適用実験の理解を深めるために、都議会での議論を見てみます。
重要と思われる箇所には、下線を引いています。
****都議会ホームページから抜粋****
経済・港湾委員会速記録第九号
平成二十二年五月二十六日(水曜日)
第八委員会室 午後一時一分開議
〇清水委員 ただいまご報告がありました新市場会計予算の繰り越し、豊洲新市場分、豊洲新市場予定地の汚染物質処理に関する実験について伺います。
我が党は、三月十一日の予算特別委員会で、今行っている適用実験の中間報告について、実験前の初期値を公表してないことを問題にいたしました。さらに、四月十五日にも改めて公表を求める申し入れを行いましたが、都は、初期値と実験後の結果の関係については、どう理解をすればよいのか、技術会議の専門家等に確認していると回答を繰り返してきました。既に三カ月近くになろうとしている今でも、明確な回答ができないでおりますが、その理由についてお伺いいたします。
〇宮良新市場建設調整担当部長 実験の結果につきましては、データの取りまとめを行い、技術会議で、科学的知見に基づき、客観的に検証していただくことにしております。
このため、技術会議で、初期値を含め、実験で得られた中間データ、処理後の値などについては一括して取り扱い、実験の内容や条件とあわせて、実験全体を確認、検証し、新市場予定地の土壌汚染対策の有効性を実証していただくこととしております。その際には、これらすべてのデータを公表してまいります。
また、技術会議の委員からも、実験で得られたデータは一連のものとして取り扱うべきものと、そのような助言もいただいております。
〇清水委員 今の答弁は、ますます一部分のデータを出したということの間違いが明らかになるものだと思いますが、一体、技術会議の専門家には、これまでに何回、何時間、だれが、どのような形で問い合わせ、記録はどのようにまとめられているのかお伺いいたします。
〇宮良新市場建設調整担当部長 これまでの調査値と実験初期値との相違や、初期値そのものが実験を行う上でどのような意味合いを持っているかなどについて、技術会議の委員やアドバイザーに直接訪問をさせていただいたり、電話により数回にわたりお話を伺っております。
こうした専門家の意見につきましては、今後整理した上で、技術会議で、技術、工法の有効性を検証していただく際の資料といたします。
〇清水委員 きちんと記録をしておいてください。私たちが求めたら、それを提出することを求めておきます。
私は、今明らかになっている中で、なぜそれを明確に行わないのかということはこれまでもいってきたわけですけれども、そのことに対して疑問が広がっているわけです。我が党が情報開示請求をしなかったら、初期値だけが公表されないという問題については、やみに葬られたままであり、これは許されざることだというふうに思います。そしてこの問題は、一都議会だけでなく、もうご承知のように、「Nature」というイギリスの科学雑誌の電子版でも取り上げられて、世界の科学者に発信をされているわけです。
そこで、改めて伺いますけれども、私たちは最低限、すべての地点で、環境確保条例で定めるすべての有害物質が、将来にわたって環境基準以下になることを立証すべきだと指摘をしていますが、少なくとも、今のこの適用実験についての対象物質については、仕様書では七種類にしているにもかかわらず、実際にはベンゼン、シアン、砒素の三種類に限定しているわけです。その根拠について伺います。
〇宮良新市場建設調整担当部長 専門家会議では、都市ガスの製造過程で生じる有害物質の発生状況、ガス製造工場の施設配置などを詳細に検討した結果、対象物質を、環境確保条例で定める二十六物質のうち、操業に由来するベンゼン、シアン化合物、砒素、鉛、六価クロム、カドミウム、水銀としております。
このため、土壌汚染対策につきましては、これら七物質を対象としており、今回の実験についても同様に、これら七物質を対象としております。
これら七物質の処理につきましては、物質特性から、ベンゼン、シアン化合物及び砒素、鉛など重金属などの三つのカテゴリーに分類することができます。こうしたカテゴリーごとに、ベンゼンにつきましては微生物処理、シアン化合物につきましては洗浄処理としまして、残る砒素、鉛、六価クロム、カドミウム、水銀の重金属等につきましては、洗浄処理が可能でありまして、これらの物質の中で高濃度を検出している砒素を代表として選定しております。
