〒104-8404 東京都中央区築地1-1-1 中央区役所5階
都市整備部 地域整備課 御中
氏名: 小坂 和輝 印
私は、「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業」(以下、「本件事業」という。)に係る都市計画(案)(月島三丁目北地区地区計画の決定、月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業の決定及び月島三丁目地区地区計画の変更)(以下、「案」という。)についての反対の意見書を提出致します。
ご検討を、よろしくお願い申し上げます。
意見の内容:
第1、都市計画原案に対して出された意見書に対し、中央区の考え方についての回答を明示すべきであるにもかかわらず、明示せずに都市計画案の公告・縦覧手続きに入った手続き上の重大な違法について
1、都市計画原案への応答せずに、都市計画案公告・縦覧手続きに入った違法
2月28日に都市計画決定がなされた「月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業」は、先行して同様の都市計画手続きが取られました。都市計画原案への意見書が受け付けられた後、引き続き進められることとなった都市計画案の公告縦覧及び説明会において、区民からの意見書を受けて、どういう判断から都市計画原案から都市計画案に移行することをよしとする判断に至ったのか、区民にはまったくわからないままに手続きが進められました。
せめて、都市計画案の説明会やその添付資料においては、都市計画原案に対してどのような内容の意見書が出されたのか、その意見書に対する区の考え方の回答文を提示すべきです。
残念ながら、今回の原案への意見書の処理においても、中央区の考え方をご提示していただけないまま、都市計画案の公告・縦覧手続きへと進められました。平成30年5月21日開催の都市計画案の説明会において、「では、なぜ、原案の意見書を受けていながら、都市計画案の公告・縦覧手続きに進めたのか」と区民から質問されたにもかかわらず、合理的な理由が中央区から提示されませんでした。
私は、原案の意見書において、「原案の説明会では、答えるべきであるにもかかわらず、説明会の場では回答ができていない事項が複数ありました。時間がないからと質問が残っていたにも関わらず、強制終了をされています。原案説明会で、中央区は説明責任を果たしきれていないわけなので、原案の意見書に対する回答を必ず、もし、手続きが進めば、都市計画案の提示の段階で、ご提示いただけますようにお願いいたします。」とお願いいたしましたが、聞き入れられることなく手続きが進められています。
行政手続法42条で国の意見書への応答義務が定められ(同法46条でそれらの考え方の地方自治体が尊重すべき義務が定められています。)、かつ、区民からの意見書への応答義務について意見が届けられているにも関わらず、中央区は、真摯なる応答を区民から届けられた意見書に対しなされませんでした。
説明責任を果たさないまま、計画ありきで進める中央区の姿勢は改められるべきであるし、今回の場合は手続き上の重大な瑕疵であると考えます。なぜならば、もし、原案の段階で、出された意見書に対し、中央区の考え方が示されていたなら、その中央区の考え方を知ってさらに多くの区民が、都市計画案に入るべきでないと考え、それら意見が今回の募集において出されていたかもしれません。
説明責任・応答義務を果たされない都市計画手続き上の重大な瑕疵があり、その瑕疵がなかったなら、都市計画案に進めるべきではないという方向に判断がなされたかもしれないため、公正な手続きを経ることのなかった本件事業は、区民の意見を反映したものと言えない以上は、都市計画として決定ができないものと考えます。
2、もともと、都市計画原案の意見がどうであれ、引き続き都市計画法上の手続きである都市計画案の公告・縦覧に入るスケジュールを決めていたという、区民の民意を無視し、原案の意見書が反映されることの区民の期待権を侵害した違法
都市計画原案の公告縦覧のスケジュールは、平成30年3月29日に都市計画原案の説明会がなされ、都市計画原案の意見書提出の〆切日は、平成30年4月19日でした。一方、平成30年5月21日に都市計画案の公告縦覧に入ることを区報の平成30年5月1日号で区民にお知らせをしています。
区報掲載のスケジュールでは、平成30年5月1日号に掲載する場合においては、その掲載原稿の締め切りは3月20日で、校正締め切りは3月29日、最終的な原稿の仕上がりは4月18日となっていました。
区は、たとえ、予定ありきであったとしても、3月29日の都市計画原案説明会で、計画を進めるべきでない意見が、進めるべき意見より圧倒的に多く出されている状況を鑑みて、平成30年5月21日に都市計画案の公告縦覧に入ることを延期できたはずです。少なくとも、届いた意見書を確認のうえ、都市計画案の公告・縦覧に入るべきかやめるべきか、入るとしてもいつにすべきかを決めることができました。
