長は、規則一二〇条に従い本 件処分をし、被上告人とFとの接見を許可しなかったというのであるが、右に説示 したところによれば、所長が右の接見を許可しなかったことにつき国家賠償法一条 一項にいう「過失」があったということはできない。
上告理由第二点は、所長に国家賠償法一条一頃にいう「過失」がなかったことを 主張する限りにおいて理由がある。
******************
しかし、この判例は、裁量権の逸脱濫用と、さらに過失まで認め、国家賠償請求を認容しました。
勝ち取った金額は1万円であったとしても、守ったものは、掛け替えのない権利であったと思います。
この判例の判断過程。
「刑務所長が受刑者の新聞社あての信書の発信を不許可としたことは,
刑務所長が,具体的事情の下で,
○上記信書の発信を許すことにより刑務所内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるかどうかについて考慮していないこと,
○上記信書が,国会議員に対して送付済みの請願書等の取材等を求める旨の内容を記載したものであり,その発信を許すことによって刑務所内に上記の障害が生ずる相当のがい然性があるということができないこと
など判示の事情の下においては,
裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。」
********************
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=32855&hanreiKbn=02
事件番号 平成15(オ)422
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成18年03月23日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄自判
判例集等巻・号・頁 集民 第219号947頁
原審裁判所名 福岡高等裁判所
原審事件番号 平成14(ネ)613
原審裁判年月日 平成14年10月31日
判示事項
1 監獄法46条2項と憲法21条,14条1項
2 刑務所長が受刑者の新聞社あての信書の発信を不許可としたことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるとされた事例
裁判要旨
1 監獄法46条2項は,具体的事情の下で,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められるときに限り,この障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ上記信書の発受の制限が許されることを定めたものとして,憲法21条,14条1項に違反しない。
2 刑務所長が受刑者の新聞社あての信書の発信を不許可としたことは,刑務所長が,具体的事情の下で,上記信書の発信を許すことにより刑務所内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるかどうかについて考慮していないこと,上記信書が,国会議員に対して送付済みの請願書等の取材等を求める旨の内容を記載したものであり,その発信を許すことによって刑務所内に上記の障害が生ずる相当のがい然性があるということができないことなど判示の事情の下においては,裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となる。
参照法条 (1,2につき) 監獄法46条2項 (1につき) 憲法14条1項,憲法21条 (2につき) 国家賠償法1条1項
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http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060405104625.pdf
主文
1 原判決を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。
(1) 被上告人は,上告人に対し,1万円を支払え。
(2) 上告人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟の総費用は,これを10分し,その1を被上告 人の負担とし,その余を上告人の負担とする。
理由
第1 上告人の上告理由のうち監獄法46条2項の違憲をいう部分について
表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨,目的にかんがみると,受刑者の その親族でない者との間の信書の発受は,受刑者の性向,行状,監獄内の管理,保 安の状況,当該信書の内容その他の具体的事情の下で,これを許すことにより,監 獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点におい て放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる 場合に限って,これを制限することが許されるものというべきであり,その場合に おいても,その制限の程度は,上記の障害の発生防止のために必要かつ合理的な範 囲にとどまるべきものと解するのが相当である。
そうすると,監獄法46条2項 は,その文言上は,特に必要があると認められる場合に限って上記信書の発受を許 すものとしているようにみられるけれども,上記信書の発受の必要性は広く認めら れ,上記要件及び範囲でのみその制限が許されることを定めたものと解するのが相 当であり,したがって,同項が憲法21条,14条1項に違反するものでないこと は,当裁判所の判例(最高裁昭和40年(オ)第1425号同45年9月16日大
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法廷判決・民集24巻10号1410頁,最高裁昭和52年(オ)第927号同5 8年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁)の趣旨に徴して明らかであ る。論旨は採用することができない。
第2 その余の上告理由について
論旨は,違憲及び理由の食違いをいうが,その実質は事実誤認若しくは単なる法 令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項 に規定する事由のいずれにも該当しない。
第3 上告人の上告受理申立て理由のうち新聞社への手紙の発信不許可の違法を いう部分について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人は,昭和61年7月,東京地方裁判所において,現住建造物等放火 等の罪で懲役18年の判決を受け,平成元年7月,最高裁判所が上告を棄却したこ とにより同判決が確定し,これに基づき,同年10月5日,熊本刑務所に収容さ れ,同日以降,同刑務所で服役していた者である。
(2) 上告人は,平成11年6月17日及び同月21日,参議院議員A及び衆議 院議員Bあてに,「受刑者処遇の在り方の改善のための獄中からの請願書」(以下 「本件請願書」という。)を送付し,また,同年10月4日付けで熊本地方検察庁 あてに熊本刑務所職員等についての告訴告発状(以下「本件告訴告発状」とい う。)を送付した。
(3) 上告人は,平成11年10月13日,本件請願書及び本件告訴告発状の内 容についての取材,調査及び報道を求める旨の内容を記載したC新聞社あての手紙 (以下「本件信書」という。)の発信の許可を熊本刑務所長に求めた。
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(4) 熊本刑務所長は,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は特に必 要があると認められる場合に限って許されるべきものであると解した上で,本件信 書の発信については,権利救済又は不服申立て等のためのものであるとは認められ ず,その必要性も認められないと判断して,これを不許可とし,上告人に対し,平 成11年10月15日,その旨を告知した。
2 本件は,上告人が,被上告人に対し,熊本刑務所長が違法に本件信書の発信 を不許可としたことによって精神的苦痛を被ったとして,国家賠償法1条1項に基 づき,慰謝料を請求する事案である。
3 原審は,上記の事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人の請求 を棄却すべきものとした。
上告人は,本件信書の発信の許可を求める前に,国会議員に対して本件請願書を 送付し,また,検察庁に対して本件告訴告発状を送付しており,しかも,本件信書 には,刑務所の実情を明らかにして処遇の在り方の改善を図るという上告人独自の 信念に基づき,本件請願書や本件告訴告発状の取材,調査及び報道を求める旨の内 容が記載されているが,本件信書の発信が上告人の権利救済又は教化改善のために 特に必要であるとは認められず,他に特別の必要を認めるべき証拠もないのである から,熊本刑務所長が本件信書の発信を不許可としたことに違法があるということ はできない。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。
その理由は,次 のとおりである。
監獄法46条2項の解釈上,受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は, その必要性が広く認められ,前記第1の要件及び範囲でのみその制限が許されると
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解されるところ,前記事実関係によれば,熊本刑務所長は,受刑者のその親族でな い者との間の信書の発受は特に必要があると認められる場合に限って許されるべき ものであると解した上で,本件信書の発信については,権利救済又は不服申立て等 のためのものであるとは認められず,その必要性も認められないと判断して,これ を不許可としたというのであるから,同刑務所長が,上告人の性向,行状,熊本刑 務所内の管理,保安の状況,本件信書の内容その他の具体的事情の下で,上告人の 本件信書の発信を許すことにより,同刑務所内の規律及び秩序の維持,上告人を含 めた受刑者の身柄の確保,上告人を含めた受刑者の改善,更生の点において放置す ることのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるかどうかについて考慮 しないで,本件信書の発信を不許可としたことは明らかというべきである。
しか も,前記事実関係によれば,本件信書は,国会議員に対して送付済みの本件請願書 等の取材,調査及び報道を求める旨の内容を記載したC新聞社あてのものであった というのであるから,本件信書の発信を許すことによって熊本刑務所内に上記の障 害が生ずる相当のがい然性があるということができないことも明らかというべきで ある。そうすると,熊本刑務所長の本件信書の発信の不許可は,裁量権の範囲を逸 脱し,又は裁量権を濫用したものとして監獄法46条2項の規定の適用上違法であ るのみならず,国家賠償法1条1項の規定の適用上も違法というべきである。
これ と異なる原審の判断には,監獄法46条2項及び国家賠償法1条1項の解釈適用を 誤った違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。
これと同 旨をいう論旨は理由がある。
そして,熊本刑務所長は,前記のとおり,本件信書の発信によって生ずる障害の 有無を何ら考慮することなく本件信書の発信を不許可としたのであるから,熊本刑
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務所長に過失があることも明らかというべきである。
そこで,上告人の被った精神的苦痛の程度について検討するに,本件信書の内容等の前記事実関係に照らし,慰謝料は1万円とするのが相当である。
第4 結論
以上によれば,本件請求は,上記の限度で理由があるから認容し,その余は棄却
すべきであるから,原判決を主文第1項のとおり変更する。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 泉 徳治 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)
判事の事実のもとでは、裁判所による取材フィルム提出命令は妥当であると判断されています。
最高裁が取られた判断の方法は、慎重に比較衡量して可否を決し、提出可としても十分な配慮をしているかどうかです。
「報道機関の取材フイルムに対する提出命令が許容されるか否かは、