この結果、対象とする物質が、ベンゼン、シアン化合物、砒素の三種類となってございます。
〇清水委員 その根拠となる科学的知見について、改めてお伺いいたします。
〇宮良新市場建設調整担当部長 土壌汚染対策に際しまして広く活用されております、環境省監修、社団法人土壌環境センターが編集しております「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置の技術的手法の解説」、こういったものがありますが、これでは、洗浄処理は、汚染土壌の恒久対策技術としては比較的歴史が長く、また、実績も多い技術であり、適用対象としては、第二種特定有害物質が挙げられるとしております。
新市場予定地で検出されている七物質のうち、砒素、鉛、六価クロム、カドミウム、水銀といった重金属などにつきましては、いずれも、今申し上げました第二種特定有害物質でありますことから洗浄処理が可能であり、濃度の高い物質の処理を確認することで、他の物質でも除去が可能であります。
なお、こうした洗浄処理につきましては、技術会議が汚染物質の処理技術等を選定する際に行った技術、工法等の公募でも、豊富なデータでその有効性を確認してございます。
〇清水委員 まともに答えていないというふうに思います。各種の実験について、例えば掘削微生物処理では、三月末までは週一回、四月以降は二週一回の頻度で分析結果を報告することになっています。原位置微生物洗浄処理では週一回、地下水浄化処理では三週一回など、それぞれ契約上の規定になっています。その実験の進捗状況というのは、委託業者から、分析は仕様書どおりに進められているのでしょうか。
〇宮良新市場建設調整担当部長 実験の仕様書では、処理に応じまして分析の頻度を定めております。例えば、微生物を利用した掘削微生物処理では、実験当初の段階では一週間に一回、実験状況が安定した状態となれば二週間に一回としております。また、地下水浄化処理では、地下水を揚水、復水するサイクルに三週間程度を要することから、三週間に一回分析を行うこととしております。
実験に際しましては、こうした基本的な考え方を前提に、濃度低下の状況など実際の実験状況を踏まえまして、専門家に相談した上で頻度を修正し、分析を行っております。
〇清水委員 今も少しお話ありましたけれども、この分析頻度というのは、どのような根拠に基づいて決められたものなのかお伺いいたします。
〇宮良新市場建設調整担当部長 分析頻度につきましては、実験の進捗状況が把握できますよう、各処理ごとに定めております。実験開始時にはきめ細かく実験状況が確認できるようにしております。
具体的な頻度につきましては、専門家と相談の上、今ご答弁させていただきましたように、例えば掘削微生物処理では、実験当初の段階では週に一回、その後、二週間に一回と、そのようなことにしております。
〇清水委員 次に、東京ガスの工場跡地では、一万八千本余りのくいによる不透水層以下への汚染物質の拡散について、議論がこれまでもありました。都は、参考人質疑の中で安田先生が見解を述べた、くいにべったり土がついているのが普通である。したがって、そこにすき間があくということは、本来考えられないとの部分を引用して、くいを通じて不透水層以下に汚染が広がる可能性は小さいとの認識を妥当としています。
安田先生のこの見解について、科学的に正しいといえる、安田先生自身が示している科学的根拠、都が妥当とする科学的根拠について、それぞれ具体的にお示しをいただきたいと思います。
〇宮良新市場建設調整担当部長 さきの参考人招致で、くいによる汚染の広がりについての質問に対しまして、技術会議の安田委員は--委員、今お話ありましたように、通常、くいにべったり土がついているというのが普通である、したがって、そこにすき間があくということは本来考えられない、また、鋼管ぐいの場合、長年の腐食を見込んで厚さを決めている、したがって、ずっと密着していると考えてよいとの見解を示されております。
この点につきましては、新市場予定地で不透水層を形成している土質は、これまでに行いました八カ所の土壌ボーリング調査の結果、粘性土であり、くいの周面は密着した状態であると考えられます。
また、鋼管ぐいの腐食につきましては、ガス工場建設時である昭和三十年代の設計基準で、これは建築でございますが、腐食代--腐食の厚さなんですが、二ミリメートルを確保することになっておりまして、実際の工場跡地の鋼管ぐいの肉厚が六ミリから十二ミリありまして、十分な腐食代がとられていると、そういうふうに考えております。