しかし、中央区がとった姿勢は、都市計画原案説明会で出された意見や都市計画原案への意見書の内容をなんら考慮にいれることなく、平成30年5月21日の都市計画案の公告縦覧に入りました。都市計画原案の意見書の〆切4月19日をまたずして、4月18日に平成30年5月21日に都市計画案の公告・縦覧の手続きに入るというお知らせが入った区報平成30年5月1日号の原稿の確定版ができあがっていることから明らかです。
平成30年5月21日開催の都市計画案説明会では、中央区は、都市計画原案に出された意見書を読み込んだうえで、都市計画案の公告・縦覧手続きに入った旨の説明をされました。スケジュールから逆算した上記の分析からすると、都市計画案説明会でなされた都市計画原案に出された意見書を反映して都市計画案の公告・縦覧手続きに入ったとする説明は、明らかに矛盾があります。
おそらく、現場の区の職員は、届いた意見書を必死に読み込まれたことに疑いはないと思われますが、その一方で、その職員の努力や分析をさえも受け入れない中央区のまちづくり行政の組織としての硬直的な姿勢があったと類推致します。
私は、自分の意見書を提出するのに合わせ、ご希望のかたには、意見書をご持参いただき、区民の意見書を一緒に同封して郵送させていただきました。意見書を持参されたかたとお話しして、区民の皆様は、必死の思いで意見書を書かれておられたことを存じ上げております。
予定ありきで、都市計画案の公告・縦覧手続きを進める今回の区の姿勢は、区民の書いた意見書が都市計画案に反映されるという区民の期待権を踏みにじり、違法であると考えます。
このような違法な行為の経過を経た本件事業の都市計画案は、今後も区民の期待権を踏みにじる違法な手続きを繰り返すことがありうる以上は認めるわけにはいかず、再度、予定ありきでない都市計画の手続きのやり直しを求めます。
第2、本事業及び案に、都市計画手続きに入るべき事業として中央区が採用することの正統性がないことについて
1、住民の「まちづくりに参加する権利」が不当に排除されている点について
まちは、多様な構成員からできています。その一方、住み働く街の「まちづくりに参加する権利」は、まちの構成委員のだれもが平等に有しています。誰もが、等しく、区道がどうあるべきか、防災対策がどうあるべきか、公園や児童遊園がどうあるべきかを考え協議する、「まちづくりに参加する権利」があると考えられます。そしてその「まちづくりに参加する権利」は、平成30年3月開催の第一回定例会でも区長答弁で中央区民にはその権利を有することが確認されています(●資料1)。
その「まちづくりに参加する権利」が、不当に侵害されているのが、月島三丁目北地区のまちづくりです。本事業の素案の作成過程において、まちの構成員に知らせないままに、区道の廃道や児童遊園の2階移設が決められ、それが都市計画案として提案をされています。民間の任意団体である「月島三丁目地区再開発準備組合」(以下、「準備組合」という。)作成の案は、公正な手続きを経たうえで、まちの住民の意見を反映して作られたものではありません。一部のまちの構成員だけの意見だけを採用して、都市計画案として本当によいのでしょうか。
児童遊園の2階移設も区道821号線廃道も反対をする声が多数存在しています。中央区は賛成反対の両者の意見を聞きながら、都市計画案を策定すべきでした。中央区が準備組合からの一方の意見だけを鵜呑みにして児童遊園の2階移設や区道821号線廃道をするのは、全体の奉仕者(憲法第15条2項)とは言えず、一部の準備組合だけのための奉仕者となっていないでしょうか。
近隣住民にまちづくりに参加する権利を保障しないまま準備組合は、児童遊園の2階移設と区道廃道等を行っています。「まちづくりに参加する権利」を保障せずに作られた原案及び案に、都市計画手続きに入るべき事業としての正統性はないため、都市計画案としては無効であり、廃案とすることを求めます。
なお、周辺住民の皆様は、準備組合との話し合いを求めておりますが、例えば、愛する月島を守る会から、3月の話し合いで準備組合から説明がいただけなかった部分の説明をいついただけるか6月1日の期限で回答をお願いしましたが(●資料2)、6月4日段階でお返事をいただけていない状況です。
準備組合に公共事業を担う自覚をもとに説明責任を果たす姿勢があるか、大いに疑問です。
2、都市計画手続きに入ることを求める地権者らの同意率の低さについて
地権者の同意率は、8割程度であり、月島地域の同意率は9割(平成30年中央区議会予算特別委員会 資料207参照)で都市計画手続きにいままで入って来たことの慣習法に反しています。
現段階では、不十分な同意率であるため、本事業の案は一度廃案とし、都市計画手続きの入ることの同意率を高めてから再度提案されることを求めます。