○審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重
および
○取材したものの証拠としての価値、
○公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するとともに、
○これによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度、
○これが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を
比較衡量して決せられるべきであり、
○これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合でも、それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。」
******************************
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=50977&hanreiKbn=02
事件番号 昭和44(し)68
事件名 取材フイルム提出命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告
裁判年月日 昭和44年11月26日
法廷名 最高裁判所大法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集等巻・号・頁 刑集 第23巻11号1490頁
原審裁判所名 福岡高等裁判所
原審事件番号
原審裁判年月日 昭和44年09月20日
判示事項
一 報道および取材の自由と憲法二一条
二 報道機関の取材フイルムに対する提出命令の許容される限度
裁判要旨
一 報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあり、報道のための取材の自由も、同条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。
二 報道機関の取材フイルムに対する提出命令が許容されるか否かは、
○審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重
および
○取材したものの証拠としての価値、
○公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するとともに、
○これによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度、
○これが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を
比較衡量して決せられるべきであり、
○これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合でも、それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。
参照法条 憲法21条,刑訴法99条,刑訴法262条,刑訴法265条
************************
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115814155282.pdf
主 文 本件抗告を棄却する。
理 由
本件抗告の趣意は、別紙記載のとおりである。
抗告人本人らの抗告理由、抗告人代理人弁護士村田利雄の追加理由および抗告人 代理人弁護士妹尾晃外二名の理由補充第一について。
所論は、憲法二一条違反を主張する。すなわち、報道の自由は、憲法が標榜する 民主主義社会の基盤をなすものとして、表現の自由を保障する憲法二一条において も、枢要な地位を占めるものである。報道の自由を全うするには、取材の自由もま た不可欠のものとして、憲法二一条によつて保障されなければならない。これまで 報道機関に広く取材の自由が確保されて来たのは、報道機関が、取材にあたり、つ ねに報道のみを目的とし、取材した結果を報道以外の目的に供さないという信念と 実績があり、国民の側にもこれに対する信頼があつたからである。
然るに、本件の ように、取材フイルムを刑事裁判の証拠に使う目的をもつてする提出命令が適法と され、報道機関がこれに応ずる義務があるとされれば、国民の報道機関に対する信 頼は失われてその協力は得られず、その結果、真実を報道する自由は妨げられ、ひ いては、国民がその主権を行使するに際しての判断資料は不十分なものとなり、表 現の自由と表裏一体をなす国民の「知る権利」に不当な影響をもたらさずにはいな いであろう。結局、本件提出命令は、表現の自由を保障した憲法二一条に違反する、 というのである。
よつて判断するに、所論の指摘するように、報道機関の報道は、民主主義社会に おいて、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る 権利」に奉仕するものである。したがつて、思想の表明の自由とならんで、事実の 報道の自由は、表現の自由を規定した憲法二一条の保障のもとにあることはいうま
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でもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の 自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法二一条の精神に照らし、十分尊重 に値いするものといわなければならない。
ところで、本件において、提出命令の対象とされたのは、すでに放映されたフイ ルムを含む放映のために準備された取材フイルムである。それは報道機関の取材活 動の結果すでに得られたものであるから、その提出を命ずることは、右フイルムの 取材活動そのものとは直接関係がない。もつとも、報道機関がその取材活動によつ て得たフイルムは、報道機関が報道の目的に役立たせるためのものであつて、この ような目的をもつて取材されたフイルムが、他の目的、すなわち、本件におけるよ うに刑事裁判の証拠のために使用されるような場合には、報道機関の将来における 取材活動の自由を妨げることになるおそれがないわけではない。
しかし、取材の自由といつても、もとより何らの制約を受けないものではなく、 たとえば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制 約を受けることのあることも否定することができない。 本件では、まさに、公正な刑事裁判の実現のために、取材の自由に対する制約が 許されるかどうかが問題となるのであるが、公正な刑事裁判を実現することは、国 家の基本的要請であり、刑事裁判においては、実体的真実の発見が強く要請される こともいうまでもない。このような公正な刑事裁判の実現を保障するために、報道 機関の取材活動によつて得られたものが、証拠として必要と認められるような場合 には、取材の自由がある程度の制約を蒙ることとなつてもやむを得ないところとい うべきである。しかしながら、このような場合においても、一面において、審判の 対象とされている犯罪の性質、態様、軽重および取材したものの証拠としての価値、 ひいては、公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するととも に、他面において、取材したものを証拠として提出させられることによつて報道機
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関の取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合その 他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として 使用することがやむを得ないと認められる場合においても、それによつて受ける報 道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。
以上の見地に立つて本件についてみるに、本件の付審判請求事件の審理の対象は、 多数の機動隊等と学生との間の衝突に際して行なわれたとされる機動隊員等の公務 員職権乱用罪、特別公務員暴行陵虐罪の成否にある。
その審理は、現在において、 被疑者および被害者の特定すら困難な状態であつて、事件発生後二年ちかくを経過 した現在、第三者の新たな証言はもはや期待することができず、したがつて、当時、 右の現場を中立的な立場から撮影した報道機関の本件フイルムが証拠上きわめて重 要な価値を有し、被疑者らの罪責の有無を判定するうえに、ほとんど必須のものと 認められる状況にある。
他方、本件フイルムは、すでに放映されたものを含む放映 のために準備されたものであり、それが証拠として使用されることによつて報道機 関が蒙る不利益は、報道の自由そのものではなく、将来の取材の自由が妨げられる おそれがあるというにとどまるものと解されるのであつて、付審判請求事件とはい え、本件の刑事裁判が公正に行なわれることを期するためには、この程度の不利益 は、報道機関の立場を十分尊重すべきものとの見地に立つても、なお忍受されなけ ればならない程度のものというべきである。
また、本件提出命令を発した福岡地方 裁判所は、本件フイルムにつき、一たん押収した後においても、時機に応じた仮還 付などの措置により、報道機関のフイルム使用に支障をきたさないよう配慮すべき 旨を表明している。
以上の諸点その他各般の事情をあわせ考慮するときは、本件フ イルムを付審判請求事件の証拠として使用するために本件提出命令を発したことは、 まことにやむを得ないものがあると認められるのである。
前叙のように考えると、本件フイルムの提出命令は、憲法二一条に違反するもの
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でないことはもちろん、その趣旨に牴触するものでもなく、これを正当として維持 した原判断は相当であり、所論は理由がない。
抗告人代理人弁護士妹尾晃外二名の理由補充第二について。
所論は、憲法三二条違反をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張にすぎず、 適法な特別抗告の理由にあたらない。
よつて、刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文 のとおり決定する。
昭和四四年一一月二六日
最高裁判所大法廷 裁判長裁判官 石 田 和 外 裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 草 鹿 浅 之 介 裁判官 長 部 謹 吾 裁判官 城 戸 芳 彦 裁判官 田 中 二 郎 裁判官 松 田 二 郎 裁判官 岩 田 誠 裁判官 下 村 三 郎 裁判官 色 川 幸 太 郎 裁判官 大 隅 健 一 郎 裁判官 松 本 正 雄 裁判官 飯 村 義 美 裁判官 村 上 朝 一 裁判官 関 根 小 郷
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23(祝)は、救急当番出動のためクリニックはお休みいたします。
(9月中の日曜日は、すべて急病対応を予定、9/23月祝を除く)
個別にお伝えしているところですが、万が一の場合、併せて急病対応いたしますので、お気軽にご相談下さい。
また、月曜日からの登園登校に備え、「治癒証明」が必要な場合、日曜日に書かせていただきます。月曜日わざわざクリニックによる必要がなくなると思いますので、ご利用下さい。
mission:日本の小児医療救急問題の解決と、地域の子ども達の24時間365日の安全安心。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
*********9月の小坂クリニックのお知らせ******
【1】9月は、日曜日はお休みなしで診療致します。
ただし、
〇9/23祝は、小児救急当番に出動のため休診します。
〇9/22日は、総合訓練消防団訓練に出動のため、対応時間を訓練終了後とさせていただきます。
【2】日曜日の予防接種を実施中です。(同時に急病対応もいたします。)
患者様からの御要望にお応えし、日曜日の予防接種(予約制)を実施することになりました。
ご希望の方は、お電話でお申し込み下さい。
お子様の夏休み期間中に、お忘れの予防接種があれば、実施されることをお勧めします。
日曜日予防接種実施に伴い午前中はクリニックに待機いたしますので、急病対応も可能です。
月曜日朝一番で登園できるよう治癒証明なども日曜日に書きますのでご利用ください。
【3】ご旅行中のお薬は、大丈夫ですか?
