その4月の統一地方選に向けて、中央区行政含め各自治体に望む点、各候補者のあるべき政策について、順不同で(重要度の順というのではなく)、取り上げているところです。
信頼の区政、至極当たり前のこと。
では、信頼の区政とは、適正な行政運営とは?
それは、決して、違法でない行政運営をいうのではありません。
「違法でないから、やっていいだろう。」「法律で定められていないから、やっていいだろう。」は、行政の使う言葉では、決してありません。
行政は、違法を行わないのが大前提です。
違法は、論外としても、「不当なこと」もまた、無くしていかなければなりません。
違法でない、不当でない行政運営の上に、初めて、信頼の区政が築かれることになります。
行政運営を適正に行っていく、区長市長の役目があり、行政運営が適正に行われていることをチェックする議会、議員、監査委員(地方自治法195条、196条)の役目があります。
そして、住民もまた、おかしな区政運営を見つけた場合や、区政運営で不当に被害を被った場合に、それらを住民の手により是正する制度が、地方自治法において準備されています。
それが、「住民監査制度」です。
議員には、もし、住民が同制度を用いたいと相談を受けた場合に、その制度の利用のしかたの説明や、実際の利用にあたって具体的に関連した区政情報を提供する重要な仕事があると考えます。
住民監査制度では、住民は、監査委員に対して、以下のことを監査するように請求すること(住民監査請求)ができます(地方自治法242条)。
〇違法若しくは不当な「公金の支出」
〇違法若しくは不当な「財産の取得」、財産の「管理、財産の「処分」
〇違法若しくは不当な「契約の締結」、契約の「履行」
〇違法若しくは不当な「債務その他の義務の負担」
〇違法若しくは不当に「公金の賦課」を怠る事実、公金の「徴収」を怠る事実
〇違法若しくは不当に「財産の管理を怠る事実」
大事な点は、違法なことを監査することをもとめることは、当然なのですが、違法だけではなく、「不当なこと」までも、監査を請求できるところです。
繰り返しますが、自治体は、違法ではないから、なんでも、やってよいわけではないのです。
そして、万が一、適法な住民監査請求に、区市町村が対応しない場合は、住民は、裁判所に司法救済をもとめること(住民訴訟制度)が可能です(地方自治法242条の2)。
具体的には、住民訴訟制度の種類として、
ア 1号請求(差止請求)
→ 公有財産の廉価による払下げや公金の支出の差止請求
イ 2号請求(取消し又は無効確認請求)
→ 道路など行政財産の占用許可とか補助金交付決定の取消しを求める
ウ 3号請求(怠る事実の違法確認請求)
→ 租税や負担金など公課の賦課徴収を怠っている事実の違法確認を求める
エ 4号請求(義務付け請求)
→ 長や職員が特定の企業に違法に高価な代金を支払った場合に、当該長や職員の責任を追及して損害賠償を求めたり、代金を受け取った相手方の企業から不当利得の返還を求めたりするよう、住民が地方公共団体の執行機関又は担当職員に対して請求する
例)築地市場の移転問題に伴い、移転候補地である豊洲東京ガス工場跡地を、東京都は汚染のない価格で購入しており、そのことに対し、裁判が進行しています。振り返れば、自分と行政法の初めての接点だった…手弁当で闘って下さっている梓澤和幸弁護士(原告団団長)はじめ弁護士の皆様に心から感謝を申し上げます。
実際に、よく使われるのは、4号請求です。
なお、4号請求の形が、平成14年の地方自治法改正を境に大きく変わっています。裁判例を読むときは、要注意。
旧4号請求、すなわち、平成14年以前は、住民が、例えば、違法な公金を支出した市長を訴えて、市への返還を求めていました(訴えの被告は、市長)。
平成14年地方自治法改正以後の現在の4号請求は、住民が、市に、違法な公金を支出した市長に対して違法な公金の返還を求めることを義務付ける訴えをします(訴えの被告は、市)。もし、住民側が勝てば、義務の履行として、市は、あらためて、市長に、違法な公金の返還を求めることになります。勝った住民側には、一円も入りません、得られるものは、適正な行政運営という大きな果実です。
住民訴訟の優れている点は、訴える資格がない(原告適格がない)として、実質審議に入る前に門前払いを裁判所にされることがない(例、サテライト大阪事件など多数)ということです。
やや、専門的になりましたが、不当な区政運営でお困りのかたがおられた場合、議員は、どのように制度を利用するのか、住民の相談にわかりやすく対応していくことが求められます。
そして、適宜、根拠資料を出して、具体的にどのような請求を監査委員にしたらよいかを、お困りになられている区民の側に立って、アドバイスすることが求められます。
******関連条文、地方自治法*********
地方自治法(昭和二十二年四月十七日法律第六十七号)
最終改正:平成二六年六月二五日法律第八三号
第百九十五条 普通地方公共団体に監査委員を置く。
2 監査委員の定数は、都道府県及び政令で定める市にあつては四人とし、その他の市及び町村にあつては二人とする。ただし、条例でその定数を増加することができる。
第百九十六条 監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(以下この款において「識見を有する者」という。)及び議員のうちから、これを選任する。この場合において、議員のうちから選任する監査委員の数は、都道府県及び前条第二項の政令で定める市にあつては二人又は一人、その他の市及び町村にあつては一人とするものとする。
2 識見を有する者のうちから選任される監査委員の数が二人以上である普通地方公共団体にあつては、少なくともその数から一を減じた人数以上は、当該普通地方公共団体の職員で政令で定めるものでなかつた者でなければならない。
3 監査委員は、地方公共団体の常勤の職員及び短時間勤務職員と兼ねることができない。
4 識見を有する者のうちから選任される監査委員は、これを常勤とすることができる。
5 都道府県及び政令で定める市にあつては、識見を有する者のうちから選任される監査委員のうち少なくとも一人以上は、常勤としなければならない。
地方自治法施行令(昭和二十二年五月三日政令第十六号)
最終改正:平成二六年九月二五日政令第三一三号
第百四十条の三 地方自治法第百九十六条第二項に規定する当該普通地方公共団体の職員で政令で定めるものは、当該普通地方公共団体の常勤の職員(同条第四項に規定する監査委員を除くものとし、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第八十七号)第一条の規定による改正前の地方自治法附則第八条の規定により官吏とされていた職員及び警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第五十六条第一項に規定する地方警務官を含む。)及び地方公務員法第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める職員とする。
第百四十条の四 地方自治法第百九十六条第五項に規定する政令で定める市は、人口二十五万以上の市とする。
地方公務員法(昭和二十五年十二月十三日法律第二百六十一号)
最終改正:平成二六年六月一三日法律第六九号
第二十八条の五 任命権者は、当該地方公共団体の定年退職者等を、従前の勤務実績等に基づく選考により、一年を超えない範囲内で任期を定め、短時間勤務の職(当該職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間が、常時勤務を要する職でその職務が当該短時間勤務の職と同種のものを占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるものをいう。第三項及び次条第二項において同じ。)に採用することができる。
2,3 (略)
地方自治法
第十節 住民による監査請求及び訴訟
(住民監査請求)