なぜならば、このように低い同意率のままで進めても、今後の都市計画手続きにおいて合意が得られないことによる無駄な労力の浪費と長期化が予想されるからです。
3、「密集市街地総合防災事業」補助金を得るための協議会の委員構成が偏っており、また、その決議が不公正であることについて
国からの補助金「密集市街地総合防災事業」を得るには、「月島地区密集市街地総合防災協議会」による本件事業の防災事業計画への位置づけが必要です。その協議会の構成メンバー自体が偏って編成されており、恣意的に補助金が第一種市街地再開発事業に誘導される可能性があります。
すなわち、「月島地区密集市街地総合防災協議会」の構成メンバー自体が、規約3条第1項にあるように、①中央区長、②月島一丁目西仲通り地区市街地再開発組合理事長、③月島三丁目地区市街地再開発準備組合理事長、④月島三丁目南地区市街地再開発準備組合理事長、⑤独立行政法人都市再生機構東日本都市再生本部晴海都市再生事務所長の5名に限定され、民間からは、月島地区の第一種市街地再開発事業のための準備組合や再開発組合の理事長が当てられています。
本来、協議会は街の防災性の向上を図るべき計画を立てる場であり、国土交通省公表資料『密集市街地総合防災事業(平成27年度創設)』においても事業要件として「複数の主体(地方公共団体、都市再生機構、地方住宅供給公社、民間事業者、地域防災組織等)が連携する協議会があること」とされており、単に再開発事業を推進する者たちの連携を図るのではなく、まさに地域の防災対策の推進のために必要な人材によって構成される必要があります。
再開発を推進することを目的とした偏った人員配置では、再開発を推進する計画内容に偏ってしまいます。お互いが補助金をもらう立場にあり、他の構成員が行う再開発計画に意見することはないでしょう。
また、同協議会はいつ開催されるかの通知もなく、非公開の場で決められています。中立的な第三者の監視の目が入らないために、補助金申請のために、恣意的な協議会運営がなされるおそれが多分にあります。昨年3月は、月島三丁目南地区の新たな計画の位置づけという計画改定にも関わらず、持ち回り決議で済まされました。
国は、このような偏った委員から構成される協議会の不公正な決議である防災計画に補助金を出すべきではないと考えます。
公正中立な委員構成にしたうえで、月島地域の密集市街地総合防災計画を立てることからやり直すことを中央区に求めます。
第3、中央区の説明責任義務違反の重大な瑕疵について
この部分は、都市計画原案でも、意見書として書いたにもかかわらず、都市計画案説明会含め中央区の考え方が、まったくというほど明らかにされないままに、都市計画案の公告縦覧手続きに入られました。
やむをえず、都市計画原案でお届けした内容を繰り返し、記入させていただきます。
この部分に回答なく、都市計画案の公告縦覧に進めたことは、たいへん遺憾であるし、公正な手続きの違反にあたる部分のひとつと考えます。
1、都市計画決定権者である中央区の説明責任について
「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業」について、私たち住民は、この事業が住民とその対象地区の住民と地区周辺の住民の生活環境に及ぼす多大な影響について、中央区から十分な説明を受けていないと感じています。「まちづくり基本条例」(平成22年10月1日施行)では、①開発事業における事業者の説明義務とともに、②事業者に対する中央区の指導、③中央区による開発事業が行われる地域の区民等との協議義務が定められています。とはいえ、残念ながら今日に至るまで、事業者からは一般的な再開発モデルと開発区域内の公共施設の公益についての説明しかおこなわれておらず、私たちが必要としている再開発により開発区域内の地権者や近隣在住の住民(以下「被影響住民」とする)に生ずる不利益の程度に関する具体的な情報の提示はほとんど行われていません。つまり、この再開発事業が、長期的にみて、私たちの住環境をよい方向に更新するのかどうか、また月島地域の公共の福祉に資するものなのかを判断するための材料が十分に与えられておりません。この事業計画が、月島地区の公共の福祉の増進に繋がる最適な計画であるかは、事業計画(素案)の履行により創出される公共の利益と、被影響住民が懸念する再開発により生ずる不利益の程度を考慮要素とした比較衡量を通じて多角的な視点から検証されるべきと考えます。その検証を区民への情報公開と協議を積み重ねて十分に行う責任を、都市計画決定権者である中央区は有します
私たちは長期間にわたる再開発のプロセスと再開発により生じる不利益について、様々な不安を抱えております。都市計画決定の前に、中央区は、再開発計画による被影響住民が被る不利益の程度に関する調査を行い、被影響住民である月島地区の区民との協議を、十分な情報提供にもとづき行うことを求めます。