時期をずらして、ご旅行されるかたが、まだまだおられるようです。
ご旅行中に、ご病気の際、軽い風邪やおなかのお薬を持参されると安心です。
定期内服薬もきらさないようにお願いいたします。
ご旅行の際の持参薬について、お気軽にご相談下さい。
また、実際にご旅行中の際のご病気でお困りの場合、クリニックにお電話下さい(国内03-5547-1191、海外81-3-5547-1191)。万が一、留守番電話の場合、ご連絡先を入れてください。折り返しの対応をさせていただきます。
*****************
「日曜日の予防接種開始のお知らせ」と、
「大人の風しんワクチンの無料接種のお知らせ」を致します。
<こども元気!!クリニックの日曜日の予防接種実施のお知らせ>
このたび、患者様からの御要望にお応えし
日曜日の予防接種(予約制)を
実施することになりました。
ご希望の方は、受付へ申し込みください。
ご利用お待ちしております。
<大人の風しん予防接種費用の無料化について>
風疹がたいへん流行しています。
先天性風しん症候群緊急対策として、
中央区は、大人のかたへの風疹予防接種費用助成を、
〇妊娠を予定又は希望している女性(接種期限 平成26年3月31日)
〇妊娠している女性の夫(接種期限 平成25年9月30日)
を対象者として行っています。
接種費用は無料となりますが、接種期限もあり、ご注意ください。
当院でも、この事業に伴う予防接種も実施しておりますので、ご利用ください。
なお、対象でない方も、風しんにかかったことがないかたは、接種されることをお勧めします。
ワクチン不足も言われており、お考えの方はお早めにお申込み下さい。
*関連の中央区ホームページ:
http://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/hokenzyo/sessyu/senntennseihusinnkinnkyuutaisaku/index.html
*先天性風しん症候群:妊娠のはじめの時期に風しんに感染すると、高い確率でおなかの中の赤ちゃんが、心奇形・難聴・白内障などを持って生まれてくる病気です。だからこそ、妊娠されるかたを中心に接種事業が積極的に行われています。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
いよいよ、明日9/21(土)開催。
地域で活躍する各分野のスペシャリストが、学びの時間を小学生、子ども達にプレゼント。
第9回『学びの宝箱』
中央区地域家庭教育推進協議会と、クリニック隣りのみんなの子育て広場「あすなろの木」が共催。
聞くところ、テコンドー教室では、テコンドー世界一のかたが駆けつけて下さるとか。
大学の教授が、小学生に楽しい授業!国際政治学の石井貫太郎先生。テーマは、「人類は宇宙人によって作られたのか?」。
石井先生は、9年前の初回からずっとご担当くださっています。
各分野のスペシャリストから、なにか伝わることで、子ども達の可能性が花開く端緒になればと思っています。
イベントの後は、交流会!
交流会用、恒例の築地のマグロも届いています。
腹いっぱい、築地を堪能しましょう!!
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http://ameblo.jp/asunaro-kids/entry-11612795435.html
第9回『学びの宝箱』
みんなの子育てひろば“あすなろの木”では「学びの宝箱」と題し、
地域の中で活躍する各分野のスペシャリストを講師として招き、一日を通して親子で楽しい学びの時間が得られる、実感できる体験型授業を行います。
この企画は、中央区地域家庭教育推進協議会と共催、今年も「平成25年度 家庭教育学習会」の一貫として行います。(今年で9回目)
小学生の皆さん、子育て中のお母さんお子さんご一緒に御参加ください。 また、同日6時00分より場所『みんなの子育てひろば“あすなろの木”』に於いて、お招きした講師の方々と共に語り合う交流の時間をもちます。
どなた様も自由、お気軽に御参加ください!!
共催 中央区地域家庭教育推進協議会
みんなの子育てひろば“あすなろの木”
●日時:9月21日(土)
午前10時~午後5時 ※複数講座、受講可能です
●会場:築地社会教育会館
●費用:無料 ※⑥のみ材料費:1組500円 お子さん2名参加の場合は700円
●応募期間:9月2日(月)~9月18日(水)
●申込方法:
⇒Eメールまたは電話で①テーマ②住所③電話番号④保護者名⑤子どもの氏名
⑥学校名・学年をお知らせください。
●申込み先⇒asunarohiroba@yahoo.co.jp
●電話申込み先⇒03-3546-552
(中央区役所:文化・生涯学習課 / 中央区地域家庭教育推進協議会
【講座詳細】
① 『自分だけの木のおもちゃをつくろ』AM10:00-12:00
牧野 隆(子どもの創造教育デザイナー)
創造力を活かし、世界にたった1つしかない木のおもちゃを作ってみよう。
様々なかたちの木片を組み合わせ、子どもだけ世界を木のおもちゃの作品として作ってみよう。(未就学児から小学生まで参加できます。)
②
『真実を見抜く ー数当てゲームー』(30分)Pm1:00-1:30
伊丹龍義 (SRP教育研究所 理系代表)
生田寿宗 山西郁代 (SRP教育研究所 所属)
目の前に出てくるヒントをもとにして、真実を見抜く。
普段の生活の中でも役に立つ、この思考力を
今日は、数を使った「対戦ゲーム」でみがいちゃおう。
これで、キミも名探偵になれるかも!?
(小学生が対象です。)
『気持ちを表現してみよう!!』(30分)PM1:30-2:00
池田良輔 ( SRP教育研究所 文系代表)
「喜怒哀楽」・・・「うれしい」「おこった!」「かなしい」「たのしい!」
人間の豊かな感情表現はこれだけじゃありません!!!
マンガや、自分の顔や動作や、文章や…これらを使って、
人間の気持ちを体験して、いろんな人と仲良くなりませんか?
国語の物語文の読解が苦手な人には、特におススメの講座です。
(小学生が対象です。)
③ 『テコンドー教室』 PM2:00-2:50
石田 峰男 (岡澤道場 テコンドー師範)
テコンドーは、韓国で生まれた武道・スポーツです。高い所を蹴るほど高いポイントを得られるため、足技に特長があり、「足でするボクシング」と言われることもあります。
オリンピックの種目になるくらい、実は世界的に競技人口が多いスポーツです。
『オリンピックの種目でもあるテコンドーとは何か。』を、体を使い学んで頂きます。
(未就学児から小学生まで参加できます。)
④ 「人類は宇宙人によって作られたのか?」PM3:00-3:50
石井貫太郎 (目白大学教授)
人間は本当にサルの子孫なのか?宇宙人によって作られた動物なのか?世界中に残された古代遺跡や神話のスライドを見ながら人類誕生の謎に迫る(小学生が対象です。)
⑤ 『みんなでうたおう!ゴスペル』 PM4:00-5:00
豊田 展充(サニーサイドゴスペルクラブ埼玉リーダー)
ゴスペルは元々黒人教会文化から生まれた音楽ですが、前向きなメッセージを含んだ歌詞が多く大人でも子供でも楽しめる音楽。異文化を学びながら、みんなで楽しく歌いましょう!!講師は、会費の一部をカンボジアの奨学金に充てるなどの国際協力を行っている埼玉で大活躍のゴスペルグループの皆さんです。(小学生が対象です。)
⑥ 「スポーツと食・自分で作るアスリートフード~包丁を使わないでカレーを作ろう~」AM10:30-13:20
中村直樹(NFS 中村フードサービス代表)堂下智子(アスリートフードマイスター)
アスリートが練習を続けていくためには、毎日の「食事」がとても重要な役割を果たしています。
身体・精神面でバランスの良い食事を摂ることは…
アスリートだけでなく、成長期のお子さんの勉強や運動、集中力のアップに繋がりとても重要。
そこで今回はアスリートの間でも好まれているカレーに注目!
