6月23日、第46回 原子力安全委員会臨時会議 記者会見を見ておきます。
かなり踏み込んで、本音で回答しているように感じました。
ポイントは、
*シビアアクシデントの報告は、「ばらばらばらと、こういう対策をとりましたというのが列記されているだけで、その結果として、 全体として、安全性はどういうふうに高まったのかという、そういう形での報告がされてい ない」
*原子力安全委員会は、規制調査権をもって、保安院をチェック。
*原子力安全委員会の権限:「設置許可変更申請に当たるようなものになった場合には、これは、必ず、所轄大臣、経済産業大臣が原子力安全委員会の意見を聞かなきゃならないという、これは、炉規制法にそう書かれています」
*運転段階の炉への対応:「是非、安全委員会としても 運転管理段階にある炉とはいえども、安全性に対しては大変関心を当然強く持っております ので、是非、総合的な判断を持ってきてください、それに対して評価させてください、とい う態度でいるということです。」
*シビアアクシデント対策:「シビアアクシデント対策というものについては、今までは、国の場合、事業者自主ということで、平成4年に求めていたところ、それが、大変不備なもので あったというふうに認識しています。シビアアクシデント全体について、どう考えるかというのは、これは、全く別の議論とし て、緊急安全対策とは切り離して、しっかりとした議論が必要だと思っていまして、それについては、何らかのイニシアチブを原子力安全委員会の方でも、とらせていただこうと思っ ています。」
*「経産省の中に、保安院がある」という構図は、組織論であり、コメントできない
*海水浴などで、ストロンチウム、プルトニウムは注意
*「ストロンチウムはβ線を出す核種ですけれども、そういうものが入ってくると、そ こについての(プルトニウムの)評価というのも、やっていく必要があるだろうということで申し上げたところ です」
*飲料水の規制:放射性セシウムが200Bq/kgに対してウランが20Bq /kg、プルトニウムなどは1Bq/kg
*水道水で、セシウムで200Bq/Lというのは、これは、介入を開始する指標。原子力安全委員会としては、是非、これを長期間使うことを避けていただきたい。 むしろ、例えば、飲料水だったらば、食品安全委員会の所掌でしょうか。長期間にわたった 場合には、どういう値を使うかというのを、別途、ちゃんと定めてくださいとお願いしてい るところです。
*安全性:「安全委員会の立場から言わせていただければ、指針にこう書いてあるんだからそれで十分でしょう、という態度を事業者なり保安院がとるとしたら、とんでもない話で、 もっともっと、上を目指していただかなきゃいけないんですよね」
*我が国の実態:「Probabilistic Risk Analysisですから、リスクの存在を 認めた上での評価、ということになりますよね。リスクが必ず数字で表に出てくるわけです よね。それをなるべく避けて通っていたのが、我が国の実態だったかもしれません」
*低線量被ばく:「どこからか何か値を示して、それで安心してくださいという言い方は、 やはり、非常に難しい話ではないかというように思います。先ほどのシビアアクシデントと ちょっと似ております」
*****原子力安全委員会ホームページより****
http://www.nsc.go.jp/info/20110623.pdf
第46回 原子力安全委員会臨時会議
平成23年6月23日(木)
14:00~
内閣府643会議室
議 題
(1) 福島県内における学校等のモニタリング結果等について
(2) 放射線量等分布マップについて
(3) 東京電力株式会社福島第一原子力発電所第2号機原子炉建屋二重扉開放時モニタリング結果について
(4) 東京電力株式会社福島第一原子力発電所に滞留している高い放射線量が検出された排水のプロセス主建屋への移送における貯水範囲の更なる変更について
(5) 福島第一原子力発電所事故を踏まえた他の発電所におけるシビアアクシデントへの対応に関する措置の実施状況の確認結果について
(6) 電気事業法に基づく定期安全管理審査について(平成22年度第4四半期分)
(7) 電気事業法に基づく溶接安全管理審査について(平成22年度第4四半期分)
(8) 実用発電用原子炉に係る平成22年度第4四半期の使用前検査、燃料体検査、定期検査及び一部使用承認に係る機能確認等のための立入検査の実施状況について
(9) 水浴場の放射性物質に係る水質の目安について(助言要請)
(10) その他
原子力安全委員会記者ブリーフィング 日時:平成23年6月23日(木)16:05~16:50 場所:合同庁舎4号館6階643号室 参加者:班目委員長、久木田委員長代理、代谷委員 水間課長、都筑課長、他
○毎日新聞比嘉記者 毎日新聞の比嘉と申します。 シビアアクシデントの対策の報告の関係で、班目委員長にお伺いしたいんですけれども、