中央区は、この事業の正当化するのに必要な行政計画手続き(例えば土地利用規制緩和や都市計画決定)のうえで、計画決定者です。行政手続法42条には、「命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない」とあります(同法46条は、地方公共団体の42条の規定の努力義務を定めています)。この意見書を含めて、今回の意見書公募で提出される意見が「十分に考慮され」たことを、中央区が公の場で示さない場合、違法である可能性があることを申し添えておきます。
私たち住民は、「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業」を正当化する中央区の都市計画決定が、地域の公共の福祉の増進に繋がりうるかを判断するための材料として、以下の項目の不利益の程度について情報の提供を住民に行うことと、計画決定の際の考慮要素として十分に考慮することを中央区に求めます。
(1)再開発対象地区の居住者、特に高齢者にどのような身体的・精神的負担等の不利益について
長い期間を要する再開発のプロセスが、再開発対象地区の居住者、特に高齢者にどのような身体的・精神的負担等の不利益を与えるのかについての研究蓄積をまとめた調査結果の提示を求めます。調査結果がない場合には、すでに再開発が行われている事例がある月島地区で聴き取り調査を行うことを求めます。
調査結果を書面にまとめ、都市計画案説明会や住民説明会など公開の場で、①再開発に伴う不利益の程度と、②その受け容れること(以下「受忍」)が公正かを判定する判定基準を示したうえで、③その判定基準を用いて本件再開発に伴う不利益が受忍限度内であることを、在住者に書面と口頭によって提示・説明してください。
また、そのような負担、不利益を軽減するために講じられる具体的な方策があれば、それもご提示ください。
(2)再開発対象地区の居住者の将来の費用負担について
権利変換後に等価交換によって新築の高層の集合住宅に住むことを決めた場合、いくらの固定資産税、管理費、修繕積立費などの諸費がかかるのか。①長期的な見通しと現状・従前の金銭的な負担と比較した従後の金銭的な負担の差による不利益の程度について、具体的な数値を提示しながらの情報提供をお願いします。
事業者の「現時点では分からない」「今はいえない」は、まったく判断材料になりません。
居住者らは、この試算もわからないまま「都市計画手続き入ることの同意書」を提出されています。この同意書の取り方は、あまりにも不公正・不当です。②上記①の情報提供を居住者に行ったうえで、再度、同意書を取り直し、その同意率の9割以上をもって、中央区が今後の都市計画手続きを進める参考にすることを求めます。
(3)再開発対象地区の居住者の中で、中央区の指導のもとに自らの力でまちの更新を行った者への説明について
建て替えをしたばかりの地権者宅や、中央区の指導のもとに、高額の建て替えやリノベーション費用をかけて低層長屋を維持してきた地権者宅に対する、不利益の程度や、不利益をさけるための代替案等の検討過程に関する十分な説明と賠償についての詳細な説明がなされることを求めます。
(4)建設工事に伴う騒音・振動・ほこりなどの生活住環境の悪化について
過去のデータに基づき、再開発の工事による環境の変化(騒音や埃など)が、周辺住民の耐えうる範囲であることを示す具体的な数値(見込み)の提示を求めます。
現在行われている西仲通り地区再開発では、近隣住民から長期にわたる工事により、自宅の窓が開けられない、洗濯物が外に出せないなどの声もあがっていると聞いております。特に子どもや高齢者の健康への影響による不利益の有無を判定する判定基準を示したうえで、その判定基準を超える不利益を周辺住民が被ることがないかを説明する義務を果たすことを求めます。
(5)複合的な日照阻害・風害などの影響について
東京都と中央区は、月島地区に居住する住民との合意形成を経ずに月島地区全域を「都市再生緊急整備地域」に指定しました。その結果、高度利用を前提とした複数の地区計画による土地利用規制の緩和の結果、地区内には複数の高層建築物が新設され、これからも新設される予定です。
再開発後、周辺環境や周辺住民に与える既存・建設中・三丁目北地区を含む月島地区で計画中の全ての高層建築物からの複合的な日影による日照阻害・風害の影響が、月島地域住民の耐えうる範囲(受忍限度内)であることを、過去の再開発の調査事例からまとめ、中央区は、周辺住民に具体的な判定基準として提示したうえで、その判定基準を超える不利益を周辺住民が被ることがないかを説明する義務を果たすことを求めます。