バランスの良い食事とは?何故カレーが良いのか?必要な栄養素が日々の食事で摂れているか?などを楽しくチェック!!その後は…
学んだ情報を基にして、ルウを使わずスパイスから作るローカロリーで美味しいカレーを作りましょう!(対象は小学生です。)
以上
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<交流会>
場所:みんなの子育てひろば“あすなろの木”
中央区月島3-30-4飯島ビル1階(こども元気クリニック隣り)
大江戸線『勝どき』駅 A1出口 徒歩3分
時間:同日午後6:00~
参加:地域家庭教育にご関心のある方なら誰でもOK(『学びの宝箱』の講師の方々も参加されます。)
参加費:500円
検査が中止されたのち、問題が生じていたのですね。
当院も、眼科の先生と連携し、早期発見、対応ができればと考えます。
お気軽にご相談ください。
*******朝日新聞(2013/09/20)******
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130919-00000034-asahi-soci
色覚異常、半数気づかず 検査中止10年、進路断念も
朝日新聞デジタル 9月19日(木)18時19分配信
色覚異常、半数気づかず 検査中止10年、進路断念も
【今直也】色覚異常の子どもの2人に1人が異常に気づかぬまま、進学・就職時期を迎え、6人に1人が、進路の断念などのトラブルを経験していることが、日本眼科医会の調査で分かった。学校での検査は10年前に中止された。幼児期や小学校で周囲の理解不足に悩むなどの例も相次いでいた。同会は、希望者は学校で検査できるよう国に求めることを決めた。
生まれつきの色覚異常は男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合で見られる。小学4年を対象に全国で色覚検査が行われてきたが、2003年度に中止された。検査が社会的な差別にもつながりかねず、異常があっても生活に支障がない人が多いことが理由だ。
国は01年の労働安全衛生規則の改正で、雇用者が雇用時に色覚検査を行う義務を撤廃。色覚異常があるだけで、採用を制限しないよう指導してきた。だが、航空や写真関係、食品関係の一部、警察官などの公務員では、色の識別が難しいと職務に支障が出ることを理由に現在も制限されている。
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朝日新聞社
<色覚異常に関連するトラブルの例>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130919-00000034-asahi-soci.view-000
便利な整理。
「法律編集者懇話会 作成」 (一部、子ども関係の法律を私が足しています。)
意外と、略語は、助かります。
長い法令名をその都度書いていられません。字数の関係もあり。
その際、当然、一般的な略称を用いたい。
子ども関係で大事な法律名は、下線を独断と偏見で引きました。
**************************
http://www.law.kobe-u.ac.jp/citation/03.htm
法令名の略語
各年版の総合六法全書を刊行している岩波書店、三省堂、有斐閣 3 社に共通する法令名略語に依拠した。ただし、3 社に共通でないものは、有斐閣版「六法全書」に使用されている略称を先掲し、それ以外を ( ) で示した。
あ行
安保約 (安保) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
意 意匠法
育児介護 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
遺言準拠法 遺言の方式の準拠法に関する法律
遺失 (遺失物) 遺失物法
遺伝子組換 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
牛個体識別 牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法
か行
河 河川法
会 会計法
会更 会社更生法
会更規 会社更生法施行規則
外為法 外国為替及び外国貿易法
介保 介護保険法
海洋法約 海洋法に関する国際連合条約
覚せい剤 覚せい剤取締法
確定拠出年金 確定拠出年金法
家事 家事事件手続法
家審 家事審判法
学教 学校教育法
割賦 割賦販売法
株券保管振替 (株券振替) 株券等の保管及び振替に関する法律
仮登記担保 仮登記担保契約に関する法律
監 監獄法
環境影響評価 環境影響評価法
環境基 環境基本法
議院証言 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律
供 (供託) 供託法
教基 教育基本法
行審 行政不服審査法
行政個人情報 (行政個人情報保護) 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
行政情報公開 行政機関の保有する情報の公開に関する法律
行政法人 独立行政法人通則法
行組 国家行政組織法
行訴 行政事件訴訟法
行手 行政手続法
銀行 銀行法
区画整理 (土区) 土地区画整理法
警 警察法
刑 刑法
警職 警察官職務執行法
刑訴 刑事訴訟法
刑訴規 刑事訴訟規則
刑訴費 刑事訴訟費用等に関する法律
軽犯 軽犯罪法
景表 不当景品類及び不当表示防止法
刑補 刑事補償法
憲 日本国憲法
建基 建築基準法
検察 検察庁法
健保 健康保険法
戸 戸籍法
小 小切手法
公害犯罪 人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律
公害紛争 公害紛争処理法
航空強取 航空機の強取等の処罰に関する法律
後見登 (後見登記) 後見登記等に関する法律
公催 (公示催告) 公示催告手続二関スル法律
公選 公職選挙法
厚年 (厚年金) 厚生年金保険法、
雇均 (雇用均等) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
国健保 国民健康保険法
国財 国有財産法
国際海運 国際海上物品運送法
国事代行 国事行為の臨時代行に関する法律
国籍 国籍法
国大法人 国立大学法人法
国年 (国年金) 国民年金法
国賠 国家賠償法
国連憲章 (国際裁) 国際連合憲章及び国際司法裁判所規程
国連平和維持 (国連平和協力) 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律
個人情報 (個人情報保護) 個人情報の保護に関する法律
国会 国会法
国旗国歌 国旗及び国歌に関する法律
国公 国家公務員法
国公倫理 国家公務員倫理法
雇保 雇用保険法
さ行
裁 裁判所法
財 財政法
災害基 災害対策基本法
債権譲渡特 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律
裁審 (最裁審査) 最高裁判所裁判官国民審査法
再生機構 株式会社産業再生機構法
最賃 最低賃金法
裁判迅速化 裁判の迅速化に関する法律
産廃除去 特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法
自衛 自衛隊法
次世代育成 次世代育成支援対策推進法
自然環境 自然環境保全法
自治 (地自) 地方自治法
失火 失火ノ責任二関スル法律
児童虐待 児童虐待の防止等に関する法律
児童買春 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
児福 児童福祉法
児童約 児童の権利に関する条約
自賠 自動車損害賠償保障法
仕会資本整備 社会資本整備重点計画法
借地借家 借地借家法
社債振替 社債等の振替に関する法律
住宅品質 住宅の品質確保の促進等に関する法律
周辺事態 周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
収用 (土収) 土地収用法
商 商法
少 少年法
少子基 少子化社会対策基本法
消税 消費税法
商則 (商施規) 商法施行規則
商登 商業登記法
商特 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律
証取 証券取引法
消費基 消費者保護基本法
商標 商標法
消費契約 消費者契約法
食安基 食品安全基本法
女子差別撤廃約 女子に対するあらゆる形態の差別の撒廃に関する条約
所税 所得税法
人権 A 規約 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約
人権宣言 世界人権宣言
人権 B 規約 市民的及び政治的権利に関する国際規約
人種差別撤廃約 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約
心神喪失処遇 (心神喪失医療観察) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律
人訴 人事訴訟法
信託 信託法
人保 人身保護法
ストーカー ストーカー行為等の規制等に関する法律
生活保護 (生保) 生活保護法
政資 政治資金規正法
製造物 (製責) 製造物責任法
性同一性障害 (性同一性障害特例) 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
税徴 国税徴収法
税通 国税通則法
政党助成 政党助成法
税特措 租税特別措置法
船主責任制限 (船主責任) 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律
臓器移植 臓器の移植に関する法律
相税 相続税法
組織犯罪 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
組織犯罪約 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約