今回、報告が、今日、あったんですけれども、その前に大臣と首相の方は、その内容につい て、適正だということで自治体の方に運転再開の方を要請していますけれども、助言機関に 報告する前に、そういう判断をするという、その手続は、それでいいのかどうか、ということをお伺いしたいんですけれども。
○班目原子力安全委員長 本日、ご報告いただいたのは、あくまでも、ひとつの手続としてであって、原子力災害対策本部として、どのように考えているか、というのとは、これは、 ちょっと別の問題で、これは、助言要請に対する答えだとは思っておりません。
我々として、ずっと申し上げているのは、こういう対策をとるということは改善に繋がる、 いい方向にいく、ということでは評価しています。ただ、ばらばらばらといろいろな対策が出てきて、今日も申し上げたんですけれども、小山田委員もおっしゃっていたと思いますが、 今までやっぱり安全対策に、ある意味では穴があって、それで東京電力の福島第一の事故に繋がったわけですね。それが、この対策によって、どういうふうにふさがったのか、脆弱性 がどのように改善されたのか、それが総合的に分かるような説明というのがなされていない ような気がしているので、その辺りをずっと求めているところです。
○毎日新聞比嘉記者 手続的には、その求めたことに対しては、保安院の方は、回答する義務みたいなものは発生するんですか。
○班目原子力安全委員長 これはどちらかというと、義務ということではないかと思います けれども、法律的には、ぎりぎり言うと、少しは義務があるのかもしれませんけれども、 我々、規制調査権を持っていますので、当然、保安院の方としては、きちんとした対応をしていただけるものだと思っております。
○ニコニコ動画七尾記者 ニコニコ動画の七尾です。よろしくお願いします。 シビアアクシデントに関連しまして、原子炉格納容器MARK-Iについて、お伺いした
いんですけれども、先日、IAEA閣僚会議の会見で海江田大臣が、MARK-Iについて、 安全性の観点から、今後、廃炉を含めた検討が課題になると発言されて、報道されておりま す。
福島第一原発でも、1から5号炉までMARK-Iなわけですけれども、日本に10基あって、このうち6基が廃炉予定で、残る4基も、現在は、定期点検等で全て停止中ですが、この40年以上経つMARK-Iの評価について、ちょっとご見解をお願いしたいと思います。
○班目原子力安全委員長 MARK-Iだからどうこうとか、MARK-IIだからどうこうとかということは、必ずしも言えないんではないか。例えば、福島第一発電所にしてみても、 1号機はBWR3であって、2号機、3号機はBWR4で、MARK-I、MARK-IIと いうのは、これはあくまでも格納容器の型式だけの話ですよね。
○ニコニコ動画七尾記者 そうですね。
○班目原子力安全委員長 安全性というのは、必ずしも、格納容器の型式だけで決まるものではないから、もうちょっと、総合的な判断をしてからでないと、ちょっと原子力安全委員会としてはコメントできないというところでございます。
○ニコニコ動画七尾記者 要するに、今の話というのは、周辺の環境の設備も併せた総合的な見方が必要だという、そういう意味でよろしいですか。
○班目原子力安全委員長 はい。むしろ、いろいろな安全対策を何重にもとられているはずで、今回は、大きな穴があったんですけれども、そういうものを総合して見た時にどうかと いうことを、きっちりと精査する必要があるというふうに思っております。
○ニコニコ動画七尾記者 そうした一方で、例えば、毎日新聞社さんなんかは、熱心に報道されているんですが、今のとも、当然、関連してくるかもしれませんが、例えば、NRCで 80年代に、耐震性について、ちょっと懸念の評価がありましたり、あるいは、最近、もう70 年代から圧力容器と格納容器が近接していて、水素ガスが発生すると圧力が急激に高まるなどの危険性があったんだみたいな見方もありますけれども、こうした見方についても、今の 委員長の見解の中に含まれるということになりますでしょうか。
○班目原子力安全委員長 そういう辺りも含めて、少し議論が必要だなと思っております。 同じMARK-I型とはいえども、改良標準化後のものは、割と、格納容器全体に少し大き目な形をとっていたりとか、MARK-Iということで、ひとくくりにすべきではないの ではないかと思いますけれども、ちょっと、安全委員会としての何らかの検討をしているわけではないので、ちょっと、それ以上の発言は控えさせていただきたいと思います。
○ニコニコ動画七尾記者 分かりました。 あと、ちょっと、別件で、今日の保安院から報告のありました、この水素爆発防止対策、BWRの中で、水素の滞留することを防止するために、緊急時に原子炉建屋でドリルで穴を 開けるという対策が本日あったんですね。これについては、ちょっと、当然、水素に含まれた放射性物質も、ある程度、放出されてしまうわけなんですよ。これはちょっと、どうなん でしょう。もうちょっと、工夫の余地があるような気がするんですけれども、これについて、 ご見解をお願いします。