なお建築基準法にはこの複合的な影響に関する定めがないことから、個々の地区計画の事業者にはこの複合的な影響に関する建築基準法上は法的な責任を有しないかもしれません。ただし、複数の高層建築物の新設を正当化する土地利用規制緩和の決定権者は中央区であることから、複合的な影響の受忍にともなう周辺住民の不利益(複合日影による日照阻害)に関する責任の所在は、中央区にあるものと理解します。中央区は、土地利用規制緩和の決定権者の責務として、この複合的な影響の受忍に関して被影響住民の方々を説得できなければ、これまでに築かれてきたコミュニティーでの友好的な人間関係が崩れてしまいます。もし具体的な数値の提示が不可能である場合は、周辺住民に聴き取り調査をおこない、住民の受忍限度を把握したうえで、住民説明会などの公の場で複合的な影響が受忍限度を超えないことを説明する義務を果たしてください。
この受忍限度の判定基準の策定にむけては、住民としても区との協働作業に積極的に取り組む所存でおります。
(6)行政手続法第42条違反について
以上の意見に対する真摯な書面での回答と、具体的な情報提供を求めます。以上のことが行われるまえに、中央区が都市計画決定の手続きに進むことは、行政手続法上、問題であると考えます。
仮に、中央区ならびに中央区都市計画審議会が、本意見の考慮と必要な調査、検証、説明、公開の場における被影響住民との協議を経ずに事業計画を審議、都市計画決定を下した場合、事業者は多額の費用を投下して新設される高層建築物らの基本設計を開始するという実態が生じるから、事業計画(素案)は既成事実となります。その場合、中央区ならびに中央区都市計画審議会は、区民である被影響住民が懸念する再開発による不利益の程度を調査して、合理的な緩和策の有無を探索するという行政手続法第42条で定められた要考慮義務を果たさないまま、区の土地利用規制緩和(例:容積率1000%の許可)と区補助金交付の決定を行うことになり、行政手続法上、違法になりうるものと理解しております。少なくとも同法46条で、国の規定の趣旨に則り、地方公共団体も行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされているのだから、その努力を中央区もするべきではないでしょうか。
きちんと、行政手続法の趣旨に則り、区民である被影響住民が懸念する再開発による不利益の程度を調査して、合理的な緩和策の有無を探索することをもとめます。
行政手続法上違法でないと言えると考えるのであれば、その理由のご説明をお願いします。
【行政手続法】
(提出意見の考慮)
第四十二条 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。
(地方公共団体の措置)
第四十六条 地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第4、本事業及び原案の違法性について
たとえ、都市計画案が正統性を有していたとしても、本事業及び案は、都市再開発法、道路法、東京都環境影響評価条例などの規定に違法であり、都市計画決定すべきものではないと考えます。
以下、理由を述べます。
1、都市再開発法第3条3号及び4号違反について
本事業の行う地域は、まちの機能として著しく不健全とは言えない地域であり、また、本事業によりまちの機能の更新も、その規模の妥当性を欠いた計画からまちの社会的インフラにかける負荷が大きすぎることと超高層ゆえの災害への脆弱性のために、まちの機能が更新したとは言えません。
このような状況のもと、施行区域要件に合致するとすることは、裁量権の逸脱濫用であり、許されません。都市計画案は、都市再開発法3条の施行区域要件に合致しない場所での第一種市街地再開発事業を前提としており、違法なため廃案とすることを求めます。
2、道路法違反(10条1項)について
本事業では、区道821号線を一部廃道する計画です。この区道廃道は、緊急車両通行含め近隣住民の交通の便に多大な支障を来し、月島1丁目、3丁目町内の交通全体に影響を及ぼすこととなってしまいます。
また、本事業(359台)と月島一丁目西仲通り地区再開発(166台)及び月島三丁目南地区再開発(221台)により駐車場だけでも合計746台増加し、それに伴う自動車交通量はさらに増加することが考えられます。実際に、月島三丁目南地区事業では、一日にその事業単独で700台の自動車交通が増加することが推計されています(本年2月1日都市計画審議会配布資料 参照)。本事業(月島三丁目南地区の1.5倍の規模)と西仲通り地区(月島三丁目南地区の0.7倍の規模)の事業の規模を比例して考えると、本事業は、1.5倍の1050台で(都市計画案の区の資料では、約1,000台増加すると示されました。)、西仲通り地区は、0.7倍の490台であり、3事業合計すると2240台の自動車交通が単純計算で路地に増加することが考えられます。区道の一本でも廃道によりなくなると迂回路の負担は倍増し、路地における自動車の騒音・振動・排ガスや自動車と歩行者・自転車事故が急増することが容易に想像がつきます。従って、道路法上、区道821号線は廃道ができないと考えます。区道821号線廃道を行わないことを求めます。