た行
大学評価 独立行政法人大学評価・学位授与機構法
代執 行政代執行法
建物区分 (区分所有) 建物の区分所有等に関する法律
WTO 協定 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定
男女参画基 男女共同参画社会基本法
担信 担保附社債信託法
地公 地方公務員法
地財 地方財政法
知財基 知的財産基本法
地税 地方税法
地独行法 地方独立行政法人法
中間法人 中間法人法
仲裁 仲裁法
著作 著作権法
通信傍受 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律
手 手形法
定員 行政機関の職員の定員に関する法律
典 皇室典範
電子契約特 (電子消費者特例) 電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律
電子署名認証 (電子署名) 電子署名及び認証業務に関する法律
道 道路法
道交 道路交通法
盗犯 盗犯等ノ防止及処分二関スル法律
独行個人情報 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律
独行情報公開 (独法情報公開) 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律
特定債権 特定債権等に係る事業の規制に関する法律
特定商取引 特定商取引に関する法律
独行等労 (特独等労) 特定独立行政法人等の労働関係に関する法律
都計 都市計画法
土地基 土地基本法
特許 特許法
独禁 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
な行
内 内閣法
内閣府 内閣府設置法
入管 出入国管理及び難民認定法
任意後見 任意後見契約に関する法律
年齢計算 年齢計算二関スル法律
は行
破 破産法
配偶者暴力 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律
配当支払 会社の配当する利益又は利息の支払に関する法律
爆発 (爆取) 爆発物取締罰則
罰金臨措 罰金等臨時措置法
破防 破壊活動防止法
犯罪被害保護 (犯被保護) 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
非営利活動 特定非営利活動促進法
非訟 非訟事件手続法
人質 人質による強要行為等の処罰に関する法律
風俗 (風営) 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
不公正告 (不公正取引) 不公正な取引方法
不正アクセス 不正アクセス行為の禁止等に関する法律
不正競争 不正競争防止法
不登 不動産登記法
扶養準拠法 扶養義務の準拠法に関する法律
武力攻撃事態 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
文化財 文化財保護法
分割労働承継 (労働契約承継) 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律
平和条約 日本国との平和条約
弁護 弁護士法
法税 法人税法
法律扶助 (民事扶助) 民事法律扶助法
暴力 暴力行為等処罰二関スル法律
保険 保険業法
ま行
麻薬 麻薬及び向精神薬取締法
マンション管理 マンションの管理の適正化の推進に関する法律
マンション建替 マンションの建替えの円滑化等に関する法律
身元保証 身元保証二関スル法律
民 民法
民再 民事再生法
民再規 民事再生規則
民施 民法施行法
民執 民事執行法
民執規 民事執行規則
民訴 民事訴訟法
民訴規 民事訴訟規則
民訴費 民事訴訟費用等に関する法律
民調 民事調停法
民保 民事保全法
民保規 民事保全規則
明憲 (旧憲、帝憲) 大日本帝国憲法
や行
有 有限会社法
予防更生 (犯更) 犯罪者予防更生法
ら行
利息 利息制限法
領海 領海及び接続水域に関する法律
労安衛 (労安) 労働安全衛生法
労基 労働基準法
労組 労働組合法
労災 労働者災害補償保険法
労調 労働関係調整法
労働憲章 国際労働機関憲章
労派遣 (労働派遣) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
以上
裁判官のありかたで、どうもしっくりいかない判例。
この程度でも、懲戒処分を受けねばならないのだろうか。
この発言、問題ありか?
「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」
発言自体は辞退しているのではないか?
最高裁の判断は以下。
↓
裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をした行為は、判示の事実関係の下においては、右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法五二条一号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当する。
裁判官は独立及び中立・公正でなければならない。
それだけでなく、あわせて裁判官は独立及び中立・公正“らしく”なければならないことの要請からの帰結なのだろうか。
****************************
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52233&hanreiKbn=02
事件番号
平成10(分ク)1
事件名
裁判官分限事件の決定に対する即時抗告
裁判年月日
平成10年12月01日
法廷名
最高裁判所大法廷
裁判種別
決定
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第52巻9号1761頁
原審裁判所名
仙台高等裁判所
原審事件番号
平成10(分)1
原審裁判年月日
平成10年07月24日
判示事項
一 裁判所法五二条一号にいう「積極的に政治運動をすること」の意義
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号と憲法二一条一項
三 裁判官が積極的に政治運動をしたとされた事例
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことがその職務上の義務に違反するとして当該裁判官に対し戒告がされた事例
五 裁判官分限事件への憲法八二条一項の適用の有無
六 民事訴訟又は非訟の手続において期日に立ち会う代理人の数を制限することの可否
裁判要旨
一 裁判所法五二条一号にいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいい、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、行為の内容、行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法五二条一号の規定は、憲法二一条一項に違反しない。
三 裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をした行為は、判示の事実関係の下においては、右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法五二条一号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当する。
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことは、裁判所法四九条所定の懲戒事由である職務上の義務違反に該当し、当該行為の内容、その後の態度等判示の事情にかんがみれば、当該裁判官を戒告することが相当である。
五 裁判官分限事件には、憲法八二条一項は適用されない。
六 民事訴訟又は非訟の手続を主宰する裁判所は、その手続を円滑に進行させるために与えられた指揮権に基づいて、期日を開く場所の収容能力、当該期日に予定されている手続の内容、裁判所の法廷警察権ないし指揮権行使の難易等を考慮して、必要かつ相当な場合には、期日に立ち会う代理人の数を合理的と認められる限度にまで制限することができる。
参照法条
裁判所法49条,裁判所法52条1項,憲法21条1項,憲法82条1項,裁判官分限法2条,裁判官の分限事件手続規則7条,非訟事件手続法6条,非訟事件手続法13条,民訴法55条,民訴法148条,刑訴法35条,刑訴規則26条,刑訴規則27条
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120611517204.pdf
外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当する場合を検討している判例です。
国民健康保険証の交付から端を発していますが、視点を変えれば、健康保険は、命綱であることがわかります。
一読した感じでは、処分は違法しかし過失なしとする多数意見より、「裁判官横尾和子,同泉徳治の意見」のほうが、市町村の責務をきちんとあらわしているのではないかと思います。
処分は違法なら、過失ありになるのではとも感じます。酷な話でしょうか。
事案:
(1) 上告人は,昭和27年12月2日,いわゆる在外華僑を父母として大韓民国において出生。
(2) 上告人は,昭和46年2月26日,親類を頼って短期滞在の在留資格で日本に入国。
その際、大韓民国の再入国許可を受けなかったため,同国における永住資格を喪失。
そこで,上告人は,台湾に出国し,同年9月18日,就学の在留資格で再度日本に入国し,在留期間の更新を受けながら,専門学校等で勉学を続けた。
卒業後,在留期間が更新される見込みがなくなった。
同50年11月25日,大韓民国に出国→しかし,大韓民国において永住資格を回復することはできず。
同51年3月25日,台湾に入国したが,台湾では国籍が確認されず,言葉も通じないため就職することができなかった。