○班目原子力安全委員長 私もちょっと、そこまできちっと精査していないのであれなんで すが、今回の事故を踏まえた時に、水素への対応が何らかの形で必要であろうと......。
○ニコニコ動画七尾記者 はい、それなんですよね。何か、ドリルで穴を開けるというんで すけれども。
○班目原子力安全委員長 とにかく言えることは、これがどれぐらい効果があるかどうかは 別として、やらないよりは、やる方がいいかもしれないと、そういう評価になってしまいま すね。
○ニコニコ動画七尾記者 ただ、これは、水素が発生する事態になると、もう、この屋根の上に上がってドリルで開ける余裕なんかあるのかどうかという、ちょっと、このストーリー が何かよく分からないなという気もしました。
○久木田原子力安全委員長代理 もちろん、水素が発生してからこういうことをするわけで はなくて、そういう可能性が出てきた時点で、こういうことも考えようということですね。 確かに、かなり、きわどい対策だと思いますが、あくまで中長期的な、より基本的な改善 というものをやるということを見越して、それまでの間、もし、こういうことが起こったら こういうことも考えようと、そういう趣旨で取り入れられた手順だというふうに思います。
○班目原子力安全委員長 例えば、今回の1号機なんかを見たら、これは不可能ですよね。
○ニコニコ動画七尾記者 そうだと思うんですね。おっしゃるとおりです。
○班目原子力安全委員長 ですが、逆に2号機、3号機だったらあり得る対策かもしれない ですよね。だから、ということは、やらないよりはいい方向だと、それ以上のことは、ちょっとコメントしにくいですね。
○読売新聞山田記者 読売新聞の山田といいます。 シビアアクシデントの対応について、本日、保安院の方から報告があったんですが、これについて、安全委員会の方としての対応というのはどうなるんでしょう。というのは、一応、 保安院は、先週、この結果を出して、これを受けて大臣が会見をやって「原発は安全ですから動かしてください」という要請を出している。安全委員会としては、これは、どのように 受け取って、報告を受けて、本日は報告だと思うんですけれども、これについて、安全委員会の方としての、現状では、これでオーケーですというふうな、何か発表なりあるんでしょうか、ないんでしょうか。
○班目原子力安全委員長 まず、手続論的に言いますと、既に、運転管理段階にある炉につ いては、その安全規制は一義的に原子力安全・保安院、一次行政庁の方にある、ということ なので、安全委員会としては、何らかの助言を求められたら答えるという、そういう立場で あるということが第1点です。
それから、ある意味では、こういうところでいろいろ報告をいただいているわけなので、 それに対して、いろいろとコメントを差し上げている。最大のコメントは、やっぱり、これ は地元自治体の方もそう思っていらっしゃるんではないかな、と思うんですけれども、ばらばらばらと、こういう対策をとりましたというのが列記されているだけで、その結果として、 全体として、安全性はどういうふうに高まったのかという、そういう形での報告がされてい ないですよね。そういうことについて、我々としては、是非、やっていただきたいという要請をしている、そういうことになります。
○読売新聞山田記者 すみません。一般の方々、私もそうなんですが、稼働中のものは保安院で、停止から、今度、動くものについては、安全委員会の方も関わる、そうではないんで すか。ごめんなさい、要は、再稼働なりの判断として、地元自治体なりも注目しているのは、 保安院だけの判断ではなくて、安全委員会の方も何らかのコメントなり、お墨付きみたいなものをいただきたいんではないかなと思うんですが、その点については、出す予定なりある んですかという。
○班目原子力安全委員長 今のところ、特に、求められていないので、特に、考えていない というところです。
○読売新聞山田記者 今までだと、柏崎の件だったり「もんじゅ」の件、これは、止まって いるものを動かす際には、一応、保安院の方として「安全です」というのをまとめて、安全 委員会の方としてもちゃんとまとめて、一応、国の方のダブルチェックという形で出してい ると思うんですけれども、今回のケースはそういったことは考えていない。
○班目原子力安全委員長 制度的にいきますと、設置許可変更申請に当たるようなものにな った場合には、これは、必ず、所轄大臣、経済産業大臣が原子力安全委員会の意見を聞かなきゃならないという、これは、炉規制法にそう書かれています。従って、そういうような工事が行われる場合には、必ず、原子力安全委員会は物を申さなきゃいけない立場になります。
それに対して、今回、行われている緊急安全対策というのは、いずれも全くの、可動機器とでもいいますか、例えば、電源車を配備するとか、まさに、管理的なものですよね。ですから、そういう意味では、制度的には、特に、何かしなきゃいけないというものだとは思っ ておりません。ただ、何らかの求めがあった場合には、何らかの形での意見を申すことを拒否しているものでは全然ないということです。