したがいまして、安田委員のご見解は、こうした新市場予定地の土質状況などを十二分に踏まえたものであると認識しております。
〇清水委員 考えられないとか考えられるとか、それはまだ、証明してそういっているわけではない。実際にそうなっているかどうかというのは不明な問題であります。実際にそうであるかどうかは非常に重要な問題です。なぜならば、不透水層以下に汚染が広がっているかどうかという問題だからです。
同じ参考人質疑でも、皆さんお聞きになってわかりますように、坂巻先生が、ボーリングのわずか数センチの中でとったサンプルでもって、自然地層であるか埋め土であるかの判定というのは非常に難しい、現場の公開が二度にわたってなされましたので、その場合、現場の技術者の方々に質問をしたけれど、やはり明確な返事は返ってこない、つまり、あくまでも現実に即した調査ではなく、あるところにそういう不透水層というものがあるんだという先入観に基づいて、事実をしっかり見ないで調査をやったことを一つの結論にして出しているのではないか、不透水層はぜひ解明する必要があると。
また、畑先生は、不透水層ではなく、難透水層である、時間的には劣化していくのであるから、必ず割れ目とかすき間とかができると、そこから汚染地下水は下の方に落ち込むということも考えられるなどと述べています。
それでは、都としては、この二人の先生の見解については、どのような認識を持っておられるのかお伺いいたします。その根拠は何でしょうか。
〇宮良新市場建設調整担当部長 さきの参考人招致で、くいによる汚染の広がりに関しまして、坂巻氏は、昔の工場の基礎くいが、汚染物質の通路になり得ることが十分考えられる、そう述べられております。
また、畑氏は、くいが劣化して割れ目やすき間ができると、そこから汚染地下水が下に落ち込んでいくことが考えられるとの見解を示されております。
こういった見解に対しまして、ご答弁申し上げましたとおり、調査の結果、不透水層を形成する土質は粘性土であり、くいの周面は密着した状態であるとともに、鋼管ぐいの腐食につきましても、十分な腐食代が確保されていることから、東京都としましては、技術会議の安田委員の見解は、こうした新市場予定地の実態を十分踏まえたものであると認識しております。
なお、土質調査に際しまして、盛り土あるいは旧地盤、あるいは各地層につきましては--調査の段階でそういった専門知識を有する技術者、主任技術者、あるいはそのほかの技術者ですが、土質、地層の状況、色、不純物、それから、くいや障害物がありますから、そのようなものを総合的に判断しまして、盛り土と旧地盤の境、あるいは不透水層、そういうものを確認してございます。
〇清水委員 依然として、この問題は議論が残されていると思います。同じ専門家で異なる科学的知見をいっているのですから、実験によって確かめる機会が今あるのですから、実際どうなのかを検証するというのが科学的な判断ではないかというふうに思うわけです。
卸売市場は食品流通の重要な基盤であり、市場整備に当たって食の安全というのは、繰り返し指摘していますけれども、最重要課題です。卸売市場整備計画を認可する国も、東京都に対し、二〇〇七年の一月、総理大臣が、食の安全性や信頼が確保されるよう、科学的見地に基づき万全の対策を講じるとともに、消費者などに対して、対策の内容などについて十分な説明を行い、その理解を得るよう求めているのです。ましてや、卸売市場を高濃度の有害な化学物質で汚染された豊洲の東京ガスの工場跡地に移転する計画については、二〇〇九年十一月の新聞の世論調査では、七二%が豊洲の土壌汚染は不安と回答するなど、多くの都民が大変危惧をしています。したがって、移転予定地の土壌汚染対策がうまくいくかどうかを科学的に実証することなしに、移転計画を前に進めることはあってはならないと思います。
ところが、適用実験の結果は、中間報告のデータについて開示請求を行ったところ、大事な部分が墨塗りをされており、確実に汚染物質を無害化できるとは到底いえるものではなく、科学とはかけ離れた深刻な実態であることがわかりました。また、土壌汚染対策を進める上で必要不可欠である不透水層以下の汚染の拡散の検証、地下水管理の可能性などの実験が行われていないことも、都民、専門家から厳しい批判を受けています。汚染物質処理実験に関するすべての情報を明らかにし、都民、専門家の検証を得るよう強く申し述べておくものです。
以上です。
以上、