(3) 上告人は,昭和51年7月2日,上陸時間を72時間とする寄港地上陸許可を得て日本に上陸。
上陸時間が経過した後も日本に残留して,中華料理店等で調理師として稼働。
上告人は,同52年3月28日,台湾籍の女性と結婚。
同54年に長男が,同56年に長女がそれぞれ出生。
妻と2人の子は,在留資格を得るため,日本と台湾との間を往復。
同59年7月15日に短期滞在の在留資格で日本に入国し,同年10月14日に在留期間を経過した後,そのまま日本に残留。
(4) 上告人は,昭和60年12月ころから平成12年12月まで横浜市a区内に妻子と共に居住。
同9年3月21日,横浜市a区役所において外国人登録。
この間,上告人は,不法滞在状態を解消するため,同6年及び同8年に入国管理局に出頭したが,
上告人の国籍を確認することができなかったこともあり,違反調査が数回行われただけで,入国管理局からの連絡は途絶えた。
また,上告人は、上記外国人登録をした際,横浜市a区長に対し,国民健康保険の被保険者証の交付を請求したが,拒否された。
↑
(この入国管理局、横浜市a区長の対応に誤りはなかったのだろうか)
(5) 上告人は,長男が脳腫瘍に罹患していることが判明した後,
平成10年5月1日,妻子と共に東京入国管理局横浜支局に在留特別許可を求める書面を提出し,
同月20日付けで国民健康保険の被保険者証の交付を請求(以下「本件請求」という。)したが,同年6月9日,本件処分を受けた。
(6) 外国人に対する国民健康保険の適用については,国民健康保険法施行規則
の一部を改正する省令の施行について(昭和56年11月25日保険発第84号都
道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)及び外国人に
対する国民健康保険の適用について(平成4年3月31日保険発第41号都道府県
民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知。以下,これらを「本
件各通知」という。)が発せられている。本件各通知には,ア 国民健康保険の適
用対象となる外国人は,外国人登録法2条1項に規定する者であって,同法に基づ
く登録を行っているものであり,入国時において,出入国管理及び難民認定法(以
下「入管法」という。)2条の2の規定により決定された入国当初の在留期間が1
年以上であるものであること,イ 入管法2条の2の規定により決定された入国当
初の在留期間が1年未満であっても,外国人登録法に基づく登録を行っており,入
国時において,我が国への入国目的,入国後の生活実態等を勘案し,1年以上我が
国に滞在すると認められる者も国民健康保険の適用対象となることなどが定められ
ており,在留資格を有しない外国人が国民健康保険の適用対象となることは予定さ
れていない。本件処分は,本件各通知に従って行われたものである。在留資格を有
しない外国人が国民健康保険の適用対象となるかどうかについては,定説がなく,
下級審裁判例の判断も分かれているが,本件処分当時には,これを否定する判断を
示した東京地裁平成6年(行ウ)第39号同7年9月27日判決・行裁集46巻8・
9号777頁があっただけで,法5条の解釈につき本件各通知と異なる見解に立つ
裁判例はなかった。
(7) 上告人及びその妻子は,
平成10年11月24日,在留資格を定住者,在留期間を1年とする在留特別許可を受けた。
また,被上告人横浜市は,同月25日付けで,上告人に対し,国民健康保険の被保険者証を交付。
******************
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http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52363&hanreiKbn=02
事件番号
平成14(受)687
事件名
損害賠償請求事件
裁判年月日
平成16年01月15日
法廷名
最高裁判所第一小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第58巻1号226頁
原審裁判所名
東京高等裁判所
原審事件番号
平成13(ネ)1165
原審裁判年月日
平成14年02月06日
判示事項
1 外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するかどうかを判断する際の考慮要素
2 我が国に不法に残留している外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するとされた事例
裁判要旨
1 外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するかどうかを判断する際には,在留資格の有無,その者の有する在留資格及び在留期間が重要な考慮要素となり,在留資格を有しない外国人がこれに該当するためには,単に保険者である市町村の区域内に居住しているという事実だけでは足りず,少なくとも,当該外国人が当該市町村を居住地とする外国人登録をして在留特別許可を求めており,入国の経緯,入国時の在留資格の有無及び在留期間,その後における在留資格の更新又は変更の経緯,配偶者や子の有無及びその国籍等を含む家族に関する事情,我が国における滞在期間,生活状況等に照らし,当該市町村の区域内で安定した生活を継続的に営み,将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いと認められることが必要である。
2 寄港地上陸許可を得て上陸し,上陸期間経過後も我が国に残留している外国人甲は,出生国での永住資格を喪失し,国籍も確認されない特殊な境遇から,やむなく残留し続けたもので,自ら入国管理局に出頭したにもかかわらず,不法滞在状態を解消することができなかったこと,甲の我が国での滞在期間は約22年間に及んでおり,国民健康保険の被保険者証の交付請求当時の居住地において稼働しながら,約13年間にわたり妻と我が国で出生した2人の子と共に家庭生活を営んできたこと,上記請求前に外国人登録をして在留特別許可を求めていたことなど判示の事情の下においては,国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当する。
(1,2につき意見がある。)
参照法条
国民健康保険法5条,国民健康保険法7条,出入国管理及び難民認定法(平成11年法律第135号による改正前のもの)24条,出入国管理及び難民認定法2条の2,出入国管理及び難民認定法20条,出入国管理及び難民認定法21条,出入国管理及び難民認定法50条
*******************************
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120732888498.pdf
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人三木恵美子,同大貫憲介,同姜文江,同菊地哲也,同近藤博徳,同鈴
木雅子,同関守麻紀子,同毛受久,同矢澤昌司,同山口元一,同井上啓,同金竜介
,同小島周一,同渡邉彰悟,同児玉晃一の上告受理申立て理由について
1 本件は,在留資格を有しない外国人である上告人が,国民健康保険法(平成
11年法律第160号による改正前のもの。以下「法」という。)9条2項に基づ
き,被上告人横浜市の委任を受けた横浜市a区長に対し,国民健康保険の被保険者
証の交付を請求したところ,法5条所定の被保険者に該当しないとして被保険者証
を交付しない旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,被上告人国が
同条につき誤った解釈を前提とする通知を発し,横浜市a区長がこれに従ったこと
により違法な本件処分がされたと主張して,被上告人らに対し,国家賠償法1条1
項に基づき,損害賠償を請求した事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,昭和27年12月2日,いわゆる在外華僑を父母として大韓民
国において出生した。
(2) 上告人は,昭和46年2月26日,親類を頼って短期滞在の在留資格で日
本に入国したが,その際,大韓民国の再入国許可を受けなかったため,同国におけ
る永住資格を喪失した。そこで,上告人は,台湾に出国し,同年9月18日,就学
の在留資格で再度日本に入国し,在留期間の更新を受けながら,専門学校等で勉学
を続けたが,卒業後,在留期間が更新される見込みがなくなったことから,同50
年11月25日,大韓民国に出国した。しかし,大韓民国において永住資格を回復
- 1 -
することはできず,同国での在留期限も迫ったため,上告人は,同51年3月25
日,台湾に入国したが,台湾では国籍が確認されず,言葉も通じないため就職する
ことができなかった。
(3) 上告人は,昭和51年7月2日,上陸時間を72時間とする寄港地上陸許
可を得て日本に上陸し,上陸時間が経過した後も日本に残留して,中華料理店等で
調理師として稼働した。上告人は,同52年3月28日,台湾籍の女性と結婚し,
同54年に長男が,同56年に長女がそれぞれ出生した。妻と2人の子は,在留資
格を得るため,日本と台湾との間を往復していたが,同59年7月15日に短期滞
在の在留資格で日本に入国し,同年10月14日に在留期間を経過した後,そのま
ま日本に残留した。
(4) 上告人は,昭和60年12月ころから平成12年12月まで横浜市a区内
に妻子と共に居住し,同9年3月21日,横浜市a区役所において外国人登録をし
た。この間,上告人は,不法滞在状態を解消するため,同6年及び同8年に入国管
理局に出頭したが,上告人の国籍を確認することができなかったこともあり,違反
調査が数回行われただけで,入国管理局からの連絡は途絶えた。また,上告人は,
上記外国人登録をした際,横浜市a区長に対し,国民健康保険の被保険者証の交付
を請求したが,拒否された。
(5) 上告人は,長男が脳腫瘍に罹患していることが判明した後,平成10年5