第二百四十二条 普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3 第一項の規定による請求があつた場合において、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり、当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるときは、監査委員は、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関又は職員に対し、理由を付して次項の手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。この場合においては、監査委員は、当該勧告の内容を第一項の規定による請求人(以下本条において「請求人」という。)に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
4 第一項の規定による請求があつた場合においては、監査委員は、監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表し、請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
5 前項の規定による監査委員の監査及び勧告は、第一項の規定による請求があつた日から六十日以内にこれを行なわなければならない。
6 監査委員は、第四項の規定による監査を行うに当たつては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない。
7 監査委員は、前項の規定による陳述の聴取を行う場合又は関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員の陳述の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員又は請求人を立ち会わせることができる。
8 第三項の規定による勧告並びに第四項の規定による監査及び勧告についての決定は、監査委員の合議によるものとする。
9 第四項の規定による監査委員の勧告があつたときは、当該勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を監査委員に通知しなければならない。この場合においては、監査委員は、当該通知に係る事項を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
(住民訴訟)
第二百四十二条の二 普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第四項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第四項の規定による監査若しくは勧告を同条第五項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあつては、当該賠償の命令をすることを求める請求
2 前項の規定による訴訟は、次の各号に掲げる期間内に提起しなければならない。
一 監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合は、当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から三十日以内
二 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合は、当該措置に係る監査委員の通知があつた日から三十日以内
三 監査委員が請求をした日から六十日を経過しても監査又は勧告を行なわない場合は、当該六十日を経過した日から三十日以内
四 監査委員の勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員が措置を講じない場合は、当該勧告に示された期間を経過した日から三十日以内
3 前項の期間は、不変期間とする。
4 第一項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもつて同一の請求をすることができない。
5 第一項の規定による訴訟は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
6 第一項第一号の規定による請求に基づく差止めは、当該行為を差し止めることによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは、することができない。
7 第一項第四号の規定による訴訟が提起された場合には、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実の相手方に対して、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員は、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならない。
8 前項の訴訟告知は、当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効の中断に関しては、民法第百四十七条第一号 の請求とみなす。
9 第七項の訴訟告知は、第一項第四号の規定による訴訟が終了した日から六月以内に裁判上の請求、破産手続参加、仮差押若しくは仮処分又は第二百三十一条に規定する納入の通知をしなければ時効中断の効力を生じない。
10 第一項に規定する違法な行為又は怠る事実については、民事保全法 (平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない。
11 第二項から前項までに定めるもののほか、第一項の規定による訴訟については、行政事件訴訟法第四十三条 の規定の適用があるものとする。
12 第一項の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、弁護士又は弁護士法人に報酬を支払うべきときは、当該普通地方公共団体に対し、その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。
(訴訟の提起)
第二百四十二条の三 前条第一項第四号本文の規定による訴訟について、損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合においては、普通地方公共団体の長は、当該判決が確定した日から六十日以内の日を期限として、当該請求に係る損害賠償金又は不当利得の返還金の支払を請求しなければならない。
2 前項に規定する場合において、当該判決が確定した日から六十日以内に当該請求に係る損害賠償金又は不当利得による返還金が支払われないときは、当該普通地方公共団体は、当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければならない。
3 前項の訴訟の提起については、第九十六条第一項第十二号の規定にかかわらず、当該普通地方公共団体の議会の議決を要しない。
4 前条第一項第四号本文の規定による訴訟の裁判が同条第七項の訴訟告知を受けた者に対してもその効力を有するときは、当該訴訟の裁判は、当該普通地方公共団体と当該訴訟告知を受けた者との間においてもその効力を有する。
5 前条第一項第四号本文の規定による訴訟について、普通地方公共団体の執行機関又は職員に損害賠償又は不当利得返還の請求を命ずる判決が確定した場合において、当該普通地方公共団体がその長に対し当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起するときは、当該訴訟については、代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表する。
などなど