○読売新聞山田記者 制度的には分かるんですが、一般の方が見た場合に、安全委員会の方のご意見というか、どうなっているのかなというのが、要は、先週末の会見、経産大臣のもとで保安院がやるというのは、同じ組織の中での話で、大臣の言ったことに、組織の中の人 間が、一応、規制ではあるんですけれども、了という。客観的に見た場合、安全委員会が了 と言った方が、信頼性なり客観性なり出て、安全性は、今の段階で大丈夫なんだなということになるんではないかなと思って、そういうふうな情報発信なりというのは考えておられな いと。
○班目原子力安全委員長 そういう情報発信をするとしたら、今日も、もう一回、宿題を出し直しましたけれども、総合的に見た時にどうなっているのか、という説明をちゃんとしてくださいと。そうしたらば、それに対して何らかのコメントはしましょうというのが、現在 の原子力安全委員会の態度です。
○読売新聞山田記者 今のところ、安全委員会の方から率先して、何らかの保安院側、要は 経産省側のアクションに対して、安全なり何なりということを、やる予定はないということでよろしいですか。
○班目原子力安全委員長 というよりも、今日、総合的に見て、どういうふうになったかと いうことについて、是非、報告してくださいと申し上げたつもりです。
○読売新聞山田記者 では、追加宿題を出して、それが来た段階で判断なり見方を示すと、 そういうことですか。
○班目原子力安全委員長 そういうふうに、ご理解いただいて結構です。
○毎日新聞青野記者 毎日新聞の青野と言います。 今の続きになりますが、現段階では、今、総合的にどのような安全対策がとられて、どのように脆弱性が軽減されて、直されたかということが分かっていないので、安全委員会とし ては、これで、つまり、今日の5項目であれ、その前の3月の緊急対策であれ、これがとられたからといって、今、定検で止まっているような原発が、福島第一で起きたようなシビアアクシデントを、例えば、起こさないとか起こしても、それをすぐに防ぎ得るとかいうことについては、まだ、何も判断はできないという理解でよろしいんでしょうかというのが1点です。
○班目原子力安全委員長 まず、ご理解いただきたいのは、基本的にそれぞれ運転管理段階 にある炉ということについての安全性というのは、今までの考え方では、安全審査を通ってきているものであって、一定の安全性は確保されているものだというふうに、安全委員会自体も認めてきてしまっているという事実がございます。それに対して、実際には、いろいろ と問題があったということも安全委員会としては認めているところです。
それに対する緊急安全対策として、原子力安全・保安院の方で、いろんな指示事項を出し て、それに対して答えを出してきている、それが現状ですよね。是非、安全委員会としても 運転管理段階にある炉とはいえども、安全性に対しては大変関心を当然強く持っております ので、是非、総合的な判断を持ってきてください、それに対して評価させてください、とい う態度でいるということです。
○毎日新聞青野記者 すみません、もう1点ですが、これまでの、特に、この5項目は、それ以前のものもそうかもしれませんが、やはり、福島第一で起きたことを念頭に行われている対策という側面が強いと思うんですけれども、シビアアクシデントというのは、必ずしもこういう原因で、このようなシナリオでというか、シーケンスで進むものではなく、やはり思わぬところから起きるものだと思うんですけれども、そういうことを念頭に置いたシビアアクシデント対策、短期であれ、長期であれなんですけれども、それが現在は、少なくとも、 今、行われているものについては見えない気がするんですけれども、それについては、安全委員会としてはどのようにお考えでしょうか。
○班目原子力安全委員長 シビアアクシデント対策というものについては、今までは、国の場合、事業者自主ということで、平成4年に求めていたところ、それが、大変不備なもので あったというふうに認識しています。
シビアアクシデント全体について、どう考えるかというのは、これは、全く別の議論とし て、緊急安全対策とは切り離して、しっかりとした議論が必要だと思っていまして、それについては、何らかのイニシアチブを原子力安全委員会の方でも、とらせていただこうと思っ ています。
○毎日新聞青野記者 ちょっと、先ほども出たのと関連になりすけれども、やはり、今回の 短期的なシビアアクシデント対策では、保安院がお墨付きを与えて、経産大臣が定検からの 再稼働を要請するという形になっていますけれども、やはり、この経産省の中に保安院があ るという構図自体についても、再三、IAEAでも指摘されていますし、実際に、これを変えるというふうに方向性が示されているわけですけれども、そういう中で、現時点で、そう いう構図の中で再稼働を要請していくということについて、どのようにお考えになるかを教 えてください。