月1日,妻子と共に東京入国管理局横浜支局に在留特別許可を求める書面を提出し
,同月20日付けで国民健康保険の被保険者証の交付を請求(以下「本件請求」と
いう。)したが,同年6月9日,本件処分を受けた。
(6) 外国人に対する国民健康保険の適用については,国民健康保険法施行規則
の一部を改正する省令の施行について(昭和56年11月25日保険発第84号都
道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)及び外国人に
- 2 -
対する国民健康保険の適用について(平成4年3月31日保険発第41号都道府県
民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知。以下,これらを「本
件各通知」という。)が発せられている。本件各通知には,ア 国民健康保険の適
用対象となる外国人は,外国人登録法2条1項に規定する者であって,同法に基づ
く登録を行っているものであり,入国時において,出入国管理及び難民認定法(以
下「入管法」という。)2条の2の規定により決定された入国当初の在留期間が1
年以上であるものであること,イ 入管法2条の2の規定により決定された入国当
初の在留期間が1年未満であっても,外国人登録法に基づく登録を行っており,入
国時において,我が国への入国目的,入国後の生活実態等を勘案し,1年以上我が
国に滞在すると認められる者も国民健康保険の適用対象となることなどが定められ
ており,在留資格を有しない外国人が国民健康保険の適用対象となることは予定さ
れていない。本件処分は,本件各通知に従って行われたものである。在留資格を有
しない外国人が国民健康保険の適用対象となるかどうかについては,定説がなく,
下級審裁判例の判断も分かれているが,本件処分当時には,これを否定する判断を
示した東京地裁平成6年(行ウ)第39号同7年9月27日判決・行裁集46巻8・
9号777頁があっただけで,法5条の解釈につき本件各通知と異なる見解に立つ
裁判例はなかった。
(7) 上告人及びその妻子は,平成10年11月24日,在留資格を定住者,在
留期間を1年とする在留特別許可を受けた。また,被上告人横浜市は,同月25日
付けで,上告人に対し,国民健康保険の被保険者証を交付した。
3 原審は,上記事実関係等の下において,在留資格を有しない外国人は法5条
所定の被保険者に該当せず,本件処分は適法であるとして,上告人の請求を棄却す
べきものとした。
4 法は,国民健康保険事業の健全な運営を確保し,もって社会保障及び国民保
- 3 -
健の向上に寄与することを目的とする(1条)ものであり,市町村及び特別区(以
下,単に「市町村」という。)を保険者とし(3条1項),市町村の区域内に住所
を有する者を被保険者として当該市町村が行う国民健康保険に強制的に加入させた
上(5条),被保険者の疾病,負傷,出産又は死亡に関して必要な保険給付を行い
(2条),被保険者の属する世帯の世帯主が納付する保険料(76条)又は国民健
康保険税(地方税法703条の4)のほか,国の負担金(法69条1項,70条)
,調整交付金(72条)及び補助金(74条),都道府県及び市町村の補助金及び
貸付金(75条),市町村の一般会計からの繰入金(72条の2)等をその費用に
充てるものとしている。そして,法は,上記のとおり被保険者を規定した上で,そ
の適用除外者を列挙し(6条),当該市町村の区域内に住所を有するに至った日又
は6条各号のいずれにも該当しなくなった日からその資格を取得する(7条)もの
としている。昭和56年厚生省令第66号による改正前の国民健康保険法施行規則
(昭和33年厚生省令第53号)1条2号は,「その他特別の理由がある者で厚生
省令で定めるもの」を適用除外とする法6条8号の規定を受けて,「日本の国籍を
有しない者。ただし,日本国との条約により,日本の国籍を有する者に対して,国
民健康保険に相当する制度を定める法令の適用につき,内国民待遇を与えることを
定めている国の国籍を有する者,日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待
遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和4
0年法律第146号)第1条の許可を受けている者及び条例で定める国の国籍を有
する者を除く。」を適用除外者として規定していたが,難民の地位に関する条約(
昭和56年条約第21号)及び難民の地位に関する議定書(昭和57年条約第1号)
が締約されたのを受けて,昭和56年厚生省令第66号によって国民健康保険法施
行規則1条2号ただし書に「難民の地位に関する条約第1条の規定又は難民の地位
に関する議定書第1条の規定により同条約の適用を受ける難民」が加えられ,さら
- 4 -
に昭和61年厚生省令第6号によって国民健康保険法施行規則1条2号が削除され
た。
このように,国民健康保険は,市町村が保険者となり,その区域内に住所を有す
る者を被保険者として継続的に保険料等の徴収及び保険給付を行う制度であること
に照らすと,法5条にいう「住所を有する者」は,市町村の区域内に継続的に生活
の本拠を有する者をいうものと解するのが相当である。そして,法は,5条におい
て被保険者を定める一方,6条においてその適用除外者を定めており,日本の国籍
を有しない者は,法制定当初は適用除外者とされていたものの,その後,これを適
用除外者とする規定が削除されたことにかんがみれば,法5条が,日本の国籍を有
しない者のうち在留資格を有しないものを被保険者から一律に除外する趣旨を定め
た規定であると解することはできない。一般的には,社会保障制度を外国人に適用
する場合には,そのよって立つ社会連帯と相互扶助の理念から,国内に適法な居住
関係を有する者のみを対象者とするのが一応の原則であるということができるが,
具体的な社会保障制度においてどの範囲の外国人を適用対象とするかは,それぞれ
の制度における政策決定の問題であり(最高裁昭和50年(行ツ)第98号同53
年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号435頁参照),法の規定や国民健
康保険法施行規則の改廃の経緯に照らして,法が上記の原則を当然の前提としてい
るものと解することができないことは上述のとおりである。また,国民健康保険は
,国民の税負担に由来する補助金や一般会計からの繰入金等によって費用の一部が
賄われているとはいえ,基本的には,被保険者の属する世帯の世帯主が納付する保
険料又は国民健康保険税によって保険給付を行う保険制度の一種であるから,我が
国に適法に在留する資格のない外国人を被保険者とすることが国民健康保険の制度
趣旨に反するとまでいうことはできない(なお,国民健康保険法(平成11年法律
第160号による改正後のもの)6条8号は,「その他特別の理由がある者で厚生
- 5 -
労働省令で定めるもの」を適用除外とする旨を定め,これを受けて,平成14年厚
生労働省令117号による改正後の国民健康保険法施行規則1条は,「特別の事由
のある者で条例で定めるもの」を適用除外者として規定しているところ,社会保障
制度を外国人に適用する場合には,その対象者を国内に適法な居住関係を有する者
に限定することに合理的な理由があることは上述のとおりであるから,国民健康保
険法施行規則又は各市町村の条例において,在留資格を有しない外国人を適用除外
者として規定することが許されることはいうまでもない。)。
もっとも,我が国に在留する外国人は,憲法上我が国に在留する権利ないし引き
続き在留することを要求することができる権利を保障されているものではなく(最
高裁昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7
号1223頁),入管法及び他の法律に特別の規定がある場合を除き,当該外国人
に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格又はそれらの変更に係
る在留資格をもって在留し(入管法2条の2第1項),各在留資格について法務省
令で定められた在留期間に限って在留することが認められるにすぎない(同法2条
の2第3項)。在留期間の更新を受けようとする外国人は,法務大臣に対し在留期
間の更新を申請しなければならず(同法21条2項),法務大臣は,当該外国人が
提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき
に限り,これを許可することができる(同条3項)。そして,我が国に不法に入国
した者はもとより,寄港地上陸の許可等を受け,又は在留資格を得て適法に入国し
た者であっても,旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して残留し,又は在
留期間の更新若しくは変更を受けないで在留期間を経過して残留するものについて
は,我が国からの退去を強制することができる(同法24条1号,2号,4号ロ,
6号等)ものとされている。このような我が国に在留する外国人の法的地位にかん
がみると,【要旨1】外国人が法5条所定の「住所を有する者」に該当するかどう
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かを判断する際には,当該外国人が在留資格を有するかどうか,その者の有する在
留資格及び在留期間がどのようなものであるかが重要な考慮要素となるものという
べきである。そして,在留資格を有しない外国人は,入管法上,退去強制の対象と
されているため,その居住関係は不安定なものとなりやすく,将来にわたって国内
に安定した居住関係を継続的に維持し得る可能性も低いのであるから,在留資格を
有しない外国人が法5条所定の「住所を有する者」に該当するというためには,単
に市町村の区域内に居住しているという事実だけでは足りず,少なくとも,当該外
国人が,当該市町村を居住地とする外国人登録をして,入管法50条所定の在留特