廃道により月島の当該エリアの交通に及ぼす深刻な影響がないということの根拠をお示し下さい。
道路法に反する点を詳述させていただきます。
道路法(以下、法)で、「一般交通の用に供する必要がなくなつたと認める場合」を厳格に解釈し、路線の廃止や変更の手続きを取らねばならないといえます。
道路法の趣旨目的から、「都市における街区づくりと道路網については一体性と統一性が要求され」るとするならば、以下の(1)~(3)のどれかに該当する場合は、廃止や変更ができるが、それらがないと逆に廃止や変更が出来ないと解釈できると考えます。
(1)道路の新設又は改築によつて存置の必要がないと認めた場合
(2)地域の開発事業等公益上特に廃止を必要とするもので、道路管理上支障がないと認めた場合
(3)付近交通の実情、沿道土地の情勢の変化又はその他の事由により交通上支障がないと認めた場合
今回の場合、特に(2)に適合するかですが、道路法の目的は、「交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的」(法1条)があるし、道路管理により、「地域住民の日常生活の安全性若しくは利便性の向上又は快適な生活環境の確保を図る」(法17条4項)ことが目的であるならば、今回の廃道で、月島三丁目、一丁目の交通が遮断されることになり、地域住民は、不便を被ります。
また、廃道にならない側の区道は、一方通行から、両側通行に変更され、交通事故の危険性がますことから、地域住民の日常生活の安全性の低下、快適な生活環境の確保がなされていないとことなり、結果、今回の廃道や変更は、交通の発達に寄与せず、公共の福祉の増進にも寄与していません。
従って、北地区第一種市街地再開発事業で計画された区道の廃止変更は、道路法に反し、違法ではないかと考えます。
少なくとも、月島三丁目地区市街地再開発準備組合は、今回の区道廃道で、①月島地域の道路環境に影響がでないことの証明と、②両面通行にすることによる安全性に支障がないことの証明、③できうるなら、両面通行にはせず、一方通行のままにすることの方策の十分な検討が必要であると考えます。
あるいは、道路法10条1項を単純に解釈し、「一般交通の用に供する必要がなくなったか否か」で判断するならば、現状、区民は、区道821号線を使用しているし、本件事業その他の再開発でさらに自動車交通が2240台月島の路地において増加するため、区道821号線は一般交通の用に供する必要性が高まり、道路法10条1項の廃道条件に該当しないため、区道821線廃道は、違法であると考えます。
【道路法 条文参照】
道路法10条1項
都道府県知事又は市町村長は、都道府県道又は市町村道について、一般交通の用に供する必要がなくなつたと認める場合においては、当該路線の全部又は一部を廃止することができる。路線が重複する場合においても、同様とする。
3、東京都環境影響評価条例違反について
本事業と月島三丁目南地区再開発事業の二つの事業の規模を合わせると、高さ190mと199mの二棟で延べ面積約23万㎡と大規模な事業計画となり、都環境影響評価条例の対象要件(高さ180m以上、かつ、延べ面積15万㎡以上)を優に超えます。主体は異なっても、同時期に行われる以上、周辺住民に多大な工事の影響、建設後の影響の負荷をかけるわけであるから、二つの事業をあわせた形で環境影響評価を行うべきと考えます。
東京都環境影響評価条例では、第40条2項において、「知事は、一又は二以上の事業者が相互に関連する二以上の対象事業を実施しようとするときは、これらの事業者に対し、これらの対象事業について、併せて前項の規定により調査計画書を作成し、提出するよう求めるものとする。」と実際に事業者が異なれど、相互に関連する場合に併せた形で環境影響評価を行うべき規定をしており、本事業と月島三丁目南地区再開発事業を併せることで月島の密集市街地の防災性の向上を目指しており密接に関連をしていると言え、規模が対象事業の規程であれば、併せて行うべき事業であるはずです。
この規定も鑑みれば、超高層の二つの計画を併せた形の環境影響評価書を作成せずに都市計画手続きを進めることは、東京都環境影響評価条例の趣旨に反し、都市計画手続きを進めることは許されないと考えます。
直ちに、両事業を併せた環境影響評価を行うことを求めます。法の文言に合致していないからと言って、やらないことの理由にはならないのではないでしょうか。周辺住民の立場に立った判断を、中央区行政の皆様にお願いしたく考えます。
第5、本事業を抜本的に見直すべきことについて
第3のごとく、区は、説明責任を果たしていない以上、本事業に関する都市案の是非は、そもそも判断ができない。