○班目原子力安全委員長 すみません、そこの辺りになると、もう、組織論の話になってし まうので、そうした場合には、原子力安全委員会も検討の俎上に載せられるということが、 何か確定しているみたいですので、大変申しわけないんですけれども、コメントは差し控え させてください。
○朝日新聞佐々木記者 朝日新聞の佐々木です。 モニタリングの件なんですけれども、幾つか、議論になっていましたけれども、これは、計測の常識から見て、敷地外の部分ですね、一体、こういうことが意味あるのかということ を、要するに、計測の目的に照らして、果たして、科学的に意味ある計測になっているのか どうか。これについて、ちょっとお考えをお聞かせいただければと思います。
○代谷原子力安全委員 今の、東京電力のお話ですよね。東京電力のお話で、モニタリング を敷地外でやっておられる、そこの部分で言っておられるんでしょうか。
○朝日新聞佐々木記者 そうです。その40幾つの。
○代谷原子力安全委員 これについては、本来、かなり少ないものであれば、実は、その場所の線量が少ないところで測るというのが、モニタリングの常識から言うと、それが常識な んです。
ただし、この敷地の周辺というのは、近いところでないと測れないぐらいの量しか出てい かないであろう、ということがひとつ分かっているわけですね。遠くへ行ってしまうと分か らない。そうすると、近いところであると、ある程度、線量が高いところで測らざるを得な いということがあって、相矛盾するところがあると思います。
はっきり言うと、こういうところで、検出されるようなほど、たくさん出るということは もともと予想されていないので、最初から、このモニタリングが意味があるものであろうか、 ということについては、問題があるところだと思います。
おそらく、こういうことであれば、敷地の境界のところで、当然のことながら放出源のと ころに近いところが一番強いわけですから、そこで検出されないようなものは遠くへ行っても検出されないわけですよね。
それから、ダストサンプリングをやっておられますよね。このダストサンプリングの方で、 実は、中から空気が出ていったということであれば、そこでかかってくるであろうというこ となんですが、そこの値も、ここで見る限り検出限界ぎりぎり、もともとかなり低いので、 検出限界ぎりぎりのところということで、本来的に、初めの評価からいってほとんど出ないというところをこれで測ろうというのが、非常に難しいところで、測ろうとされているとい うことは、理解せざるを得ないと思うんです。
ですから、そういうところでは、かなり、無理をした測定になっていると思うんですが、 現実、そういう有意な差は出ていないというぐらいのところで、評価せざるを得ないかなと いうように思っています。
○朝日新聞佐々木記者 そもそも、余り、測る意味がないところで、さらに、しかも、かな り計測方法をきちんとしない形で測っていたということになる。
○代谷原子力安全委員 はっきり言うとそういうところかも分かりません。 ただ、これは、おそらく実際に、このような少ないものをこの状態で環境で測ろうとするのが、まず、非常にある意味で、無理なものであったということだと思います。
○久木田原子力安全委員長代理 補足しますと、おっしゃるような科学的な、定量的な測定 を目的としているというよりは、放射性物質の濃度とか、空間線量率に対して、有意な影響 が出ない、ということを確認するという目的で行った測定、というふうに理解した方がいい と思います。
○東京新聞永井記者 東京新聞、永井です。 環境省からの件についてなんですが、まず、水浴場の目安の考え方について、最初に避けられない被ばく以外は避けられるだけ可能な限り避けるということで、厳しくしてあるとい う説明ありましたけれども、これを、こういう海で泳ぐような屋外のレジャーというのは、 避けられない被ばくを受けている人たちは、できるだけ控えた方がいい、というようなメッ セージがあるんでしょうか、そこはどうなんでしょう。
○班目原子力安全委員長 海水浴にしろ、これは、湖も入っているから水浴と言っています けれども、という行為自体はメリットがあるわけですね。健康面でも、あるいは、精神的な健康面でも、非常に大きなメリットがあるわけです。従って、放射線量はなるべく下げた方 がいいという話と、そのメリットとのバランスで考えなきゃいけないことになります。
そういう意味から考えると、今回、こういう形で助言要請があったので、差し支えないと いうふうに回答はしましたけれども、むしろ、メリットの方を十分考えていただければと思 う次第です。
○東京新聞永井記者 これに関して、代谷先生がちょっとお尋ねあった他の核種が出た場合、 また、考えてほしいということを言われたと思うんですけれども、何か、今、出ているもの の他に、考えられているものがあるんでしょうか。
○代谷原子力安全委員 ここで、ストロンチウムと言われているんですけれども、あとα核種がありますよね。プルトニウム等々の話です。こういうものについて、今現在、海水の中 からどれだけ出ているのかというところがゼロではないかも分かりませんが、ほとんど、デ ータがない。今、測っておられると思うんですけれども、そういうものが出てきたときには、 影響が大きいものですから、そういうものがある場合には、注意をすべきだということで申 し上げたところです。