別許可を求めており,入国の経緯,入国時の在留資格の有無及び在留期間,その後
における在留資格の更新又は変更の経緯,配偶者や子の有無及びその国籍等を含む
家族に関する事情,我が国における滞在期間,生活状況等に照らし,当該市町村の
区域内で安定した生活を継続的に営み,将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性
が高いと認められることが必要であると解するのが相当である。
5 これを本件についてみると,【要旨2】前記事実関係等によれば,① 上告
人は,寄港地上陸許可を得て上陸し,上陸期間経過後も我が国に残留している外国
人であるが,② いわゆる在外華僑として大韓民国で出生し,同国での永住資格を
喪失し,台湾でも国籍が確認されないという特殊な境遇にあったため,やむなく我
が国に残留し続け,この間,不法滞在状態を解消するため,2度にわたり,自ら入
国管理局に出頭したものの,上記事情から不法滞在状態を解消することができず,
その後入国管理局からは何の連絡もなかったものであり,③ 本件処分までの滞在
期間は約22年間もの長期に及び,本件処分当時の居住地である横浜市では,調理
師として稼働しながら,約13年間にわたって妻と我が国で生まれた2人の子と共
に定住して家庭生活を営んできたものであって,④ 本件請求時には,横浜市を居
住地とする外国人登録をして,在留特別許可を求めており,その約半年後には,在
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留資格を定住者とする在留特別許可を受けたというのである。これらの事情に照ら
せば,上告人は,被上告人横浜市の区域内で家族と共に安定した生活を継続的に営
んでおり,将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いものと認められ,法5
条にいう「住所を有する者」に該当するというべきである。そうすると,本件処分
は違法であるというべきであり,これと異なる原審の判断は是認することができな
い。
6 しかしながら,ある事項に関する法律解釈につき異なる見解が対立し,実務
上の取扱いも分かれていて,そのいずれについても相当の根拠が認められる場合に
,公務員がその一方の見解を正当と解しこれに立脚して公務を遂行したときは,後
にその執行が違法と判断されたからといって,直ちに上記公務員に過失があったも
のとすることは相当ではない(最高裁昭和42年(オ)第692号同46年6月2
4日第一小法廷判決・民集25巻4号574頁,最高裁昭和63年(行ツ)第41
号平成3年7月9日第三小法廷判決・民集45巻6号1049頁等参照)。
これを本件についてみると,本件処分は,本件各通知に従って行われたものであ
るところ,前記4のとおり,社会保障制度を外国人に適用する場合には,そのよっ
て立つ社会連帯と相互扶助の理念から,国内に適法な居住関係を有する者のみを対
象者とするのが一応の原則であると解されていることに照らせば,本件各通知には
相当の根拠が認められるというべきである。そして,前記事実関係等によれば,在
留資格を有しない外国人が国民健康保険の適用対象となるかどうかについては,定
説がなく,下級審裁判例の判断も分かれている上,本件処分当時には,これを否定
する判断を示した東京地裁平成6年(行ウ)第39号同7年9月27日判決・行裁
集46巻8・9号777頁があっただけで,法5条の解釈につき本件各通知と異な
る見解に立つ裁判例はなかったというのであるから,本件処分をした被上告人横浜
市の担当者及び本件各通知を発した被上告人国の担当者に過失があったということ
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はできない。そうすると,被上告人らの国家賠償責任は認められないから,上告人
の請求を棄却すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
なお,裁判官横尾和子,同泉徳治の意見がある。
裁判官横尾和子,同泉徳治の意見は,次のとおりである。
私たちは,本件処分が違法とはいえないとした原審の判断を正当と考える。その
理由は,次のとおりである。
1 国民健康保険制度は,市町村を保険者とし,当該市町村の区域内に住所を有
する者を被保険者としている。今日,国民健康保険制度の維持運営には,国,都道
府県及び市町村から相当額の予算が投入されているとはいえ,同制度は,当該市町
村の区域内に住所を有する者を被保険者として強制加入させて保険団体を形成した
上,被保険者の属する世帯の世帯主に保険料又は国民健康保険税の納付を義務付け
て共同の基金を作り,これを主たる財源の一つとして,偶発的に疾病等の保険事故
に遭遇した住民に療養等の保険給付を行い,当該住民個人の経済的負担を市町村の
住民全員で分担するもので,住民の相扶共済の精神に立脚した地域保険である(最
高裁昭和30年(オ)第478号同33年2月12日大法廷判決・民集12巻2号
190頁参照)。この地域保険としての性格は,制度発足以来変わるところがなく
,国民健康保険制度の健全な維持運営のためには,住民の強制加入と,大数の法則
,収支均等の原則を基本として算出される保険料等の徴収が不可欠であり,また,
疾病等が発生した場合に初めて加入するという,保険事故の偶発性を排除するいわ
ゆる逆選択を防止する必要もある。国民健康保険の被保険者を定める法5条の「住
所」は,客観的居住の事実を基礎とし,これに当該居住者の主観的居住意思を総合
して認定するべきであるが,国民健康保険の上記のような地域保険としての性格に
照らし,この居住には継続性・安定性が要求される。
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2 そして,上記の居住の継続性・安定性の要請から,外国人が日本国内に法5
条の住所を有するというためには,入管法により相当の在留資格と在留期間を付与
され,法律上も一定期間継続して適法に居住し得る地位にあることが必要であると
いうべきである。在留資格を有しない外国人は,いつでも日本から退去を強制され
得る状態にあり(入管法24条),処罰の対象ともされているのであって(入管法
70条),日本国内での居住を保障されておらず,日本国内に生活の本拠を置くこ
とが法律上認められていないというべきであるから,その居住地を法5条の住所と
評価することはできない。在留資格を有しない不法滞在外国人は,地域保険たる国
民健康保険の被保険者となるになじまないものというべきである。
3 上告人は,昭和60年12月ころから,配偶者及び2人の子と共に,いずれ
も在留資格のないまま横浜市a区内に居住していたが,平成10年3月,子の1人
が脳腫瘍に罹患していることが判明し,同年5月1日,東京入国管理局横浜支局に
おいて在留特別許可を申請し,同月20日付けで,横浜市a区長に対し国民健康保
険被保険者証の交付を求める申請をしたところ,被上告人横浜市の委任を受けた同
区長は,同年6月9日,上告人に対し,上告人には在留資格がなく,法5条所定の
被保険者に該当しないことを理由に国民健康保険被保険者証を交付しない旨の本件
処分をした。同区長が在留資格のない上告人に対し本件処分を行ったことは,上記
のような理由により適法である。そして,同区長は,上告人が同年11月24日に
在留資格を「定住者」,在留期間を1年とする在留特別許可を取得したのを受けて
,翌25日付けで上告人に対し国民健康保険被保険者証を交付した。すなわち,同
区長は,同年5月1日に在留特別許可を申請した上告人が,約半年後に在留特別許
可を付与されたのを待って,その翌日には国民健康保険被保険者証を交付している
のであるから,本件処分を含めた同区長の上記一連の行為に違法と評価すべきもの
はない。上告人は,在留特別許可の申請をした約20日後に国民健康保険被保険者
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証の交付を申請しているが,このような場合に国民健康保険被保険者証を直ちに交
付すべきものとすれば,前記のいわゆる逆選択を招くおそれがあるといわなければ
ならない。原審の判断は正当である。
4 法廷意見は,在留資格のない外国人について,外国人登録をしていること及
び入管法50条所定の在留特別許可を求めていることを条件とした上で,当該市町
村の区域内で安定した生活を継続的に営み,将来にわたってこれを維持し続ける蓋
然性が高いと認められる場合には,当該外国人を法5条の「住所を有する者」と認
定すべきであるという。法廷意見は,言葉を換えれば,在留特別許可が与えられる
可能性が高い場合は,当該外国人を法5条の「住所を有する者」と認定すべきであ
るというものであり,国民健康保険の保険者たる市町村の長に対し在留特別許可の
与えられる可能性をあらかじめ判断させ,その判断を誤って国民健康保険被保険者
証不交付処分を行えば,当該処分は違法の評価を受けるというものである。しかし
,在留特別許可の付与は,国家主権発動の一つとして政府(所管者法務大臣)が一
元的に行うものであり,しかも政府の広範な裁量にゆだねられているものである(
最高裁昭和29年(あ)第3594号同32年6月19日大法廷判決・刑集11巻
6号1663頁,最高裁昭和34年(オ)第32号同34年11月10日第三小法
廷判決・民集13巻12号1493頁,最高裁昭和50年(行ツ)第120号同5
3年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁参照)。このような出入国
管理制度の建前に照らし,市町村長に上記のような判断を求めることは相当でない
(むしろ,市町村長は,入管法62条2項の規定により,不法残留者を通報すべき
義務を課せられているのである。)。
(裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 深澤武久 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐
中辰夫 裁判官 泉 徳治)