私達の調査からわかる範囲で考えても、本事業を抜本的に見直すことを求める。
1、規模の妥当性について
月島三丁目南地区再開発(以下、南地区)は、地上50階高さ190m750戸の超高層建築の計画で、本事業である北地区再開発は、地上59階高さ199m1120戸で規模として南地区の1.5倍のさらに大きな計画です。現在、区内の高層建築物の1位が51階建て199.9mの「聖路加タワー」であり、2位が44階194mの「晴海トリトンスクエアX棟」です。聖路加タワー級が、せまい月島三丁目内に2棟建つイメージであり、多数の住宅供給は、月島第一小学校の学区変更及び増築の影響をもたらし、都市計画案の規模が妥当であるとは到底いえません。
都市計画上、規模が妥当ではないと考えられるため、本事業を抜本的に見直すことを求めます。
都市計画上、本事業の規模が妥当であると判断する理由をお示し下さい。
2、社会的インフラが追い付いていない点について
すでに、施行区域内には、保育園と障害者グループホームが存在しています。
保育園(月島3-1-11、1階、2階部分)は、平成21年11月1日に開設された定員30名の認証保育所A型「ポピンズナーサリースクール月島」です。本件事業では、既存保育所部分は住宅となり、定員90名、約700㎡の保育所が、A地区2階に整備となっています。
障害者グループホーム(月島3-1-11、3階・4階部分)は、「社会福祉法人東京都知的障害者育成会」が運営する「ピアつきしま」です。本件事業では、B-1地区に再整備するとなっています。
保育所定員が、本件事業の前後で60名の増員のみで再開発の規模に対しわずかの増加でありこれでは、本事業が新たに生じさせる保育ニーズの規模さえまかなえていません。
【北地区再開発事業1160戸に伴う単純な人口推計】
1)北地区再開発事業の総戸数 1120戸+40戸=1160戸
2)日本の平均世帯人員:2.47人(国民生活基礎調査 平成28年)
1160戸×2.47人=2865.2人 2865人が増える
3)2865人を、中央区の人口割合(H29.4.1)で見ると、
年少人口0-14歳(12.83%):2865人×0.1283=367.6人(0-5歳は、123人)
生産年齢人口15-64歳(71.45%):2865人×0.7145=2047.0人
老年人口65歳以上(15.72%):2865人×0.1572=450.4人
単純な推計でも、0-5歳は123名が本事業により増加し、その半分が保育園に通うとしても60名であり、上述の60名の増員分の規模と等しくなります。
少なく見積もってこのようであり、本事業による保育園の定員増は、本事業が生み出す保育ニーズにさえも対応しきれていません。
障害者グループホームの内容も充実の内容が不明なまま、案の提案は不当です。大至急、障害者グループホームの充実の内容を明らかにしてください。
3、わたし児童遊園2階移設問題について
北地区では、一民間の任意団体である準備組合側の意見のみを聞き入れ、わたし児童遊園を2階に移設する計画がされています。
公園を利用する多くの区民に影響を与える話であり、都市計画手続きに入る前に周辺住民への説明会の開催や、「わたし児童遊園のあり方検討会」のような区民を交えた検討組織を立ち上げ、スーパー堤防化の手法について検討を行うべきと考えます。
4、広範な日影被害について
南北両計画は、広範囲に及ぶ日影の影響を周辺地域にもたらします(●資料3)。施行区域が隣接しているため、単独の影響だけではなく、複合日影の問題も生じることになってしまいます。
そもそも日影規制がないというが、日影規制をなくす手続きにも住民への説明責任を果たしたとはいえない瑕疵があり、日影規制がないこと自体無効である可能性があります。
複合日影による日照権の侵害が受忍限度を超えるため、超高層を前提とする案は許されないと考えます。
本件事業により、日影を4時間生じる区民がお住いのマンションが存在します(●資料4)。中央区は、日影の受忍限度4時間をひとつの基準においており(晴海五丁目西地区開発計画 環境影響評価書 参照)、本件事業は、その受忍限度を超えることが明らかであり、計画の変更をすべきです。
5、商店街への深刻な影響について
長期間の建設工事により、商店街の業務に重大な支障を来してしまいます。また、広場をつくることで、商店街の3番街と4番街の連続性も切れてしまい、また、下町の情緒もなくなり、それを求めて月島に集う人も減少し、深刻な西仲通り商店街への影響を及ぼします。
従って、本事業を抜本的に見直し、月島の路地長屋の風景を残したまちの再生に転換することを求めます。
6、代替案の検討が行われていないことについて
「容積率を消化するため高層にする。事業費をまかなうために高層になる」との12月15日に準備組合コンサルタントの説明がなされました。