○東京新聞永井記者 その影響が大きい、と考えられている度合いというのは、どのぐらい だと思えばいいんでしょうか。こういう、今、設けている基準のものと同じようなぐらいの ものが出てきてしまう可能性もあるということなんでしょうか。
○代谷原子力安全委員 私がそういうのを申し上げるわけにいかないんですけれども、これ は、まさか、ここにあるようなぐらいの30Bq/Lとか50Bq/Lとか、こんなに出てくるというこ とはまず考えられないんですけれども、少なくともα核種というのが入ってきた場合には、 その影響というのは、かなり大きくなりますので、先ほどのストロンチウムなんかでも同じ ですね。ストロンチウムはβ線を出す核種ですけれども、そういうものが入ってくると、そ こについての評価というのも、やっていく必要があるだろうということで申し上げたところ です。
○都筑課長 α線につきましても、防災指針の食物摂取制限の中では、ウランとプルトニウ ム、それから超ウラン元素などのα核種が一応規定されております。具体的には、例えば、 飲料水ですとウランは20Bq/kg、それからプルトニウムなどの超ウラン元素については、1B q/kgということでございまして、従って、放射性セシウムが200Bq/kgに対してウランが20Bq /kg、プルトニウムなどは1Bq/kgという形になっておりまして、そういう意味では、そうい う影響を考えた上での指標があるということを補足させていただいております。
○共同通信竹岡記者 共同通信の竹岡と申します。 水浴場で関連なんですけれども、たしか、東京都の水道水で数値が高くなったときの基準がリッター当たり200Bqとか300Bqだったんですけれども、今回、水浴場でより厳しい数値に してあるのは、なるべく避けられるものは避けるという考え方なのかもしれないんですが、 一般の方にも分かりやすいようには、その辺の判断について説明をお願いします。
○班目原子力安全委員長 ちょっと、後で、補足していただきたいと思うんですけれども、 例えば、セシウムで200Bq/Lというのは、これは、介入を開始する指標というふうにお考え ください。要するに、それ以上の検出があったときには、何らかの措置が必要ですよという 基準なんです。従って、これは防災指針に書いてあって、こういうように長期間にわたる影響が出ることを想定しないで作ってある指標です。
従って、原子力安全委員会としては、是非、これを長期間使うことを避けていただきたい。 むしろ、例えば、飲料水だったらば、食品安全委員会の所掌でしょうか。長期間にわたった 場合には、どういう値を使うかというのを、別途、ちゃんと定めてくださいとお願いしてい るところです。
従って、そちらの数値と今回の数値とに差があるというのは、そんな事情もあるというこ とは、ちょっとご理解いただければと思います。
○共同通信竹岡記者 助言の最後の項目の中で、なるべく適切に判断できるように、モニタ リング結果の広報に努めることとあるんですけれども、例えば、これは、どんな方法をイメ ージされていらっしゃいますでしょうか。
○都筑課長 基本的には、これは、環境省さんの方でお考えいただくというふうに考えておりますが、例えば、海水浴場を開く際に、掲示板で、今回の、この浴場のモニタリング結果 はこのようになっています、ということを海水浴をされる方にお伝えいただくとか、あるい は市の広報とか、そういった形で広く広報紙に、こういう結果がありましたよ、というよう なことを載せていただくようなことが考えられるのではないか、と想定しております。どう いうふうにするかは、環境省に、是非、お伺いいただければと思います。
○栗原課長補佐 先ほど、班目委員長から話がありました食品、飲食物摂取制限の指標の件 でございますが、原子力安全委員会で定めております防災指針、「原子力施設等の防災対策 について」の中で、災害対策本部等が飲食物の摂取制限措置を講ずることが適切であるか否 かの検討を開始する目安として、放射性ヨウ素に関して、飲料水について300Bq/kg以上、そ して放射性セシウムに関して200Bq/kg以上というものを定めているものでございます。
本件に関しましては、6月2日の原子力安全委員会におきましても、原子力災害対策本部 に対して、食品安全委員会で検討が行われている、食品健康影響評価も踏まえた新たな規制値を早急に定めることと、現在、定められている、3月17日から運用されている飲食物摂取 制限の暫定規制値も、こちら厚労省で定められているものでございますが、この食品衛生法に基づく暫定規制値についても、新たな規制値を早急に定めること、ということを6月2日付で助言をしているところでございます。
こちらについては、ホームページ等にも資料の方はアップロードされているものでござい ます。以上です。
○NHK大崎記者 ちょっと話が戻って、シビアアクシデントの関係なんですけれども、NHKの大崎と申します。すみません。失礼しました。
今回、指針の見直しでまさにひとつのテーマになっているのが、シビアアクシデントを規制要件化することだと思うんですけれども、つまり、この先ほどの質問の中でもありました けれども、要は、シビアアクシデントというのを総体的にとらえて、きちっとそこにどう対 応していくかと、確率論的安全評価だとか含めて、あるいは、それを超えたところでハード 的にどう対処するか、という意見も昨日出ていましたけれども、そういった議論が、まさに 安全の本質にかかわる議論なんだと思うんですね。
それと、今回の緊急安全対策というのが、委員長も先ほど切り離して考えるべきというふ うにおっしゃっていましたけれども、なかなか地元の住民の方からすると、切り離すという のが難しいんじゃないかという気もするんですよね。
つまり、より安全なものというの、つまり、こうすれば安全じゃないかというものがある んだとしたら、なぜそれをやらない段階で、それが安全だと、ここで満足してくださいと言われるんだというふうなことというのは、心情としては分からないではないと。
つまり、ここまででよしと、つまり、今までの指針だとか、あるいは安全基準ではよし、 とされていたものではあるわけですから、それは、それを止めろというのはなかなか難しいとは思うんですけれども、ここまででいい、ということをどうしたら言えるのかと。
それは、先ほど全体としての対策の状況というようなことをおっしゃってましたけれども、それで十分だということがどうしたら言えるのか、ということなんですよね。
○班目原子力安全委員長 お答えになっているかどうか分からないんですけれども、安全に 十分はないんです。つまり、ある時点では十分だったかもしれないけれども、それは何年か 経てば、不十分になるんですよ。例えば、安全設計指針で一番まずいのは、我が国の送電網 は強いから、外電喪失は、長期間、考えなくていいですよ、と言い切っちゃっているところ がまずいんですよ。
そうじゃなくて、どんどん、どんどん見直して、本当かというふうに考えて、安全性を向上させる努力をしなかった。そこが、我が国の一番大きな安全確保のあり方の間違えだった と我々は思っているんです。
従って、ここまでだったらば十分ですよ、という言い方を将来にわたって、原子力安全委員会が示せるかどうか、よく分かりません。むしろ、安全性はもっと向上させてください。 それは、もっと安全委員会の立場から言わせていただければ、指針にこう書いてあるんだからそれで十分でしょう、という態度を事業者なり保安院がとるとしたら、とんでもない話で、 もっともっと、上を目指していただかなきゃいけないんですよね。
そういう意味からいくと、ある意味で、今回、こういう非常に不幸な事故の後ではあって も、安全性の向上に向かって、いろいろやり出したということは、いいことだというふうに 思っている。ただ、それについて十分であるという言い方をしてください、と言われたとき には、これは、原子力安全委員会としても相当困ることになる。要するに、安全性というの は十分というものは限りなく無くて、向上させ続けなきゃいけないものだ、という辺りをち ょっと、是非、ご理解いただきたいと思います。
○NHK大崎記者 まさに、委員長おっしゃることが、すごく今回も難しいなと思うのは、 つまり、地元の人たちにとっては、今までリスクがあるなんてことって、知らされてこなか った、という思いがきっとあると思うんですよね。それを、今から例えば、確率論的安全評価でといって、今の段階ではこのぐらいの安全性だけれども、さらに、ここまで上げていき ましょう、とかというふうなことを言われると、でも、ここまでと言ったって、それもリスクじゃないかと、つまり、危険があるんじゃないか、ということに対して、多分、今まで、 説明してこなかっただけに、余計に答えるのが大変なんじゃないかなという気もするんです よね。
何か、そういうつまりリスクがあるということを、どう受け入れてもらうのかというか、 それも難しいのかな、という気もするんですけれども。
○班目原子力安全委員長 これはおっしゃるとおりですね。ですから、ひょっとしたら、確率論的安全評価の導入をためらったのは、確率論的安全評価と言っていますけれども、実際 にはProbabilistic Risk Analysisですから、リスクの存在を 認めた上での評価、ということになりますよね。リスクが必ず数字で表に出てくるわけです よね。それをなるべく避けて通っていたのが、我が国の実態だったかもしれません。
ですから、これからはリスクというのを数値化して示した上で、納得いただくというふう に変えていかざるを得ないと思っています。
○NHK大崎記者 今の時点で、地元の方たちにも、そういう説明をすべきではないかとい う気もするんですけれども、いかがですか。
○班目原子力安全委員長 これだけの大事故の後だから、大変難しいとは思うんですけれど も、できる限りの説明努力は必要だろうなとは思っています。