再発計画の規模を縮小したり、歴史的な建造物や街並み等を保存する手法として、「個別利用区制度」が「都市再開発法第70条の2」に新設されました。本制度は、代替案として十分に検討に値すると考えます【国会答弁 参照】。しかし、準備組合及び中央区は、「個別利用区制度」を検討されておりません。
また、小規模の共同建て替え案等について、北地区準備組合としては検討されていないし、そのような手法があることを地権者に説明をされていないということでした。
超高層の一案だけの検討で、地域に計画を受け入れることを強いるのは、計画自体が練られていないことを示します。どのような事業でも、複数案の中から最適な計画を選んでいくべきものです。
中央区は、共同建て替えの場合の利点・不利益と、超高層の場合の利点・不利益をきちんと地権者や周辺住民に示すことを求めます。さらに、区は、資金面の解決策の提案まで踏み込んで、まちづくりの手法の指導や住民の建て替え相談に乗ってこられたのでしょうか。「街並み誘導型地区計画」の導入をしたのみで、建て替えが進まなかったと結論づけるのは、やるべきことをやっていないといえます。
「愛する月島を守る会」からは、共同建て替えの具体的な計画案も提案(●資料5)されており、資金的にも、少額の資金で再開発ができることを私達は提案で示しています。
区においても、共同建て替えで用いられる資金の支援策のメニューの多様化とその指導をし、それでも建て替えが進まない場合にはじめて、今回のような面的な再開発を選ぶべきだと考えます。まずは、もう少し、共同建て替えや個別建て替えによる月島の再生に向けた指導に努力をすべきであると考えます。
【国会答弁 参照】都市再開発法に「個別利用区政度」を新設する法改正に当たっての国会で政府参考人(国土交通省都市局長)栗田卓也氏答弁
〇栗田政府参考人
個別利用区制度についてのお尋ねを頂戴しております。
現行制度上、市街地再開発事業は、施行地区内の既存建築物を全て除却する、従前の権利者は事業により整備される新しい再開発建築物に権利変換を受ける、これが原則でございます。
今回創設される個別利用区制度は、既に高度利用されている建築物ですとか、あるいは歴史的な建築物、こういったまだまだ価値のある有用な既存ストックを個別利用区内に存置または移転する、そのまま使うということを可能とする制度でございます。
地権者にとって、あるいは地方公共団体等の施行者にとってのメリットということでございます。
地権者にとりましては、これまでの市街地再開発事業では、新しい再開発建築物に入るか、地区外に転出するかという選択肢しかありませんでした。今回の改正によりまして、個別利用区内で従前の居住あるいは業務活動を続けることができるという選択肢がふえることになります。また、もちろん現在の生活環境やコミュニティーを維持しながら再開発事業による地域活性化の効果を享受する、こういったこともあると思います。
地方公共団体等の施行者につきましては、既存建築物を有効活用するということで、新たに設ける再開発建築物を必要以上に大きなものとしないで済むということになり、いわば地域の身の丈に合った事業を組成することができるといったようなメリットですとか、あるいは、既存建築物を活用したいという住民のニーズに応えることができるということは、事業を進める上での合意形成が円滑になるといったようなメリットもあるものというように考えておるところでございます。
第6、ご高齢のかたの健康を害さない、十分な配慮を
最悪、この大規模な再開発を強行することとなったとしても、ひとつだけお願いがあります。
再開発に伴う移動は、精神的にも身体的にもかなりの負担があります。
「愛する月島を守る会」が主催して、「月島一丁目西仲通り地区再開発」の経験されている方のお話を実際にお伺い致しましたが、負担が大きく、実際にご家族が体を壊された経験談を話して下さいました。
北地区の施行区域内のご高齢の方の複数人から、再開発の影響による健康への不安を話されています。
ご高齢のかたには、一度の引っ越しで済む配慮をお願いいたします。例えば、B-2街区あるいはA街区の商店街側にそれらご高齢のかたの住居を配置計画し、かつ、先に建設を完成させ、その後、ご高齢のかたを引っ越しし、それによって、その方にとっての再開発は終わるという形をとることをお願いしたく考えます。
本事業は、施行区域面積が1.0haと広大であり、このような配慮は可能であると考えます。
以上
<添付資料>
資料1、平成30年3月中央区議会 第一回定例会 本会議
資料2、平成30年5月29日付「愛する月島を守る会」から「準備組合」宛てに出した説明会の開催のお願いする趣旨の文書 写し
資料3、月島三丁目北地区再開発と月島三丁目南地区再開発さらに月島一丁目西仲通り地区再開発を併せた複合日影図
資料4、本件事業により生じる日影の影響図と、測定された部屋からの本件事業の完成前後の窓から見える景観シミュレーション
資料5、愛する月島を守る会 作成の代替案