○NHK大崎記者 長くなってすみませんが、もう1点だけ、学校の線量の話なんですけれ ども、かなり下がってきているということは見て取れるんですけれども、一方で、先生方の 線量なんかも非常に抑えられているというのがあるんですけれども、その分、いわゆる外で の活動とかというのは、いまだに、かなり、制限していたりとか、要は、メリットとデメリ ットのバランスって、リスクとデメリットとのバランスという先ほど、海水浴のところでお っしゃっていた話とも、結びつくと思うんですけれども、どこかで判断があるのかなという 気もするんですけれども、その辺りについてのお考えというのはありますか。
○代谷原子力安全委員 今、おっしゃるように、外での活動を制限するというのは、子ども にとって、非常に、それはリスクを伴うと言ってもいいぐらいのことだろうと思うんですね。 そこは判断しないといけないところはあるかと思うんですが、そうすると、先ほどの数値的 にどうあらわすかというところは、非常に難しいところだと思うんです。
それこそ被ばく線量だけで言っても、いろいろな、今、話が出てますよね。非常に心配に なられると思うんです。思うんですが、実際に、いろいろなデータを見ているというか、言 われているのは、低線量被ばくというのは、それほどリスクがあるものではないよと。ない とは言えないんだけれども、ということなんですよね。そこのところをどこまでご理解いた だけるかということにかかっていると思うんですね。
ここのところは、どこかから押しつけて、これ大丈夫です、と言って済む話ではなくて、 お母さん方とかも含めて、これだったらという自分たちでの判断というのが、ある程度、入 らないと、解決できない問題ではないかなというように私は思っています。
そういうことで、どこからか何か値を示して、それで安心してくださいという言い方は、 やはり、非常に難しい話ではないかというように思います。先ほどのシビアアクシデントと ちょっと似ております。
○日本テレビ馬場記者 日本テレビの馬場と申します。 水浴場について、2点、お伺いしたいんですけれども、今回の1リットル当たり50Bq以下と30Bq以下という、その値についての班目委員長の改めて見解といいますか、この値で安心 と言えるのかという見解を、もう一度、お伺いしたいのと、先ほどのところで、介入という 話がありましたが、今回、出た数値を上回ったときに、例えば、自治体やどこかが海水浴場などを開くという判断をした場合に、例えば、罰則とか法規制など、そういう制限が出るの かどうかという、その2点をお伺いしたいです。
○班目原子力安全委員長 まず、数値的には、これは、非常に低い値だと思いますので、と いうか、逆にだけれども、海水浴場でこれだけの数値になるとは、逆に考えられない数値で もあると、ちょっと考えにくいかな。でも、そうか、発電所のそばだったらなっちゃうね。
数値的には、十分、余裕を持った数値だろうというふうに判断しています。しかも、それ で評価したときに、健康影響というのは、たかだか10%ということなので、これは問題ない 数値だろうというふうに、これは判断してます。
それが1点目で、もうひとつ、これが法律的にどういうことになるかというと、これは行 政庁の方の判断ということなので、ちょっと原子力安全委員会ではなくて、むしろ環境省の 方にお尋ねいただければと思います。
○代谷原子力安全委員 ちょっと、補足させていただきますと、この値というのは、現在、 この値を超えているというのは、今、東京電力のところでモニタリングされていますが、モ ニタリングをされている東京電力の一番近くの取水口のところで測られてます。放水口です か。
そこが南と北かな、その両方で超えている以外のところで測れば、全て、これ以下です。 ですから、現実に出ていっているところがそれぐらいですから、これを超えるというのは、 今現在の時点では考えられないと思います。
○朝日新聞佐藤記者 朝日新聞の佐藤と申します。 今日の議題にないので、大変恐縮なんですが、今日「もんじゅ」の落下物の引上げをやっているんですけれども、これに関しては、安全委員会は特に関わってないのかということと、 それから、これの成功とか失敗によっては、いろいろな影響が出てくるんだろうなと気にな るんですが、その辺の見解を。
○班目原子力安全委員長 手順等々については、もう、大分前と言ったらいけない。報告を 受けているんですが、今回の、今の進捗状況については、まだ、全然報告は受けておりませ ん。一定の進捗があったところでは、多分、JAEAの方から我々のところにも報告がある ものだろうとは思っております。ごめんなさい、すみません。当然、原子力安全・保安院で すね。規制行政庁を通じて何らかの報告があるものだろうと思っております。
○朝日新聞佐藤記者 結果を受けての影響というのは、成功するか、失敗するか。
○班目原子力安全委員長 でも、ちょっと、絶対に必要なステップであるので、その結果を 見守りたいという、今、それ以上のことはちょっと言えない状況なんですけれども。
以上